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国際安全衛生センタートップ国別情報(目次) > アメリカ 2003年〜2008年におけるOSHAの戦略的管理計画

2003年〜2008年におけるOSHAの戦略的管理計画
(OSHA 2003-2008 Strategic Management Plan)

資料出所:OSHAホームページ
http://www.osha.gov/StratPlanPublic/strategicmanagementplan-final.html

(訳:厚生労働省国際室)


目次

第1章:任務とビジョン

                 
第2章:戦略の内容

                  
第3章:目標と戦略

               
戦略的ゴール1:
直接的な介入によって職業上の危険を減らすこと

戦略的ゴール2:
法遵守の支援、協力プログラム、強力なリーダーシップによる安全衛生文化の推進

戦略的ゴール3:
能力とインフラを強化することにより有効性と効率性を最大化すること

第1章 任務とビジョン

イントロダクション


 OSHAの戦略的管理計画は、労働省(DOL)の戦略計画を下支えするためのOSHAからのアプローチである。これは、2003年から2008年までの期間における優先順位の高い事項を記述したものであり、アメリカの納税者に対してOSHAが投資に見合うだけの成果を上げることを、成果主義に基づいて説明するものである。この計画は、OSHAが達成しようとすること、そしてそのために採用する戦略に関して、期待される成果を広く知らせるためのものである。OSHAは、この計画を状況に応じて微調整しつつ、これに基づいて年度ごとの計画の作成、予算の請求、年度ごとの活動実績の報告を行うとともに、OSHAの管理者とスタッフに目標の達成について責任を負わせるものである。

 この文書(計画)は、関係者や労働者に対して長期的な方向を示すために重要な計画の中の要素を提示することによって、次のような重要な問い、すなわち「OSHAは今後5年間の間にどのような成果を求めようとするのか、それを達成するためにはOSHAとしてどのような活動修正が必要なのか。」ということに答えようとするものである。

労働省(DOL)の目標と戦略との整合

 DOLは、労働条件の改善、有益な雇用、退職後の及び健康のための手当の確保、求職活動の支援、経済的な計測による諸事情の変化の把握によって、アメリカの労働者、求職者そして退職者の健康と福祉に重要な役割を果たしている。DOLは、次の3つの目標を持っている。


労働戦略目標


目標1:A Prepared Workforce(準備の整った労働者)
アメリカの労働者が職業上の機会をより得られるようにすること

目標2:A Secure Workforce(保障された労働者)
労働者及びその家族に対する経済上の水準確保を図ること

目標3:Quality Workplaces(質の高い職場)
安全、健康で公正な質の高い職場を実現すること



 OSHAは、アメリカの労働者の生命を守り、けがや疾病を防止し、健康を確保するためのプログラムを実施することにより、DOLのQuality Workplaces(質の高い職場)という目標の達成に非常に重要な役割を果たしている。これらのプログラムには次のようなものがある。
  • 労働安全衛生に関するガイダンスと基準を作成すること
  • 事業主、労働者とともに雇用の現場を監督すること
  • 中小企業に対してコンサルティング・サービスを提供すること
  • 事業主、労働者に対して、法令遵守に関する支援、「アウトリーチサービス(手を差しのべたサービス)(outreach)」、教育、その他の協力的プログラムを実施すること
  • 各州が行うコンサルティングのプロジェクトを支援するために相応の予算的補助を行うこと、及び労働安全衛生推進プログラムを認定すること
  • 重要な安全衛生に関する事項に関して他の機関や団体の関係を緊密にすること

 成果主義に強調をおいた労働省(DOL)の方針に沿って、OSHAの戦略的管理計画も重大な危険と危険な職場に焦点をおいて作られている。この計画では、次のようなことに重点をおいている。

  • 協力で公正、かつ効果的な法の執行を行うこと
  • パートナーシップを拡大し、自主的なプログラムを推進すること
  • 「アウトリーチサービス」、教育及び法遵守のための支援を行うこと

大統領の掲げた
項目ごとのイニシアティブ

(President’s Management
Agenda Initiatives)

