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OSHAのすべて

資料出所:「All About OSHA」
PDF OSHA 2056-07R 2003
(仮訳 国際安全衛生センター)

目次

今から30年以上も前の1970年、労働安全衛生法は、事業者や労働者たちを支援し、米国の職場で発生する傷害や疾病、死亡者数を削減するべく、労働安全衛生庁を設置しました。以来、職場での死亡者数は62パーセント、労働災害・疾病の発生率も40パーセント減少しました。一方、米国の雇用は二倍に増え、いまや1億1,500万人近くの労働者が700万ヶ所の事業所で働いています。

OSHAは、労働安全衛生の推進に、全国でリーダーシップを発揮しています。そして、成果をもたらす最も効果的な方法、すなわち死亡災害をなくし傷害や疾病を防ぐ方法を特定し、それを普及させていく努力を重ねています。そのようなOSHAが発信するメッセージは、「安全と健康は、あなたの会社、職場、生活の価値を高める」といういたってシンプルなものです。

労働者の安全と健康の保護は、企業がなすべきである正当な行為です。なぜなら、それはコストの削減につながり、企業の価値を高めるからです。労働者たちが健康であれば、企業は労働者の補償保険費用や医療費、職場復帰プログラムの支出を低く抑えることができます。また、欠陥製品が減り、傷害を負った労働者の仕事を調整するコストも下がります。そのうえ、生産性の向上や、交替要員の訓練教育費用、残業費用の減少など、間接的なメリットもあるのです。

すべての職場は、ひとつのコミュニティーであり、安全で健康な職場は、労働者の士気を高め、生産性を向上させ、離職率を下げ、職場の価値を高めます。つまり、優良企業とは、優れた製品を作るというだけでなく、安全と健康を重視した優れた労働環境を持つ企業のことをさすのです。

安全と健康を優先する職場は、労働者全員にメリットがあります。労働者はみな、仕事を通して社会に貢献したい、と考えていますが、それでもやはり、仕事をする一番の目的は、生計のためです。したがって、安全で健康な職場は労働者たちの生活の価値を高めます。なぜなら、そのような職場であれば、労働者たちは収入を維持し、家族を養うことができるからです。一方、怪我や病気は肉体的な苦痛を伴うだけではありません。業務上の傷害や疾病は、労働者の収入を大幅に下げ、ストレスを高め、家族全員の生活に影響を与えます。

安全で健康な職場環境を確立するには、すべての事業者、すべての労働者が安全と健康を最優先事項として位置づけなければなりません。つまり、労働者全員(CEOから採用されたばかりの新人まで)が、安全と健康の価値を認識し、安全と健康こそが企業の使命とアイデンティティーの中核であり、最重要事項であるとの認識を持たなければならないのです。

OSHAは、事業者や労働者に職場での安全や健康の価値を認識させ、安全で健康な職場を実現させるための支援に中心的な役割を果たしており、傷害、疾病、死亡者数ゼロの達成を究極の目標としています。


目的と歴史

OSHAの設置

OSHAとは、米国労働省の一機関である労働安全衛生庁(Occupational Safety and Health Administration)のことです。1970年、ハリソン A. ウイリアム Jr. 上院議員ならびにウイリアム A. シュタイガー下院議員が中心となり、連邦議会は、「・・・アメリカ国内で働くすべての男女に、安全で健康な職場を提供し、人的資源を守ることを保証する」労働安全衛生法 (OSH Act)1を可決。こうして1970年12月29日、リチャード M ニクソン大統領の署名によって成立したこの法律により、労働者の安全と健康を守るOSHAが設置されました。

OSHAに関係のある人とは?

アメリカ人のほとんどは、自身が労働しているか、家族の誰かが働いています。ですから、事業者や労働者だけでなく、家族が働いている人も、OSHAについては知っておかなければなりません。OSHAのことを詳しく知れば知るほど、あなたは自分自身、同僚、そしてあなたの事業所で働く労働者をより高度に保護できるようになり、すべてのアメリカ人のための安全で健康的な労働環境作りに貢献することができるのです。

OSHAはなぜ必要か

1970年まで、職場の安全や健康を守る包括的な規定は存在していませんでした。当時は:

  • 仕事に関連した事故で、14,000人以上の労働者が死亡
  • 250万人近い労働者が職場での事故や傷害で障害を負っていた
  • ストライキによる損失労働日数の10倍が、労働災害で失われていた
  • 推定30万件の新しい職業性疾病が発生

また、生産性や賃金、医療出費、障害補償による損失は、国の経済に莫大な損害を与え、人的損失にいたっては計算できないほどでした。

しかし今日では、OSHAが、アメリカの最も貴重な資源である1億1,500万人近い労働者の権利を守っており、彼らが安全で健康な労働環境で働けるようにしています。

OSHAの成果

1970年にOSHAが設立されて以来、アメリカの労働安全衛生は大きな進歩を遂げてきました。OSHAと、OSHAの公共部門及び民間部門の多くのパートナーたちは、次のような成果をあげています。

  • 業務上災害による死亡率が62パーセント減少
  • 傷害や疾病の発生率が全体で42パーセント減少
  • 繊維産業での綿繊維肺沈着症を事実上ゼロにすることに成功
  • 溝掘や掘削作業での死亡者を35パーセント削減

脚注

1 1970年の労働安全衛生法(Public Law 91 596, Dec. 29,1970)、P.L. 101 552, Nov. 5, 1990、P.L. 105-198, July 16, 1998、P.L. 105-241, Sept. 29, 1998に基づいて改正。

終わることのないOSHAの役割

このような大きな成果を収めたにもかかわらず、現在でも、米国の職場には重大なハザードや不安全な状態が存在し、毎年、次のような状況が発生しています。

  • およそ6万人のアメリカ人が労働災害で死亡
  • 職場でのばく露が原因となった疾病で、推定5万人もの労働者が死亡
  • 労働災害で、600万人近い労働者が傷害を負っている
  • 職業性傷害及び疾病にかかる費用が1,700億ドル以上

OSHAの仕事

OSHAは、労働安全衛生法が認める以下の3つの基本戦略に則り、事業者や労働者を支援し、職場での傷害、疾病、死亡者数の削減を目指しています。

  • 徹底的で公平、かつ効果的な施行
  • アウトリーチ、教育、基準遵守の支援
  • パートナーシップやそのほかの協力プログラム

この3つの戦略を通じ、OSHAは幅広いプログラムや活動を実施し、職場の安全衛生を促進しています。OSHAの活動には次のようなものがあります。

  • 職場のハザードの低下や、新しい安全衛生管理システムの導入、既存のプログラムの改善を事業者や労働者に奨励
  • 労働安全衛生の義務基準を作成し、事業所の監督や事業者への支援、必要に応じた通告や罰則またはその両方を通じて、基準を施行
  • 協同プログラムやパートナーシップ、提携を通じ、安全で健康な労働環境の整備を推進
  • 高度な安全衛生環境を実現させるために、事業者と労働者の義務と権利を規定
  • 職場の危険を防止する革新的な対策樹立を支援
  • 報告・記録管理システムを導入し、職業性の傷害や疾病をモニター
  • 労働安全衛生担当者の能力向上を図る教育訓練プログラムを作成
  • 事故や傷害の削減を図るために、技術的支援や基準遵守のための支援、教育訓練を事業者に提供
  • 独自の労働安全衛生プログラムを実施する州と連携
  • 相談サービスを支援

労働安全衛生法(OSH Act)

OSHAの対象範囲

労働安全衛生法の適用範囲

労働安全衛生法の適用範囲は、50州と連邦政府の統治が行われている領土の民間部門の事業者すべてと、そこで働く労働者に及びます。領土には、コロンビア特別区、プエルトリコ、ヴァージン諸島、米サモア、ジョンソン・アイランド、キャナルゾーン、及び外洋大陸棚土地法が定義する外洋大陸棚土地も含まれます。

OSHAが対象とする範囲には以下が含まれます。

  • 製造業、建設業、港湾荷役業、造船業、船舶解体業、船舶修繕業、農業、法曹業、医療業、慈善救済事業、災害救助業、労働組合、私立の学校など、さまざまな分野の事業者と労働者
  • 宗教に関係のない目的で労働者を雇用する部分に限っては宗教法人も対象

労働安全衛生法は、連邦政府機関のOSHAによって直接、あるいはOSHAの認定した州プログラムを通じて、事業者や労働者に適用されます。(州プログラムについての詳細は11ページをご覧ください

労働安全衛生法の適用を受けない人々

労働安全衛生法は以下の人々には適用されません。

  • 自営業者
  • 家族だけで経営している農場
  • 他の連邦機関の連邦法規が規定する諸団体で働く人々。この中には、炭鉱労働者、特定のトラック運転手及び運輸労働者、原子エネルギー労働者も含まれる
  • 州政府や地方自治体の公務員。州のなかには、このような公務員向けに独自の労働安全衛生プランを持つところもある

労働安全衛生法が規定する責務と権利

事業者の責務

もし、あなたが事業者であれば、以下の責務を守らなければいけません。

  • 危険のない職場を提供するためしかるべき責任を果たす
  • OSHAについての情報、ならびに労働者に関係のある安全衛生情報を、労働者に伝達する
  • 労働安全衛生法が定める基準、規制、規則を責任を持って遵守する
  • OSHAが義務として定める諸基準を熟知しておく
  • 労働者の要請に応じて基準の写しを提供できるようにしておく
  • 職場の状況を評価する
  • 潜在的なハザードを最小限に抑える、あるいは排除する
  • しかるべき個人用保護具を含め、適切に整備された安全な工具や機器を労働者に提供し、使用させる
  • 潜在的なハザードについて、労働者に警告する
  • 作業手順を策定または更新し、労働者への周知をはかる
  • 必要に応じて健康診断を実施する
  • OSHAの基準が義務付ける教育訓練を提供する
  • 死亡事故または、三人以上の労働者が入院する事故が発生した場合は、8時間以内にその旨を報告する
  • OSHAが義務付けている業務上の傷害・疾病の記録を保持する
  • 前年のOSHA 300A番の業務上の傷害と疾病の要約の写しを、2月1日から4月30日まで掲示する
  • 職場の目立つ場所に、OSHAの「それは法律です(It's The Law)」ポスター(OSHA 3165)を掲示し、労働者たちに彼らの義務と権利を知らせる
  • 「業務上の傷害と疾病の記録(Log of Work-Related Occupational Injuries)」(OSHA 300)を、労働者、元労働者、彼らの代理人たちが、適当な時期に妥当な方法で閲覧できるようにする
  • 法律の規定に従い、労働者やそのほかの関係者に、労働者の医療記録やばく露記録を開示する
  • OSHAの基準監督官に協力する
  • 労働安全衛生法が定める権利を適切に行使した労働者を差別しない
  • OSHAの通告や是正確認通知(abatement verification notices)を、それに関連する職場あるいはその付近に掲示する
  • 通告された違反は、所定の期限内に是正する

事業者の権利

事業者には次の権利が認められています。

  • 無料の助言や、現場での相談を求める権利
  • 業界団体を通じて、労働安全衛生問題に関与する権利
  • OSHAの基準監督官に、身分証明書の提示を求める権利
  • 監督官に、監督の理由を尋ねる権利
  • 監督の前後に、監督官と打ち合わせを行う権利
  • 監督を行う監督官に同行する権利
  • 異議申立て通知を提出し、監督結果に異議を唱える権利
  • 監督修了後、和解合意のための非公式な話し合いを求める権利
  • 技術的な専門知識や器具が入手できないという理由で別の手段で労働者を保護している場合に、基準の適用除外を求める権利
  • 安全衛生プログラムの策定に、積極的な役割を果たす権利
  • 業務上の秘密が守られる、との保証を得る権利
  • 職場で使用する物質が、使用の濃度で有害であるかどうかの情報を、国立労働安全衛生研究所(NIOSH)に文書で求める権利
  • OSHAの基準の発行、変更、取り消しについて、情報やコメントをOSHAに提出し、公聴会を求める権利

