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職場の女性
ベンジャミン・O・アリ(シニア スペシャリスト)

資料出所:ILO/フィンランド労働衛生研究所発行
「Asian-Pacific Newsletter on Occupational Health and Safety」
1999年第2号(第6巻「Women at Work」)
(訳 国際安全衛生センター)

ILOアジア太平洋地域総局の安全衛生に関する地域プログラムでは「Asian-pacific Newsletter」を発行していますが、これに掲載された「職場の女性」と題する記事をご紹介いたします。
筆者はILO本部のセイフティワーク部(安全衛生担当)に所属し、女性問題も担当されている上級専門家(シニアスペシャリスト)のベンジャミン博士です。

はじめに

1948年の世界人権宣言は、あらゆる人々に公正で有利な労働条件を得る権利があることを認めている。 残念ながら先進国でも途上国でも、労働に関係した災害と傷病が相変わらず深刻な問題となっている。 ILOの推計では、年間2億5000万件の職場での災害が発生し、33万5000人以上が死亡している。 これに加えて1億6000万件の職業性疾病が発生しており、肉体的、精神的脅威にさらされた労働者の数はさらに多く、回避できるはずの被害を被っている。 職場での災害と職業性疾病を合わせた世界の労働関連の死者は、年間1100万人と推計されているが、この数値でもなお、実際よりはるかに小さいとみられている。 経済的損失は甚大で、家族と地域社会の打撃を考えると、損害は計り知れない大きさになる。(1)

上述の推計では男女別の割合が不明だが、多数の女性労働者がストレス、手作業、反復性負担傷害や、職場での暴力、セクシャルハラスメントにより、 過酷な状態に置かれているとみていいだろう。 グローバル化の時代になって、こうした状況はさらに悪化している。 多くの企業や国が、健康、安全といった隠れたコストの削減に乗り出しており、その最大の被害者はたいてい女性である。

背景

伝統的な小規模農業とインフォーマルセクターに加え、正規に雇用される女性の数が大幅に増えた。 女性労働者の大半は、母親であり主婦でもあるため、いきおい負担が大きくなり、健康に深刻な悪影響を及ぼしている。 女性の多くは下層職種にランクされ、福祉向上面の方針決定に影響力をもつ役職にはつけない。 また職場では少数派であるため、女性独自の健康、安全問題が無視される。

ILOの統計では、世界の就労者中の女性の割合は、1950年には31.3%だったが、1975年には35.0%に増えており、2000年には44.5%程度に達するとみられる。 経済活動に携わっている女性の数は、現在、世界全体で8億2800万人とされているが、統計制度が不備なために労働力に含まれていない女性が、 さらに10%〜20%以上いる。 女性労働者の数が増大しているのは、自分と家族を養うために仕事で賃金を得たいからだけでなく、各国どこでも、 経済活動のあらゆる面に参加することを女性が望み、実際に要求しはじめているためでもある。 こうした動きのなかで、女性は新たなアイデンティティを自覚し、家庭の外に価値ある人間関係のネットワークを築きはじめた。 その結果、生活水準が向上し、経済的独立性が高まった。女性労働者の数が増える一方で、残念ながら労働安全衛生の面では、 女性の問題は男性に比べてほとんど知られていない。(2)

職場の女性には、独特の健康問題とニーズがある。女性労働者の数が多い農業(サハラ以南アフリカの基本的食糧の60〜80%を女性が生産する)、食品、繊維、 サービスなどの分野ではとくに顕著である。 これらの職場の労働者(男性も女性も)は、騒音、殺虫剤(製造、利用の過程で)などの危険性にさらされ、また健康に有害で、 女性の生殖能力や妊娠中の体に影響しかねない各種の化学物質もある。

美容業(美容師、ヘアードレッサー)の大半は女性である。皮膚と粘膜を刺激したり、過敏症になりかねない無数の化学物質にさらされる。 調査によると、ヘアードレッサーは喘息、湿疹のリスクが高い(3)。 美容師はヘアースプレーに頻繁に触れるため、「貯蔵病(thesaurosis)」と呼ばれる特殊な肺疾患にもかかりやすい。 看護師や放射線技師などの病院に勤務している労働者は、継続的に放射性物質に曝される結果、とくに妊婦に悪影響を及ぼす可能性があり、流産、奇形児出産の原因となる。 以上に指摘した問題はすべて、世界各国の女性労働者に特有の労働安全衛生問題に関連している。