1.人的資源の戦略的管理
(Strategic management of human capital)
2.競争原理に基づいた資源調達
(Competitive sourcing)
3.財政的に改善された活動
4.電子政府の推進
5.予算とそれに基づく活動との整合
 行政的な施策について、DOLは大統領の掲げた施策項目の実施を行っている。OSHAは、次の活動によって、これに寄与している。
(1)予算とそれに基づく活動との整合
(2)戦略的な人的資源の管理
(3)競争原理に基づいた資源調達先の把握
(4)財政的効率性の強化
(5)電子政府の推進により拡大された機会を企業活動の中に組み込むこと

OSHAの任務


 OSHAの任務は、職場における安全と健康を推進、確保し、職場で発生する死亡事故、けが、疾病を減少させることである。

 OSHAは、州という貴重なパートナーとともに、法や規則の執行、監督、コンサルティング・サービスの実施、法遵守に対する支援、「手を差しのべたサービス」、教育、協力的活動、及び基準やガイダンスの作成などによって、この任務を遂行しようとしている。効率性を高めるために、OSHAは安全衛生に関心を有するいくつかの団体とも協力している。


OSHAの任務は、「アメリカすべての労働者に対してできる限り安全で健康な状態を確保する」ということである。


1970年労働安全衛生法
(P.L. 91-956)より。


 この任務を達成することにより、OSHAは、労働者の生命を守り、生活の質の向上につとめ、アメリカの経済的なバイタリティの維持に貢献している。

2003年から2008年にかけてのビジョン

 この計画は、全体として今後数年間のOSHAのビジョンを示すものであるが、次のことは、OSHAがその戦略目標を追求することによって達成することをまとめたものである。

アメリカのすべての労働者が、労働安全衛生を推進していくことが、
アメリカにおけるビジネス、職場及び労働者の生活の向上、改善に
寄与するものであることを、理解すること。

第2章 戦略の内容

イントロダクション

 戦略的な方向と目標を設定するに際して、OSHAはまずOSHAの置かれている外部的及び内的な状況について包括的な分析を行った。このプロセスには、全国の安全衛生の状況の分析や過去、現在そして今後の動向の調査も含まれている。また、現在行っているプログラムや戦略についてアセスメントを行い、新しいあるいは従来とは異なった事項に対して優先度を置くことが適当かどうかという検討も行う。この集中的な分析のプロセスによって、戦略的目標をバランスよく設定するための、データに基づいた基礎資料が用意されるのである。アセスメントの結果は、OSHAの戦略的アセスメントという別々の文書にまとめられる。

戦略的な挑戦

挑戦1:OSHAは事業主及び労働者について、広範囲かつ多様な観察を行う。

 1971年にOSHAが設立されて以来、労働者の死亡事故は62%減少し、職業上のけがと疾病は42%減少した。同じ時期に、民間部門における被雇用者数と職場の数は、350万事業場、5600万人から、700万事業場、1億1400万人と2倍に増加している。労働者人口が増加している中での死亡事故、けが、疾病の減少は、注目すべき成果である。しかし、それにもかかわらず、報告される死亡事故、疾病は、これを受け入れがたいほど多いのである。2001年には、民間企業において5270名の死亡事故が発生した(9月11日事件での死亡を含めれば7534名)。2000年には、けがと疾病を合わせて570万名の報告がなされている。

 労働者が働く場所すべてに安全衛生上の危険が、さまざまな程度と態様を持って存在している。建設業や製造業のような業種では、他業種に比べて伝統的に危険が多い。同時に、あまり明白でない危険、例えば人間工学的な要因に起因する傷害、有害物質への暴露による障害などは、業種や職種を横断的に、ひそかにしかし深刻な脅威を与えている。

挑戦2:アメリカの労働者に関する人口動態的な変化と仕事の質の変化は、安全衛生に関する特別の挑戦となっている。
 アメリカの労働力は、この数十年で大きく変化した。年齢、性、人種、そして国籍の面でより多様性のあるものとなった。労働の成果は、物品ではなく多くはサービスとなってきている。大きくかつ固定化された産業において働く労働者の比率は小さなものになり、多くの労働者が、小規模で臨時的な仕事あるいは在宅の仕事をするようになってきている。契約に基づき、あるいはアウトソーシングにより、又はパートタイムで働く労働者が増えている。この傾向は、今後数十年も続くと考えられ、施策についてこれまでとは異なった戦略が必要である。