労働者の責務

労働者は、労働安全衛生法が定める、すべての基準、規制、規則、命令を遵守しなければいけません。

もし、あなたが労働者であれば、以下の責務があります。

  • 職場に掲示されているOSHAの「それは法律です(It's The Law)」ポスター(OSHA 3165)を読む
  • 適用されるOSHAの基準すべてを遵守する
  • 事業者が定めるすべての安全衛生規制と規則に従い、作業をする際には決められた保護具を着用、あるいは使用する
  • 危険な状況を監督者に報告する
  • 業務上の傷害や疾病を事業者に報告し、適切な処置を求める
  • 監督の際には、OSHAの基準監督官に協力する
  • 労働安全衛生法が定める権利を、責任を持って行使する
職場で緊急事態が発生した場合:

職場に、生命を危うくする状況がある場合は、(800) 321-OSHA (6742)に電話で連絡してください。OSHAは直ちにその件を最寄りのOSHA地域事務局に付託します。また、独自の安全衛生プランを実施している州であれば、州の事務局に付託します。

OSHAプログラムの詳細については、最寄りのOSHA地域事務局か、ウェブサイトのwww.osha.govに記されている支局に連絡するか、フリーダイヤル番号にお問い合わせください。


労働者の権利

労働者には、以下の権利が認められています。

  • 職場に用意しておくことが事業者に義務付けられているOSHAの基準、規制、規則、要件の写しを検討する権利
  • 安全や健康上のハザード、予防措置、緊急時の手順に関する情報を事業者に求める権利
  • 適切な教育訓練を受け、適切な情報を得る権利
  • 職場に危険な状態や基準違反があると感じたときに、OSHAに監督を要請する権利
  • 苦情を申立てた際に、自分の名前を事業者に伏せてもらう権利
  • あなたの申立てた苦情に対してOSHAが講じた措置を知らされる権利ならびに、監督の実施や通告を行わないことが決定した場合に、非公式な再検討を要請する権利
  • OSHAの基準監督官が監督を実施する際、委任を受けた労働者側代表を同行させる権利
  • OSHAの基準監督官の質問に答える権利
  • 危険な物質の監視や測定を実施する権利ならびに、関連する監視記録や医療記録を閲覧する権利
  • 業務上の傷害・疾病の記録とその要約(OSHA 300と300A)を、適切な時期に妥当な方法で検討する権利
  • 監督終了後に監督後の話し合いを求める権利
  • 職場で使用する物質が使用する濃度において有毒であるかどうかについての情報を、文書で国立労働安全衛生研究所に要請する権利と、自分の名前を事業者に伏せてもらう権利
  • 事業者に出された通告が指定する是正期間に異議を唱える権利
  • 労働安全衛生再調査委員会が行う意見聴取に参加する権利
  • 事業者が基準の適用除外を求める場合に、事業者からその旨を知らされる権利と、適用除外に関する意見聴取で証言し、最終決定に抗議する権利
  • OSHAの基準の発行、変更、取り消しについて、情報やコメントをOSHAに提出し、公聴会を求める権利
職場が不安全な場合、あるいは健康に良くない場合・・・
苦情を申立てる・・・

職場の労働環境が不安全、あるいは健康に良くない場合、監督者や事業者にその旨を報告することこそが、その状況を是正する最善、最速の手段です。また、労働者は電話や郵便、電子メール、あるいはファクスで最寄りのOSHA事務所に苦情を申立て、監督の実施を求めることもできます。苦情を申立てる場合、労働者は自分の名前を伏せてほしい、とOSHAに要請することができます。苦情を申立てる場合は、(800) 321-OSHA(6742)に電話をするか、最寄りのOSHAの支局、地域事務局、州計画事務所または、www.osha.govにリストされている相談事務所に連絡してください。テレタイプライター(TTY)の番号は、(877)889-5627です。

オンラインによる苦情の申立ても可能ですが、オンラインでの苦情の対応はほとんどが電話やファクスで行われ、事業者との電話による話し合いで非公式に解決されます。したがって、OSHAの地域事務局や州計画事務所にあてた署名入りの書面による苦情の方が、OSHAの監督につながる可能性は高くなります。OSHAが認定する州計画を持つ州の労働者が苦情を申し立てた場合、その苦情は適切な州計画事務所に連絡され、そちらで対応されます。苦情を申立てることを秘密にしたい場合は、あなたの自宅のコンピューターまたは地元の図書館のコンピューターから苦情を申立てるといいでしょう。

OSHAの苦情申立て様式をダウンロードし、そこに必要事項を記入したら、ファクスあるいは郵便で地元のOSHA事務所に送ってください。地元のOSHA事務所に直接連絡して、苦情申立て様式をもらうこともできます。私たちが連絡をとれるように、あなたの名前、住所、電話番号は必ず記入してください。

注意:苦情申立て用の様式を閲覧、プリントアウトする際は、コンピューターにAdobe Acrobat Readerがインストールされていなければなりません。

不安全な作業を拒否するには・・・

一般に法律は、潜在的に不安全な労働環境だという理由で職務の遂行を拒否する権利を労働者に認めていないため、職務の遂行を拒否した、という理由で、事業者が懲戒的な措置をとる可能性もあります。しかし、その仕事で差し迫った危険にさらされる、と信じるに足る正当な理由があるのなら、あなたにはその仕事を拒否する権利があります。しかし、あなたが退職してしまうと、OSHAがあなたを保護できなくなる場合がありますから、問題が解決するまではその職場に残っていてください。

法的保護

その他の労働者保護

多くの法律は、安全衛生問題に関与する労働者に、法的保護を提供しています。たとえば労働安全衛生法は、懲罰を心配することなく安全で健康な労働環境を要求する権利を労働者に保証しています。労働安全衛生法の第11条(c)に基づき、労働者は次のような権利を行使することができます。

  • 職場の安全や健康へのハザードに関する懸念を、事業者や労働組合、OSHA、そのほかの政府機関に表明する権利。
  • 安全や健康についての苦情を申立てる権利。
  • 職場の安全衛生委員会や、職場の安全衛生にかかわる労働組合活動に参加する権利。
  • OSHAの監督や会議、意見聴取または、OSHAが関係するその他の活動に参加する権利。
  • 死亡や重大な傷害につながる可能性のある危険な状態が存在しているにもかかわらず、OSHAに連絡をとるだけの時間がなく、労働者が事業者に訴えてもその危険な状況を適切に是正してもらえなかった場合に、仕事を拒否する権利。

事業者による報復からの保護

事業者は、労働安全衛生法が規定するこれらの権利及びそのほかの権利を行使した労働者に対し、報復措置をとることはできません。つまり事業者は、安全衛生状況について苦情を申立てた、あるいは安全関連の活動に参加した労働者に以下の措置をとることはできないのです。

  • 解雇
  • 降格
  • 先任権(勤続期間の長い者の優先権)やそのほかの恩典の取り消し
  • 嫌な仕事やシフトへの配置替え
  • 労働者への脅迫やいやがらせ

内部告発者の保護

1970年に労働安全衛生法が成立して以来、議会はOSHAの内部告発者保護権限を拡大し続け、現在では14の連邦法が労働者を差別から守っています。

次に挙げるのはその14の法令と、労働者が苦情を申立てることができる期間です。

1970年労働安全衛生法 (30日)
安全衛生についての苦情をOSHAに申立てる、あるいは監督に参加するなど、本法が保障する権利を行使した労働者を差別から保護。
陸上輸送援助法(180日)
商用車の安全性にかかわるトラック運転手やその他の労働者たちを差別から保護。対象となるのは、車両の総重量が10,0001ポンドを超える貸出用バスと貨物トラックのすべて。
アスベストハザード緊急対策法(90日)
小学校及び中学校での、アスベストに関連した環境法違反を通報した人を差別から保護。
国際安全コンテナ法 (60日)
運送用コンテナを規制する法令の違反を通報した労働者を差別から保護。
エネルギー再編成法(180日)
原子力規制委員会から認可を受けた原子力発電所の管理会社や請負業者の従業員、及びエネルギー省との契約に基づいて働く請負業者の従業員を差別から保護。
クリーンエア法(30日)
大気の質や汚染に関する基準を策定、施行する法で、本法の違反を通報した労働者を差別から保護。
飲料水安全法(30日)
公共の建物や新しい建物すべての飲料水システムを無鉛にするよう義務付ける法で、本法の違反を通報する労働者を差別から保護。
連邦水質汚染防止法 (30日)
生物に自然の生息環境を提供する水が汚染されていることを通報した労働者を差別から保護。別名、クリーンウォーター法。
有毒物質管理法 (30日)
製造や流通に関する規制違反や、特定の有害物質に関する規制違反を通報した労働者を差別から保護。
固体廃棄物処理法(30日)
廃棄物からエネルギーやそのほかの資源を再生する施設の開発を支援し、有害廃棄物の管理を規制する法律で、本法が認める特定の権利を行使する労働者を差別から保護。
包括的環境対処・補償・責任法 (30日)
環境に放出された有害物質に対する責任、補償、浄化、緊急対応及び、不活性有害廃棄物処理場の浄化を規定する法律で、本法が認める権利を行使する労働者を差別から保護。
Wendell H. Ford 21世紀に向けた航空投資・改革法(90日)
安全についての懸念を申立てる航空運送業者の社員や、請負業者または、航空運送業を下請けする業者の労働者を差別から保護。
2002年企業および不正犯罪行為説明責任法(90日)
株式会社または証券会社の社員、もしくは請負業者で、郵便、電報、銀行あるいは証券の詐欺や、株主詐欺に関連した法律違反を通報する人を差別から保護。別名、米国企業改革法。
2002年パイプライン安全改良法(180日)
パイプラインの安全と保安に関する連邦法の違反を通報した労働者や、そのような法律違反を行うことを拒否した労働者を差別から保護。

公共部門で働く労働者

連邦政府機関は、労働安全衛生法を遵守するにあたり、以下のことを行わなければなりません。
  • 包括的な安全衛生プログラムの実施
  • 傷害及び疾病のデータの記録と分析
  • 職員全員を対象にした適切な安全衛生研修を実施
  • 監督を実施し、OSHAの基準が遵守されているかを確認

連邦政府職員に適用される規定

労働安全衛生法の第19条は、政府機関の長には、政府の各機関で働く人々に安全かつ健康的な労働環境を提供する義務がある、と定めています。ハザードがあることを労働者が通報してきた場合、OSHAはその通報に応えて事業場の監督を実施します。

労働安全衛生法は、民間部門の労働者のために設けられた基準と整合性のある基準を政府機関も遵守するよう求めています。1998年の本法の修正条項により、米国郵政公社にも他の民間部門の労働者同様、本法が適用されるようになりました。

