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新しい契約関係の形態と労働安全衛生にとっての意味
New Forms of Contractual Relationships and the Implications for Occupational Safety and Health

資料出所:欧州安全衛生機構ファクトシート:FACTS 25
原文はこちらからご覧いただけます
(仮訳 国際安全衛生センター)

本ファクトシートは、変化し続ける契約関係が労働安全衛生(OSH)にもたらす影響に関する報告書を要約したものである。現在の調査研究および専門家の意見をもとに、本ファクトシートは、契約関係の動向、OSHリスクにとっての意味、OSH防止にとっての課題、将来の調査研究にとっての意味を扱っている。

動向:柔軟性と分散化

労働社会で使用される契約の種類は、次の変化によって大きな影響を受けてきた。

近代的組織では、分散化が進んでおり、「リーン生産方式」を用いている。これらの変化は、企業が直接採用する従業員を削減するという結果をもたらした。現在では、中核機能のみを社内で果たし、副次的機能は外注する企業も多く、このため、一連の供給業者と下請業者のチェーンが生まれている。組織が事業を行ない他社と共同作業を行なうやり方は、より複雑化し、より不安定化してきた。

現在の雇用契約および職務内容には、より多くの不安定要素が含まれている。企業は、短期契約者、臨時従業員、自由契約労働者または自営業者の活用を拡大している。臨機応変に複数の業務に配置される従業員も増えている。一部の契約関係は、よりインフォーマルになってきた。パートタイム労働者が一段と活用されるようになり、その過半数は女性が占めている。例えば人々が自宅で自営業者として働ける可能性が増大するなど、新技術も雇用形態に影響を及ぼすかもしれない。

現在の動向

  • 自営業の増加。被雇用者と自営業者の区別が希薄になっているようである。
  • 常用契約または無期契約の減少、および有期(または短期)契約と派遣事業者契約の増大。しかしながら、大半の職業は、依然として常用または無期契約を必要としている。現在、非常用の職にあるEU就労者の割合は、全就労者の15%弱で安定してきているようである。
  • 派遣事業者を通じた雇用の増大。それでも、雇用全体の2%に満たない。
  • パートタイム労働の継続的な増加。2000年に、就労時間が週25時間未満だった就労者は、EUの全就労者の4分の1を超え、全就労女性においては40%を超えた。

労働安全衛生にとっての意味

組織変更がOSHを改善する機会をもたらすこともあるものの、報告書は、潜在的なマイナスの影響とそれらの回避策に焦点をあてている。既述の組織の契約従業員や雇用形態における変化は、さまざまなOSH上の影響を及ぼし得る。例えば:

臨時契約、有期(短期)契約または下請の労働条件に関する、2点の重要な悪影響が実証されてきた。

  1. 派遣労働における災害発生率がより高いことが実証されている。量的データを用いて立証することは容易でないものの、いくつものケーススタディが、十分に保護されていない、リスクに対処するための知識も少ない、非常用従業員と下請業者へのリスクの移転を示している。このほか、劣悪なエルゴノミクス的状態と非常用契約者の間の関連性も明らかになったが、この関係は年齢、職業、部門の違いによって説明することも可能である。

  2. ケーススタディと量的データともに、雇用契約条件の違いに基づく労働力の分裂が存在することを示している(労働時間、雇用不安、資格など)。一般的に、非常用労働者とパートタイム従業員のほうが、雇用が不安定で、労働時間の融通がきかず、将来性がなく、訓練を受ける機会が少なく、あまり熟練を必要としない業務に従事している。これらの問題は、職業性ストレスに発展する可能性をもっている。最後の問題である、訓練と技能の開発は、さらなる問題を提起する。生涯学習と資格の取得は、自分の職務遂行のためのみならず、変化する業務体制とリスクに対応するためにも重要である。非常用従業員およびパートタイム職には相対的に女性が多いため、これらの問題はジェンダーの側面も有している。

変化する業務体制−OSHにとっての意味
  • 速い変化と複雑な業務体制は、人生や仕事に対する制御能力を喪失しているような感覚を与える可能性をもつ(「永続的なものは何一つない」)。
  • 不安定さは、「常用」と「臨時」職員の境界線を超え得る。時間の圧力の増大と業務の激化も同様の影響をもたらす。
変化する契約関係 - OSHにとっての意味

  • 非常用従業員および下請業者へのリスクの移転。
  • 派遣労働者の間の災害発生率はより高くなっている。経験および訓練不足に起因していると思われる。
  • 短期契約の従業員は、無期契約の従業員に比べ、劣悪なエルゴノミクス的条件にさらされている。ただし、年齢、職業、部門の相違によってもこれらの相違は説明できる。
  • 臨時または有期契約従業員のほうが、訓練(OSH訓練を含む)を受ける機会が少なく、労働時間の融通がきかず、将来性がない。これらは職業性ストレスの要因となり得る。
  • パートタイム労働がOSHに与える影響は、それほど明確でないものの、訓練を受ける機会が少ない、あまり熟練を必要としない業務に従事しているなどが考えられる。
  • 契約関係および健康への影響には、ジェンダーによる差異がみられる。

OSH防止にとっての課題

既述のすべての変化は、OSH当局および組織内の、OSH防止に課題を提起する。

以下はこれらの課題に対処するための措置のいくつかである。

中小企業および自営業者の多くは、大企業の下請業者として働いている。規模の小さな企業の災害発生率は、大きな企業を上回っている。それらの企業の取引先である大規模企業では、多くの場合、OSH管理のための資源や体制がより整っている。課題の一つは、大企業に規模の小さな下請業者と効果的に協力するよう奨励することであり、次のような方法がある。

最近発行された法人の社会的責任に関するEUグリーンペーパー(3)では、こうしたアプローチを奨励している。また、この分野における良き慣行の事例については、評価を行ない、その成功要因を明確にする必要がある。

将来の調査の必要性

報告書が提案するさらなる調査を要する分野のいくつかは次のとおりである。

報告書の入手方法

英語版報告書の全文は、欧州安全衛生機構の下記ウェブサイトから無料でダウンロードすることができる:http://osha.europa.eu/publications/reports/206/en/index.htm。また、印刷版 "Research on New Forms of Contractual Relationships and the Implications for Occupational Safety and Health(新しい契約関係の形態と労働安全衛生にとっての意味に関する調査)"、欧州安全衛生機構、2002、ISBN 92-95007-40-9 は、ルクセンブルクのEC出版局EUR-OP(http://eur-op.eu.int/)、またはその販売代理店を通じて注文できる。ルクセンブルクでの本体価格は7ユーロである(別途VATがかかる)。本ファクトシートはすべてのEU言語で下記サイトにて閲覧可能である。:http://osha.europa.eu/publications/factsheets/


(1) http://osha.europa.eu/publications/reports/#marketing
(2) http://osha.europa.eu/publications/reports/#practice
(3) http://europa.eu.int/comm/employment_social/soc-dial/csr/greenpaper.htm


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