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記事暑熱および寒冷環境下での作業に関する勧告

資料出所:新しいウィンドウにリンク先を表示しますHSE [イギリス安全衛生庁]
(仮訳 国際安全衛生センター)

掲載日:2007.07.02

HSE(イギリス安全衛生庁)ウェブサイトの本セクションでは、職場の温度環境が作業者に及ぼす影響とその対処に関する勧告に記す。

問題点とリスク

  • 熱ストレス
  • 寒冷ストレス
  • 脱水症
  • 直射日光下での作業
  • 寒冷環境下での食品の取り扱い

屋外の作業場

屋外で作業する際に、事前のリスク考慮がされていない、または、適切にリスク管理がされていなければ、天候環境が作業者の健康に非常に深刻な影響をもたらす場合がある。この影響は即座に、または、長い時間をかけて現れる可能性がある。

例を挙げると、直射日光へのばく露は、日焼け、火ぶくれ、皮膚の老化、などの皮膚障害の原因となり、長期的なばく露は、皮膚ガンを引き起こすリスクを高めるおそれがある。皮膚ガンはイギリスにおいて最も多く発症するガンのひとつで、毎年5万人以上が新たに罹患している。

直射日光への不要なばく露は以下の方法で予防できる。

  • 長袖シャツまたは織り目の細かい生地のたっぷりとした衣類を着用する。
  • つばの広い帽子をかぶる。
  • 頻繁に休憩を取る。
  • 可能な限り日陰で休憩する。
  • 一日の中でより涼しい時間帯に作業を行えるようにスケジュールを組む。
  • 可能であれば、作業が行われている場所に日陰を作る。

日焼け予防は重要であり、日焼けした皮膚は皮膚障害を被っていることを理解する必要がある。日焼けで黒くなった皮膚は決して健康である証ではない。

屋内の作業場

事業者は以下の事項を実行する必要がある。

  • 職場の温度を適度に保つ。すなわち、通常、16℃以上、重労働の場合は13℃以上とする。(他の法規により、さらに低温とする規定がない限り)
  • 職場ごとに快適な温度を保てない場合(たとえば、高温工程または低温工程など)は部分的に冷暖房をする。
  • たとえば、「高温作業」や保冷倉庫での作業など、必要な場合は、保温衣類を支給し、休憩施設を設置する。
  • 職場に危険または不快を与えるレベルのヒュームを放出しない暖房システムを備える。
  • 職場の空間を十分にとる。
  • 職場の最高温度、最低温度について

報告

事業者に申し出ることに不安を感じる場合は、労働組合、地方自治体事務所、HSEの地方事務所に相談が可能である。

熱ストレス

序論

このページでは暑熱環境下で作業する際のオーバーヒートのリスクについて説明し、その予防方法の実践的なガイダンスを提供する。このインフォメーションは、暑い夏季にリスクが高まる職種にも適応されるが、多くの職業では熱ストレスは一年中取り組むべき課題となっている。ここでは、製パン工房、高圧室内(compressed air tunnels)、鋳造工場、製錬工場など暑熱環境下で作業する際のオーバーヒートのリスクについて説明している。ただし、職場の温度快適性にかかわる問題については言及していない。

温度快適性とは

熱ストレスは、身体内部温度のコントロールができなくなり始めると生じる症状である。大気温度と同様に、作業量、湿度、作業時の着用衣類などの諸要素が原因で熱ストレスが生じることもある。従って、作業場を通り過ぎるだけの作業者には熱ストレスによるリスクの存在はわかりにくいかもしれない。

事業者と作業者は、暑熱環境下での安全な作業の方法、熱ストレスの原因となる諸要素、熱ストレス発症リスクの低減方法について認識しておく必要があります。

身体はどのように熱に対処するのか。

身体は暑熱に対処する際、皮膚表面への血流量を増やし、発汗を促す。血流量が増すことにより身体内の熱が身体表面に達し、汗が身体表面から気化することで体温が下がる。身体表面での放熱や対流によっても熱は奪われる。

熱ストレス発生状況の代表的な例

保護服を着用し、暑熱、多湿環境の中で重労働をしている作業者は、以下の理由で熱ストレスのリスクにばく露するおそれがあります。

  • 着用している衣類の種類と多湿環境により、発汗による気化熱作用が制限される。
  • 作業量に応じて身体内に熱が発生し、放熱が不十分であると深部体温が上昇する。
  • 深部体温が上昇すると発汗量が増え、その結果脱水症になるおそれがある。
  • 心拍数も上昇し、さらに身体に負担を与える。
  • 放熱量より発熱量が多いと、深部体温は上昇し続ける。
  • その結果、身体制御機能が働かなくなる。