連邦政府部門に対するOSHAの権限

連邦政府部門に対するOSHAの権限は次の通りです。

  • たとえOSHAの基準を遵守していなくても、連邦政府機関には罰金を科すことができない。
  • 連邦政府職員の「内部告発者」を保護する権限を持たない。しかし、1989年の告発者保護法は、現職の連邦政府職員及び元職員(公共団体や特定の情報機関は除く)が報復措置を受けたことをメリット制保護委員会の特別顧問事務所に通報することを認めている。(内部告発者の保護に関する詳細は、8ページを参照のこと

州・地方政府の職員に適用される規定

OSHAの規定が適用されるのは民間部門だけですが、州のなかには、OSHAの認定を受けた独自の労働安全衛生プログラムを運営している州もあります。州政府及び地方政府の職員に適用されるこれらの州プログラムは、連邦政府機関であるOSHAの規定と同等以上の効果を持つものでなければいけません。(州プログラムに関する詳しい情報は、11ページをご覧ください。

諮問団体

OSHAには、安全衛生問題に関してOSHAに助言を行う常設委員会や特別委員会があります。このような委員会は、経営者の代表、労働者の代表、州機関の代表、そして保険社会福祉省(HHS)の長官が指名するひとり以上の人物で構成されています。委員会には、労働安全衛生の専門家の代表や一般市民の代表者を参加させることもできます。

常設、すなわち法定の諮問委員会は次の二つです。

  • 労働安全衛生に関する国家諮問委員会(NACOSH)―労働安全衛生法の執行について、労働長官やHHSに助言をし、相談にのり、勧告を出す。
  • 建設安全衛生に関する諮問委員会(ACCSH)―建設安全衛生基準及びその他の規制について、労働長官に助言を行う。

そのほかにも、次のような継続している諮問委員会があります。

  • 労働安全衛生諮問委員会(FACOSH)―連邦政府機関の安全衛生に関するさまざまな問題について、労働長官に助言を行う。
  • 労働安全衛生のための海事諮問委員会(MACOSH: Maritime Advisory Committee for Occupational Safety and Health)―海運業の職場の安全衛生プログラムや政策、基準について、労働長官に助言を行う。
  • 人間工学についての全国諮問委員会(National Advisory Committee on Ergonomics)―職場での人間工学に関連した傷害・疾病を減らすイニシアチブについてOSHAに助言を行う。

OSHAはまた、特定の問題についての助言を仰ぐために、短期的な諮問機関を組織することもできます。


州プログラム

州の安全衛生プログラム

州計画とは、OSHAから認可を受けた労働安全衛生プログラムのことで、その運営には連邦政府機関のOSHAのかわりに、それぞれの州があたります。労働安全衛生法は、各州が独自に労働安全衛生計画を策定、運営するよう奨励しており、OSHAが認可した計画を持たない州は、州による基準を施行することができません。すべての州計画は、OSHAによって認可され、監視されます。

労働安全衛生法第18条(b)に基づいて州計画が認可されたら、そのプログラムの運営費用の50パーセントはOSHAが負担します。州計画には、連邦政府のプログラムと同等以上の効果を持つ基準、実施プログラム、自主的遵守活動が設けられていなければなりません。

民間部門に適用される州計画は、州政府及び地方自治体の職員にも適用されなければなりません。しかし、OSHAは州に対し、公共部門(州政府及び地方政府)の職員のみを対象とした計画策定も認めています。そのような場合、その州の民間部門は、OSHAの管轄となります。全体の計画を運営している州は23州、公共部門だけに適用される計画を運営している州は3州あります。これらの州は、OSHAのウェブページ、www.osha.govに掲載されています。

OSHAによる州計画の認可

州計画認可プロセスの第一段階は、OSHAから「開発計画」としての認可を受けることですが、州がその認可を受けるには、適切な立法機関があること、3年以内に基準制定手続き、施行手続き及び不服申し立て手続きを定められること、十分な数の監督官を揃え、訓練、教育、技術援助プログラムを用意できることを証明しなければなりません。

OSHAが認可した州計画を持つ州の場合、OSHAが監督を行うのは州計画が適用されない分野のみで、州と同時に監督を行うことは一時的に見合わせます。

州が、連邦政府のOSHAと同等以上に機能できるようになり、そのほかの要件も満たしたら、OSHAはその州計画の最終認可を行い、州が管轄する分野での連邦政府権限の行使を停止します。

州計画の適用範囲

認可された州計画は、州内の民間部門のほとんどの労働者、州政府職員及び地方政府職員に適用されます。一方、連邦政府職員及び州計画から特別に除外されているその他の労働者(海運産業や軍事基地で働く労働者など)の監督は、OSHAが引き続き行います。

州による監督

認可された州計画を持つ州は、事故の発生や苦情の申立てに対応し、OSHAと同様に任意の抜き打ち監督を実施します。州は通告を発行し、州法に基づいて罰則を提示し、州の審査委員会または、そのほかの手順を通じて問題に判定を下します。

連邦政府による州計画の監視

連邦政府機関であるOSHAは、州計画を厳しく監視しています。州計画の運営に、不適当な点や問題点を見つけた人は、しかるべきOSHA支局の担当者に州プログラムの運営に関する苦情(CASPA:Complaint About State Program Administration)を申立てることができます。OSHAはそのような苦情すべてについて調査を行い、その苦情が事実であると判明した場合には、適切な是正措置を求めます。

事業者の権利と責務

州計画は、OSHAが規定する権利と同様の権利を、事業者及び労働者に保証しなければなりません。一般に、独自の労働安全衛生プログラムを有する州が定める事業者と労働者の責務は、OSHAが管轄する州のそれと同じです。

州の安全衛生基準

OSHAが認可した州計画に基づく安全衛生基準は、OSHAの基準と同等、あるいはそれ以上の効果を持つものでなければならず、連邦政府の基準と足並みがそろっていなければなりません。州計画は、連邦政府の基準が発効してから6ヶ月以内に、その基準に匹敵する基準を導入しなければなりません。OSHAが認可した州計画の基準のほとんどは、連邦政府の基準と酷似していますが、そのような州は、連邦政府の基準とは異なる独自の基準を持つこともできます。

あなたの州が、OSHAに認可された州計画を運営しているかどうかは、www.osha.govで調べることができます。

基準とガイダンス

要件

基準は一般に、以下を事業者に求めています。

  • 仕事中の労働者を守るのに必要かつ適切な状態を維持するか、あるいはそのために必要な手順を採用する
  • 自身の事業所に適用される基準を熟知し、遵守する
  • 安全衛生のために義務付けられている個人用保護具を労働者に与え、使用させる

留意すべきハザード

OSHAは、幅広い職場のハザードについて基準を設けています。

  • 有毒物質
  • 有害な物理的因子
  • 電気的なハザード
  • 転落のハザード
  • 溝掘のハザード
  • 有害廃棄物
  • 伝染病
  • 火災及び爆発のハザード
  • 危険な環境
  • 機械によるハザード

また、特定のOSHA基準がない場合でも、事業者は、「労働者の死亡や重大な身体的傷害を引き起こすハザードのない職場を提供する・・・」ことを義務付ける労働安全衛生法の「一般責務条項」第5条(a)(1)を遵守しなければなりません。

基準の制定プロセス

基準制定を決定する

OSHAは自らの発議または、次のような関係者からの要請に応じて、基準の制定に着手します。

  • 健康社会福祉省(HHS)
  • 国立労働安全衛生研究所(NIOSH)
  • 州政府及び地方自治体
  • 国が認める基準策定団体、事業者または労働者の代表者
  • そのほかの関係者

労働省は毎年、春と秋に、策定中の規制すべてのリストを『官報(Federal Register)』で公表しています。また、『レギュラトリー・アジェンダ(Regulatory Agenda)』には、基準や規制の制定スケジュールが掲載されていますから、これを見れば、事業者や労働者、その他の関係者たちも基準の制定時期を知ることができます。

OSHAが基準を制定する手順

OSHAは、基準の提案、修正、廃止の意向を、『官報』に以下のかたちで発表しています。

  • 基準案の起草に使う情報を集めるための情報要請(Request for Information)、規則制定案の事前通知(Advance Notice of Proposed Rulemaking)、提示の起草に利用する情報収集ミーティングのおしらせ。
  • 提案された新規則の要件を発表し、一般の人々からの意見を聞く期間を設けた規則制定案通知(Notice of Proposed Rulemaking)。

関係者は、文書情報や証拠を提出することができます。OSHAは、さまざまな主張を考慮するために、公聴会を計画することもできます。

一般市民の意見や証拠、証言を検討した後、OSHAは以下のいずれかを発表します。

  • 修正された、あるいは導入された基準の全文と発効日、その基準の説明ならびに導入の理由。
  • 基準の制定も修正も必要ない、という決定。

その他の政府機関からの情報提供

NIOSHをはじめとするその他の政府機関が、基準を制定するようOSHAに勧告することもできます。労働安全衛生法は、労働安全衛生の研究機関として、健康社会福祉省の下に国立労働安全衛生研究所(NIOSH)を設置しました。NIOSHは、さまざまな安全衛生問題を研究し、OSHAに技術的支援を提供し、採用すべき基準についてOSHAに勧告をしています。(詳しくは、(800) 35-NIOSHに電話をするか、NIOSHのウェブサイトwww.cdc.gov/nioshをご覧ください)

緊急暫定基準

特定の状況があれば、OSHAは緊急暫定基準を制定できます。この緊急暫定基準は、直ちに効力を発し、恒久的基準が導入されるまで有効とされるものです。そのような基準を制定するには、OSHAが次のような状況があることを認めなければなりません。

  • 毒性がある、物質的に有害又は新たな危険がある物質や要因へのばく露によって、労働者が重大な危険にさらされている
  • 労働者を保護するために、緊急基準が必要である。

上記のような状況が存在すると判断したら、OSHAは『官報』に緊急暫定基準を発表します。この緊急暫定基準は、恒久的基準制定の基準案となります。最終決定が6ヶ月以内に下されることを除けば、恒久的基準の制定手続きは通常の手続きと同じです。

OSHAの基準に対する議会の権限

OSHAは、最終規定のすべてを議会と会計検査院に提出します。議会は、中小企業規制実行公正法(Small Business Regulatory Enforcement and Fairness Act)、すなわちSBREFAが定めた迅速承認制度に基づいて共同決議を可決し、基準を廃止する権限を有しています。しかし、議会がそれを実際に行ったことは過去に一度しかありません。基準廃止の共同決議には、大統領の署名が必要となります。

事業者の対応手段

新しい要件を遵守できない事業者や新しい基準に反対する人は、以下を行うことができます。

  • 裁判に訴え、法的見直しを求める。
  • 基準や規制の恒久的、暫定的、または実験的な適用除外を求める。
  • OSHAが適用除外要請を検討しているあいだ、既存の状況での業務継続を許可する仮命令の申請。

基準や要件の一部変更、または撤回の申し立て

事業者や労働者はOSHAに対し、基準の策定を要請することも、基準の一部変更や廃止を要請することもできます。OSHAは工業技術の発達や変化に合わせて基準の見直しを継続的に行っています。

法的見直しを求める陳情書の提出

最終決定された基準や緊急基準によって不利益をこうむる人は、裁判での審理を申立てることができます。基準に異議を唱える人は、その規則が発表されてから60日以内に、申立て者が住む、あるいは申立て者の主要な事業所がある地域の米国連邦巡回控訴裁判所に基準の法的見直しを訴えることができます。

たとえ訴えを起こしても、控訴裁判所が命令を下さないかぎり、基準の施行が延期されることはありません。OSHAは、一般の人々から提出された文書や公聴会で得た議論やデータを慎重に検討したのち、恒久的基準を公布します。