女性の労働の種類と特徴

女性労働者に課せられる主婦と生産活動の二重の負担には、過重で、単調で、人間工学的に不適切な作業が多く、仕事をコントロールすることもほとんどできない。 農村の女性は、大半の時間を水汲み、薪の収集、食事の準備、子供の世話といった家族の基本的ニーズを満たすことに取られる。 たいていは最後に寝て、最初に起きる。 また女性は、非公式的な商業活動にも相当な時間を割いており、余った作物や手作りの工芸品を売って家計の足しにしている。

先進国の1例として、イギリスの1995年春の労働力調査をみると、女性労働者の大半(85%)がサービス業で働いている。 労働者中の女性比率は、医療が81%、教育が69%、ホテル・飲食業が61%、小売が59%である。 女性労働者の産業別比率をみると、製造、建設業は、男性労働者の36%に対して、13%にすぎない。 衣料品製造業では、労働者の73%が女性である。全体として、女性労働者の70%が非製造業で働いている(4)

女性は、低賃金で地位の低い職種に集中する傾向にある。 多くの途上国の女性は、食品、衣料、繊維産業などを中心に、非熟練または半熟練労働者、あるいは季節労働者として採用されている。 昇進のチャンスはほとんどない。農業で出来高払い労働を強いられるケースが多く、契約労働者として貧しい家計を補完している。 ときには労働というより、夫の出来高達成を助けているだけという場合もある(5)。 雇用契約がなく、労働条件、労働環境に関する保護法の適用を受けず、付加給付、あるいは年金などの退職後給付も考慮されていない。

労働時間

労働時間は、もっとも基本的な労働条件の一つである。 労働時間の長さと勤務体系は、なによりも労働安全衛生、所得水準、休息と余暇時間に影響する。 各種の調査で、女性の労働時間が長く、厳しいことが示されている。 女性の1日当たりの労働時間は長く、その密度も高い。 アフリカの調査で、今なお女性の65%から70%が暮らす農村などでは、女性は1日16時間から18時間働いていることが判明した。 インドのデリー郊外にあるNOIDA輸出加工業地域では、女性労働者は午前5時から働きはじめ、帰宅してからも午後11時まで家事をこなす(6)。 この状況は第3世界だけに限らない。 アメリカ合衆国での調査では、二つ以上の職種をかけもちする女性の比率は、1970年の2.2%から1989年には5.9%に増えている。 対する男性の場合、この比率は0.6%減少している(7)

看護師など、伝統的な女性職種には交替制を採用しているものが多い。 交替制などの変形労働時間制は、正常な身体機能を害する可能性がある。 また交替制労働に従事する女性労働者は、不規則な勤務体制による時間的プレッシャーと、家事労働の負担との板挟みとなり、ストレスの多い生活を強いられる。 子供を持つ主婦はとくにそうである。 交替制労働のなかには死産が多発するケースもある(8)。 女性が労働力となることによって、伝統的な性別分業が変化し、女性の経済活動の機会が広がったが、残念ながら一方では、 休息時間が減ったことで心理的・社会的観点から悪影響を及ぼす可能性が出たこともたしかである。

職業・労働関連の危険要因と健康への影響

生殖機能への危険要因

医療労働者がX線からの電離放射線に暴露すると、妊娠初期の胎児に奇形が発生する可能性があり、妊娠に気づかない段階で障害が起こる場合もある。 病院や家事労働で風疹、トキソプラズマなどの生物学的有害物質に感染するおそれもあり、母子の健康に悪影響を与える。 妊娠中の女性労働者は、これ以外にも無数の毒性物質にさらされ、健康と胎児に深刻な影響を被っている。 ハロタンなどの麻酔ガスは、流産の原因と指摘されてきた。 殺虫剤は、製造過程でも使用の段階でも、これに触れると胎児の奇形を誘発する。 また塗料、バッテリー、印刷、溶接業で使用される鉛も、突然変異の原因と指摘されており、奇形の発生につながる。

ホルムアルデヒド(繊維、紙、インクメーカーや研究所で使用される)、テトラクロルエチレン(ドライクリーニング剤に使用される)、 それに水銀、銅、カドミウムなどの金属はすべて、月経障害、不妊、奇形児、子供の脳障害、流産、死産、自然流産など、 性と生殖機能に各種の危険を及ぼす要因となることが判明している。 性と生殖機能に対する有害要因をすべて列記するのは不可能である。 市場には毎年、何千種類もの新化学物質が投入されるが、その大半は身体への影響調査がなされておらず、未確認の化学的影響が多数あるからである。 また、影響が何年も経た後に現われる場合もある。 たとえば、ジエチルスチルベストロールの影響は、約40年後に次世代の女性に頸ガンの発生となって現われる。 途上国では頸ガンなどの検査体制が整備されていないため、同じように発病していても把握されないケースがある(9)

