研究開発と今後有望な技術
紫外線ランプは日焼けを起こす
資料出所:NSC発行「Safety Focus」2000年3,4月号
(訳 国際安全衛生センター)
紫外線照射は次のような理由から、バイオセイフティキャビネットの最も効果的な殺菌法とはならない。
- 管/光線カバーにたまったほこりが光線の強度を弱めかねない。
- 管の耐用期間が経過するにつれて、紫外線の効果が弱まる。このように効果が弱まると、培養組織などの汚染につながりかねない。
- 使用者が紫外線の殺菌力に頼りすぎて満足し、他の消毒法を使用しなくなる。
- 紫外線の使用法を誤ると、重度の日焼けの原因になりかねない。
この結果、紫外線設備のないバイオセイフティキャビネットを指定しているところもある。
充分な訓練を受けていないバイオセイフティキャビネット使用者の事例
二人の専門技術者がIIA型バイオセイフティキャビネットの清掃作業を課された。このバイオセイフティキャビネットは近代的な動物飼育設備で、遺伝子導入マウスのかごを交換する場所として使用されていた。専門技術者はバイオセイフティキャビネットの作業面下のフォームプレフィルターの先に落ちた敷き藁をHEPAフィルター(注)のついた電気掃除機で掃除する作業に入る前に、バイオセイフティキャビネットのモーターのスイッチを切った。
(訳注)HEPAフィルターとは、微生物等の除去に使われる高性能微粒子除去フィルター
問題のバイオセイフティキャビネットでは、ガラスのサッシに取り付けられた設備から照明が取られていた。蝶番で取り付けられたサッシを外側に開けるとバイオセイフティキャビネットの内側に手が届きやすくなるが、それとともに照明設備が動くので、内部に照明が行き届かなくなる。 専門技術者はこうした照明不足を解消するために、「紫の光線」を点灯することに決め、頭をバイオセイフティキャビネットの中に20分間入れたまま電気掃除機による清掃を行なうとともに、二酸化塩素を放出する殺菌剤を内側の表面に散布した。 この作業を行なってから約10時間後の夕刻、専門技術者が二人とも救急室を訪れ、眼や顔面の痛みと火傷のような感覚を訴えた。症状は呼吸器には及んでいないとのことであった。ひとりは顔面にかなり重度の「日焼け」のような症状が出て、その後数日間はおびただしく皮が剥けた。 設備安全担当部門は翌週、バイオセイフティキャビネット使用者全員を対象に、全員参加ののバイオセイフティキャビネット研修を実施した。設備安全担当部門は施設内の獣医と動物施設責任者の承認を得て、バイオセイフティキャビネットの紫外線灯を蛍光灯の可視光線に交換するとともに、換気の悪い状況では二酸化塩素を放出する殺菌剤の使用を禁止した。 バイオセイフティキャビネットメーカーの技術担当者との話し合い(最近のABSA会議におけるもの)では、穴の開いたプレフィルター支持板を利用することが可能で、これにより、敷き藁がバイオセイフティキャビネットの内側に落下するのをさらに食い止めることができるということが判明した。
出典:MIT生物安全性事例報告グループ(1999年10月29日) ユージン・コール
NRAO-NM
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