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記事暑熱環境での作業
Feeling the heat

資料出所: The RoSPA Occupational Safety and Health Journal
2006年7月号
(仮訳 国際安全衛生センター)

掲載日:2007.07.02

職業関連の熱ストレスは安全衛生を阻害し、直接的、間接的に従業員の傷害や死亡災害を引き起こすことは長年知られてきたことだが、職場の熱ストレスによるリスクの評価、管理のための最善策についてはそれほど明確になっていない。ニック・クック(Nick Cook)が解説する。

熱ストレスのリスクアセスメント方法策定にあたっては、現場の作業者が、実際に有効であり、過剰に複雑であったりあるいはあまりにも技術志向ではないことを認識できるような、彼らが現在および将来にわたり利用できる方法を策定することが課題となっている。

熱ストレスの適正なアセスメント方法を見極めるという課題は、ラフバラー大学(Loughborough University)の研究者がまず取り組み、後にバクストン(Buxton)の安全衛生研究所(HSL: Health and Safety Laboratory)が引き継いだ。

「教育訓練を受けている有能な人間であれば誰もが実施できる方法としなければならなかった。現場の専門家を必要としないものでもあった。」、とHSL熱学主席研究員ダミアン・ベセア氏(Damian Behea)は説明している。時間もかからず、資源も少なくてすむため、中小企業にも敬遠されないものとする必要もあった。

ベセア氏が熱ストレスのリスクアセスメントに取り組み始めたのは、1997年、ラフバラー大学科学学部長ケン・パーソンズ(Ken Parsons) 博士監修によるHSEのプロジェクトに携わったことによる。2002年、ベセア氏は、同研究プロジェクトおよび熱ストレスのリスク評価とリスク抑制のための新しい手法の概説を記載した報告書(注1.)を、パーソンズ博士との共著で上梓した。

“熱ストレスは、重大な症状を引き起こす可能性があるため、適正なリスクアセスメントの必要性が最優先事項となる”

ベセア氏が説明するとおり、このアセスメント手法はある重要な点で他に例を見ないものとなった。「アセスメント方法は、できるだけ利用しやすいものとした。利用のしやすさがこの手法の主な基準であるため、この手法へのユーザーの適切な関与が当初から求められていた」

熱ストレスは、重大な症状を含む熱関連の疾病を引き起こす可能性があるため、適正なリスクアセスメントの必要性が最優先事項となる。熱ストレスのリスクを被る作業者には、鋳者工場、クリーニング店、レストランのキッチン、製パン所、鉱山、炉を使う職業、熔融物質を扱う作業に携わる者が含まれる。屋外で働く建設業者や農業従事者、あるいは、個人用保護具を着用している者もリスクを被る可能性がある。

ところで、熱ストレスとは正確にはどのようなものであろうか。気温に関係するとだけ考えている向きが相変わらず多いが、残念なことにそれほど単純なことではない。熱ストレスが重要である理由を理解するために、身体が熱を調整する方法についてもう少し理解を深める必要がある。

人間は恒温動物であり、身体の深部にセントラルヒーティングシステムを持っているため、身体内部の熱を自ら生成できる。このため、気候にかかわらず、寒気でも暖気でも人間は自由に活動できる。爬虫類はこのようなメリットを享受していない。変温動物であるため、外部の熱に依存して活動する。身体を暖めてくれる日射がない場合は、冬眠状態に陥り、簡単に活動を停止してしまう。

恒温動物の弱点は、最高、最低温度の幅が非常に小さい核体温(深部体温)を維持する必要があることである。幸いなことに、備わっている非常に効率的な体温調節システムを利用して人間は核体温を維持することができる。視床下部がすべての始動源となっている。視床下部は脳下部に位置し、一種の生体サーモスタットの役割を果たしている。人間は身体が熱くなると、視床下部が働き核体温を迅速に下げる。血管が拡張するため、身体の核にある熱は血管により皮膚に運ばれて、外気に気化される。