ガイドラインと基準の違い

ガイドラインは、事業者が危険を認識し、管理するための支援ツールです。また、ガイドラインは自主的なもので、労働安全衛生法による法的拘束力はありません。たとえガイドラインを遵守しなくても、労働安全衛生法の一般義務条項違反にはなりません。

ガイドラインは基準よりも融通がきくうえ、科学の進歩に伴う新情報が入れば、それに応じて、迅速に作成、変更することが可能です。したがってガイドラインの方が、事業者が革新的なプログラムを自分の職場に合わせて採用しやすいため、産業特有、あるいは施設特有の問題に取り組むうえでは、融通の利かない基準よりも便利です。

適用除外

適用除外とは、事業者が基準の要件や期限から外れることを、正式に許可するものです。

事業者による適用除外要請

事業者は、次のような場合に適用除外を要請できます。

  • 材料や機器、専門家、技術者が不足しているために、新たに公布された基準や規制をその発効日までに遵守できない場合。
  • その基準や規制が規定する労働者保護と同等の効果がある選択肢を提供できる、と事業者が証明できる場合。

適用除外のタイプ

材料や機器、専門家、技術者が不足している、あるいは設備の建設や、変更が間に合わない、といった理由で基準や規制を、その発効日までに遵守できない場合、事業者は一時的適用除外を申請します。事業者が、一時的適用除外を受けて事業を続ける場合は、OSHAが指定する特定の条件を満たさなければなりません。

事業所の作業状態や手順、手段、方法、操作、あるいは工程が、基準や規制を遵守した場合と同程度に安全で健康的であることを証明できる場合には、事業者は恒久的適用除外を申請することができます。しかし、恒久的適用除外の認可が下りるまでは、事業者はOSHAの基準を遵守しなければなりません。

事業者が、新しい労働安全衛生技術を証明あるいは確認する取り組みに参加していて、その実験を労働長官あるいはHHSの長官が認めている場合は、実験的適用除外を申請することができます。

適用除外の申請が通告に及ぼす影響

適用除外には、遡及効果がありません。したがって、たとえ基準違反の通告を受けた事業者が適用除外を申請しても、以前の通告からの救済を求めることはできません。

通告が未決着の場合でも、事業者は適用除外を申請することができます。しかし、通告に対して事業者が異議を唱えた場合、OSHAの行政官は、異議が申し立てられている規定の適用除外申請を却下することができます。

適用除外の詳細

適用除外申請についての詳しい情報は、OSHAのウェブサイトwww.osha.govにリストされているOSHAの事務局に連絡をするか、(800) 321-OSHA(6742)に電話でお問い合わせください。

報告

OSHAが定める報告義務

以下について知った事業者は、8時間以内にOSHAに報告しなければなりません。

  • 業務関連災害による労働者の死亡。
  • 業務関連災害による3人以上の労働者の入院。

また、心臓発作による死亡もすべて報告しなければなりません。公道での交通事故(建設作業区域での事故は除く)や、民間の航空機、列車、地下鉄、バスでの事故は、報告の必要がありません。

このような報告は、電話で報告することもできますし、最寄りのOSHA事務所を訪ねて直接報告することもできます。最寄りのOSHA事務所は、ウェブサイトwww.osha.govで調べるか、OSHAのフリーダイヤル(800)321-OSHA (6742)にお問い合わせください。

事業者には、OSHAの他の基準による要件が課されることもあります。

記録保存

利点

労働安全衛生法が定めるOSHAの記録保存要件は、労働安全問題を評価し、解決するために重要な要件です。これにより、労働安全衛生問題を監視する効果的で集中化された全国的システムが確立されました。記録を保存しておけば、OSHAは調査資料を収集することも、危険度の高い産業を特定することもできるうえ、事業者の職場安全記録を労働者に知らせることもできます。このような記録は、事業者が職場での傷害や疾病の原因を特定するのにも役立ちます。

事業者に対する要件

OSHAの報告規定及び記録保存規定は、事業者に以下の実施を求めています。

  • 業務関連の傷害や疾病が発生したとき、各事業所にその記録を保存し、労働者が閲覧できるようにする。
  • 傷害及び疾病を記録し、それぞれの事業所で1年間に発生した業務関連の傷害と疾病をまとめた要約を2月1日から4月30日まで掲示する。会社の経営幹部は、その要約が正確であることを保証しなければならない。
  • 死亡者数は、傷害を受けた時から死亡までの期間の長さに関係なく、記録しなければならない。
  • 監督官からの要請があれば、適切な傷害・疾病記録を提供しなければならない。また、労働長官やHHSの長官、あるいは州政府が、調査や研究や統計データ収集のために記録の提出を求めたときも、記録のコピーを提出しなければならない。
  • OSHAの基準が定めるその他の記録要件や報告要件も遵守しなければならない。

記録保存が免除される事業者

労働統計局(BLS)やOSHAからデータ収集対象事業者に選ばれた、との通知がない限り、従業員数が10人以下の事業者は、OSHAが義務付ける傷害及び疾病の記録保存が免除されます。又、OSHAは不動産業や衣服店のような危険の少ない産業に関しても免除しています。しかし、免除された事業者も、OSHAの"It's The Law(それは法律です)"ポスター(OSHA 3165)に記されている要件は遵守しなければならず、労働者1人以上が死亡、あるいは3人以上が入院する事故が起こった場合は、8時間以内にそれを報告をしなければなりません。

記録保存が免除されている事業者のなかには、OSHAやBLSからデータ収集対象事業者として選ばれ、記録保存が義務付けられる人もいます。このような事業者たちには、OSHAが事前にその旨を連絡し、必要な様式を提供し、指示を出します。

記録する事例

記録の必要な業務関連傷害及び疾病については、18ページの図を参照してください。

報告と記録保持に関する要件

OSHAの記録保存規定は、職場で発生した傷害や疾病、死亡の記録を事業者に求めています。事業者には以下の義務があります。

  • 傷害と疾病の記録を保存する
  • すべての死亡者を報告する
  • 3人以上の労働者が入院した災害をすべて報告する
  • 労働者が記録を閲覧できるようにする
  • OSHAが記録を見られるようにする
  • 傷害と疾病の年間要約を掲示する

記録要件の例外

以前からあった傷害や疾病は、大幅に悪化しない限り、業務関連とはみなされません。また、飲食や献血、運動プログラムで生じた傷害や疾病は、記録する必要がありません。一般的な風邪やインフルエンザも、記録の必要はありません。精神疾患を業務関連とみなすには特定の基準があります。また、労働者が移動中に起きた、あるいは在宅勤務中に起きた傷害や疾病を記録するか否かについても特定の基準があります。詳しくは、www.osha.govをご覧ください。

記録保存の様式

事業者は、傷害や疾病の記録を記録保存様式に記入して常に更新し、それぞれの事業所はその記録を5年間保存しておかなければいけません。OSHA、HHS、BLSの代表者や、指定された州機関の監督では、要請があれば4時間以内にその記録を提示しなければなりません。事業者は常に、必要な情報を記録し、記録を最新のものにしておかなければなりません。

記録保存様式を、OSHAやその他の機関に送らないでください。事業者は記録保存様式に記録をつけ、その年間の要約を職場に掲示します。事業所の監督の際、OSHAがその記録保存様式の提示を事業者に求めることもあります。

傷害や疾病が職業性のものか否かを判断する

職場で起こった出来事や、労働に関連した環境要因へのばく露が原因、あるいは一因となった傷害や疾病、あるいはそのような原因で大幅に悪化した既存の傷害や疾病は、業務関連の傷害または疾病とみなさなければなりません。職場での出来事や環境要因へのばく露による傷害や疾病のほとんどは、業務関連であると考えられています。

複数の事業所を持つ事業者の場合

事業者は、傷害と疾病を事業所ごとに記録しておかなければなりません。OSHAが定義する事業所とは、"事業がなされ、サービスが提供されるひとつの物理的な場所"です。

労働者がいくつかの分散した場所で働いている場合、事業者は、労働者が作業報告を行う場所ごとに記録を保存しなければなりません。なかには、毎日、労働者が異なる場所で作業報告をする場合もありますが、そのようなときは、彼らが給料を受け取る場所か、働く拠点となる場所に記録を保存してください。

 

OSHAの記録保存要件から部分免除される産業
SICコード 産業
525 金物販売
542 肉屋や魚屋
544 キャンディー、ナッツ、菓子店
545 乳製品店
546 パン屋
549 その他の食品店
551 新車及び中古車のディーラー
552 中古車ディーラー
554 ガソリンスタンド
557 オートバイのディーラー
56 アパレル及びアクセサリー店
573 ラジオ、テレビ、コンピューター店
58 飲食場所
591 ドラッグストアと個人経営店
592 酒屋
594 さまざまな買回り品店
599 他に分類されない小売店
60 預金受け入れ金融機関(銀行や預金機関)
61 預金を受け入れない金融機関(信販機関)
62 証券及び商品相場の仲介業者
63 保険業者
64 保険代理店、保険仲介業者、保険業務
653 不動産業者及び不動産管理者
654 権原要約事務所
67 ホールディングオフィスおよびそのほかの投資事務所
722 フォトスタジオ、ポートレート
723 美容院
724 理髪店
725 靴修理及び靴磨き所
726 葬儀場及び火葬場
729 その他の個人対応サービス
731 広告サービス
732 信用調査及び債権回収サービス
733 郵送、複製、速記サービス
737 コンピューター及びデータ処理サービス
738 その他の対事業所サービス
764 椅子の張替え及び家具の修理
78 映画
791 ダンスのスタジオ、スクール、ホール
792 プロデューサー、オーケストラ、エンターテイナー
793 ボーリング場
801 診療所やクリニック
802 歯科診療所やクリニック
803 整骨療法専門医の診療所
804 その他の保健専門家事務所
807 医学及び歯学研究所
809 ここのカテゴリーに入っていないその他の保健及び関連サービス
80 司法サービス
82 教育サービス(学校、専門学校、大学及び図書館)
832 個人及び家庭向けサービス
835 託児サービス
839 社会サービス、他に区分されないもの
841 博物館及び美術館
86 会員組織
87 エンジニアリング、会計、調査研究、経営管理及び関連サービス
899 ここのカテゴリーに入っていないその他のサービス

*労働統計局は現在、標準産業分類(SIC)コードの業界別データを、
北米標準産業分類(NAICS)へと切り替えています。

OSHAも将来的には、分類をSICコードからNAICSコードへと変更する予定です。

 

事業者に掲示が義務付けられている情報

事業者は以下の情報を、それぞれの事業所が労働者に通知を掲示する場所に掲示しなければなりません。

  • 前年のOSHA 300A番、業務関連傷害と疾病の要約に記されている合計数の写し(2月から4月までの間)
  • OSHAの"It's The Law(それが法律です)"ポスター(OSHA 3156)あるいは、これと同等のもので、労働安全衛生法が規定する労働者の権利と責任について述べているもの
  • 記録保存手続き基準の適用除外申請書を要約したもの
  • 基準違反に対してOSHAが発行した通告すべての写し。これらはその違反があった場所の近くに3日間、あるいは違反が是正されるまでのどちらか長い方の期間、掲示しておかなければならない。

記録保存には3種類の様式が必要です。

・ OSHA 300番、業務関連傷害と業務関連疾病の記録

事業者は、記録の必要がある業務関連傷害や業務関連疾病を知ってから6日(労働日)以内に、この様式に記録しなければなりません。記録が、自動データ処理機で中央処理されている場合は、常に、45日分の最新コピーを現場に保存しておかなければいけません。OSHA 300番と同じように詳細で読みやすく、理解しやすいものであれば、OSHA 300番とは異なる様式に記録してもかまいません。

