このページは国際安全衛生センターの2008/03/31以前のページです。

国際安全衛生センタートップ国別情報:国際機関ILO資料 国際化学物質管理ツールキット > ガイドライン(草案)

資料国際化学物質管理ツールキット
International Chemical Control Toolkit

ILO(国際労働機関)− SafeWork
Chemical Control Banding
(仮訳 国際安全衛生センター)

掲載日:2008.02.12

ILO(国際労働機関)
化学物質管理ツールキット
ガイドライン草案

セーフワークは本草案をさらに向上させるためのご意見を承ります。

Eメールsafework@ilo.orgまたは本ページの下部の住所へ郵送にてコメントをお送り下さい。

International Labour Office http://www.ilo.org/safewok

4 route des Morillons
1211 Geneva 22, Switzerland


序文

本ガイドラインは、開発途上国における中小企業(SMEs)のために作成された「作業場における化学物質管理ツールキット(CCTK)」の基本概念を説明するものである。この資料は、英国・米国・オーストラリア・南アフリカおよびアジアからの代表と「国際労働衛生学協会(IOHA)」が召集した産業衛生の専門家のチームにより開発されてきたものである。有害化学物質の管理について、小企業の法令遵守を促進するために「英国安全衛生庁(HSE)」が開発してきた「COSHH基本事項」(*1)が、このCCTK開発のモデルとして用いられてきた。本稿はそのガイドラインの準備段階のものであり、提案された内容を試用し、また確立するための国際的な専門家による追加の作業が行われつつある。従ってこのガイドラインは、今後改善されることがあるものと了解されなければならない。

専門家チームの事務局は英国のHSEが担当した。このチームは以下の専門家より成る。:Steve Maidment(HSE/BIOH, UK); Noel Tresider (AIOH, South Africa); Rob Ferries (AIOH, South Africa);Richard Gillis (AIOH, representing South East Asia employers); Jerry Lynch (AIHA, USA);Carole Sullilvan (HSE, UK Secretariat); Isaac Obadia (ILO SafeWork)

本ガイドラインの主な対象は、職場での化学物質によるリスクの防止と削減いう課題に対して、簡単で実用的な指針を必要とする者である。「化学品の分類および表示に関する世界調和システム(GHS)(*2)」に基づいた包括的リスクアセスメントを行う際に、化学物質の使用者がばく露の状況に応じた管理をするにあたり、適切な手引きとなるように開発されてきた。この手引きは、一連の作業指針シートによって構成されており、目的を達成するための、より簡単でまた実用的な方策を提供しうるものであると信じている。このツールキットをより多種類の言語に翻訳するため、作業指針シートは、用語集と並行して開発されてきた。

ツールキットは、労働人口の大部分の健康障害を防止するための管理方法を提供できるようにデザインされている。しかし、どの労働人口においても、特定の有害物質にばく露した時、より十分な保護を要する高齢労働者ならびに産齢期または妊娠中の女性のような影響を受けやすい一群の人々が存在する。これらの影響を受けやすいグループについては、より厳重なな対策が賢明であり、そうすることで有害物質との接触が回避できるか、もしくはより質の高い管理を提供することができよう。この追加の管理は、本ツールキットによる標準的な提示を超える厳しい管理方法を採用することにより提供することが出来るものと考える。

職場において使用する化学物質の環境中への飛散の抑制は、健康障害が起こるリスクを回避し、より良好な作業環境とするためのものであったが、現在では、安全(火事や爆発)および環境へのリスクも考慮することが求められている。ツールキットにおいては、これらのリスクに対する基礎的な助言も提示しているが、これらの分野での将来の開発作業がさらに進めば、より充実したものになるであろう。

開発途上国では農薬が広範囲にわたって使用されているために、本ツールキットにおいては、化学物質に対する指針シートの使用を避け、一連の農薬に対する作業指針シートへ直接リンクしている。これにより、農薬使用者にとって、ツールキットの扱い方が簡潔となるはずある。

(*1)http://www.coshh-essentials.org.uk

(*2)http://www.unece.org/trans/danger/publi/ghs/ghs.html


適用の範囲

  1. 作業中に定期的に使われる多くの物質は化学物質を含んでおり、それらは正しく扱われていても害を及ぼすことがある。これらの物質は、固体または液体状であり、またペンキ、ニス、接着剤、印刷用インク、洗浄液、燃料、肥料、飼料添加物や農薬、並びにそれを扱う化学工場で用いられている物質であろう。このツールキットは、使用している化学物質が分類され、またその製品ラベルまたは化学物質等安全データシート上で分類が示されて、これらの化学物質をいかに安全に取り扱えるかについての助言を提供している。ツールキットは一般的には工程上で発生するダストやフュームには適用されないが、ツールキットで説明されている解決策の多くはこれらの問題を管理するにあたり、効果的に利用することが可能である。
  2. このツールキットは、母集団的な違いには関係なく大多数の人口の健康を考慮している。しかしどの母集団内でも、特定の有害物質にさらされた時より十分な保護を必要とする児童または妊娠中の女性のような影響を受けやすい一群の人口というものがあるだろう。これらの影響を受けやすいグループには、より予防な取り組みをすることが賢明であり、また有害物質との接触を回避させるか、もしくはより質の高い管理を行うべきであろう。この追加の管理は、ツールキットからの標準的な提言以上の厳しい管理を適用することで遂行が可能であろう。
  3. ツールキットを実行するためには、5つのステップを経ねばならない。各段階で集まった情報は添付書1に示すチェックシート上で編集されている。以下のページは各ステップでいかに対処すべきかを示す指示を記載している。
ステップ1
有害性分類を調査し、該当する有害性グループを決定する。
ステップ2
その物質の使用量を調べる。
ステップ3
その物質の空中に飛散する程度を調べる。
ステップ4
管理段階を決定する。
ステップ5
作業に適合する作業指針シートを選定する。