人間工学的な危険要因

手作業は、職場での傷害(とくに背中)のもっとも一般的な原因の一つである。 箱や装置などの重量物の運搬、病院患者の抱き起こし(看護師の日常業務)をはじめ、手または身体の力で荷物を降ろし、押し、引き、運び、 移動させるといった作業に従事すれば、傷害が発生する可能性がでてくる。 安全を無視してこうした作業をすると、背中、手、腕、足のけがの原因となる。 職場で使用される装置と機械の多くは男性用に設計されたもので、女性の肉体と生理機能には向いていない。 その結果、女性の筋骨格異常の原因となる。 男女間では明らかに肉体的能力が違うため、事前の個人的調査がない場合、女性労働者は男性と同じ重量物を運ばないよう指導すべきとされている。

心理面での危険要因

多数の調査と、またILOの報告書「職場のストレス防止」でも、女性は男性よりストレスの影響が大きいとされている。 女性のストレスを高める要因はかなりあると思われる。 男性より賃金が低い、家庭責任を果たせる勤務体系の企業が少ないといった事実があるし、また女性がつく職種には、 仕事上の要求が厳しくて作業と組織に振り回されるなど、ストレス要因となるものが多い。 教師と看護師は、人々の健康、福祉、幸福に責任を負っているが、とくにストレスが高い職種とみなされている。

セクシャルハラスメントは、女性の健康に悪影響を与える要因として、もっとも一般的でありながら、もっとも論じられることが少ない。 憂鬱感、疲労、頭痛、不眠、憎悪感、集中力の欠如の原因となり、人間関係を破壊する。調査によると、 働く女性の50%がセクシャルハラスメントに遭遇すると推測されている(4)。 セクシャルハラスメントを受ける確率は男性より女性の方がはるかに高い。 その一因は、社会のなかでの女性の立場と役割だけでなく、職場のなかでの女性の立場と役割にもある。 ひとりの個人に力と権威が偏っているような職場では、セクシャルハラスメントが蔓延する。

その他の危険と関連要因

栄養は一般的な意味でも、また労働との関係でも、とくに重要である。 十分な栄養を保つことは、人類の幸福と幸福増進に寄与するだけでなく、人々が働き、より多く生産することを可能にする。 深刻な、または慢性的な栄養不良が、労働災害の潜在的原因であることが明らかになり、疲労と集中力低下の要因の一つに数えられている。 社会で多くの役割を果たす女性は、とくに十分な栄養摂取と健康管理が必要だが、残念ながら、両方とも不足しているケースが少なくない。 インドのNOIDA輸出加工業地域で働く女性労働者の健康破壊には、経済的困窮に加え、妊娠と中絶を繰り返したことによる栄養性貧血が背景にある(6)。 母親が栄養不良だと、胎児の発育が遅れて出生時の体重が不足し、死亡したり病気にかかる確率が高まる。

労働条件のなかで、天候が果たす役割は軽視されることが多い。 気象条件は、労働時間、勤務体系、栄養、労働安全衛生との関連できわめて重要である(10)。 アフリカでは、全農作物の60%〜80%を女性が生産している(11)。 その多くが民間プランテーションで働いている。高温下でサトウキビの収穫、雑草除去などの肉体作業をするため、体温が上昇する。 こうした環境での労働は、熱によるストレスで心臓に過重な負担がかかる。 妊娠していればなおさら負担は大きく、健康に重大な影響を及ぼす。

いうまでもなく、上述した女性をめぐる労働災害は、同じ条件の男性にも無関係ではなく、また女性特有のリスクを、 女性を特定の形態の労働から排除する理由にもすべきではない。 現実には、男性も含めた全労働者が、これらの多くの問題に直面している。 しかし女性の場合は出産という役割をもっているため、これらのリスクが将来世代へも影響する点に注目すべきである。 上述したとおり、女性は一般に未熟練の臨時労働者と位置づけられ、もっともリスクの高い労働条件に置かれながら、保護体制の水準はもっとも低いのである。

職場の女性の健康改善に向けた戦略

以上のような女性労働者の労働安全衛生の状況をみると、問題の大きさに見合うだけの十分な関心が払われていないことがわかる。 したがって効果的な活動プログラムを策定すべきである。 以下の戦略は労働者一般、なかでも女性労働者の健康改善のための提案である。

