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事故防止に成功する安全管理
Successful Management to Prevent Accidents

資料出所:欧州安全衛生機構ファクトシート:FACTS 13
原文はこちらからご覧いただけます
(仮訳 国際安全衛生センター)

欧州連合内では毎年500万近くの人々が労働災害の結果として4日以上の休業を余儀なくされており、およそ1億4600万労働日が失われている()。労働災害が永続的な後遺症を与える場合もあり、作業能力ばかりでなく業務外の日常生活にも支障を来している。労働災害はあらゆる産業で起こっており、滑り、つまずき、転落、落下物や尖った物体あるいは熱い物体による事故、車両や機械による事故などが挙げられる。しかしこうした事故の多くは適切な安全管理により防ぐことができる。 労働災害がもたらす損失は大きく、下記のものが含まれる。

事故発生リスクは中小企業で高い。従業員数50人未満の企業における死亡事故の発生率は、50人以上の企業のおよそ2倍である()。

良好な管理を遂行する責任

EU指令に基づき、事業者は従業員の安全と衛生に責任を持つ。

指令89/391は安全衛生管理、リスクの特定と防止に関する一般的な枠組みを規定している()。

同指令は各国の国内法を通して実施されてきた。国内法では更に規則を補足することができる。

同指令が事業者に義務づけていることは、リスクアセスメントの実施、従業員の安全と衛生を守るための実践的措置の導入、事故記録の作成、情報と訓練の提供、従業員との協議、請負業者との協力および対策調整である。また、事故防止の優先順位が設定されている。すなわち、リスクを回避する、リスクを発生源で食い止める、作業員に適した仕事に就かせる、危険な機材や原料などを危険でないものに置き換える、そして、個人レベルでの対策よりも全体的な対策を優先する、の順である。労働者は、安全衛生に対するリスク、予防措置、応急手当および緊急時の対処方法に関して情報を得る権利を有する。従業員は、受けた訓練に基づいて指示に従うと共に自己および同僚の安全衛生に注意を払いながら、事業者の予防措置に積極的に協力する義務を負う。

事故防止の3大要素

安全衛生は、経営層の積極的関与と、従業員の適切な参加、そして緻密に構成された管理システムの3つの要素を必要とする。

経営層の積極的関与

経営層は次の方法により、安全衛生を推進すべきである。

積極的関与とは、例えば決定を実行に移すこと、安全について経営会議で話し合うこと、職場を定期的に巡回視察すること、安全点検に参加することなどである。

従業員の参加

従業員との話し合いは必須の要件である。彼らの知識を利用することは、危険を正しく突き止め実行可能な解決策を実施するうえで役立つ。労働者代表は重要な役割を持つ。安全衛生対策について、また新しい技術や製品を導入する前に、従業員と協議しなければならない。労働者は協議を通じ、安全衛生手順や安全衛生の向上に積極的に取り組むようになる。

安全衛生管理

安全衛生管理に体系的アプローチで取り組むことにより、リスクが漏れなく評価され、しかも安全な作業方法が導入、遵守されることにつながる。定期的な点検は、安全衛生措置が現在もなお適切であることチェックするものである。代表的な管理モデルを下記に示す。

方針 → 計画立案 → 実施と運用

↑    継続的改善    ↓

管理体制の見直し ← 点検と是正措置

方針−自社の労働安全衛生について、明確な公約、目標、責任、手順を定める。

計画立案−作業から生じるリスク、およびその抑制方法を特定、評価する。計画立案プロセスの活動には下記の作業が含まれる。

リスクアセスメントの内容

  • 危険を特定する−問題を起こす可能性のあるところはどこか。
  • 従業員、請負業者、一般市民を含め、誰にどの程度の危害が及ぶ可能性があるかを判断する。
  • その危害が発生する頻度を決定する。
  • リスクをどのように除去あるいは低減できるか−施設、作業方法、設備、訓練の改善は可能か。
  • リスクの規模、影響を受ける人数等に基づき、対策の優先順位を決める。
  • 防止対策を実施する。
  • その防止対策が有効であるかどうかをチェックするために見直しする。
  • リスクアセスメントの過程で従業員と話し合いを持ち、リスクアセスメントの結果について情報を提供する。

