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職場における突然の心停止を救済する

資料出所:OSHAホームページ
http://www.osha.gov/Publications/osha3185.pdf

(仮訳 国際安全衛生センター)



心停止からの生存率の向上
アメリカでは、年間、22万件の突然の心停止による犠牲者が存在し、そのうち約1万件は、職場で発生している。緊急医療チームの到着を待っていた場合、生存率はたった5〜7%であるが、直ちに除細動を行った場合、心停止から1年後の生存率は60%に向上することが明らかになった。


自動体外式除細動器
自動体外式除細動器(AED: Automated External Defibrillator)は、心臓のリズムを分析し、心拍を正常に回復させるために、心室細動を起こした犠牲者に電気ショックを与えるための医療用機器である。突然の心停止の原因のほとんどは、心室が無秩序に収縮する状態になる心室細動によるものである。


突然の心停止
突然の心停止は、心室細動が起こるとき、あるいは心臓が完全に鼓動を止める時に発生する。治療を行わないと、犠牲者は倒れ、意識を失い、無反応になり、そして死に至る。多くの犠牲者は心臓病の前歴がなく、予兆なしに突然心停止に襲われる。


突然の心停止の原因
心臓発作
感電
窒息(閉塞空間のような作業環境において、酸素欠乏により起こる意識喪失と死亡)


職場にAEDを置く理由
労働者が、仕事中、突然の心停止におちいるかもしれない。
現場に設置されたAEDは一刻を争う貴重な時間を無駄にせず、緊急医療チーム(EMS)のスタッフが到着する前に使用可能なため、生存率が向上する。
心室細動を起こした心臓のリズムが、電気ショックを与えただけで正常に戻る可能性がある。
AEDは、コンパクト、軽量、持ち運び可能、電池式、安全、そして取扱いが簡単である。


AEDの設置場所
3〜5分以内に確実に対応できる位置
組立工程やオフィスのような、多くの労働者が働く場所
閉塞空間の近く
電動装置が使用されている場所
雷の危険性がある屋外の作業場
心臓発作の徴候を示した労働者が治療する保健室
会社の運動施設やカフェテリア
海上油井基地、建設プロジェクト、船舶、送電線、およびエネルギーパイプラインのような遠隔現場


AEDプログラムにかかる費用
1機器あたり1200ドルから3000ドル
その他にトレーニング費用、年1回の再トレーニング費用、および管理費


AEDトレーニング
以下の事項に対応できるよう、従業員を訓練する。
突然の心停止を認識し、緊急医療チーム(EMS)スタッフに知らせる。
心肺蘇生法(CPR: Cardiopulmonary resuscitation)を実施する。
AEDで早期に除細動を行う。
EMSのスタッフが到着する迄に、患者へのケアを行う。

さらに詳しい情報については、OSHAのウェブサイト(www.osha.gov)、または以下の機関のウェブサイトを参照のこと。
American Heart Association
American College of Occupational and Environment Medicine
American Red Cross
Federal Occupational Health
National Center for Early Defibrillation
National Safety Council


成功例


American Heart Associationからの報告

暖房・空調装置の製造に携わる41才の労働者が、仕事中、突然、心停止に見舞われた。3回の電気ショックと心肺蘇生で、4分後に意識を回復した。幸いにも、彼の会社はAEDを設置しており、対応する者は訓練を受けていた。EMSスタッフの到着までに、蘇生しており、病院に搬送された。従業員は、命を失わずに済んだ。

塗料・ガラス・化学薬品製造工場で働く62才の労働者が、オフィスの階段を上がった後に、突然の心停止に見舞われた。隣の部屋に居た従業員が転倒する音を聞きつけ、工場の緊急対応チームに知らせた。彼女はAEDを受け、2分もたたないうちに回復した。ちょうどその時、EMSスタッフが病院へ搬送のために到着した。彼女は、退院後、次のようなメモを会社に送った。“会社は、なんて賢いお金の使い方をしたのかしら!”と。

自動車製造工場の労働者が、製造工程での仕事中に突然倒れ、意識を失い、そして呼吸が止まった。工場の救護チームが対応し、AEDで2回ショックを与えた後、その従業員の心臓は動き始め、脈が戻った。今日、彼が元気でいるのは、同僚の素早い対応と、AEDの設置やトレーニングを含む会社の緊急対応プランのおかげである。


National Institute for Occupational Safety and Healthからの報告

30才の建設労働者が、建物改築中、非常階段に立ち両手で金属のパイプを握っていた。パイプが高圧線に触れ、労働者は即座に転倒した。約4分後、救急隊が到着し心肺蘇生法(CPR)を始めた。6分以内に救急隊は除細動を行い、彼の鼓動は元に戻って病院に搬送された。彼は意識を取り戻し、2週間以内に退院することができた。


AEDは命を救う
これらの機器は、職場はもちろん公共の場においても命を救うことを実証した。あなた方や、あなた方の従業員に、同様の役割を果たす機器である。どうぞ、職場にAEDの設置をご検討下さい。