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高視認性衣類とその欧州規格

資料出所 : Job Safety Management
April 2006
(仮訳 国際安全衛生センター)

掲載日:2006.11.06

※編注
道路工事、鉄道の保線などの作業者に蛍光素材などを用いた高視認性の衣類を着用させることは、かなり普及してきたように思われるが、これは欧州においての解説である。イギリス、アメリカとも作業によっては、法律で使用することが定められているようである。その例を以下に示す。(英文)
新しいウィンドウに表示されますHSEのHP Vehiclesのウエブサイト、ファクトシート High visibility clothing
新しいウィンドウに表示されますOSHAのHP 基準の適用「高速道路の工事従事者の高視認性衣類着用」

 高視認性衣類は、道路整備からセキュリティ作業までさまざまな産業で着用されているが、適切な種類の衣類を選定し、適切にクリーニングしておくことが大切である。米国3M社スコッチライト・リフレクティブ・マテリアルズ、プロダクト・マネージャのキャロライン・ウォールトンが、現在購入可能なさまざまな等級の高視認性衣類を紹介し、高視認性衣類が関連欧州規格に適合しているか確認するための方法について解説する。

 多くの職業では、従業員に高視認性衣類を着用させて、潜在的に危険な環境で働く彼らの存在を周囲の人々から視認されやすくする必要がある。ところでどの程度の視認性が必要となるのであろうか。高視認性衣類の性能を確認することはどの程度重要であるのか。引き掻き傷への耐性について、衣料メーカー、販売業者、事業者は責任を有するのであろうか。適正でない高視認性衣類を支給、または着用していた場合、どのような結果を招くのだろうか。

 高視認性衣類を着用する必要のある職業において、事業者は欧州規格EN471に準拠する衣料を支給する法的義務がある。EN471では、最優先の目的を安全の確保において新品と使用中の高視認性衣類の双方に対し厳しい性能仕様を規定している。同規格では、日中、過酷な天候、薄暮れ時、暗闇の諸条件における要件を規定している。

蛍光素材

 EN471の要件では、蛍光素材の使用面積、色、反射部品の再帰反射性についても規定している。同規格では高視認性衣類を使用する職場環境の危険度合いへの保護性能に応じて、低度、中度、高度の3等級の要件を定めている。

EN471の格付け

 クラス1は保護すべき度合いがもっとも低い場合である。クラス1の衣類を着用するのは、危険のリスクが最小限であるか、着用者が接近してくる車両に十分注意を払っている場合である。たとえば、案内係、あるいは、駐車場整理員、スーパーマーケットショッピングカート整理員などが含まれる。クラス1の代表的衣類には、ウエストバンドズボンやハーネスなどがある。

 クラス2は保護すべき度合いが中程度の場合である。クラス2の衣料は、着用者が、接近する車両への注意がそれるおそれがある作業や、通過する車両に近づく作業に従事する場合に着用する。クラス2の衣料を着用する職種には、船舶貨物積み下ろし担当者、貨物集配ドライバー、駐車場整理員、空港地上整備員、ごみ回収車作業員などがある。クラス2の代表的衣類には、袖なしの危険回避用ベスト、安全ベスト、前掛けやズボン吊りなどがある。

 クラス3は保護すべき度合いが最も高い場合である。クラス3の衣類は、道路建設工事作業員、ガス・電気工事作業員、監視人、救急救助員など、作業者が重大なハザードに直面する場合に着用する。クラス3の衣類は、クラス1、2の衣料より広範な身体部位、たとえば腕や足などの視認性も高くする必要がある。

 クラス3の代表的衣類には、袖つきコートやジャケット、カバーオール、ツーピースコンビネーションスーツ(適正にマーキングされている場合)などがある。

高視認性衣類の効果

 蛍光素材を高視認性衣類の背部に使用すると、日中の視認性が高まる。胸部、腕部、脚部に反射材を使用すると、夜間の反射性が高まる。3M社のスコッチライト反射シートには、ヘッドライトの光を光源の方向へ向けて反射し、光源側のドライバーに非常に明るい光を返す微細なガラスビーズとプリズムによる光屈折技術が使用されている。

反射光線の動きは、近づいてくる車両や人間に警告するために、着用者の輝く姿を浮かび上がらせる精密な幾何学的特性によって確実に制御されており、着用者の存在を明らかにさせ、安全性を高める。微細なガラスビーズとプリズムによる光屈折技術を使った3M社のスコッチライト反射シートは、EN471の厳しい要件を上回る高い性能を有している。

調査により基準以下の衣類の存在が判明

 最近の調査により、現在市販されている高視認性衣類の中には、BS EN471規格の基準に適合していないものがあることが残念ながら判明した。市販されている高視認性衣類(とりわけ、危険回避用ベスト)には、これまでに多くの基準に適合していない事例が見つかっている。

 一例を挙げれば、王立スペイン自動車クラブは、スペイン運輸省および全国消費者協会と5か月にわたり、スペイン国中から集めた100以上の反射材付き安全ベストの共同調査を実施した。