人間の身体から熱を奪うための推進力となるのは、蒸汗である。(多湿や着衣などの)蒸汗を抑制したり、阻害したりするものが、熱ストレスのリスクをもたらす主要因となる可能性がある。

これらの身体の仕組みはすべて欠かすことができない。人間の核体温は37℃前後であるが、1℃以上上下に逸脱すれば、深刻な問題となる。オーバーヒートが引き起こす結果には以下のようものがある。

  • 疲労−疲労した者は、作業遂行能力の低下に気づく。疲労は、技能を要する作業あるいは知的作業、集中を要する仕事に及ぼす影響が、とりわけ大きい。疲労は潜在的にミスや事故を起こす原因となる。
  • 熱疲労−人間は熱を帯びるにつれ発汗量が増え、水分や塩分を消耗する。失われた水分や塩分を補給しなければ、脱水症や熱性疲労を起こす可能性がある。熱性疲労の症状には、倦怠、筋けいれん、吐き気、嘔吐、失神、精神の不安定、頭痛などがある。
  • 汗疹−発汗が続くと汗腺が詰まり、炎症が起きる。炎症から小さな火ぶくれ様の発疹ができ、‘紅色汗疹’となる。
  • 熱射病−熱射病は熱関連の疾病の中ではもっとも深刻なものである。発汗機能が不能になることが原因となる。発汗機能が不能となると核体温が加速的に上昇するが、危険な状態にあるという警告的徴候はわずかあるいはまったくなかったりする。初期症状は、急速で浅い呼吸、精神錯乱、失見当、発作などである。皮膚は熱くなり、乾燥し、赤みを帯びることもある。深部体温が40.5℃に達し、それを超えると熱射病となる傾向がある。こん睡状態に陥ることもあり、治療しないでいると、腎臓障害、急性心不全、熱による脳への直接障害、またはこれらの複合症状が現れる可能性がある。生存した場合でも、身体のサーモスタット機能は永久的に障害を被る可能性がある。

脱水症

発汗は、熱を逃がすための非常に効率的な仕組みである。皮膚から汗が蒸発するとき、高い冷却効果が得られる。しかし残念なことに、発汗は水分を失うことをも意味するため、発汗量が多いと脱水症に陥るリスクがある。

「熱ストレスが起きそうな環境での作業者に、確実に十分な水分を補給させ、定期的な水分補給が必要であることを認識させることが、重要である」とダミアン・ベセア氏。

またベセア氏は、「脱水症は累積により発症する。交替勤務のシフトが終わった作業者が工場から歩いて帰ることができないというケースを思い出している。その作業者の妻が車で迎えに来ざるをえなかった。その原因は、勤務中に十分な水分補給をしていなかったことである」と語った。

さらに詳しいガイダンスについては、以下を参照すること。

www.hse.gov.uk/temperature/issuesandrisks/dehydration.htm

リスクアセスメント

HSLの温熱実験室を利用することで、1)さまざまな環境条件における設備試験、2)製品設計の支援、3)作業中あるいは余暇活動中の人々に温熱環境が及ぼす影響の調査が実現する。

このようなオーバーヒートの深刻な影響を考慮すれば、効果的なリスクアセスメントと管理方法の必要性が高まる。残念なことに、アセスメントの実施は想像以上に難しいことなのである。気温上昇が熱ストレスを引き起こす唯一の要因ではないため、単に職場の壁にサーモスタットを取り付け、温度に注意するだけでは済まないからである。実際には、気温上昇を見張ることが主要手段にもなりえないケースが多い。

“アセスメントの実施は想像以上に難しいことなのである。単に職場の壁にサーモスタットを取り付け、温度を見張っているだけでは済まないからである。”