・ OSHA 301番、傷害と疾病報告

事業者は、業務関連傷害や疾病を事業者が知ってから7暦日以内に、その詳細をOSHA 301番様式に記載しなければなりません。この様式には、その傷害や疾病が発生した経緯が詳しく記されます。

労働者及び元労働者には、OSHA 301番様式を閲覧する権利が保証されています。労働者の代表には、自分が代表する労働者の働く事業所に保存されているOSHA 301番様式の"その事例についての情報"欄を閲覧する権利があります。

・ OSHA 300A番、業務関連傷害と疾病の要約

この様式は、災害発生率の掲示や集計を容易にするためのものです。事業者は、前年の記録を2月1日までにコピーし、それを所定の位置に4月30日まで提示しておかなければなりません。

傷害あるいは疾病ゼロの記録

一年を通じて傷害や疾病の発生件数がゼロであれば、事業者は用紙の合計の欄に"ゼロ"と記載しなければいけません。この様式は、その会社の役員が署名し、認証しなければなりません。

労働者のプライバシー

性的暴力やHIV感染、精神疾患といったデリケートな内容の傷害については、その個人の名を伏せなければなりません。

OSHAの年次調査

OSHAは毎年、傷害と疾病の情報を、OSHAデータ・イニシアチブを通じて事業者から集め、リソーシスの有効利用や、労働者保護の改善に役立てています。建設業界や製造業界で40人以上の労働者を擁する事業者は誰でも、このイニシアチブへ参加する可能性があります。また、これにはその他の67の産業の事業者も選ばれますが、選ばれるのは一般に、"高危険率"とみなされている産業や、傷害及び疾病の発生率が高い産業の事業者です。年次調査の対象となる事業所を選ぶ際は、これまでに報告された傷害や疾病の発生率、OSHAの介入などに基づいて選びますが、以前この調査に参加した事業所も定期的に再調査が行われます。

OSHAは調査参加者に選ばれた事業者に対し、業務関連傷害及び疾病の記録保持規定が規定するとおり、収集した情報を要約様式300A番に記録し、送付するよう要請します。


プログラムとサービス

OSHAが使命を遂行する方法

OSHAは職場の安全衛生を推進し、労働者を保護するために、幅広いプログラムや活動を実施しています。そのようなプログラムや活動は以下の3つの戦略に基づいています。

  • 強力で公平かつ効果的な施行
  • アウトリーチ、教育、基準遵守の支援
  • パートナーシップやその他の協力プログラム

強力で公平かつ効果的な施行

監督官の権限

労働安全衛生法により、OSHAの監督官は、以下のことを、妥当な時間に、妥当な方法で、そして妥当な期限内に行う権限が与えられています。

  • 工場や事業所、工事現場など、労働が行われるすべての場所への立ち入り
  • そのような場所や、労働に関連するすべての状況、建造物、機械、器具、装置、工具、素材を、正規の勤務時間に監督、調査
  • そのような場所や、関連するすべての状況、建造物、機械、器具、装置、工具、素材を、正規の勤務時間以外の時間に監督、調査
  • 監督時または調査時に、事業者やオーナー、オペレーター、代理人あるいは労働者に対する個人的な事情聴取

監督官の資格

OSHAの監督官は、労働衛生、安全工学、毒物学、職業病医学など職場の安全衛生分野に関する豊富な専門知識と経験を有しています。彼らはまた、OSHAの基準についても、安全及び健康にかかわる危険を見極める方法についても、多くの教育訓練を受けています。スタッフの多くは、インダストリアルハイジニスト(CIH:certified industrial hygienist)や安全専門家(CSP: :certified safety professional)の資格など、専門の資格を有しています。

監督の事前通知

一般に、OSHAの監督は抜き打ちで行われます。OSHAの監督が入ることを事前に事業者に知らせたものには、最高1,000ドルまでの罰金あるいは6ヶ月の拘留、またはその両方が科されます。

特殊な事情がある場合は、あらかじめOSHAが事業者に監督の実施を通知することもあります。しかし、そのような通知がされるのも、監督実施前の24時間以内に限られています。ここでいう特殊な事情には、次のような事情があります。

  • 緊急に是正が必要な差し迫った危険がある場合。
  • 通常の営業時間後に実施しなければならない監督、あるいは特別の準備が必要な監督。
  • 事業者や労働者の代表、あるいはその他の人々に立ち会ってもらうために事前通知が必要な場合。
  • 事前に通知をしたほうが、より徹底的または、より効果的な監督ができる、とOSHAが判断した場合。

監督実施の事前通知を受け取った事業者は、労働者の代表にそれを伝えるか、OSHAが労働者の代表にそれを通知できるよう手配しなければなりません。

捜索令状

事業者は監督官に対し、事業場に立ち入る前に捜索令状を取得するよう求めることができます。裁判所が、管理上の相当な理由や違反の証拠に基づいて認可した捜索令状を取得すれば、OSHAは監督を実施することができます。

事業者が監督官の立ち入りを拒否したり、監督の妨害をしたりする場合、OSHAは法的措置を含む適切な措置をとることができます。

監督の優先順位

労働安全衛生法が適用される700万ヶ所の職場すべてを、毎年OSHAが監督することは不可能であり、まずは最も危険性の高い職場から監督を実施していかなければなりません。したがってOSHAは、職場の安全衛生に最も大きな効果をもたらす監督を実施すべく優先順位を設けています。OSHAは、次のような場合に監督を実施します。

差し迫った危険、または通常の監督手順で危険が解消される前に、死または身体に重大な害を及ぼすと思われる危険が存在する場合。OSHAは、差し迫った危険への監督を最優先としています。

重大災害及び死亡事故によって、労働者の死亡や、3人以上の入院を引き起こした場合。

労働者の苦情申立てがあり、差し迫った危険、または死や身体への重大な害をもたらしかねない事業者の違反がある場合。(苦情申立ての詳しい手順については、6ページと7ページの労働者の権利の項を参照してください)

照会が、個人や関係機関や関係団体、メディアからあった場合

計画的に実施される監督。事故や傷害の多い産業の監督。

以前に監督を行った事業所のフォローアップ監督。

労働安全衛生法はOSHAに対し、事業所の監督を実施し、基準を施行する権限を与えています。したがって、労働安全衛生法が適用される職場はすべて、OSHA監督官による監督の対象となっています。


監督のプロセス−事業所外での監督

<電話/ファクス>による調査

苦情申立てへのOSHAの対応方法には、当該事業所での監督と、<電話/ファクス調査>とも呼ばれる事業所外調査の2つがあります。

労働者には事業所内の監督を求める権利がありますが、場合によっては、電話/ファクス(または手紙)による調査の方が効果的なこともあります。優先順位の低い危険であれば、電話/ファクスの調査の方がOSHAも迅速に対応できますし、OSHAの資源も、より重大な危険に振り向けることができます。電話/ファクスでの調査を要請した労働者が、その調査に満足できなかった場合は、違反や危険の有無を調べる事業所内での調査を要請することができます。労働者は、最寄りのOSHA地域事務局に電話で相談してください。

事業所外の調査が妥当な場合、OSHAは事業者に電話をかけ、申立てのあった危険について説明した後、ファクスか手紙で追跡調査を行います。事業者は、判明したすべての問題と、実施した是正措置あるいは予定している是正措置を、5日以内に書面で回答しなければなりません。一般に、その回答が妥当なものであれば、OSHAは監督を行いません。苦情を申立てた労働者や労働者の代表者には、事業者の回答の写しが渡されます。労働者たちがその回答に満足できないときは、事業所内での監督を要請することができます。

労働者や労働者の代表が苦情を申し立て、その苦情が特定の条件を満たしていれば、OSHAは事業所での監督を実施することができます。その条件とは、すでに身体に障害をきたすような傷害や疾病を引き起こしている重大な危険がある場合や、差し迫った危険が存在するという申し立てがある場合、監督を要請する署名入りの書面の申立てがある場合、電話/ファクス調査に対する事業者の回答が不適切であった場合などです。

監督のプロセス−事業所での監督

監督の手順

一般にOSHAの監督は、次の4段階で行われます。

  • 監督官身分証明書の提示
  • 監督前打ち合わせ
  • 巡視
  • 監督後打ち合わせ

監督はどのように始まるか

事業所に着いたOSHAの監督官は、公式の監督官身分証明書を提示し、事業者の代表者との面会を申し入れます。事業者は監督官に対し、身分証明書の提示を求めなければなりません。

OSHAの監督官は、自身の写真と職員番号の入った米国労働省発行の身分証明書を携帯していますから、事業者が最寄りのOSHAの事務局に電話をすればその監督官が本人であるかどうかを確認することができます。監督官を騙る行為は違法であり、監督官を騙る人物については、地元の警察に直ちに報告しなければなりません。

監督前打ち合わせ

監督官は、監督前打ち合わせで以下を行います。

  • その事業所をOSHAが監督対象に選んだ理由の説明。
  • その事業所についての情報収集。
  • 訪問の目的、監督の範囲、作業工程の巡視、労働者の代表や労働者に対する事情聴取、監督後打ち合わせについての説明。
  • OSHAが資金を拠出する訪問相談が進行中か、その事業所が相談制度を通じて監督免除措置を受けているか、を確認。訪問相談が進行中、またはその事業所が監督免除措置を受けている場合、監督官は監督を打ち切るのが一般的。

監督官は事業者に対し、監督官に同行する事業者代表者を選ぶように要請します。OSHAは、監督官の巡視に同行する労働者代表を歓迎しますが、強制はしません。

いかなる場合でも、事業者が、巡視に同行する労働者代表を選ぶことはできません。しかし、OSHAは、事業者と労働者が話し合って決めるよう奨励しています。

巡視

監督前打ち合わせを終えたら、監督官と同行する代表者たちは事業所内を巡視し、作業区域での危険な作業状態の有無を監督します。このとき監督官は、是正措置案について事業者と討議します。監督官はこの巡視中、労働者たちから個人的に話を聞くことができます。

巡視が、事業所の一部だけで行われることもあります。特に、具体的な訴えや、死亡事故、災害がきっかけとなって行われる監督や、地域や国の特別プログラムの一貫として行われる監督の場合、巡視が事業所の一部に限られることはよくあります。その他の監督では、巡視はその事業所の全体にわたり、すみずみまで行われます。

監督官は、目にした業務上の秘密を絶対に外に漏らしてはいけません。許可なく秘密情報を漏らした連邦政府職員には、罰金1000ドル、または1年間の拘留、またはその両方が科され、解任もしくは解雇されます。

記録の点検

監督官は、掲示方法や記録保存方法についても点検しますが、それには事業者が以下のことを実施しているかの点検、も含まれます。

  • 労働者の死亡、傷害、疾病の記録を保存しているか
  • 2月1日から4月30日まで、OSHAの業務関連傷害及び疾病の要約(OSHA 300A)を掲示しているか
  • OSHAの"それは法律です(It's The Law)"ポスター(OSHA 3165)を、目立つところに掲示しているか

