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英国製糖(株)爆発災害に30万ポンドの罰金

資料出所:Job Safety Management
July/August 2005 p.8

(仮訳 国際安全衛生センター)


  英国製糖の工場の1つで爆発災害が発生し、電気工が片目を失明した件で、裁判所の判決により、罰金及び裁判経費合わせて30万ポンドの支払いが命じられた。
  この事件は英国製糖にとってはこの5年間で5回目の安全衛生に関する有罪判決となった。また、この事件はバリー・セント・エドマンズ町の工場でショベル・ローダーにより労働者がひかれ、40万ポンドの罰金が科せられた事件後4ヶ月も経過していなかった。

大企業の恥

  ポール・ダウン判事は、判決を下しながら、次のように語った:“この会社は大企業であり、5年間に5回も法規違反を犯していることは大変な恥ずかしいことだと思わなければならない。”更に次のようにつけ加えた。“爆発の結果がもっと重大にならなかったのは全くの偶然である。”
  マーク・ハリス検事はノルヴィッチ刑事裁判所で次のように述べた。事故は、2003年7月21日ノーフォーク州、キャントレイ町の英国製糖の工場で発生した。
  メンテナンス工事を実施するため、工場の操業はストップしていた。この工事には、粉体タワーにエレベーターを停止させることにより、ベルトと他の部品との摩擦で発生する火花による粉塵爆発を防止するベルトトラッキング装置の設置がが含まれていた。作業はARC工業(株)が請け負っていた。
  事故発生当日の朝、ARC工業の2人の労働者はエレベーターのところに行き、タワーの金属ケーシングにベルトトラッキング装置を溶接した。
  しかし、作業終了後、労働者の1人がフレームとケーシングとが少しずれているの  を発見した。
これを直そうとして、この労働者はハンマーでフレームを叩いた時、エレベーターのケーシング内部で爆発が起こった。そこで、2人の下請労働者は、はしごを使ってエレベータータワーの頂上の屋根から退避した。
  一方、エレベータータワーの底部のドアは、爆発力でその蝶番が吹き飛ばされ、タワー内に入ろうとして待機していた下請電気工のエディ・オズボーンに激突した。

片目喪失等の重度障害

  このため、オズボーンは頭蓋骨骨折と左眼の視力喪失を被った。また打撲によって、軽い脳損傷を生じ、彼は現在記憶を喪失している。もう1人の下請労働者及び英国砂糖の労働者もまた、破片による打撃を受け軽度の傷害を被った。裁判所は、爆発原因をエレベーターシャフト内の砂糖粉塵がメンテナンス工事の火花のために着火したものと判定した。

ハザードアセスメントの欠陥

  ハリス検事は裁判で次のように述べた。“英国製糖は粉塵爆発のリスクのある区域での火気使用作業に対する作業許可システムを守らなかった、特にメンテナンス作業周辺のハザードを適切に評価しなかった。
  ”裁判所での判定によると、エレベーターケーシング内の粉塵残留物によるリスクに配慮した者は誰もいなかった。
  エレベーター外部の粉塵については、作業開始前に点検、清掃したのだが、エレベーター内部についても、何らかの合理的なチェックにより潜在的なハザードの特定がなされて、濡れた紙袋を挿入するというような対策がとられたならば、事故は防止できたと思われるとハリスは述べた。粉塵に着火するリスクを低減するために、溶接に代わる方法として、ドリルとかコールドソーによる作業が検討されていなかった。
  減刑陳述において、英国製糖は罪を認め、爆発防止対策に6百万ポンドを投資し、HSEの指導により自社の安全文化改善に努めていると述べた。

作業許可システムの見直し

  更に、次のようにつけ加えた。また、作業許可システム及びリスクアセスメントを見直しており、オズボーンとその妻に対しては、傷害が治癒するまで経済的支援を行う。
  英国製糖は自社の労働者と他社の労働者の安全確保を怠ったとして労働安全衛生法第2条1項及び第3条1項により、25万ポンドの罰金が科せられた。また、裁判経費全額95,300ポンドの支払いも命令された。