HSLのダミアン・ベセア氏はこの点を例証したある災害について思い起こしている。「熱ストレスで虚脱状態に陥ったアスベスト除去作業者がいた。驚くことだがそのときの気温はわずか18℃であった。彼はなぜ虚脱状態になったのか。全容を知ればその答えは明らかになる。つまり、アスベスト除去は手作業であり、その作業者は猛烈に作業をこなしていた。その作業には2日間が与えられていたが、彼は1日で作業を完了させ、2日目は休暇にしようとするあまり、1日の要求作業量を超過する作業をしていたのである。猛烈な作業のためにエネルギー代謝率が高くなったが、これは、身体が大量の熱を発生していることを意味する。不幸なことに、通気性のないフードつきスーツを着用していたため、この作業者は熱を逃がせなかった。このために皮膚から熱が奪われず、蒸汗作用も阻害された。呼吸具着用を義務付けられていたため身体への負担は過大となり問題を悪化させた。このような状況では、熱疲労は予測できたはずと思われる。」

このケースが示す教訓は実に明確である。熱ストレスの評価、抑制のためのいかなる手法も、あらゆる環境要素と個人要素を考慮に入れるべきだということである。

  • 環境上の暑熱要素

    暑熱による負荷を増大させる環境面の要素は、以下の4点である。

    • 気温
    • 放射温度
    • 湿度
    • 気流

    熱ストレスの管理、評価、抑制のための10の一般方策

    1. 従業員の安全衛生の管理
    2. 従業員の教育訓練
    3. ハザードの特定
    4. 観察
    5. 簡単な抑制
    6. 計測と評価
    7. 結果の分析と解釈
    8. さらに詳細な分析と解釈
    9. 抑制(管理)の実施
    10. 専門家の支援の確保
  • 気温

    身体の周囲にある大気の温度である。

  • 放射温度

    物体から放射という方法で発される熱のこと。物体が高温になるほど、物体からの放射熱量は多くなる。放射熱は物体と身体の間の空間を伝播するため、放射熱源に接触することなく身体は暖められる。職場の放射熱源の例としては、溶融ガラス、溶接トーチ、赤く焼けたスラグ、パン焼き釜などがある。太陽ももまた放射熱源である。

  • 気流

    皮膚の上に風が流れると熱が奪われ、皮膚は冷却される。このため皮膚温度と核体温の温度差(温度勾配)が大きくなる。温度勾配が大きくなるほど核体温低下効果は高まる。また気流が増すほど冷却効果は高まる。もちろん、気流温度が核体温より高ければ結果は逆で、気流が増すほど冷却効果より温熱効果が高まる。

  • 湿度

    大気中の水分量のこと。冷却効果を得るためには汗が皮膚から蒸発する必要があるが、湿度が高いと汗蒸が阻害される。汗が皮膚から単純に滴り落ちるだけでは冷却効果は得られない一方で、身体から大切な水分や電解質が失われる(脱水症のリスク)。

  • 個人的要素

    以下の2つの個人的要素も、温熱環境への対応方法に影響を及ぼす。

    • エネルギー代謝率

      エネルギー代謝率が高いと身体の熱が発生する。(たとえば着衣や湿気により)熱を逃がすための身体機構が阻害されれば、核体温が、おそらくは危険なほどに上昇する。身体活動はエネルギー代謝率を上げる。皮肉なことに、個人用保護具は物理的に作業負荷を重くするため熱ストレスを上昇させる原因となりうる。たとえば、消防士が着用する自給式呼吸器と機器は、エネルギー代謝率を著しく上昇させる。

    • 着衣

      着衣の断熱効果が高ければ高いほど、身体から熱が奪われにくくなる。着衣の断熱性は、断熱係数(Clo Value)で測定する。断熱係数が高いほど着衣の断熱効果が高いことになる。たとえば、軽量の夏物衣類の断熱係数は0.6、一方木綿のオーバーオールの断熱係数は1.0である。冬の作業着の断熱係数は1.4である。

      しかし、着衣に関する限り、考慮すべきものは断熱係数にとどまらない。通気性も非常に重要である。着衣が水蒸気を通気させなければ、蒸汗が外に発散されない。その結果、着衣と皮膚の間にはさまれた空間の湿度が高まる。このため、蒸汗が促されなくなる。

