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研究によって明らかになった、長時間労働による傷害および疾病リスクの増大
Study Links Long Working Hours To Increased Risk of Injury, Illness

資料出所:Bureau of National Affairs, Inc.(BNA)発行
「Occupational Safety and Health Reporter」
Vol.35, No.34, p.761-762 (August 25, 2005)
(仮訳 国際安全衛生センター)

Reproduced with permission from
Occupational Safety & Health Reporter, Vol.35, No.34, p.761-762 (August 25, 2005).
Copyright 2005 by The Bureau of National Affairs, Inc. (800-372-1033)
<http://www.bna.com>


 Journal of Occupational and Environmental Medicine(JOEM)誌9月号に掲載された研究レポートは、長時間労働が傷害や疾病のリスク増大の要因となることを明らかにし、超過勤務状態にある労働者に対しての保護対策の策定を提言している。

 この研究「職場での傷害および疾病に対する超過勤務および長時間労働の影響:米国で発見された新たな事実」によれば、超過勤務や長時間労働の常態化は、仕事に関連する傷害や疾病のリスクを増大させる。JOEM誌は、American College of Occupational and Environmental Medicineから発行されている。

 超過勤務のない仕事との比較では、超過勤務によって傷害危険率が61%高くなっていた。

 このレポートは、次のように主張している。「この研究結果は、単に元来危険性の高い業界や職業に長時間労働が集中しているという背景やこのような就労時間で仕事をする労働者の人口統計的特性によって、長時間労働を伴う仕事の危険性が増大するわけではないとことを示しています。この研究によって明らかになった事実は、長時間労働は、例えばその環境にある労働者の疲労度やストレスを高め、結果的に職場での事故の間接原因となるという仮説を立証するものです」

 この研究で明らかになったその他の事実:長時間労働についてのこの研究では、次の点も明らかになった。

  • 1日12時間以上の就労と1週60時間の就労を追跡したところ、超過勤務を伴う労働スケジュールによって職場での傷害や疾病リスクが高まることが明らかになった。1日12時間以上の就労によって危険率が37%高まり、1週60時間以上の就労によって危険率は23%高まっている。
  • 傷害のリスクは、就労時間が長くなるに従って高まっていた。
  • 多変量分析では、このリスクの増大は、単に労働時間の長い仕事が危険性の高い職業や業界に集中していることが原因となるものではないことが解明された。

 この研究では、超過勤務および長時間労働に対するばく露と、報告された傷害および疾病の発生率との関係を分析した。分析にあたり、年令や性別などの因子を調整している。

 調査対象は、各種の職業を網羅した、米国労働者に関する110,000件以上にのぼる13年間分の業務記録である。

 研究では5つのばく露群を設定した。この5つとは、1週あたりでの長時間労働(1週60時間以上の常態的な勤務)、1日あたりの長時間労働(1日12時間以上の常態的な勤務)、時間外労働、長時間の通勤(往復で1日2時間以上の通勤時間)、および時間外労働または長時間労働(前記4つのばく露のいずれかに該当する場合)。

 この研究によれば、ばく露群相互に排他性はなく、1つ以上のばく露に該当する仕事が多いことが推察された。

 また、米国では時間外労働の約19%から33%が事業者の要求によるものであることが明らかになっている。このレポートは、「労働者の疲労、ストレス、作業効率の低下、事故の可能性への影響という観点で言えば、義務としての時間外労働は特に危険性が高くなり、この傾向は特に看護や医療の専門職において顕著であることが複数の研究によって示唆されている」と指摘している。

 防止策の提案:この研究は、事故の危険性と管理方法の整備について、次のようなアプローチを提言している。

  • 定期的な休憩、時間外労働の必要性を低減するための作業プロセスの見直し、人員増による労働時間の削減など、職場における改革
  • 長時間労働のリスクについてのカウンセリングや教育、危険な状態にある労働者に対する定期的な健康診断、作業負担を軽減する人間工学面から設備の再設計など、事業者の負担による健康プログラム
  • 質の良い睡眠や栄養の確保、毎日の運動や健康への配慮、ドラッグやアルコール摂取の回避、必要に応じたサポートサービスの利用など、労働者個人による対処

 ただし、この研究は傷害リスクの低減におけるこのような対策の有効性の評価を目的としたものではないため、これにはさらなる研究が必要であるとしている。



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