 将来は、労働力の中での若年労働者と高齢労働者の比率が高まると考えられる。今後の10年間では、16歳から24歳の若年の人口が増加し、25歳から54歳までの人口は減少する。55歳以上のグループはもっとも増加の程度が大きい。国立労働安全衛生研究所(NIOSH)の調査によれば、若年層の80%は学校を卒業する前に何らかの仕事に就くという。さらに今後の20年間では、熟練したあるいは経験のある労働者に対する需要が増大するにつれて、高齢の労働者が貴重な労働資源となってくることが予想される。このような人口動態学的なシフトは、災害発生率にも影響し、安全衛生に関する戦略的な問題を提起するのである。 例えば、児童労働法は10代の少年を非常に危険な仕事に従事させることを禁止しているにもかかわらず、少年の時間あたりの災害発生率は大人のそれよりも高いのである。一方、高齢労働者は、けがをした場合、一般的に職場への復帰には長い時間がかかるものの、労働者の平均よりもけがや疾病の率が低いのである。

 また、移住労働者や「手を差しのべるのが難しい」労働者が増えてきている。多くの移住労働者は文字が読めず、英語での指示を理解することができない上、危険な仕事についている場合が多い。「手を差しのべるのが難しい」労働者とは、若年労働者、1カ所に数日しかおらず移動してしまう労働者、臨時の労働者、そして中小の自営業主である。これらの人口動態的な傾向、職場の傾向は、安全衛生プログラムの実施を複雑にし、法の執行、訓練、情報の提供のシステムをこれまでとは違ったものとしている。

挑戦3:死亡事故、疾病、けがの動向は新たな安全衛生上の課題を提起している。これらは、建設業の安全衛生、運輸業の安全衛生、職場の暴力などである。
 毎年、建設業では他のどの業種よりも多くの死亡事故が発生する。建設業における死亡事故の発生率は一般産業の3倍で、2000年では減少となったが、それまでの1992年から1999年までの間変わることがなかった。「手を差しのべるのが難しい」労働者や事業主の存在によって複雑になっているこの状況によって、OSHAは新たな戦略を必要としている。

 さらに、死亡事故の頻度が高いいくつかの業種の中で、もっとも重大なリスクとして、職場での暴力と交通車両による事故がある。これらは、OSHAが従来取り組んできてこなかったものである。さらに詳しく言えば、職場での暴力と交通車両による事故は、この2つで職業上の死亡事故の45%を占めるのである。交通事故による死亡は一般的に運輸省の管轄である。OSHAの守備範囲は、仕事の遂行に関係した事故と建設工事の区域内での交通事故に限られる。これらの問題のあいまいな性格、また所轄範囲の問題もあり、リスクを減少させるためには、他の連邦機関、州やその他の地方の機関との協力が必要である。


挑戦4:安全衛生における新たに浮かび上がってきた課題及び緊急事態に対する準備における課題では、計画段階において措置が必要であるという新たな挑戦を示している。
 労働者は多くの安全衛生上の課題に直面するが、OSHAは将来の方向性を定める際にはこれらの課題を考慮しなければならない。健康問題について言えば、これは職業性喘息、化学物質に対する複合暴露、アスベストや人造ガラス繊維などの極微少粒子に対する暴露による脅威がある。安全問題では、これらは無線通信やHDTVのタワー建設での転落、建設業における騒音、増加する移動労働者に対するアプローチの困難さなどである。

 緊急事態への準備の問題も、関心を向け資源を配分することが必要な主要課題である。OSHAは、2001年9月11日の攻撃及び炭疽菌の事件ではこれらの対応に大いに成功した。OSHAは、最初の対応者、救助作業、クリーンアップ作業に対して、危険の評価、モニタリング、汚染除去などの面で安全衛生上のサポートを行った。OSHAの準備体制をさらに充実するため、努力が続けられている。この分野の仕事は計画の段階を通じて継続的に関心を有していることが必要である。