この状況のまま作業を続けると、作業が長時間になるほど症状は悪化する。

熱ストレスの影響について

熱ストレスが及ぼす影響は個人ごとに異なり、他の人より影響を受けやすい人もいる。

以下は、一般的によく見られる症状である。

  • 集中力の欠如
  • 筋けいれん
  • 汗疹
  • 異常な喉の渇き−熱ストレスの遅発性症状
  • 失神
  • 熱疲労−疲れ、めまい、吐き気、頭痛、湿潤皮膚
  • 熱射病−熱乾皮膚、意識混濁、ひきつけ、およびその結果としての意識喪失。この症状は最も重症であり、早期発見されないと死亡するおそれもある。

熱ストレスが発生する場所

作業工程や、狭く閉鎖的な空間による暑熱環境が原因で生じる熱ストレスを被るおそれのある作業者の職場の例としては、以下のようなものが挙げられる。

  • ガラスやゴム製造工場
  • 鉱山
  • 高圧室内
  • 旧の発電所および原子力発電所
  • 鋳造工場、製錬工場
  • レンガ焼成工場、セラミック工場
  • ボイラー室
  • 製パン工房、ケータリング業の厨房
  • クリーニング業

上記産業では、暑熱環境下での作業はごく一般的に行われている。上記以外の産業では、暑熱環境下での作業は、作業環境での作業の種類や作業内容の変更に応じて不定期に行われている。たとえば、屋外の気温変化による季節に応じた作業内容の変更は、熱ストレス発症の主要因となるおそれがある。

熱ストレスに対し、事業者がするべきこと

着衣を脱ぐ、冷たいものを飲む、あおぐ、日陰や冷涼な場所に座る、作業量を減らすなど、涼しくなるように行動を変更することや、発汗することにより、作業者は時間をかけて暑熱環境に順応していく。しかしアスベストの除去など、多くの作業ではこのように行動を変更できない場合がある。熱ストレスが発生しそうな状況では、事業者はリスクアセスメントを実施する必要がある。

リスクアセスメントで事業者が調査すべきこと

  • リスクアセスメント実施の際に、事業者は以下に挙げる主項目を考慮すべきである。
  • 作業量−作業量が多いほど、身体からの発熱量が増す。
  • 作業時の環境−気温、湿度、大気の動き、熱源付近での作業の影響などが挙げられる。
  • 作業者の着衣および呼吸保護具−発汗や他の温度調整手段の効率を阻害するおそれがある。作業者の年齢、体格、健康状態−個人の許容差に影響するおそれがある。

第一に、事業者は作業者(および彼らの安全管理の責任者)と面接して、熱ストレスの初期症状を患っていないか確認する必要がある。問題が生じている可能性が見られれば、事業者は、たとえば、職業衛生専門家、看護師、医師など、暑熱環境下でのリスクを判断できる専門家に相談する必要がある。