労働安全衛生政策

職場における健康と安全は、労働者の一般的な健康と幸福にかかわる重要問題であり、企業、国、国際レベルなど、あらゆる段階の政策で十分に検討すべきである。 また労働安全衛生政策を定める目的は、国が女性労働者をはじめとする全労働者に安全な労働環境を確保することを再確認することである。 また国際的義務、倫理的義務を履行させるとともに、目的と戦略に関する統一的な、一貫性のある、意図の明瞭な方針を示すことで、活動を促進するためでもある。

政策の効果と公平性を高めるため、主婦、母親、労働者という女性の3つの主要な役割を認識するとともに、それぞれの役割相互の対立と矛盾の可能性を検証し、 改善する視点から、それらの健康への影響を批判的に検討すべきである。 労働安全衛生に関する国の政策のなかに、女性労働者の健康改善に向けた幅広い戦略を確立し、とくに看護師、教育、衣料、 食品など女性の雇用が集中する産業を重視する必要がある。 政策の目的は、労働中に、または労働に関連して発生する災害、疾病、負傷の防止に置くべきである(12)

企業段階でも、国の政策原則の徹底と、その実現に向けた方針や活動を策定すべきである。 企業段階の総合的プログラムを策定する際は、女性労働者の健康と社会的福祉のニーズを反映させる独自のプログラムを組み込むべきである。

保護法制

1985年6月にILOで採択された「雇用における男女の均等な機会および待遇に関する決議」は、とくに労働条件、 労働安全衛生に関する保護法制について以下のように述べている。

  • 男性と女性は、科学的、技術的知識の発達を踏まえて、雇用と職業に付随するリスクから保護されるべきである。
  • 女性に適用されるすべての保護法制について、最新の科学的知識と技術的変化の見地から、また国内状況に応じた改正または廃棄のために、 見直し措置を講じるべきであり、その目的は生活の質の向上と雇用における男女間の均等を促進することにある。
  • 有害性が証明された職種の男性と女性に対する特別な保護は、とくに生殖という社会的役割の観点から、拡大措置を講ずるべきであり、 またこうした措置は科学的技術的知識の向上を踏まえて、定期的に見直し、時代に合わせて改訂すべきである。

各国はそれぞれ、女性労働者の健康、安全、幸福の見地から、また国際条約に従うために、保護法を制定してきた。法律の内容には、深夜業、地下作業など、 女性の生殖機能に有害とみなされる作業の禁止などがある。 たとえば中国の労働法は、「すべての労働単位は、女性の特質を踏まえ、法律に従って、勤務中または肉体作業中の女性の安全と健康を保護しなければならず、 女性に不適切な勤務または肉体作業に女性を就かせてはならない」と定めている(13)

残念ながら最近、こうした法律に疑問の声が挙がっている。法律が女性の雇用あるいは就労の機会を減少させただけでなく、 労働環境からリスクを一掃して全労働者を保護するよりも、女性を危険職種から排除する結果になったというのである。 したがって保護法制の悪用を避け正しく活かすためには、これを見直し、常に強化を図ることが必要となっている。

労働衛生サービス

職場の健康と安全を確保するとともに、個々の労働者に必要なサービスを提供するため、全労働者を対象とし、 十分な機能を備えた適切な労働衛生サービスを設立する必要がある(14)。 このサービスでは、女性労働者特有のニーズと健康面での要件を考慮すべきで、とくに地方農業、 輸出加工業地域をはじめ数多くの女性が働くインフォーマルセクターなどを重視すべきである。 そして包括的なサービスを提供し、予防、保護、健康増進を基本原則とした早期健康管理アプローチに立脚すべきである。

訓練、教育、情報

適切な労働安全衛生サービス活動のためには、十分な訓練が必要である。 労働安全衛生面に十分配慮した行動と安全な作業慣行を確立するうえでは、労働者と自営業者の自覚、知識、技術が重要になる。 農業とインフォーマルセクターの女性労働者や自営業者には、ILOの革新的な訓練方式である「小規模企業における労働改善(Work Improvrments in Small Enterprises WISE)」が役に立つ。 これは、生産性にリンクした健康というコンセプトに基づいている。 実際的で、自主性を尊重した、結果重視のアプローチであり、使用者と労働者が直接、労働条件と環境の改善に参加できる。 WISEの訓練プログラムは、日常作業でこうした知識を必要とする労働者と、勤務体系などの労働条件を決定する使用者に、労働安全衛生の基本原則を示してくれる。