挑戦5:OSHAは動向、新たに浮かび上がってきた問題またプログラム戦略に対する情報収集のシステマティックなプロセスを有していない。
 現状に対するアセスメントの中で、OSHAの「情報能力」を高めなければならないという重大な内部的問題が浮かび上がった。特に、OSHAはプログラムの有効性を理解し、新たな動向を把握しこれに対応する能力を有していなければならない。これらの条件を満たすためには、分析のためのインフラストラクチャーを開発し、タイムリーで正確なデータと適正な分析ツールにアクセスできるようにしなければならない。
 これらの重要な事項は、徹底的とはいかないまでも、OSHAの既存のプログラムを分析し、OSHAの目標と戦略を示してくれる。

OSHAのプログラム

 OSHAは、1100人の監督官を含む2300人以上の奉仕精神旺盛なスタッフから成り立っている。年間予算は約4億5400万ドルである。OSHAは26の州(3100人以上のスタッフ)とパートナーシップを結んでおり、彼らは彼ら自身の労働安全衛生プログラムを持っている。これらの州は、州の法律のもとにプログラムを運営しているが、連邦機関であるOSHAと「少なくとも同等の有効性」を持ってプログラムが実施されることを確保するための相応の補助金と指導をOSHAの許可のもとに受けつつ行っている。これらのプログラムには、その地方に特有な問題に対処するために一定のフレキシビリティを有している。

 この前の戦略的計画を策定以来、OSHAのプログラムは、パートナーシップやアライアンスなどの遵法のための支援や協力的プログラム、また認定プログラムなどに拡大してきた。これらのプログラムの拡大は、安全衛生の専門家の間で予防的な措置を拡大する必要性が認識され、なかなか解決できない問題の根本の原因に関心を向けようとすることの現れである。

 職場の安全衛生を確保しこれを改善するためのプログラムを表1に示す。

表1:OSHAのプログラム
法の執行 OSHAは事業場を監督し、安全衛生上の法違反には勧告(citations)と罰則を課す、協力で公正かつ効果的な法の執行行為を行っている。監督の優先順位としては、報告に基づく切迫した危険、死亡あるいは被害の大きな災害、労働者の申告、内部申告に基づく調査、政府機関からの照会、問題のあるターゲット領域などである。
現場でのコンサルティング・プログラム 州を通じて、OSHAは危険性の高い業種の中小企業に対し無料のコンサルティング・サービスを行う。これは、事業主が職場内の危険を発見、是正し、安全衛生管理システムを構築することを支援するためである。
協力プログラム OSHAは、事業主、労働者、労働者の代表、専門の団体、労働団体と自主的な関係を持つ(VPP、戦略的パートナーシップ、SHARP、アライアンス)。これは、労働者の安全衛生を推進しようとするこれらの機関等の努力を支援し、理解を示すためである。これらのプログラムは、効果的な安全衛生管理を推進し、最良の安全衛生の措置をこれらの機関等と共有しようとするために、OSHAのもてる資源を活用しようというものである。
法遵守への支援、「アウトリーチサービス」、訓練、情報提供 OSHAは、法遵守のための支援、「アウトリーチサービス」のための諸手段、各種サービス、教育訓練教材、教育訓練コースなど幅広い支援事業を開発、提供している。事業主と労働者が彼らの義務、彼らが得ることのできる機会、安全衛生に関する事項についてよりよく理解するために、OSHAは教育センター、1-800 number assistance、双方向のe-tools、内容に富んだウェブ・サイトなどのサービスを提供している。
基準とガイダンス OSHAは、労働安全衛生に携わる人々のために、また事業主と労働者が安全衛生に対する理解と意識の向上を図るために広範囲にわたるガイダンスや基準を作成しこれの普及を行っている。