      これがいかに深刻なことか、数年前に起きた海軍の潜水夫2名の事故が実証している。、訓練の一環として2人はウェットスーツを着用したまま海岸を走らされた。通気性のないスーツを着用したままの激しい軍事訓練。熱ストレスを起こすためには完璧なシナリオだった。不幸なことに、ひとりは死亡し、もうひとりは熱射病が原因で重症を負った。

      着衣にかかわりさらに考慮すべきことは、着衣のゆるみである。着衣にゆるみがあると着用者の身体の動きに応じて着衣も動き、皮膚と服の間の空気を動かすポンプ効果が生じる。この仕組みから冷却効果が得られる。

熱ストレスへの既存のアセスメント方法に対する主な批判

  • 既存のアセスメント方法の適用範囲が狭いため、産業界における熱ストレスがもたらす多様な現実への対応要件を満たせないことが少なくない。たとえば、暑熱環境におかれた作業者は保護衣類や保護器具などを着用している場合が多いにもかかわらず、保護衣類、保護具の影響を考慮に入れていない。
  • 既存のアセスメント方法の有効性が疑わしい。既存のアセスメント方法は、実際に作業者の熱負担に関連しているか。
  • 近年、アセスメント方法の利便性が重要であることが認識されている。当該アセスメント方法が適用範囲においては有効で十分なものであっても、過剰に複雑であったり、文脈上の補足や、当該アセスメント方法を利用する職員、組織に対する補足をしない方法で記載されていたりする場合は、利用されるにせよ、正しくは利用されない可能性がある。

資料出所:HSE

“肥満、年齢、アルコールの摂取量などのあらゆる要素も熱ストレスへの罹患性に影響を及ぼす。” 

  • 人的要素

    熱ストレスアセスメントの実施にあたっては、作業者の身体の状態も、もちろん考慮に入れねばならない。肥満、年齢、アルコール類の摂取量などのあらゆる要素も熱ストレスへの罹患性に影響を及ぼす。アセスメントでは、作業予定の温熱環境に作業者が順応できているかという点も考慮しなければならない。

  • リスクアセスメント方法

    熱ストレスのリスクを評価するにあたり考慮すべきパラメータの数を考えると、「誰にでも簡単にわかるガイド(idiot’s guide)」を求める声が上るのも当然である。幸いなことにユーザーのニーズを満たすために、HSLのダミアン・ベセア氏とケン・パーソンズ博士の共同事業である2002 年HSE調査プロジェクトを基とするHSLのリスクアセスメント方法のたたき台が用意されており、それを有効活用できる。ユーザーは用紙に簡単に記入していけばよい。ベセア氏は次のように説明している。

    「ユーザーは、(環境的要素と個人的要素)である6つのリスク要素の各々に点数をつけていく。ここでの採点は主観的なものだが、それぞれの採点基準は非常に明確に規定されている。たとえば、事務など軽度の手作業の仕事率(エネルギー代謝率)に対する点数はゼロである。はしごを急いで上る作業の点数は6点になる」

    HSLのアセスメント方法に見られる新しい特徴は、7つめの要素を含めたことである。7つめの項目は作業者の意見の評価である。もっとも重要な人間、すなわち、実際に作業に携わる人間の認識を評価するため、この項目追加の必要性は見過ごせない。

    それぞれのリスク要素の点数が表に示されている。表は色分けされているので、ユーザーはリスクの所在を一瞥するだけで認識できる。もうひとつの表にはそれぞれのリスク要素の抑制方法について一般的な事柄が示唆されている。たとえば、熱放射が問題であることが明らかであれば、推奨される対応策は、放射表面を取り除くことや、反射遮蔽壁を取り付けることである。

    特定したリスクを確実に抑制するために、抑制策を実施した後もアセスメントを繰り返す。万が一アセスメントを繰り返せない場合、あるいは、抑制の事実が明確でない場合は、定量的測定の実施を推奨する。