ステップ1 有害性分類

  1. 地球上に存在するあらゆる物質はそれぞれの異なる作用により人に障害を与える場合があり、またある物質は他の物質よりもより有害でより大きな障害を与えることがあります。例えば、ある物質は眼や喉にわずかな刺激を起すのに対し、他の物質は呼吸を困難にし、またはそのまま死に至らせることがあります。ある影響はすぐさま症状に出るが他の影響は発症するのに何年も要したりします。これらの影響はすべて管理されねばならないが、より深刻な影響を与える物質は、有害性の少ない物質よりもさらに管理の程度を広げる必要があるでしょう。
  2. 物質は6つの異なるグループに分類されています。グループAからグループEまでの5グループは、その物質を吸い込むことの危険の程度を示しています。6番目のグループであるグループSは、その物質が皮膚に付いたり眼に入ったりすると危険であることを示しています。あなたはより安全とされる部類の有害性グループの物質を使用することが可能ですか?

あなたの扱う物質はどの有害性グループに分類できるかを見つけるため、以下に記載の三つの簡単な手順に従って下さい。

手順1
表1は一般的な溶剤のリストおよびそれらの属する有害性グループを示しています。もしあなたの使う溶剤が表1にあるなら、その有害性グループを読み取り、チェックシートにそれを記録してください。
手順2
もし物質が表1にリストされていなければ、それは農薬ではないか? もしそうなら、これをチェックシートに記録し、そしてステップ5へ飛んであなたの必要とする作業シートを見つけてください。
手順3
もし物質が上記手順では、何れにも分類されない場合は、化学物質等安全データシート(MSDS)または製品ラベルから物質の分類情報を見つけてください。この情報を表2の情報と比較し、また分類データをグループAからEの各々のデータと正しく照合しなさい。正確な照合をすれば、適切な吸入においての有害性グループを特定できます。そして物質が有害性グループSに入るかどうかを見るために、この分類を有害性グループSとでチェックしてください。物質は吸入有害性グループ(A-E)および皮膚有害のSグループの両方に存在する筈です。
有害性グループまたはチェックシート上のグループを記録してください。(現在、表2はGHS分類システムまたはEUR-フレーズ分類システムの何れも使用可能にする情報をもっている。もしどちらか一つの分類だけが使用されるか、または有害性グループが基本ラベルまたはMSDS情報として製造者が提供するなら、このスキームは簡素化されるでしょう。)
表1:一般的溶剤の有害性グループの分類
溶剤 有害性グループ 揮発性
アセトン AおよびS
酢酸ブチル AおよびS
ディーゼルオイル BおよびS
酢酸エチル AおよびS
ヘキサン BおよびS
イソプロピルアルコール AおよびS
メタノール CおよびS
メチルエチルケトン AおよびS
メチルイソブチルケトン BおよびS
パラフィン(ケロシン) AおよびS
テトラクロロエチレン CおよびS
石油 BおよびS
トルエン BおよびS
トリクロロエチレン CおよびS
ホワイトスピリト(ミネラルスピリット) BおよびS
キシレン AおよびS
表2:有害成分類
  EUのリスクフレーズ GHS有害分類
A R36,R38,R65,R66と
他のハザードグループに入っていない
全てのRフレーズ
急性毒性:クラス5(全てのばく露経路)
皮膚刺激性:クラス2、クラス3
眼の刺激性:クラス2
その他のハザードグループに分類されない粉体と液体
B R20/21/22,R40/20/21/22,
R33,R67
急性毒性:クラス4(全てのばく露経路)
全身毒性(単回ばく露):クラス2(全てのばく露経路)
C R23/24/25,R34,R35,R37,
R39/23/24/25,
R41,R43,R48/20/21/22
急性毒性:クラス3(全てのばく露経路)
全身毒性(単回ばく露):クラス1(全てのばく露経路)
皮膚腐食性:サブクラス1A、1B、又は1C
眼刺激性:クラス1
呼吸器刺激性(GHSで承認された場合)
皮膚感作性
全身毒性(反復ばく露):クラス2(全てのばく露経路)
D R48/23/24/25,
R26/27/28,
R39/26/27/28,
R40 Carc. Cat.3,
R60,R61,R62,R63,R64
急性毒性:クラス1、2(全てのばく露経路)
発がん性:クラス2
全身毒性(反復ばく露):クラス1(全てのばく露経路)
生殖毒性:クラス1、2
E R40 Muta cat3,
R42,R45,R46,R49
変異原性:クラス1、2
発がん性:クラス1
呼吸器感作性
S R21,R24,R27,R34,R35,R36,R38,
R40/21,R39/24,R39/27,R41,R43,
R66,Sk notation
急性毒性:クラス1、2、3、4(皮膚吸収のみ)
全身毒性(単回ばく露):クラス1、2(皮膚吸収のみ)
腐食性:サブクラス1A、1B、1C
皮膚刺激性:クラス2
眼刺激性:クラス1、2
皮膚感作性
全身毒性(反復ばく露):クラス1、2(皮膚吸収のみ)

このページの先頭へページの先頭へ