OSHAの戦略的方向

 どんなものにも改善の余地はあるが、OSHAのプログラムはアメリカ全体に対して役に立っている。OSHAの設立以来、死亡事故やけがの発生率は劇的に減少した。

 DOLとOSHAは、労働者を守ることにコミットしている。しかしここ数年、DOLとOSHAは、大多数の事業主は安全で健康な職場環境を確保することに真剣に取り組んでいるということを理解して、よりバランスの取れた安全衛生へのアプローチを取ろうとしている。OSHAは、このバランスの取れたアプローチを続けていく方針である。法遵守のための支援、「アウトリーチサービス」、教育訓練、協力事業は、事業主及び労働者が安全で健康な職場環境を実現するための支援となり、一方、安全衛生規則の強力で公正かつ効果的な法執行によって、事業主が安全衛生に取り組む際のインセンティブを与えるのである。これらのプログラムはOSHAの効率性を高め、新たなに出現してくる問題に対処するために必要に応じて拡大されまた修正される。前述の大きな挑戦に対処するために、OSHAの目標は次の命題を反映したものとなっている。

最大の費用対効果をもたらす分野にOSHAのもてる資源を集中して投入すること
 OSHAは長年にわたって発展し洗練されてきた能力を有している。多数かつ多様性に富む事業場に対して、OSHAはその戦略的な監視能力を高めることによって、重大なリスクとその原因を突き止め、リスクを最小にするための適切なプログラムを実施して行かなければならない。
直接的な措置と協力的アプローチを併用することによって、安全で健康な職場を大切にするアメリカの文化を創造していくこと

 職場の安全衛生プログラムを効果的に管理、実施していくことは、それによって労働災害や職業病が減少することによって、個人や企業に有意な価値を与えるものである。このようなことが行われている職場では、これが行われていない職場に比べて災害や疾病の発生率はずっと低い。例えば、自主的予防プログラム(VPP)に参加している事業場は、同業他社に比べてけがや疾病の発生率は54%も低いのである。
現在もそして将来もOSHAが労働安全衛生の責任を果たす国内のリーダーであるということを確保していくこと
 国内のリーダーとしての責任を果たすにおいてOSHAが有効性を保っていくためには、OSHAが広く尊敬され、技術的に能力が高く刷新的で、職場の安全衛生を改善していく上で「leading the charge」していなければならない。状況アセスメントの結果によれば、OSHAが効果的にその努力目標を定めその任務を達成するための信頼を得るのに必要な情報収集と解析能力が十分ではないという指摘があった。

第3章:目標と戦略

労働省の戦略目標の達成

 OSHAの戦略マネージメント・プランは、労働省の戦略計画の枠組みの一環として作成されたものである。労働省の計画を支援していくために、OSHAは下記の図1に示すとおり2つの活動実績の目標を設定した。これは、政府活動実績結果法(Government Performance and Results Act)に基づいて労働省に報告される。これらの2つの目標は、死亡事故、けが、疾病の大幅な減少の目標を特定的に定めたものである。

 その活動と災害や疾病の減少という成果との関係をよく示すために、OSHAは計画の期間中特定の優先順位の高い領域については追跡調査する。これらOSHAが強調を置く領域は、活動の結果と新たに関心を引くことになった事項を基づくに毎年分析、見直しをする。2003年〜2004年の重点事項は、下の図2に示している。

図1:労働省活動実績目標

123123
DOL Performance Goal #3.1C 2008年までに職場での死亡災害を15%減少する。
DOL Performance Goal#3.1D 2008年までに職場でのけがと疾病を20%減少する。


図2:2003年〜2004年の死亡事故の重点領域

123123重点領域 死亡事故の減少
死亡事故の減少(トータル) 2%
1.建設業での減少 3%
2.一般産業での減少 1%

図3:2003年〜2004年のけが、疾病予防の重点領域

重点領域 けが、疾病の減少
けが、疾病の減少(トータル) 4%
1.建設業 4%
2.一般産業 4%
3.高災害率・重篤度の高い産業
    造園、園芸 4%
    石油ガス田 4%
    青果保存 4%
    コンクリート、石膏、プラスター製品 4%
    高炉、基礎鉄材製品 4%
    船舶建造修理 4%
    倉庫貯蔵 4%
4.製造業、建設業での切断事故 3%
5.人間工学 4%
6.血中鉛濃度 4%
7.シリカ関連の疾病 N/A*1)