実施と運用−計画を実行に移すことである。これに伴い、次のことが必要になる可能性がある--組織の変更、使用する作業手順・作業環境・設備・製品の変更、管理層とスタッフの訓練、情報伝達の改善。

訓練

全ての労働者は安全な作業方法を理解する必要がある。従って訓練では次の事柄を取り上げるべきである。リスクにどのようなものがあるか、従うべき防止対策、そして緊急時の対処方法である。

訓練は、適切でわかりやすいものでなければならない--もちろん、異なる言語を話す労働者にとっても理解できるものでなければならない。訓練は新入従業員に対して行うほか、配置転換に伴って作業方法や作業設備が変わった時、あるいは新しい技術が導入された時に、既存の従業員にも行う。

点検と是正措置−業務の執行状況を監視する。監視には、例えば事故記録を利用するなどの事後対応型の監視もあれば、検査や監査あるいはスタッフ対象調査からのフィードバックによる事前対応型の監視もある。事故調査では、管理の落ち度も含めて、直接の原因と根本的原因を明らかにする。目的はシステムと手順を確実に機能させることと、必要な是正措置が直ちに採られるよう確保することである。

管理の見直しと監査−これにより、管理システム全体の達成度をチェックすることが可能になる。例えば、新しい法律の施行など、外部環境に変化があった場合、事業構造の変更、新製品の開発、新技術の導入など、将来を見通す機会にもなる。事故調査では、管理レベルの教訓を学び取るべきである。監査は、方針、組織、システムが実際に適正な結果を達成しているかどうかを審査する。

チェックリスト

  • 安全衛生のための明確な手順と責任が設定されているか。また、各自が自己および他者の責任を知っているか。
  • 安全衛生に関する法律を遵守するために何をすべきかを知っているか。知らない場合、助言ができる適任者を任用しているか。
  • 安全衛生を脅かす主なリスクを特定し、それらを除去ないし低減するための措置を講じているか。
  • 作業設備の保守計画は適切か。
  • 保護具以外の手段では回避できないリスクに対して、必要な保護具を従業員に支給しているか。その使用法について訓練を行ったか。
  • リスクに関する情報を従業員に提供したか。そして、安全な作業と緊急時の対処手続きについて訓練を行ったか。
  • 方針、作業手順、設備の変更を含めて、安全衛生問題について従業員と協議しているか。
  • 危険な状況や事故の報告の仕方を労働者は知っているか。
  • 事故、ヒヤリハット、報告された問題を調査するため迅速な措置を講じているか。
  • 職場を定期的に視察し、労働者が安全な作業手順を守っていることをチェックしているか。
  • 安全衛生方針と作業手順を見直すためのシステムがあるか。

詳細情報の入手先/参考資料

適切な安全管理慣行に関する詳細情報は欧州安全衛生機構のウェブサイト http://osha.europa.euで入手できる。本機構の出版物はすべて無料でダウンロード可能。「労働災害防止」は、2001年10月に加盟国が実施する「欧州労働安全衛生週間」のテーマである。詳細は、http://osha.europa.eu/ew2001/へ。本機構のサイトは加盟国のサイトにリンクしているので、各国のサイトにアクセスして国内法や指導を見ることができる。 アイルランド:http://ie.osha.europa.eu/ 英国:http://uk.osha.europa.eu/

(1) EUにおける労働災害−1996年、 Statistics in Focus, Theme 3-4/2000, Eurostat.
(2) http://osha.europa.eu/legislation/ はEU legislation、中小企業向けEU委員会指導の詳細、リスクアセスメントに関する同委員会指導の詳細にリンクしている。また、加盟国のサイトにもリンクしているので、指令およびガイドラインを実施するための国内法を閲覧できる。

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