必要に応じ、監督官は、労働者が有害な物質や物理的要因にばく露した記録も調べます。

労働者代表の指名
状況 指名の方法
労働者側に正式な交渉代表がいる場合 労働組合が、監督官に同行する労働者代表を指名します。
工場安全委員会があり、正式な交渉代表がいない場合 労働者の委員または一般の労働者が、労働者代表を指名します。
正式な交渉代表もいなければ、工場安全委員会もない場合 労働者自身が労働者代表を選ぶか、労働者の利益を代表するにふさわしい労働者を監督官が決定します。
労働者代表が選任されていない場合 監督官は、職場の安全衛生問題について、妥当な数の労働者たちから話を聞かなければなりません。ちなみに、そのような協議は、非公開で行うことができます。

現場での是正

監督官が発見した明らかな違反のなかには、直ちに是正できるものもあります。事業者がそのような違反をただちに是正した場合、監督官はそれを記録し、事業者が基準の遵守に積極的であると判断する参考にします。

しかしたとえ是正されたとしても、明らかな違反があったという事実は、通告か罰則通知、あるいはその両方の対象となります。

巡視終了後

巡視が終わったら、監督官は監督後打ち合わせを、事業者や労働者の代表と一緒に、または事業者と労働者とを別個に行います。

監督官は、監督後打ち合わせで、以下を行います。

  • 監督中に発見した危険や不衛生な状態すべてについて事業者と討議し、通告が勧告される可能性のある明白な違反のすべてを指摘
  • 労働安全衛生法の11条(c)により、事業者には不服を申立てる権利があること、差別禁止の権利があること、通告に異議を申立てたい場合は通告を受領して15労働日以内に行うことを、事業者に説明
  • 通告が発行された場合、事業者にはどのような義務があるかを説明

労働者からの要請があれば、監督官は、事業者との打ち合わせとは別に、労働者や労働者の代表との監督後打ち合わせを実施し、彼らに直接関係のある問題について討議し、監督後の彼らの権利について説明します。

OSHAの通告に記される情報

通告は、事業者と労働者に以下について伝えます。

  • 事業者が違反している規則や基準
  • 労働安全衛生法の一般義務条項が適用される危険な作業場の状態
  • 危害を減少するまでの期間の提示
  • すべての罰則

監督官が伝えるその他の情報

監督官は:

  • 1996年の中小企業の規制実行公正法(SBREFA: Small Business Regulatory Enforcement and Fairness Act)が認める事業者の権利について、事業者に説明する。SBREFAは、すべての連邦政府機関に対し、小企業が犯した基準違反の罰則を緩和する、または適当な条件下では罰則を科さない、という規定を設けることを義務付けている。
  • 監督に関するOSHAの決定に不満な場合、事業者はSBREFAに基づいて設立された地方中小企業の規制実行公正委員会(Regional Small Business Regulatory Fairness Boards)に訴えることができる、と事業者に伝える。
  • OSHAの地域事務局は支援を提供しており、プログラムや活動についての質問にも答えてくれることを説明する。

罰則の公表

OSHAが提示する罰則を事業者に伝える権限があるのは、OSHAの地域局長だけです。OSHAが監督を実施してから最終報告書を発行するまでには6ヶ月の期間があります。OSHAの地域局長は、報告書すべてに目を通した後、次のいずれかを行います:

  • 罰則なしの通告を発行する
  • 罰則提示を含む通告を発行する
  • 罰則も通告も必要ないと決定する

違反と罰則

罰則のタイプ

労働安全衛生法に基づき、OSHAは以下の違反を通告し、以下の罰則を提示することができます。

  • 重大な違反以外のもの:作業の安全と衛生に直接関係するような違反であるが、死または重大な傷害を引き起こさないと思われる違反。各々の違反に対し、OSHAは最高7,000ドルまでの罰金を提示することができます。
  • 重大な違反:死または重大な身体的傷害を引き起こす可能性がある違反で、かつ事業者が危険について知っていたか、当然知っているべきであった場合、OSHAは各々の違反に対し、最高7,000ドルまでの強制的な罰金を提示することができます。
  • 故意の違反:事業者が意図的または、それと知りつつ犯した違反あるいは、事業者が法律に無関心であるために犯した違反。事業者が、自らの行為が違反であることを知っていた、あるいは危険な状態が存在していることに気づいていながら、それを解消する適切な努力をしなかった場合をいいます。OSHAは、各々の違反に対し最高7万ドルまでの罰金を提示することができます。なお最低罰金額は5,000ドルです。

    意図的な基準違反によって労働者の死を招いた事業者は、OSHAの通告と罰則を受けるだけでなく、米国司法省から刑事責任を問われることもあります。裁判所がそのような事業者の有罪を認めた場合、裁判所で決められた罰金か、6ヶ月以下の拘留、またはこの両方が科されます。刑事上の有罪判決に対して裁判所は、個人には最高25万ドルまで、法人には最高50万ドルまでの罰金を科すことができます。

  • 繰り返し違反:OSHAの再監督の際に判明した違反が、以前と極めてよく似た基準、規則、規定、あるいは命令の違反だった場合のことを言います。各々の違反に対し、OSHAは最高7万ドルまでの罰金を提示することができます。繰り返しの通告とみなすためには、最初の通告が確定されていなければいけません。つまり、最初の通告に対して不服申立てがされている場合、その後に同様の違反があっても、それは繰り返し違反とはなりません。
  • 是正怠慢:以前に通告された違反を、事業者が所定の是正期限までに是正しなかった場合、OSHAは一日につき最高7,000ドルまでの追加罰金を提示することができます。

その他の違反に対する罰則

以下の違反についても、事業者は処罰されます。

  • 掲示義務に違反した場合は、最高7,000ドルまでの民事罰を科されることがあります。("それは法律です(It's the Law)"ポスター(OSHA 3165)の掲示を怠った場合には、罰金は科されません)。
  • 裁判所に提出する記録や報告書や申請書を改ざんした場合、最高で1万ドルまでの罰金か、最高6ヶ月までの拘留、またはその両方が科されます。
  • 業務を遂行する監督官への暴行、抵抗、反抗、脅迫、妨害は、刑事犯罪です。そのような行為で有罪となった場合、最高5,000ドルまでの罰金または3年以下の拘留が科されます。

提示された罰金の減額

違反を犯した事業者の誠意(労働安全衛生法を遵守する努力を見せた場合)や、違反歴、事業の規模に応じて、OSHAは罰金を減額することができます。減額された罰金が100ドル以下の場合、OSHAは罰金の提示を行いません。重大な違反についても、違反の程度に応じて、罰金額を減額します。しかし、意図的な違反については、たとえ事業者が誠意を見せても罰金の減額はありません。

刑事罰

基準に意図的に違反したことにより労働者の死亡を引き起こし、刑事訴訟で有罪とされた事業者は、最高で25万ドル(または事業者が法人の場合は50万ドル)までの罰金、または最高6ヶ月間の拘留、もしくはその両方が科されます。有罪となるのが二度目の場合、拘留の期間は2倍となります。

労働者が監督結果に異議がある場合

監督結果に対する労働者の異議申し立て

労働者は非公式な会合の開催をOSHAに要請し、監督や通告、提示罰則通知、事業者の異議申立てが提起した問題について討議することができます。このような非公式の会合を行う場合、OSHAはそれを15日間の異議申立て期間内に行わなければいけません。また、労働者の訴えをきっかけとした監督をOSHAが実施し、その結果、通告は発行しない、と決定した場合、労働者または正式な労働者の代表者は非公式に再審査を求めることができます。

労働者は、次のことがらに対して異議を申立てることができます。

  • 通告が、危険な状態を改善する期間として指定した猶予期間。
  • 猶予期間の延長を要請する、事業者の変更申立て(PMA)。労働者は、PMAが掲示されてから10労働日以内または、労働者の代表がその写しを受理してから10労働日以内に、異議を申立てなければなりません。

しかし、通告内容や、罰則内容または罰則が課されないことに対して労働者が異議を申立てることはできません。

 
違反のカテゴリーと罰金
違反のタイプ 各々の違反の最低罰金額 各々の違反の最高罰金額
重大な違反以外のもの 7,000ドル
重大な違反 100ドル* 7,000ドル
掲示違反 7,000ドル
意図的な違反 5,000ドル 70,000ドル
意図的な違反
死亡を引き起こした
意図的な違反で、
一度目の有罪
25万ドル/50万ドル、
または6ヶ月の拘留、
またはその両方**
意図的な違反
死亡を引き起こした
意図的な違反で、
二度目の有罪
25万ドル/50万ドル、
または1年の拘留、
またはその両方**
繰り返しの違反 5,000ドル 70,000ドル
是正怠慢 1日につき7,000ドル

*現場監督リファレンス・マニュアル(FIRM:Field Inspection Reference Manual)
に定められたOSHAの規定

**刑事上の罰金は合衆国法典第18編(犯罪と刑事訴訟)3571条に規定されており、
犯罪で有罪となった場合の罰金額は、個人であれば25万ドル以下、法人であれば50万ドル以下。

 

監督結果に対する事業者の不服申立て

発行された通告や、罰則提示通知に不服な事業者は、非公式な会合を開くよう、OSHAの地域局長に要請することができます。係争が長引くのを防ぐために、OSHAは、通告や罰則を変更したり、和解契約の締結を行ったりする権限を地域局長に与えています。事業者が非公式の会合を要請した場合、OSHAは異議申立て期間である5労働日以内に、非公式の会合を開かなければいけません。

改善事項変更申請書

違反を通告された事業者が、通告された猶予期限、または非公式の会合で変更された期日を守ることができない場合、事業者は期限延長を申請しなければいけません。これは、事業者の変更申立て(PMA)と呼ばれます。PMAは、OSHAの地域局長が当初、是正期限として定めた日の翌日の終わりまでに、書面で地域局長に提出されなければなりません。

異議申立て通知

事業者が通告や、是正期限、あるいは提示された罰則に異議を申立てる場合には、通告や提示罰則通知を受領してから15労働日以内に、OSHAの地域局長にその旨を書面で通知しなければなりません。口頭で異議を申立てるだけでは不十分です。書面によるこの通知は、異議申立て通知と呼ばれます。

異議申立て期間である15労働日以内であれば、事業者、労働者、労働者の代表者のいずれも、監督結果について討議する非公式な会合の開催を要請することができます。OSHAは、非公式の会合で提示された情報や証拠を参考に、通告や罰金、是正期限を変更する非公式な和解合意を事業者と取り決めることができます。

異議申立て通知に特定の様式はありませんが、通告や罰則提示通知、是正期間、または違反の是正怠慢通知に事業者が異議を申立てる理由と、その根拠が明確に記されていなければなりません。

異議申立て通知の再検討

書面の異議申立て通知が、15労働日以内に提出された場合、OSHAの地域局長はそれを労働安全衛生再調査委員会(OSHRC:Occupational Safety and Health Review Commission)に通告します。OSHRCとは、OSHAが発行する通告や罰金に対する異議申し立てに裁定を下すことを目的に、労働安全衛生法が設けた独立の連邦政府機関で、OSHAとも労働省とも関係のない機関です。

委員会は、行政法判事を指名し、その異議申し立てを審理します。行政法判事は以下を行うことができます。

  • その異議申し立ては法的に無効であるとし、却下する。
  • 事業者の事業所近くの公共の場で公聴会を開催する。

事業者ならびに労働者は、公聴会に参加する権利があります。

行政法判事の裁定に対する事業者の不服申し立て

行政法判事が下した裁定に対し、関係者は誰でもOSHRCに見直しを求めることができます。また、OSHRCの3人の委員それぞれも、自らの判断で、その裁定についての検討を委員会に求めることができます。事業者やOSHAが、委員会の裁定に不服な場合は、米国の控訴裁判所に申立てることができます。