OSHAの目標

 前述の目標を達成するために、OSHAは今後数年にわたるOSHAの努力を目安にした3つのゴールを設定した。
  1. 直接に介入することによって職業上の危険を減少すること

  2. 法遵守の支援、協力プログラム、強力なリーダーシップによる安全衛生文化の推進

  3. 能力とインフラを強化することによるOSHAの有効性と効率性を最大化すること
 次に示すOSHAのゴールは労働省の活動目標と整合性と取った活動目標と、その達成のための手順を示した戦略からなっている。上記2つのゴールは、以下に示す「plan-do-review」のパターンからなっている。3番目のゴールは内部的なものであって、pressing managementとoperational challengesを戦略的なレベルにまで引き上げるものである。


戦略的ゴール1:
直接的な介入によって職業上の危険を減らすこと

 多くの点について、OSHAの成功は事業主そして労働者とのとの1対1の相互関係にかかっている。この介入には、職場の監督、事業主に対するコンサルティング、支援の供与、教育と意識向上プログラムがある。直接の介入は不安全、不健康な職場条件に対処しようというものである。

 OSHAはこの前の戦略的プランにおいて設定された長期的なプライオリティに基づいて活動をしてきた。このプランにおいて定められた死亡事故、けが、疾病の減少目標を達成するために、OSHAは直接介入が必要なセクターと危険の把握のためのよりダイナミックなアプローチを採用することになる。2003年〜2004年の重点領域は図2及び図3に示している。これらのプライオリティは再度検証し必要に応じて修正され、毎年通知される。

 よりダイナミックなアプローチを採用しこれに従って活動を行っていくための特定的な戦略は次頁に示す。

このゴールを達成するためにどの程度の前進が得られたか、アセスメントすること ベースライン
02年9月30日
目標期日 目標数値
1.就業が不可能になったけがや疾病で直接介入を受けたものの発生率の減少 2000年〜2002年の平均 年ごと 5%
2.職場を訪問して危険を減じた数
a. 重点領域の総数
b. 鉛
c. シリカ
d. 切断
e. 人間工学

11,322/9,369
524/982
549/1,556
10,249/6,831
2004年に設定
年ごと NA*1)

戦略1-1:直接介入のインパクトを最大化するための目標設定の改善
アクション:
  1. 直接介入のための最良の目標を発見するために毎年データを改善すること
  2. プライオリティと効果的な介入のアプローチを毎年公表すること
戦略1-2:対象の職場に介入して危険を減じること
アクション:

  1. 死亡事故の発生した職場、労働者からの不平のある職場、災害発生率の高い職場などを監督する。
  2. 危険の大きい職場に対してコンサルティング・サービスを提供する。
  3. 危険の大きい職場を意識向上のためのプログラムへの参加を促進する。
  4. 内部告発者に不利益が生じないように措置を取る。

戦略1-3:直接介入の効果性を高めること
アクション:

  1. 死亡事故、けが、疾病の発生に対する効果を探るために直接介入の結果と効果を分析する。
  2. 直接介入の効果を高めることが期待される新たな対象領域の決定など修正の必要性を把握しこれを修正する。
  3. ガイダンスや基準の有効性を分析し、変更の必要性を探る。
戦略的ゴール2:
法遵守の支援、協力プログラム、強力なリーダーシップによる安全衛生文化の推進

 OSHAのプログラムはすべて死亡事故、けが、疾病を減少するためのものであるが、そのアプローチの仕方は問題の内在する原因の状況と性質によって異なっている。直接介入は、事業主と労働者との1対1の関係から成果を引き出そうというものである。職場の安全衛生を確保するためには直接介入は常に必要である。同時に、事業主、労働者、その他の関係者が職場の安全衛生文化を大事に考えることによって長続きする解決策が得られる。OSHAの考えによれば、このゴールの実現のために振り向けられた資源は、多くの人に対して安全衛生の価値を植え付け、それを皆が求めるようにすることによって、OSHAの施策の効果を何倍にもするのである。このゴールを達成することは、協調的な努力、OSHAの法遵守に対する支援技術、刷新、安全衛生に対する継続的な献身的努力が必要である。