事業者がリスクを低減できる方法について

以下のようにして、可能な限り熱源の排除や削減に努める。

  • 以下のような技術的解決方法により温度を調整する。

- 工程を変更する。

- ファンやエアコンを使用する。

- 放射熱へのばく露を低減する物理的な障壁を使用する。

  • 可能な限り、機械の助けを得て作業量を低減する。
  • 暑熱環境下での作業時間の規制

- 温度が設定レベル以下の場合、あるいは、一日の中でより涼しい時間帯に限り作業場への入場を許可する。

-リスクのある状況での必要作業時間を明記した作業許可書を発行する。

- 定期的に休憩を取らせたり、冷涼な場所に休憩施設を設けたりする。

  • 脱水症状を予防する。暑熱環境下での作業による発汗は、体温を下げる一方で、生命維持に必要な水分を奪う。失われた水分は補給しなければならない。職場に冷水を用意し、作業の前後と(呼吸保護具の着用時やアスベスト除去時などには不可能であるが)最中に作業者少量ずつ頻繁に補給させること。
  • 個人保護具を支給する。たとえば、個人用冷却システムを内蔵した、または通気性のある生地を使った専門の個人保護衣類の利用が可能である。これらの保護具は、特定の暑熱環境下で、作業者を保護する。暑熱環境以外の作業上のハザード、たとえば、アスベストへのばく露などの場合も、保護衣類や呼吸保護具は必要となることが多い。このような暑熱環境以外の作業用保護具はハザードから作業者を保護する反面、熱ストレスのリスクが高まるおそれがある。
  • 作業者を教育訓練する。特に新規採用者や若年作業者には、作業にともなう熱ストレスのリスク、注意すべき症状、安全な業務手順や救急措置について教育する。
  • 作業者を環境に順応させる。作業者を暑熱環境に順応させ、暑熱環境下での作業に適応できる、または適応が評価できる作業者を特定する。
  • 熱ストレスを被りやすい作業者を特定する。妊娠している女性や心臓疾患をもつ作業者など、健康上の理由、あるいは、熱ストレスを早期に発症しやすい薬物療法により熱ストレスを被りやすい作業者を特定する。職業衛生の専門家または医師からのアドバイスが必要となる場合がある。
  • リスクにさらされている作業者の健康を監視する。実現可能な限りの予防策を講じた後も、残存リスクがあることを考慮し、リスクにさらされている作業者の健康の監視が必要な場合もある。そのような場合、事業者は、熱ストレスを生じる環境下での作業に伴うリスクについて十分な経験上の知識を有する職業衛生の専門家からアドバイスを受ける必要がある。
無料インフォメーションシート

「職場の熱ストレス。事業者に必要な知識」PDF[25KB]

寒冷ストレス

寒冷ストレス予防のためのHSEによるガイダンス

事業者及び作業者はHSEが12°C以下での作業に関する特定のガイダンスを持たないことに注意しなければならない。英国/欧州規格(British/European Standards: BSEN)に従うことが、事業者の必要最小限の基準への取り組みを明確にする。このような状況下での最初の第一基準として、労使双方が下記英国規格(British Standards)を参照するように勧告する。

  • BS EN 511:「低温保護手袋規格」(Specification for protective gloves against cold)
  • ISO 13732-3:「温熱環境の人間工学−低温表面接触第3部・人間工学データと利用ガイダンス」(Ergonomics of the thermal environment - Touching of cold surfaces Part 3. Ergonomics data and guidance for application)
  • BS 7915: 1998:「温熱環境の人間工学−:屋内寒冷環境作業慣行の評価および設計ガイド」(Ergonomics of the thermal environment : Guide to design and evaluation of working practices for cold indoor environments)
  • ISO 11079:「寒冷環境の評価−必要衣服熱抵抗の算出」(Evaluation of cold environments - Determination of required clothing insulation (IREQ) )

上記した規格は完全なリストではないが、リスクアセスメントの方針を立て、問題管理を始める基礎を提供する。各事業の状況により、事業者は他の規格を参照する必要もある。

脱水症

脱水症は、熱ストレス環境下で、作業者の安全作業能力に大きな影響を及ぼすおそれがある。発汗による水分の損失を補うためには、紅茶、コーヒーまたは炭酸飲料ではなく冷たい水を少量ずつ頻繁に飲むことを奨励することが、熱ストレス環境下での脱水症状を最小限にする。また、喉の渇きは脱水症を予防する効果的なサインではないことを理解しなければならない。喉の渇きを感じたときは、既に脱水症状が始まっているのだ。

すなわち、熱ストレス環境下で重労働をする際、作業者は15分毎におよそ250ml(0.5パイント) または30分毎に500ml (1パイント)の水分を補給するべきである。しかしながら、水分補給の妨げとなるPPE(個人保護具)を着用する、または、衛生要件が飲食の妨げとなる産業で作業するなどの作業の性質により、この方法が実施できない場合がある。このような場合の代替方法は、作業開始前に1時間単位で500mlの水を飲み、休憩時間に500mlの水を飲むことを奨励することである。これらの方法により、作業中の水分需要量を満たすかもしれないが、水分の蒸発量が著しく多い場合は、水分摂取量を比例して増やさすべきである。また、発汗した量に等しい水分を補給しても、過度の発汗が原因の塩分の損失による脱水の影響を受けるかもしれない。これは、作業開始前に、作業者が十分給水したことを確認すべきであることを意味する。

屋外の作業

屋外で作業を行う際、天気は個人の有効性に影響を与えるおそれがある、そして工学的に制御することは容易にはできない。このような環境を管理する、最も効果的な方法は以下のようなシンプルな管理を導入することである。

寒冷環境

  • 支給されたPPEが適切であることを確認する。
  • 復温のための移動式施設を提供し、スープやココアなどの暖かい飲料物の摂取を奨励する。
  • 頻繁に休憩を取り入れる。
  • 安全に対する意識は変えないで、一年の中でより暖かい時期に、作業を延期または開始する。
  • 寒冷ストレスの初期症状の認識に関して作業者を教育する。

