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建設部門の事故防止
Accident Prevention in the Construction Sector

資料出所:欧州安全衛生機構ファクトシート:FACTS 15
原文はこちらからご覧いただけます
(仮訳 国際安全衛生センター)

欧州連合内では、建設業は事故のリスクが最も高い部門であり(1)、毎年1300人以上が建設関連の事故で死亡している。世界的に見ても、建設労働者は他部門の労働者に比べ、死亡事故の確率が3倍、傷害事故が2倍と高い。こうした労働災害の損失は、個人ばかりでなく事業者社会にとっても甚大であり、契約価格のかなりの部分を占めることもありうる。

欧州では建設会社の99%以上が中小企業である。従って中小の建設会社は建設事故の影響を最も被る。ただし、ここに掲げる助言はあらゆる規模の企業を対象としたものである。

安全確保の責任

建築主、プロジェクト監督者、施工業者、個々の請負業者、そして自営業者は全員、安全を確保する責任がある。安全確保に関連してEU指令(2)は下記を義務づけている。

指令が定める最低要件は、各国の国内法を通して実施されてきた。国内法では更に規則を補足することができる。

従業員は、受けた訓練に基づいて指示に従い、事業者の予防措置に積極的に協力する義務を負う。

従業員との協議は必須の要件である。従業員の知識を利用することにより、危険個所の正確な特定および実効ある解決策の実施が確保できる。

事故防止−リスクアセスメント

建設業には多くの危険が存在する。しかし、事故防止に向けて容易に導入できる「良い慣行」も多い。第一歩は適切かつ十分なリスクアセスメントの実施である。

労働者および他の人々(建設現場来訪者、一般の通行人を含む)がさらされる危険を確実に減らすためには、リスクアセスメントにおいてあらゆるリスクと危険源を考慮に入れるべきである。1つのリスクを減じることが別のリスクを増大させる結果となってはならない。

作業に起因する危険と、例えば現場のレイアウトなどその他の要因による危険を含めて、あらゆる危険をリストアップすべきである。その後、既存の予防措置を考慮に入れて、リスクの程度を評価する。十分な予防措置が取られているか、あるいは更なる対策が必要かを判断する。リスクアセスメントの結果を踏まえて、最適な良い慣行を選択する(3)

実践的防止措置

主な危険としては、高所作業、掘削作業、積荷の移動がある。危険を発生源で除去または低減する措置に重点を置き、全体的な防止策をとらなければならない。保護具などの個人レベルでの保護策は、それ以外の手段ではリスクをさらに低減できない場合に使用する。

総合的リスクアセスメントに加えて、継続的な監視と定期点検が必要である。

高所作業

建設業における傷害・死亡事故の最大の原因は高所からの墜落・転落である。墜落・転落の原因には次のようなものがある−足場またはプラットホーム上での作業において、ガードレールが設けられていなかった、安全帯を正しく装着していなかった、屋根の強度が不十分であった、保守が不十分なはしごを掛け方が悪くしっかり固定せずに使った。

建設工事の全工程は、落下リスクを最小化するように計画すべきである。プロジェクトの設計段階で落下防止措置を計画することが可能である。目的に適ったガードレールの設置により落下リスクを減らすことができる。それでもなおリスクがある時は、安全帯の支給という最終手段がある。

掘削作業

すべての掘削作業について、作業開始前にあらゆる潜在的危険を考慮する。例えば、溝の崩れ、掘削溝への人や車両の転落、隣接建造物の崩壊などが考えられる。次に、適切な予防措置を講じる。地下埋設物はすべてその位置を示し標識をつける。危険回避のための予防措置を講じる。土留め用資材を現場に確保する。土留め資材の搬入・撤去は必ず安全な方法で行う。どのような資材の扱いが必要かを決め、適切な機器を決める。機器の搬入は作業に必ず間に合うようにし、現場は受け入れ準備を整えておく。

日常点検は、必要な予防措置がきちんと機能していることを確認するために必要である。掘削現場への出入りは安全にできるか。溝に人が落ちないように柵が設けられているか。資材、残土、機器は溝の縁から十分離れて置かれているか。

積荷の移動

資材の移動を最小にし、安全に資材を取り扱うための計画を立てる。運搬機械は必ず、訓練を受けた熟練作業員がセットアップし、運転する。

機器は、有資格者に定期的に点検、試運転、検査をさせる。現場作業を調整する。例えば、荷の吊り上げ作業員が他の作業員に、あるいは逆に他の作業員が荷の吊り上げ作業員に、危険を与えないこと。手作業による移動が避けられない時は、その量と距離を限定するように作業計画を立てる。作業員に危険回避と技法の使用について訓練を施す。