安全衛生訓練施設の担当者には女性を増やすよう努力し、この分野での女性の能力を高めるべきである。 労働安全衛生に関する国内、国外のセミナー、ワークショップへの女性の参加も促すべきである。 こうした場は、アイデアを交換し、労働安全衛生活動に関する知識と情報を広げる機会をもたらす。

データ収集と統計の改善

女性労働者の安全衛生の向上にとって問題となっているのは、統計が不足していたり不正確なことである。 世界の女性の5分の1は、生産に従事していながら測定体制が不備なために統計に反映されていない。 したがって、労働安全面での国内統計のためのデータ収集体制を改善する必要があり、 とくに対象職場を広げて伝統的に女性が雇用されている分野に光を当てなければならない。 また労働災害、傷病、補償、病休などの統計も、検証すべき重要な分野である。 これにより、女性労働者の労働安全衛生に関する正確な情報の発表など、全国的な情報体制の確立が容易になる。 そして、女性労働者特有の危険要因に関する全国的な基準とガイドラインの策定につながる。

安全、衛生、環境に関するILOの世界的プログラム、「SAFEWORK」は、危険職種と業種を中心とする大規模な世界的統計の作成に向けたプログラムについて1項目を割いて記述している。このプログラムでは、労働災害と疾病についての統計データの収集・分析手法を策定する予定で、女性労働者のデータに関する現在の問題の一部を解決できる可能性がある。

結論

本稿では、女性労働者の労働安全衛生をめぐる状況を概説した。 統計の不備や、生殖機能に有害な労働条件と環境から女性を守るべき医療、法律、政策が十分でないために、女性労働者が痛めつけられている現状を、 否定し難い事実で示した。 これは、あらゆる人々に公正で有利な労働条件を得る権利があることを認めた1948年の世界人権宣言に反している。 したがって、女性労働者をめぐる労働安全衛生は緊急を要する問題である。

輸出加工業地域をはじめとする地域の多くの女性労働者は、貧困から脱却し、物価高騰のなかで生活を維持するために、自分の健康、 とくに性と生殖に関する健康・権利にほとんど注意を払っていない。 なかでも、もっとも貧しく、もっとも公的な権限のない女性たちにとって、保護法制や現実的な政策とプログラム、政府の努力がないかぎり、 性と生殖に関する権利も、他のどんな権利も無意味である。 これらの条件は社会的権利であり、社会的保護、個人の安全、政治的自由にかかわる問題である。 社会を民主的に転換し、性差別や集団的な不公正を根絶するためには、それを可能にする環境を提供することもまた、不可欠なのである。

参考文献

1)International Labour Office(ILO)."Safework" a global programme on safety and health at work.Geneva:Occupational Safety and Health Branch,ILO(unpublished document),1999

2)Alli BO."The situation of women in Africa with regard to occupational health"paper presented at the OAU African Ministers of Health meeting,Cairo,Egypt,1995.

3)Swedish Council for Work Life Research.Newsletter Research and Development 1. Asthma, rhinitis and hand eczema amongst hairdressers.March 1999.

4)Labour Research Department(LRD)-London. Labour Research 21.Women's Health and Safety:a Trade Union Guide.London:LRD,1999.

5)Loewenson RH. Modern Plantation Agriculture, Corporate Wealth and Labour Squalor.London and New Jersey,USA:Zed Books Ltd.,1992.

6)Rajalakshmi TK. Labouring at the cost of Health. FRONTLINE,May 21 1999:87-8.

7)Smyre P. Women and Health, Women and World Development Series,1991.

8)Nurminen T. Shift work and reproductive health. Scan J. Work Environ Health 1998

9)Loewenson,RH. The Health of Women Wokers Paper Presented at the ZCTU seminar on Women Womers and Trade Union,1986.

10)Clerc JM.Introduction to working conditions and environment.Geneva:ILO,1985.

11)Carr-Hill R. Social Conditions in sub-Saharan Africa. London:MacMillan,1990.

12)International Labour Office(ILO). Occupational safety and Health Convention(No.155).Geneva:ILO,1981.

13)International Labour Office(ILO). Labour Law Document(1992/3)Geneva:ILO,1992

14)International Labour Organization(ILO).Occupational Health Services Convention(No 161).Geneva:ILO,1985.

15)International Labour Organization(ILO).Resolution on Equal Opportunities and Equal Treatments for Men and Women in Employment, adopted by the ILO Conference, 71st session. Geneva: ILO,1985

16)Ruigu G. The impact of HIV/AIDS on the Productive Labour Force.ILO-EAMAT Working Paper 1,1995.

17)World Health Organization(WHO).Declaration on Occupational Health for All. Geneva:WHO,1994