アウトリーチ、教育、基準遵守の支援

アウトリーチに関する資料をOSHAのウェブサイトに掲載

OSHAのウェブサイトには、基準や解説、公式の指示、技術アドバイザー、基準遵守についての情報だけでなく、OSHAに関する幅広い情報も用意されています。このサイトにはまた、Expert AdvisorやElectronic Compliance Assistance Toolsなどの電子ツール(双方向的ソフトウェア)や、具体的な安全衛生問題や規制、公式の指示、ビデオに関する情報、事業者や労働者のためのその他の情報も収められています。ウェブサイトのアドレスは、www.osha.govです。

OSHAはまた、『クイック・テイクス(Quick Takes)』という隔月間の電子ニュースも発行しています。ここには、タイムリーな情報や、最新情報、OSHAがアメリカの労働安全衛生で果たした成果などが記されています。購読料は無料で、OSHAのウェブサイト(www.osha.gov)をクリックすれば閲覧できます。

OSHAのウェブサイトには、次のような特色があります。

  • 職場の安全衛生情報をスペイン語で紹介するスペイン語のページ。
  • 中小企業の経営者たちに、労働安全衛生法が定める彼らの義務について知らせ、彼らに役立つ資源を紹介する中小企業のページ。
  • 労働安全衛生法における労働者の権利と義務について説明する労働者のページ。
  • 18歳以下の労働者の安全衛生問題について述べている十代の労働者のページ。

上記を含むインターネットの資料は、www.osha.govで閲覧できます。

事業者や労働者たちに情報が十分行き渡らない限り、OSHAが使命を果たすことはできません。OSHAは、事業者がOSHAの規制を遵守し、職場の安全衛生を向上させるのに役立つさまざまな製品やプログラム、サービスを提供しています。

基準遵守を支援する資料

OSHAには、幅広い出版プログラムがあり、政策や規則などOSHAのさまざまな側面を詳しく紹介する小冊子やファクトシートを出版しています。このなかには、危険有害性の周知徹底を図る出版物や、アスベスト、血液中病原体についての出版物、相談、自主防衛、補助金、教育訓練についての出版物など、さまざまなものがあります。OSHAはまた、特定産業に向けた人間工学ガイドラインや、職場での暴力に対応するアドバイスのガイドラインも発行しています。

職場の安全衛生問題についての重要な情報が、スペイン語を話す労働者たちにも伝わるように、多くの出版物は、英語だけでなくスペイン語でも用意されています。

OSHAの刊行物はすべて、OSHAのウェブサイトwww.osha.govから無料でダウンロードできますし、そのほとんどはハードコピーの形でも入手が可能です。刊行物のなかには、無料で入手できるものと、米国政府の印刷局の販売品となっているものがあります。入手可能な刊行物のリストは、www.osha.govでご覧ください。また、電話(800) 321-OSHA (6742)や、ファクス(202) 693-2498でもお問い合わせいただけます。

販売されている刊行物を入手するには、以下に書面でお申し込みください。

U.S. Government Printing Office
710 N. Capitol St. NW
Washington, DC 20401

(202) .512 .0132に電話をするか、(202) .512 .1355にファクスで申し込むか、あるいはGPOのオンライン・ブックストアwww.access.gpo.gov/su_docs/sale/abkst024.htmlを訪れていただくこともできます。

また、OSHAはOSHA出版局を通じて、ビデオの貸し出しも行っています。くわしくは、(800) 321-OSHA (6742)に電話をするか、OSHAのウェブサイトwww.osha.govでご覧ください。


教育訓練

OSHA研修所(OSHA Training Institute)

イリノイ州シカゴの郊外、アーリントンハイツにあるOSHA研修所は、連邦と州の監督官、州のコンサルタント、そのほかの連邦政府機関職員、民間部門の事業者及び労働者、労働者の代表者たちに、安全と衛生に関する基礎レベル及び上級レベルの教育訓練を提供しています。

研修所のコースには、電気災害、機械防護、換気、人間工学などの分野があります。民間部門の労働者向けには、建設業界の安全衛生やOSHA基準の自主的遵守方法等60近くの講座があります。

研修所には、教室、実習室、図書室、視聴覚室などの施設があり、実習室には、プレス機械、木工実習室や溶接実習室、工場換気装置、音響実習装置など、実際に体験が可能なさまざまな装置が揃っています。

OSHA研修所教育センター(OSHA Training Institute Education Centers)

OSHAの教育訓練局は、OSHA研修所教育センタープログラムも提供しています。これは、特定の非営利組織が、民間部門やその他の連邦政府機関の職員のためにOSHA研修所のコースの中でも最も受講要望の高いコースを全国で提供するプログラムです。

教育センターは、OSHA研修所が提供する訓練を補完するものです。教育センターとなる施設は、その施設が有する労働安全衛生に関する経験や、非学術的訓練のバックグラウンド、教室や研究所、地域全体に訓練を提供する能力に基づき、全国から選ばれます。教育センターへの資金提供をOSHAは行っていないため、センターが行うOSHA訓練は、授業料で支えられています。

教育センターはまた、OSHAが、OSHAアウトリーチ・トレーニング・プログラム(労働者に労働安全衛生の基本を教育するOSHAの主要手段)を提供する手助けもしています。このプログラムで、1週間のOSHA訓練コースを終了した人には、建設業界や一般の産業界の安全衛生基準を10時間または30時間教えることのできる資格が与えられ、彼らは、毎年何千人もの生徒に労働安全衛生の研修を行うことになります。

その他の情報サービス

OSHAの73の地域事務局は、講演や刊行物、作業現場の危険に関する視聴覚教材、技術的アドバイスなど、さまざまな情報サービスも提供しています。

OSHAの訓練助成プログラム

OSHAは、現在の訓練が不十分であると思われる科目の教育訓練を提供するために、非営利組織に助成金を出しています。助成金は主に、危険度の高い活動やハザードを対象に拠出されていますが、継続的な教育訓練や末端への教育を目的とした講座開設のために拠出されることもあります。

助成金を受けた組織は、その資金で教育訓練プログラムを作り、そのプログラムにふさわしい事業者や労働者に働きかけてプログラムを提供します。それらの組織は、プログラムに参加した人々が、受けた訓練を職場でどのように活かしているかも追跡調査します。

詳しくは、以下のOSHA教育訓練局にお問い合わせください。教育訓練局の住所と電話番号は:

2020 Arlington Heights Rd.,
Arlington Heights,
IL 6005
電話:(847) 297-4810

補助金、教育訓練の詳細については、OSHAのウェブサイトwww.osha.govをご覧ください。


基準遵守の支援

OSHAが事業者や労働者に提供する支援

OSHAは州と協力して、積極的な遵守支援プログラムを提供し、事業者や労働者がOSHAの基準や規制を守る手助けをしています。

OSHA地域事務局では、基準遵守支援の専門家たちが、中小企業や業界組合、地域の労働組合、コミュニティーや宗教的奉仕活動グループなどさまざまな団体からの支援要請に対応しています。またこの専門家たちは、セミナーやワークショップ、講演会も行っています。彼らは、事業所の安全衛生マネージメントシステムを構築する事業者を支援したり、OSHAの相談サービスに相談をするよう勧めたりもします。

効果的な労働安全衛生マネジメントシステムに必要なもの:

  • 経営者がリーダーシップをとり、労働者が積極的に参加する
  • 職場分析
  • 危険性の防止と抑制
  • 安全衛生に関する訓練

労働安全衛生マネジメントシステム

安全で健康的な労働環境の構築には、包括的な労働安全衛生マネジメントシステムが不可欠です。安全で健康的な職場は、事業者と労働者の両方にとってメリットがありますし、そのような職場は、労働者を傷害や疾病から守るだけでなく、革新性や創造性を刺激し、業績向上や、生産性の向上ももたらします。



OSHAの相談サービス

OSHAの相談サービスは、事業者が事業所に潜む危険や、それを是正する手段を特定し、労働安全衛生管理システムを改善できるように支援する無料サービスで、最終的には所定のOSHAの監督を1年間免除となる資格の獲得を目指しています。このサービスは、州政府が、十分な訓練を受けた専門職のスタッフを使って実施しています。ほとんどの相談はそれぞれの事業所で行われますが、事業所外でも限定的なサービスを受けることができます。

事業者にとってのメリット

OSHAの相談サービスは、事業者が危険性を特定し、是正するのを支援するだけでなく、労働者の傷害・疾病の予防に重点を置いた効果的な安全衛生プログラムの構築と実施を現場で支援する無料サービスも提供しています。さらに、OSHAの地域事務所は、基準遵守、人間工学、血液病原体、中小企業の懸案事項に関する支援も提供しています。

OSHAの包括的な相談サービスでは、以下についての評価も行っています。

  • 機械システム、物理的な作業手順、職場環境の有害性
  • 事業者が現在実施している安全衛生プログラムの問題

事業者は教育訓練サービスも受けることができ、事業所から離れた場所でも限定的な支援を受けることができます。

相談支援を受けるための資格

相談支援を受けることができるのは、安全で健康的な職場を作り、維持していきたいと願う中小企業(一ヶ所の職場の労働者数が250人以下で、全国においても労働者数が500人以下の企業)の事業者です。

相談支援の費用

相談プログラムとは、主にOSHAが資金を負担し、州政府機関が運営するプログラムで、支援を求める事業者は費用を負担する必要がありません。OSHAは相談プログラムの中で見つかった危険に関してOSHAが、罰則の提示や通告の発行をすることはありません。一方、事業者側の義務は、コンサルタントが指摘した重大な危険や、安全衛生の基準に違反する可能性のある点を是正することだけです。

事業者のプライバシー保護

州政府当局は、通常、事業者の名前や企業名、作業現場に関する情報をOSHAの監督官には報告しない、という保証付きで、この相談サービスを事業者に提供しています。

基準監督活動

コンサルタントが発見した危険に関しては、通告が発行されることも、罰則が提示されることもありません。このプログラムは、中小企業が職場の危険を見つけ、是正するのを助けることを目的としています。しかしながら、相談支援のなかで指摘された違反を事業者が是正しない場合、コンサルタントはその事業者をOSHAに報告し、監督の対象とするように勧告することができます。

SHARP

模範的な事業者は、OSHAの安全衛生達成認定プログラム(Safety and Health Achievement Recognition Program)、すなわちSHARPへの参加を申し込むことができます。SHARPに参加するには、包括的な相談訪問を受け入れている、すべての危険を是正して職場の安全衛生に模範的な成果をあげている、優れた安全衛生プログラムを作成、導入している、などの諸条件を満たしていなければなりません。

SHARPへの参加が許された事業者は、計画的な監督を1年間免除されます(苦情申し立てによる監督や事故調査監督は除く)。

あなたの州で行われている相談支援についての詳しい情報は、www.osha.govをご覧ください。


パートナーシップ及びその他の協同プログラム

OSHAの協同プログラム

事業者、労働者、労働組合、OSHAの自発的で協力的な関係は、従来のOSHAの監督の代替にもなる有益なもので、労働者の死亡や傷害、疾病を効果的に削減します。OSHAの協同プログラムには次のようなタイプがあります。

  • 提携
  • OSHA戦略的パートナーシップ
  • 自主的保護プログラム
  • 安全衛生達成認定プログラム(SHARP)

