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住宅並みの安全性
Building homes with the Defence Housing Exective / As safe as houses

資料出所:英国安全評議会(British Safety Council)発行
「SAFETY MANAGEMENT」2003年4月号 p.44-45

(仮訳 国際安全衛生センター)


 イギリス国防省(Ministry of Defence)の一部局である国防住宅局(Defence Housing Exective)−−英国軍家族住宅の建築と修繕担当−−は、建設プロジェクト進行中は安全衛生環境に関心をもって、常に、正しく対応している。Mardi Westphalen(マルディ・ウェストファーレン)が報告する。

 安全基準を維持することは、どの企業にとっても課題であるが、事業者が経済的制約に直面している場合は特に困難な問題である。しかし、国防住宅局(Defence Housing Exective: DHE)のような組織では、安全衛生を後回しにはしないことが保証されている。国防相が安全衛生方針を策定したときは、そのような基準を無視できるのは相当勇気のある者だけであろう。しかしイギリス国防省(the Ministry of Defence: MOD)の一部局であるDHEはその方針に本腰を入れているので、心配は無用である。
 現国防相ジェフ・フーン(Geoff Hoon)の監督下にあるのは、MODの安全衛生方針と、それに続くジョン・ウィルソン(John Wilson)国防住宅局長(DHE Chief Exective)の政策、さらに地方についてはDHEの地方監理官(Regional Controller)による政策である。

環境ガイドライン

 DHEの地方作業管理官(DHE Regional Works Manager)であるケビン・リジアーニ(Kevin Rigiani)氏は、幸いにもイギリス安全評議会(British Safety Council: BSC)の修了証2通を取得し、安全衛生環境にかかわるガイドラインを遵守し実施する己の能力に自信をもっている。
 リジアーニ氏は、「私の仕事に必要とされる資格のひとつは、BSCの安全管理者資格認定証(Certificate in Safety Management)の取得であった。認定取得後、安全管理修了証(Diploma in Safety Management)と、最終的には環境管理修了証(Diploma in Environmental Management)の取得に向けた勉強は有意義なことであると感じた」と語っている。
 イングランド、スコットランド、ウェールズ中の軍役家族に対し、DHEは住宅設備を提供している。英国南西部地域の地方作業管理官であるリジアーニ氏には、同地域全体にわたる不動産の安全基準の監視責任がある。

住宅の近代化

 日ごろの保守としてあげてみても、英国南西部地域における住宅の一般的な保守と近代化には、窓の入れ替え、照明器具の取り付けをはじめ、新しい機器の据付け、屋根の葺き替えまでが含まれる。個々の不動産の規模、築年数、状態は考慮せねばならないが、住居の保守で最重要視すべきことのひとつに、居住者の安全、特に家庭に幼児がいる場合の安全を確保することがあげられる。
 英国南西部地域では約175名の行政官を擁しているが、現場での保守、造成を実際に行うのは、建設工事の施工業者に限定されている。つまり、地方作業管理官の職務範囲には、DHE不動産局諸局長(DHE Property Managers)とその職員および外部の建設工事施工業者とのすべての段階においての関わりに加えて、DHEの顧客、すなわち不動産の居住者との関わりも含まれることになる。
 DHEが現在携わっている最大の資本運用プロジェクトは、ウィルシャー州ティッドワース(Tidworth)での530住居の解体と、同地駐屯の軍役家族に対する484の新規住居の建築(2005年までに完成予定)である。第一段階が終了した現在では、213住居の建築が完了している。

日常の管理

 このような重要プロジェクトの発注者としての責任に加え、リジアーニ氏は現場チームの日常的な管理責任も有している。これには、設計、プロセス、建設工事の成果にかかわる建設(設計および管理)規則に関する責任が含まれる。建設途中段階での安全衛生に対する責任範囲は、それ以降の建設完了段階にまで及び、完了後の住宅での居住上、保守上の安全性の保証までを含んでいる。
 リジアーニ氏は、「現場では自己本意で作業する人がないように注意している。安全上のガイドラインを遵守しさえすれば防げたであろう些細な事故の処理はしたくないものだ」と語った。
 このように多くの建設施工業者とかかわると、綿密な入札プロセスが必要となるため、効率的なコミュニケーション窓口を設けねばならない。「他の建設、保全組織への査定とは異なり、単に価格面で彼らの入札を査定するのではない。」
 「我々は入札プロセス全般にわたって厳格なガイドラインを設けている。施工業者は、入札提出時に自社の安全衛生方針の申告書、有害物質管理規則(Control of Substances Hazardous to Health Regulations: COSHH)認定証明書、環境基準、従業員安全規則を含めなければならない」とリジアーニ氏は語った。

入札書類の技術面の評価

 施工業者選定部門では、技術面での提案および基準モデルに対する価格の評価で入札を検討する。「技術面の評価で重要な位置にあるのが、安全衛生管理である。提出書類には自社の具体的な安全衛生管理記録を含めなければならない。国家機関あるいは行政局として我々が一番してはいけないことは、能力のない人間の採用である。我々は絶対にそのようなことはしない」と同氏は説明している。
 解体工事中の重要問題は、アスベスト、ガス、電気、輸送にかかわることである。このために、安全管理規則を各管理者が十分に把握していることが重要となる。
 リジアーニ氏はこれに関し、次のように説明している。「DHEは安全管理を積極的に推進しており、技術面でのさまざまな任務につく者には、BSCの安全管理者資格認定証の取得が必要となる。環境管理問題は広く一般的なことになりつつあるので、DHEは積極的に教育を実施し、環境管理の修了証を取得する上で私をサポートしてくれた。」
 2002年11月21日に法制化された、新しい2002年職場のアスベスト管理規則(Control of Asbestos at Work Regulations 2002)(CAW)の導入により、DHEなどの事業者は、事業場でのアスベスト管理に対し彼らに課された法律上の 義務に真正面から取り組まざるをえなくなった。事業者としてのDHEは、現場でのあらゆる種類のアスベストによるリスクの特定とそれらの管理に法律上の責任を負っている。

アスベスト管理

 「特に新規則に関わるアスベストの管理に対し、我々は非常に真剣に注目している。これは主要課題である上、新規則が制定されたことで、従来会得してきたことや、将来アスベスト問題に対して講じるべき最善策に関する知識を我々は確実に収得していけることであろう」と同氏は語った。
 同地域では非常に多くの施工業者が建築に関わり、建築件数も多いため、コミュニケーションの窓口を広く開けておくことが強調されている。DHEの地域事務所で同氏は、複数の建築現場管理者と監督者から伝えられる情報や事故報告のまとめ役となっている。さらに、複数の施工業者、各上級管理者間で行われるあらゆるDHE会合の場やDHE本部における基準議題は、常に安全衛生である。これはDHEの幹部が直接支持している実施事項の一つである。
 「新体制の下では、これら会合からの情報は全職員に次々と流されるので、特に組織再編がさかんに行われている現状では、職員はDHE内での進捗状況と歩みをそろえることができる」とリジアーニ氏は結論した。