暑熱環境

  • 一日の中でより涼しい時間帯に作業を行えるようにスケジュールを変更する。
  • 頻繁に休憩を取り入れ、休憩所に日陰を作る。
  • 無料の冷水供給場を提供する。
  • 個人の作業領域に日陰を作る。
  • 放熱を促すため、休憩時のPPEの取り外しを奨励する。
  • 熱ストレスの初期症状の認識に関して作業者を教育する。

直射日光下での作業

どのような危険があるのか。

過度の日光は皮膚にとって有害である。日焼けによる黒い皮膚は損傷を受けたサインであり、その損傷の原因は日光に含まれる紫外線(UV)である。

想定される被害者

屋外での作業が長時間になる場合は、皮膚が過度の日光にばく露するおそれがある。農場、建設現場、市場向け菜園、野外活動、公益事業の一部など屋外で作業する作業者はこのようなリスクを負うおそれがある。以下の人は特に配慮する必要がある。

  • 色白でそばかすが多く、日焼けで皮膚が黒くならない、または黒くなる前に赤くなったり、ひぶくれになったりする。
  • 赤毛や金髪で目の色が明るい。
  • ホクロが多い。

日光の有害な影響について

短期的には、日焼けにより皮膚に水ぶくれができ、むける。少し赤くなっているだけでも皮膚障害の徴候である。

長期的には、日光に当たり過ぎると皮膚は老化が早まり、革のように堅くなり、しみやしわができるが、最も深刻な影響は皮膚ガン罹患の可能性が高まることである。

自分自身を守るためにできること

  • 上着を着用する。(長袖の作業着とジーンズのように、目の細かい生地を使った普通の衣服で、ほとんどのUVを防ぐ)
  • 耳や首の後ろを覆うフラップやつば付の帽子をかぶる。
  • 休憩時間中、特に昼休みには、できるだけ日陰に居る。
  • SPF15以上の効果の高い日焼け止めを皮膚が日光にばく露するすべての箇所に使う。
  • 脱水症防止のため十分な水分を補給する。
  • 定期的に異常なほくろや吹き出物などがないか皮膚のチェックを行う。それらの形、大きさ、色の変化や、かゆみ、出血など少しでも変化があった場合は、直ちに医師の診断を受ける。
詳細な情報

HSEは以下のリーフレットを無料で提供している。

  • 「上着の着用:直射日光下の作業における健康上のリスク」
    (Keep your top on: Health risks from working in the sun) [PDF 100kb]
  • 「日焼け予防:屋外作業者を管理する事業者へのアドバイス」
    (Sun protection: advice for employers of outdoor workers) [PDF 680kb]

下記ウェブサイトからも役立つ情報を入手できる

「サンスマート:全英皮膚ガン予防キャンペーン」(SunSmart: the UK’s national skin cancer prevention campaign)

寒冷環境下での食品の取り扱い

食品を取り扱う作業場の温度

食品業では、食品衛生法の要件を満たすと同時に、職場の「適温」を維持する必要がある。

法規上、食品衛生法と衛生安全法に対立しているものはない。一般的に、食品衛生法は食品の温度を規定し、衛生安全法は職場の室温を規定している。局所冷蔵密閉空間などのよく知られた技術を使う場合、最高室温を食品衛生法が規定するなどのいくつかの例外はある。

安全衛生上の要件

屋外作業場における安全衛生上の温度要件は、以下の事項により満たされる。

  • 作業場中を「適切な」温度、すなわち、最低16℃以上(重労働の場合は最低13℃以上)に維持する。この温度は、食品を局所的に冷蔵したり、食品の室温へのばく露を最小限に抑えたりすることを意味する。あるいは、これが実施できない場合は、
  • 全体的に低温の場合、その作業場に暖房用ワークステーションを設置する。あるいは、これが実施できない場合は、
  • 適切な保護衣類、暖房休憩施設を供給し、仕事のローテーションを設定するなどして、個人の暖温を維持する。

保冷倉庫における安全衛生上の温度要件は、以下の事項により満たされる。

  • 実施可能な場合、車両運転室に局所的な暖房を施す。
  • 適切な保護衣類、暖房休憩施設を供給し、仕事のローテーションを設定するなどして、個人の暖温を維持する。

食品業界の特別ガイダンス

  • 食品情報シート3、「食品を取り扱う場所の室温」PDF[45KB]
  • 冷蔵食品製造時の適切な作業温度と条件を満たすためのガイダンス
  • ガイドラインNo.26、カムデン&チョーリーウッド食品調査協会(Campden & Chorleywood Food Research Association,(CCFRA)(グロスターシャー州、チッピング・カムデン、GL55 6LD Tel: 01386 842000)