このゴール達成のために前進がどの程度なされているかについてのアセスメント ベースライン
02年9月30日
目標期日 目標数値
1.意識向上のためのプログラム
  1. VPP  
  2. SHARP
637
396
年ごと 2003年9月30日までに125の新たなプログラム参加
2.以下の施策の推進
  1. パートナーシップ
  2. アライアンス
169
10
年ごと 2003年9月30日までに100の新たなパートナーシップとアライアンス
3.OSHAの「手差しのべ事業(outreach)」と教育訓練プログラムへの参加者の増加
  1. 総数
  2. YOUTH
  3. 移住事業主と移住労働者
  4. 中小企業 
  5. 職場内暴力 
  6. 運輸業 
  7. 目標とされたSIC/NAICS 
  8. 人間工学
第1年目にベースラインを設定 年ごと 1年ごとに10%の訓練修了者数の増加
4.アメリカの事業場における安全衛生に対するシステマティックなアプローチの推進のための計画 計測法はない。 2003年6月 2003年6月までに計画の環境
5.法への遵守のためのOSHAスタッフの支援技術と能力の向上のための計画 計画未作成 2003年6月 2003年6月までに計画の環境
6.緊急事態対応/祖国安全計画の実施と組織の能力向上 計画未作成 2003年12月 2003年12月までに計画の環境

戦略2-1:法遵守のための支援、リーダーシップ、アウトリーチ及び協力プログラムが最大のインパクトを与えるような機会を捉えるOSHAの能力の向上
アクション:

  1. これらの領域の情報の収集、追跡、分析の改善
  2. 次の分野の安全衛生の相当程度の改善をするための機会を捉えること
    • 若者の死亡事故、けが、疾病
    • 移住労働者その他の行政の手が届きにくい事業主と労働者
    • 交通死亡事故
    • 職場での暴力による死亡事故
    • 中小企業、特にOSHAが重点を置く分野での中小企業
    • 安全衛生上の保護と性質として安全衛生を考慮に入れたものを作り出していくための「設計による安全」キャンペーンの可能性
  3. いろいろな機会ごとに分析を行い、重点事項、プライオリティ、目標の設定、また毎年好事例を公表すること

戦略2-2:アメリカの職場における安全衛生文化を広めること
アクション:

  1. 法遵守のための支援、システマティックなアプローチに関するOSHAスタッフの技術と能力の向上
  2. 良好な安全衛生を実践している組織との関係を緊密にすること
  3. アウトリーチと教育訓練コース、ガイドラインの交付、パートナーシップとアライアンスの関係を構築しつつ、人間工学に関する諮問委員会と協力して、人間工学におけるOSHAのインパクトを増大させること
  4. 法遵守の支援、一貫性のある目標を定めたコミュニケーションのための戦略を通じて、ビジネス、職場そして人々の生活の中で安全衛生の一つの価値としての理解を向上させること
  5. 意識向上のプログラム、パートナーシップ、アライアンスを推進することによって安全衛生の価値を上げること
  6. 緊急事態対応プログラムの実施数の増加させること、国家安全省にOSHAの持つ知識を提供し支援すること
  7. 安全衛生に関するOSHAの知識を向上させるためにNIOSHとの関係を密にすること。安全衛生文化を広めるためのOSHAの能力を向上させるためにその他の政府機関(EPA、SBA、MSHA、DOTなど)との関係も緊密にすること。

戦略2-3:安全衛生の推進のためのOSHAのアプローチの有効性を改善すること
アクション:

  1. 死亡事故、けが、疾病発生率に与えるインパクトをアセスメントするために法遵守支援、協力プログラム、リーダーシップの結果とその有効性を分析すること
  2. コンサルティングサービス、法遵守支援、リーダーシップ活動のインパクトを増大させる新たな目標領域の設定、新たな訓練コースの開発など、計画の修正の必要性の発見と修正の実施を行うこと
戦略的ゴール3:
能力とインフラを強化することによりOSHAの有効性と効率性を最大化すること