提携

提携とは、OSHAの協同プログラムのなかでも最新のもので、職場の安全衛生を確立したいと考える組織が職場での傷害や疾病を防ぐためにOSHAと協力関係を結ぶプログラムです。OSHAとOSHAの提携組織は、全国の労働者や事業者たちの教育、職場の安全衛生の向上、発展に力をあわせます。

提携する理由

OSHAとの提携には多くのメリットがあり、提携組織はこのプログラムを通じて以下を実現できます。

  • OSHAとの、信頼に基づいた協力的な関係構築
  • 職場の安全衛生に取り組む他事業者とのネットワーク構築
  • 資源を活用し、労働者の安全衛生を最大限に保護
  • 安全衛生を率先して推進している、と周囲から認知される

提携のための資格

以下を含むどのような団体でも、OSHAと提携関係を結ぶことができます。

  • 業界団体、専門職団体
  • 企業
  • 労働者団体
  • 教育機関
  • 政府機関

提携を結ぶ団体のなかには、OSHAと協力するのが初めて、という団体もあれば、戦略的パートナーシップや自主的保護プログラム、相談支援などを通じてこれまでに構築してきたOSHAとの関係をさらに発展させていこうとする団体もあります。

提携はどのように機能するのか

提携は他の協同プログラムよりも構造がゆるく、正式な条件はほとんどないうえ、監督的要素もありません。しかしながら、OSHAとプログラム参加団体は、以下の3つの カテゴリーの1つ以上にあてはまる短期的ゴールと長期的ゴールを提示し、実施し、達成しなければいけません。

  • 教育訓練
  • アウトリーチとコミュニケーション
  • 職場の安全衛生に関する全国規模の対話の促進

提携の締結後

OSHAとその提携団体は、実施チームを組織します。OSHAと提携団体の代表者で構成されるこのチームは、戦略を立て、プログラムの導入や目標達成のプロセスに着手します。

全国規模の提携に関する詳しい情報は、OSHAのアウトリーチ・サービス・アンド・アライアンス局((202) 693-2340)に電話で問い合わせるか、www.osha.govをご覧ください。地域や地方の提携については、37ページに記されている地域事務局に問い合わせるか、電話で(800) 321-OSHA(6742)にお問い合わせください。


OSHA戦略的パートナーシッププログラム(OSPP)

OSHA戦略的パートナーシップは、事業者や労働者、労働者の代表者、そのほかの関係者(業界団体や専門職団体、大学、その他の政府機関など)たちが、OSHAと協力的な関係を結ぶ契約書を自主的に交わす長期的な協定です。OSPPは、重大な危険を解消し、高水準の労働安全衛生を目指すパートナーの努力を促進し、支援し、認めることで、アメリカの職場に計量が可能なプラスの効果をもたらすことを目的としています。

OSHA戦略的パートナーシップの効果

これらのパートナーシップは、参加者たちに以下を実現させます。

  • 効果的な安全衛生マネジメントシステムの構築
  • 彼らの業界や作業場によくある危険を特定し、それを解消または抑制できるように、経営者や労働者を教育
  • 労働者たちに、自らを守る活動に積極的に関与する機会を与える
  • パートナーたちが、専門知識やその他の資源を共有する手段作り

パートナーシップは労働者の安全衛生をどのように向上させるのか

OSHAの戦略的パートナーシップの多くは、職場の包括的な労働安全衛生マネジメントシステムの開発、導入を促進するためのものです。なぜなら、職場での死亡や傷害、疾病を減らす最善策は、安全衛生管理システムの構築と実施であると、OSHAは考えているからです。また、特定産業での危険の解消や管理に焦点を当てたパートナーシップもあります。

参加するメリット

  • OSHA戦略パートナーシップへの参加には、次のようなメリットがあります。
  • 職場での傷害、疾病が減るため、労働者への補償金や、傷害・疾病関連の費用を削減できる
  • 安全に働こうという労働者のモチベーションが上がり、製品の質や生産性が向上する
  • 労働安全衛生マネジメントシステムの開発、改善
  • 地域からの評価が上がり、交流も増加する
  • OSHAとのパートナーシップ

自主的保護プログラム

自主的保護プログラム(VPP: Voluntary Protection Program)は、労働者保護の水準を、OSHAの基準が定める最低水準以上のものにしようとする取り組みの一環です。VPPには、Star、Merit、Demonstrationの3つのプログラムがありますが、OSHAはこれらのプログラムを以下の目的で作成しています。

  • 効果的な労働安全衛生マネジメントシステムを導入することで、質の高い労働者保護を提供しようと協力する事業者と労働者の優れた成果を認定する
  • 同様の優れた方法をとることで、自分たちも卓越した安全衛生成果を達成しよう、という気持ちを他の事業者たちに起こさせる
  • 事業者、労働者、OSHAの協力関係の構築

VPPが事業者や労働者にもたらすメリット

VPPへの参加は、以下を実現します。

  • 安全に働きたい、という労働者のモチベーション、品質、生産性が向上
  • 損失労働日数が、その産業についての平均より概ね50%低下
  • 労働者の補償費用やそのほかの傷害・疾病関連費用の低下
  • 地域からの評価の向上、交流の増加
  • 優良であった安全衛生マネジメントシステムがさらに改善され活性化
  • OSHAとのパートナーシップ

OSHAによるVPP参加事業所の監視

OSHAは、報告のされた安全衛生システムがその事業所で効果的に運営されているかを確認するために、事業者のVPP応用状況を点検し、現地調査を行います。OSHAは、認定された事業所の定期的評価を継続的に実施します。

すべてのVPP参加者は、事業所で実施した年間評価の最新版の写しを、毎年2月に、OSHAの地域事務局に提出しなければなりません。この評価には、前年の傷害と疾病の件数ならびに発生率も記載されていなければいけません。

VPPに参加する事業所におけるOSHAの監督

VPPに参加している事業所では、定期的な計画的監督は行われません。しかし、労働者の苦情申し立てや重大な事故があった場合や、化学物質の大量放出の可能性などがあった場合には、通常の手順に沿ってOSHAの監督が行われます。


OSHAについてのコメント

OSHAと協力して職場の安全衛生を推進する意義を語る事業者や労働者のコメント

事業者や労働者は、OSHAが以前とは違うこと、そしてOSHAが彼らと協力して職場を改善していきたいと考えていること、を認識しています。そして、労働者を保護し、事業を強化する新たな手法を導入する事業者の数が増えるにつれ、OSHAの助言や支援を求める事業者も増えてきています。

以下は彼らのコメントの例です・・・

職場の安全衛生を支えるビジネスセンス:

「生産工程が危険だと、質の高い製品は作れません」 DACO社、ケン・リンドグレン

「効果的な安全衛生プログラムの実施は、当然です。なぜなら、労働者はそれを必要としていますし、お客もそれを要求している。そのうえ、それなしにはあなたの事業も、事業の将来もありえませんからね」 ジェネシー・スタンピングズ、ダン・ファーガス、

「安全性こそが肝心です。安全性を確保できないのであれば、あとのことは問題外ですよ」 航空輸送協会、マーク・アームストロング、

「ナンバー1の会社になりたいのなら、高い給料、高い手当て、高い収益性だけでは不十分です。優れた安全プログラムを設け、安全な会社にすることが大切なのです」 ポイントファイブ・ウインドウズ、ゴードン・ハナフォード

安全衛生が生活の質にもたらすメリット

「私は自分の孫の顔を見られるぐらい長生きしたい、と思っていますが、カーティス・ランバー社の安全プログラムのおかげで、それも実現できそうですよ」 カーティス・ランバー、ジョン・マイヤー、

「社員を毎日、元気な姿で家族のもとに帰すこと、それが私たちの務めです」 ジョン・オーベル、ネックステック社

OSHAのプログラムやサービスを通じたOSHAとの協力について:

「私たちにとって一番大切なのは、従業員の健康や安全です。事故ゼロ、という私たちのゴールを達成するには、OSHAの戦略的パートナーシッププログラムのようなチームワークと、危険な行動や状況を徹底的に解消していこう、という姿勢が不可欠です」 ベリンジャー・シップヤーズ社、ウォルター・ベリー

「OSHAや高額な罰金を怖がる人は多いですが、怖がる必要などありません。相談プログラムでのOSHAの仕事は、罰金を徴収することではありません。彼らは、わたしたちを支援するために働いてくれているんです。相談プログラムは、得るところの多いすばらしいプログラムですよ」 レーザー・テクノロジーズ社、ケリ・オルウィン、

「確かに、会社がOSHAとのパートナーシップを申し入れてきたときには、不安でしたよ。でも今じゃ、パートナーシップを結んだことは正しかった、と確信していますよ」 ネイサン・ベイリー、フォード・ヴィステオン

職場の安全衛生について学んだ知識の共有について

「安全衛生に関する知識の共有は非常に大切だ、と私たちは考えています。私たちのプログラムは効果を上げていますから、他の施設にも、労働者を保護する手法を教えたい、と思っています」 シェリー・ウェルチ、シチズンズ・メモリアl・ヘルスケア基金


地域事務局

Region I (Connecticut,* Massachusetts, Maine, New Hampshire, Rhode Island, Vermont*)
JFK Federal Building, Room E340
Boston, MA 02203
(617) 565-9860
Region II (New Jersey,* New York,* Puerto Rico,* U.S. Virgin Islands*) 201 Varick
Street, Room 670
New York, NY 10014
(212) 337-2357
Region III (Delaware, District of Columbia, Maryland,* Pennsylvania,* Virginia,* West Virginia)
The Curtis Center
170 S. Independence Mall West
Suite 740 West
Philadelphia, PA 19106-3309
(215) 861-4900
Region IV (Alabama, Florida, Georgia, Kentucky,* Mississippi, North Carolina,* South Carolina,* Tennessee*)
Atlanta Federal Center
61 Forsyth Street SW, Room 6T50
Atlanta, GA 30303
(404) 562-2300
Region V (Illinois, Indiana,* Michigan,* Minnesota,* Ohio, Wisconsin)
230 South Dearborn Street,
Room 3244
Chicago, IL 60604
(312) 353-2220
Region VI (Arkansas, Louisiana, New Mexico,* Oklahoma, Texas)
525 Griffin Street, Room 602
Dallas, TX 75202
(214) 767-4731 or 4736 x224
Region VII (Iowa,* Kansas, Missouri, Nebraska)
City Center Square
1100 Main Street, Suite 800
Kansas City, MO 64105
(816) 426-5861
Region VIII (Colorado, Montana, North Dakota, South Dakota, Utah,* Wyoming*)
1999 Broadway - Suite 1690
Denver, CO 80202-5716
(303) 844-1600
Region IX (American Samoa, Arizona,* California,* Hawaii, Nevada,* Northern Mariana Islands)
71 Stevenson Street, Room 420
San Francisco, CA 94105
(415) 975-4310
Region X (Alaska,* Idaho, Oregon,* Washington*)
1111 Third Avenue, Suite 715
Seattle, WA 98101-3212
(206) 553-5930
Regional Offices
37

*の州及び領土は、OSHAが承認した独自の労働安全衛生プログラムを実施しています(コネチカット、ニュージャージー、ニューヨークが実施するプログラムは公共部門の事業所のみを対象にしています)。承認されたプログラムを実施している州は、連邦の基準と同等、あるいは少なくてもそれと同様の効果がある基準を設けなくてはいけません。

注意:OSHAの地域事務局、OSHAが承認した州計画、OSHAの相談プロジェクトについての情報がほしい方は、www.osha.govのウェブサイトをご覧になるか、(800) 321-OSHA (6742)にお電話ください。


索引

(省略)