 調査の結果、市販の安全ベストの63%に、デザイン、日中の視認性(色度範囲)、夜間の視認性(再帰反射率)の面で規格不適合という問題が見つかった。ラベリングや製品情報が不適切な場合も考慮に入れると、規格不適合の高視認性衣類の割合は市販品全体の87%を占めた。

試験手順とCEマーク

 高視認性衣類の試験手順は、製品性能と安全性を確保するためにEN471の要件に厳密に従わねばならない。

 困ったことに、高視認性衣類の外観はよく似通っているにもかかわらず、試験を実施すると、デザインや使われている生地の使用量だけではなく、反射材などの構成要素の性能にも潜在的な問題が見つかっている。安心のためには、高視認性衣類を支給する事業者は、衣類メーカーや販売業者に、その衣類と反射材がEN471規格に適合していることを強く要請する必要がある。事業者が購入する高視認性衣類には、それが確実に試験済みであることが確認できる試験合格証が付いていなければならない。

さらに詳細な証拠

 CEマークは、製品が関連する欧州指令の要件に適合していることをメーカーが公示するものである。しかしこれにとどまらず、メーカーが販売するすべての製品が継続して安全基準を満たしていることを確認するために、さらに詳細な証明も要請する必要がある。これは、信頼できるメーカーから購入することで得られる。信頼できるメーカーとは、厳格な品質管理プログラムの実施に十分な時間を費やし、結果として試験費用をまかなうために若干高価な製品を提供しているところである。

では、高視認性衣類がEN471に適合していることを確認するのは誰の責任であるのだろうか。

 HSE(英国安全衛生庁)は、EN471規格に従い高視認性衣類を試験、等級分けし、CEマークの取得を確実に行うのは、メーカーの責任であるとしている。一方において、その従業員のために購入した高視認性衣類に、CEマークが的確に付されていることを確認するのは事業者の責任であるとしている。

 しかし、事業者の責任は、CEマーク付きの衣料支給だけに終わるのではない。大切なことは、高視認性衣類の耐用期間中その用途に合った使用ができるように、メーカーの取扱説明書に従ってクリーニングを行うことである。

耐剥離性

 クリーニングサービス業者を利用して衣類をクリーニングする際は、衣類と反射材がクリーニング機械に対する剥離耐性を有していることを事業者は確認する必要がある。

 一方で、従業員が衣類を家庭でクリーニングする場合は、事業者は従業員に衣類の取り扱い方を周知徹底させておく必要がある。HSEのコリン・ダンは、「従業員に高視認性衣類を支給した後は、従業員に適切に着用させることと、衣類の耐用期間中その性能を有効に維持するのは、事業者の責任である」とコメントしている。

 またダンは、次のようにも語っている。「端的に言えば、事業者は次のことを実施する必要がある。

  • 潜在的にハザードが存在する環境で働く可能性のあるすべての従業員に、必要とする高視認性衣類を無償で支給する
  • 高視認性衣類を清潔な状態に保ち、効果的に機能するよう保全する
  • 高視認性衣類の保管設備を確保する
  • 従業員が高視認性衣類を適切に使用できるよう十分な情報、指導、教育を提供する。これらには、、高視認性衣類が必要である理由、高視認性衣類を着用すべき場合のリスクについて説明も含めること」

 信頼できるメーカー製のCEマーク取得済み衣類の購入は、短期的に見れば多少経費がかさむように思われるが、それでも、欧州規格に適合していない、あるいは効果のない高視認性衣類の着用を従業員に許していれば、代わりの衣料に交換する必要に迫られるか、訴訟を起こされるか、悪くすれば人命が失われるおそれさえある。結局、莫大な代償を支払うことになるのだ。

スコッチライト反射用生地の強み

スコッチライト反射用生地は軽量、柔軟で、快適さを損なうことなく最大の危険回避性能を発揮する。スコッチライト反射用生地は、EN471規格の最高輝度性能基準、および、過酷条件での7つの耐用試験基準(輝度、降雨の影響、温度変化への耐性、剥離、寒冷環境での折り曲げ、屈曲、洗濯およびドライクリーニング)のすべてを超える高性能を有している。

事業者の義務についての解説

 スコッチライト反射用生地を選定すれば、3M社が50年の経験を重ねて研究開発してきた再帰反射性技術の成果である危険回避性、高性能、安心を得られることになる。

 3M社では、以下の事柄に対する専門家によるアドバイスサービスを提供している。すなわち、欧州ならびに国内の安全衛生規則に従う際の事業者の義務についての解説、自社事業のリスクレベルの判定、適切な種類の高視認性衣類の選定、事業のニーズに応じた適正なスコッチライト製品の特定などである。現在スコッチライト反射用生地は、難燃性、機械によるクリーニングへの耐性をカバーする特殊機能品、およびカスタムイメージ対応品などを含め、およそ20種類が用意されている。

 3M社では、EN471規格の修正版の手引書も作成し、無償配布している。手引書の請求は、電話:0161-237-6269または、電子メール:Carolyn@mconieagency.comまでお問い合わせいただきたい。

 新しいウィンドウに表示しますEN471: 2003 High-visibility warning clothing