  • 温熱実験室において、個人用保護具(PPE)専門家が、PPEの熱性能とその着用による生理的負荷を評価する。

    定量的測定

    長年、熱ストレスの定量的評価法の開発が進められてきた。この手法で用いる評価指標は、熱ストレス指数と総称されている。しかし残念なことに、熱ストレス指数による評価はユーザーには使いにくいと見なされている。事実、技術的に複雑なため、使い勝手が明らかに悪くなった場合が少なくない。

    ところが、他の手法より簡単に理解、利用できるとされている測定法がある。これは湿球黒球温度(Wet Bulb Globe Temperature Index: WBGT)指標による測定法で、書式に記入していくリスクアセスメント手法が機能しない場合に、定量的測定法としてHSLが採用しているものである。

    WBGT指標を活用する測定法では、熱ストレスリスクの4つの環境要素のすべてを考慮する。WBGT指標による測定法の手順は以下のとおりである。

    • WBT(湿球温度)は、球部を濡れたガーゼの端で覆った温度計で測定する。ガーゼの他端は水に浸し、濡れた状態を確実に維持する。ガーゼからの水分の蒸発が皮膚の蒸汗による冷却効果を模し、気温、湿度、大気循環、風速を考慮に入れられるようにする。
    • 黒球温度計は、その名が示すとおりつや消し黒色球を使用している。温度計は黒球の中心に位置している。黒球が放射熱を集め、熱を温度計の球に伝播させる。このように、黒球温度計は放射熱(物体から放射という方法で発される熱)を測定する。
    • 気温は、放射熱の影響を受けないように遮蔽された温度計で測定する。

    WBGT指標を活用する測定法の目的は、作業/休憩許容時間基準を定量することである。WBGT測定では、作業者が活動している一定時間における、測定された熱ストレスへの作業者のばく露許容時間の割合(百分率%)が示される。作業/休憩許容時間基準は、最も近いWBGT指数と職種(軽度、中度、重度)により示される。

    ところで個人的要素(エネルギー代謝率[仕事量]と着衣)はどう扱うのであろうか。これらの要素は別々に考慮する。たとえば、作業者が着用する作業着は、服の種類によりWBGT指標の結果を修正した表を利用して考慮する。

    もちろん、WBGT指標による測定法にも短所はある。ダミアン・ベセア氏は「WBGT測定法は完璧というわけではない。複数の要素を組み合わせてひとつの指標を出しているため潜在的に誤りとなる可能性がある。2つの異なった環境で同じWBGT指標が示されることがある。これは、熱ストレスの影響が同じということを示唆している。しかしこのような場合は実際にはありえない。ある環境は暑く乾燥しているが、他の環境は湿度が高く暖かいというようになる。従い、WBGT指標が同じでも、人体に及ぼす実際の熱ストレスはまったく異なるのである」とコメントしている。

    WBGT指標には、最高温度の上限も決められている(およそ32℃WBGT)。これは、WBGT指標による測定法でさえも評価することができない状況が存在するということを意味する。

    ベセア氏は「WBGT測定法では評価できない場合は、熱負担予測指標などのさらに複雑な熱ストレス指数を適用したり、あるいは生理学的測定をしたりする資格を有する専門家の支援を求めることを推奨している」と述べている。

  • 「涼しく過ごそう」
    職場での熱ストレス対策 USDAW安全衛生を意識して働く

    英国商店流通関連労組(USDAW)は、法的効力のある最大作業温度の採用という法改正に関し、政府へのロビー活動を続けてきた。同労組は、作業場での同組合員作業者は、特に夏季の月間は、気温が急上昇する環境で働いていることが多いと主張している。

    同労組は、職場での熱ストレスへの対処に役立つヒントを載せた、有益なリーフレットも発行している。同リーフレット「涼しく過ごそう−職場での熱ストレス対策(Keep your cool ? tackling heat stress at work)」は、www.usdaw.org.ukからオンラインで入手できる。

    ガイダンス

    ベセア氏は現在、同僚と共に、熱ストレスのリスク評価とリスク抑制のための提案(ダミアン・ベセア、ケン・パーソンズ博士共著2002年調査報告書に記載)に基づく英国安全衛生庁(HSE)のガイダンスを作成中である。