すべての移動式クレーンによる荷の吊り上げ作業は有資格者が計画・実施する。運転者が良好な視界を確保できること、クレーンは平坦な地面に、掘削溝と電線から安全な距離をとって設置することが大切である。

整頓と安全なアクセス

現場の整理整頓が重要である。例えば、すべての作業場に障害物が無く安全に出入りできるか(道路、歩行用通路、はしご、足場等)。資材は安全に保管されているか。掘削した穴には柵又は覆いの転落防止措置が採られ、はっきりと標がつけられているか。廃材の回収・処分について適正な手配が整っているか。照明は十分であるか。

訓練と情報

作業者は、リスクおよびそれが招く結果を理解する必要があるほか、安全に作業を行うために必要な予防措置についても知っていなければならない。そこで訓練は、実際の状況に即して行うべきである。例えば、実際に遭遇した問題、何がまずかったのか、再発防止にはどうしたらよいかなど、具体的な訓練を実施する。リスク、防止措置、緊急時の対処方法、問題の報告、保護具、作業設備などを取り上げる。また、再訓練を計画する。

また、十分な意思伝達によって訓練を補う必要がある。チーム・ミーティングの中で安全衛生問題について話し合い、情報伝達を行うべきである。

保護具

保護具は、建設現場で義務付けられている場合、必ず着用する。保護具は装着感がよく、手入れが行き届いていること、着用により別のリスクを増大させないことが条件である。また、使用法の訓練が必要である。保護具には以下のものが含まれる。保護帽−落下物が当たる危険のある時や頭をぶつける危険がある時。適切な履き物−爪先と底が保護され、滑らないもの。保護衣−例えば、悪天候用衣服、車両運転者などが容易に視認できるようなよく目立つ着衣。

足場とはしごに関するチェックリスト

  • 現場への出入りの方法や掘削手段を含め、安全確保のために最も適切な機器を選択したか。
  • 短期間で比較的安全であるという場合に限って、はしごを使用することとなっているか。
  • 足場は堅固な基礎の上に組み立てられているか。
  • 全てのガードレールは必要なところに適切な高さで設置されているか。
  • 足場板は不足なく配置されているか。
  • 足場板は正しく固定されているか。
  • 足場の結び目が外された個所はないか。
  • 当該作業にとって、はしごの使用は最も安全で最善の方法か。
  • はしごは、良好な状態で、作業の種類と高さ合ったものを使用しているか。
  • 無理に体を伸ばさなくともすむような位置にはしごを据えることができるか。
  • はしごは、 上端と下端の両方で固定できるか。
  • はしごをささえる床はしっかりとしており、水平になっているか。。

1つでも「ノー」があれば、作業開始前に予防措置を講じなければならない。措置には下記のものがある。

  • 床面の穴などの開口部は、安全な防護柵(例えばガードレールやつま先板)で囲うか、覆いをする。覆いは適切な位置に固定し、あるいは警告マークをつける。
  • 安全のため、組立作業開始前に足場の全部品を点検する。
  • はしごに登る前に、はしごが良好な状態か、しっかり固定されているかを点検する。
  • 足場の上では、特にガードレールやつま先板が取り付けられる前には、墜落防止装置を使用する。また、安全帯のロープは必ず堅固な構造物に取り付け、正しく使用する。
  • 機器や資材を下の階や、地面あるいは安全ネット目掛けて投げない。

詳細情報の入手/参考資料

適切な安全管理慣行に関する詳細情報は欧州安全衛生機構のウェブサイト http://osha.europa.euで入手できる。本機構の出版物はすべて無料でダウンロード可能。「労働災害防止」は、2001年10月に加盟国が実施する「欧州労働安全衛生週間」のテーマである。詳細はhttp://osha.europa.eu/ew2001/へ。本機構のサイトは加盟国のサイトにリンクしているので、各サイトで建設に関するその国の国内法や指導を閲覧できる。 アイルランド:http://ie.osha.europa.eu/ 英国:http://uk.osha.europa.eu/


(1)欧州連合における労働安全衛生状況−パイロット・スタディ2000、欧州安全衛生機構、ISBN 92-828-9272-7。
(2)http://osha.europa.eu/legislation/ はEU legislation、中小企業のためのEU委員会指導の詳細、リスクアセスメントと建設に関する詳細にリンクしている。また、加盟国のサイトにもリンクしているので、指令およびガイドラインを実施するための国内法を見ることができる。特に「仮設・可動工事現場に関する指令」参照。
(3)欧州安全衛生機構のウェブサイト http://osha.europa.eu/good_practice/sector/construction/ で建設に関する情報を提供している。

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