 前述のゴールを達成するためには、OSHAは急速に変化する社会での事象を把握しこれに対応していく必要がある。状況分析によって、OSHAの内部活動を強化することでいくつかのことが可能となることが分かった。特にOSHAは、情報収集、分析評価能力を改善する必要があり、安全衛生上の問題に対処し安全衛生に対するアプローチの方法を検討し、OSHAの情報技術の使用の改善していくために必要な知識、技術、多様性と能力をOSHAのスタッフが有するようにする必要がある。アセスメントにおいて把握された事項は以下に示す戦略とアクションにより対処する。


このゴール達成のために前進がどの程度なされているかについてのアセスメン 目標期日 目標数値
1.情報処理能力改善のための業務計画の作成 2003年3月 2003年3月までに計画作成
2.労働衛生に対するインパクトを増大させるための計画作成 2003年3月 2003年3月までに計画作成
3.人的資源に対するアセスメントを終了し、アクションのための勧告を行う。 2003年12月 2003年12月までに計画作成
4.資格訓練を受けたスタッフ数の増加比率 年ごと 10%
5.現行基準の有効性、ベネフィット、負担がどうなっているかについて毎年レビューする。 Regulatory agenda timeframeごと 年2回
6.スケジュールに従った企業の構築(architecture)計画の実施

7.大統領の掲げた5つのイニシアティブについてのスコアが「グリーン」を達成、維持すること
グリーン・スコア

戦略3-1:OSHAの情報収集、分析、目標設定そして活動実績測定の能力を向上すること。
アクション:

  1. タイムリーで正確な安全衛生のデータへのアクセス能力の向上(代替データの把握を含む)
  2. 今後問題となってくる安全衛生上の事項の発見とモニタリングのためのOSHAの能力の向上
  3. プログラムの効果と結果を測定するためのOSHAの能力の改善
  4. 顧客とのコミュニケーションを情報ソースとして使用すること
  5. パートナーである州、NIOSH、BLS、その他の安全衛生関連団体、研究学術団体との協力と情報の共有
戦略3-2:労働衛生上に与えるOSHAのインパクトの向上
アクション:

  1. 現在の健康に関する戦略と進展状況のアセスメントを実施すること。OSHA施策の有効性向上のための枠組みを定めること。
  2. 疾病減少と成果測定における進捗状況をモニタリングする能力の改善
戦略3-3:人的資源の戦略的管理の改善
アクション:

  1. 包括的な労働者の技能のアセスメントと人的資源・労働力開発計画を通じて、OSHAの任務を達成するための技術、能力そして多様性を確保すること
  2. 継続計画の実施による将来のリーダーシップの確保
  3. 専門的能力向上のためのインセンティブを付与することによる将来の技術力の確保
  4. 職員のリクルート、能力開発維持、多様性の確保
  5. OSHAの中の効果的な安全衛生プログラムの実施
戦略3-4:基準とガイダンスが有効で現在の問題に対処できるものであることの確保、安全衛生推進のための好事例の反映
アクション:

  1. regulatory agendaに従った基準の開発
  2. 既存のOSHA基準のレビュー、アップデイト、改正
  3. 特に中小企業における労働者の安全衛生と事業主のコストについて、既存の基準に対するインパクトをアセスメントすること。より負担の少ない代替策を開発すること。
  4. 基準とガイダンスがタイムリーで、顧客を志向したコミュニケーション、訓練、支援によってサポートされていることを確保すること
戦略3-5:OSHAの情報技術の利用可能性、有用性の向上
アクション:

  1. OSHA情報の品質、タイムリー性、利用可能性の向上
  2. OSHA情報の保護とプライバシーの強化
  3. 移動して就業する労働者に対するITサポートの改善
  4. 情報共有能力とプロジェクトやイニシアティブとの協力の推進
  5. アクセスできる研究と情報の範囲を多様化させること
戦略3-6:OSHAのプロセスと活動の効率化
アクション:

  1. 効率性を志向しつつ活動とプロセスのコストとベネフィットの測定をする能力を向上させること。
  2. 契約に基づく活動を増やすこと
  3. OSHAの予算と活動実績に関する情報をつき合わせること
  4. 財政的管理の強化

*1) シリカ関連の疾病は潜伏期間が平均20年であるため、戦略的管理の期間において、減少目標を設定することは適当でない。