    アセスメント方法はHSEのウェブサイトから入手できるため、ユーザーは自身のコンピュータへのダウンロード、プリントアウト、評価結果の直接入力などができる。

    「ガイダンスの草稿は2006年末までに出す予定である。最終版が出るまでにユーザーに試してもらい、修正を加えていく」とダミアン氏。

    熱ストレスの深刻さはガイダンスの作成に値するほど大きいとダミアン氏は確信している。「熱ストレスは重症を引き起こす可能性がある。その影響はわれわれの想像以上に広がる可能性もある。たとえば、われわれの報告書という方法では、人々に眠気を催させ、作業への集中力を失わせることによる災害で、熱ストレスが根本原因となっているものを簡単には特定できない。また、熱ストレスが直接の原因となり、死亡災害にまでなるケースも(一般的にはまれではあるが)当然ある」

    過去20年間、大半のテーマに関しHSEのガイダンスは学術的ではなく、従いやすく、理解しやすいものとなってきた。最新の「COSHHエッセンシャルズ(COSHH Essentials)」や「アスベストエッセンシャルズ(Asbestos Essentials)」はそのようなものの一例である。わかりやすいガイダンスは、安全衛生への取り組みが必要な場、すなわち作業者の手元に適切な取り組み手法を提供する役割を果たす。これから策定される熱ストレスのリスクアセスメント方法も、温熱環境の安全への取り組みに同様の役割を果たすことになろうが、私の言葉をそのまま鵜呑みにしないでほしい。先に2002年報告書(注1.)の第5章を読まれることをお奨めする。

参照文献

  1. 「英国産業のための、熱ストレスの実践的アセスメント法の策定(The development of a practical heat stress assessment methodology for use in UK industry)」HSE Research Report 008、ダミアン・ベセア、ケン・パーソンズ博士共著、ラフバラー大学人文科学科。HSE 2002 http://www.hse.gov.uk/research
  2. BS EN ISO 9920:2003 - 「温熱環境の人間工学?着衣の断熱性と透湿抵抗の評価(Ergonomics of the thermal environment. Estimation of the thermal insulation and evaporative resistance of a clothing ensemble.)英国標準協会(BSI)。www.bsi.org.uk

熱リスクアセスメントの記録表

この表は、熱ストレスアセスメントを簡単に実施できるようにするために作成されている。所定の作業環境におけるそれぞれの熱ストレス要素に、リスクレベルに応じた点数が付いている。点数は主観的なものではあるが、HSEガイダンスでは一貫性を守るために明確な手引きが示されている。それぞれの要素につき上記の表に印をつける。。赤色が濃いほどリスクが大きいことを示している。水色部分には点数が存在していない。

注:HSEガイダンスの最終版には、上記の表にさらに項目がひとつ(作業者のリスクへの認識度)追加される予定である。

資料出所:HSE Research Report

 

参考文献

  • HSEでは、職場の熱ストレスにかかわる無料の情報シートを作成している。同シートは、高温環境での作業時のオーバーヒートのリスクについて言及し、よく見られる熱ストレスの状況とその症状の例を解説して身体の熱への対処方法を説明している。また同シートではその環境が熱ストレスの問題を最も引き起こしやすい職場例を紹介し、リスクアセスメント実施法とリスク低減の方法についても解説している。同シートは以下のサイトからダウンロード可能。www.hse.gov.uk/pubns/geis1.pdf
  • 職場の温熱快適性の情報については、HSEの「職場の温熱快適性:事業者のためのガイダンス(Thermal comfort in the workplace: Guidance for employers)」(HSG194、ISBN 0 7176 2468 4、価格3.50ポンド)を参照。問い合わせは、HSE Books、電話:01787 881165まで。または、www.hsebooks.com を参照。
  • 米国OSHAでは、熱ストレスへの自衛を勧告する、従業員向け早見カードを発行している。

www.osha.gov/Publications/osha3154.pdf