はじめに
危険有害物質は多くの職場に存在する。ヨーロッパの労働者の16%が危険有害製品を取り扱い、22%が有毒な蒸気に暴露していると報告したことが最近の調査により明らかになった。
(1) 危険有害物質の暴露は農場、美容院、自動車修理工場、化学工場など、作業中いたるところで起こる可能性がある。
危険有害物質は、多くの様々なタイプの害を引き起こす。ある物質はガンを引き起こし、生殖能力を冒し、出生異常を引き起こすものもある。他に、脳障害、神経系、喘息、皮膚の異常を起こす物質もある。危険有害物質によって生じる害は、一度だけの短時間の暴露によって起こる場合と、身体への長期に渡る物質の蓄積によって起こる場合とがある。
「2003年欧州労働安全衛生週間」のテーマは、危険有害物質のリスク防止である。欧州安全衛生機構は、生物因子を含む危険有害物質に関する労働安全衛生関係の情報伝達に的を絞った、一連のファクトシートを作成している。このファクトシートは、このトピックに関する重要な問題を紹介している。
法
ヨーロッパの法は、職場の危険有害物質が健康に及ぼすリスクを最小限に抑えることを目的としている。欧州連合(EU)の法は、危険有害物質から労働者を保護するための管理対策のトップに、除去(elimination)と代替(substitution)を載せている。化学薬品
(3)、アスベストや木材粉じんを含む発ガン物質
(4)、生物学的因子
(5)に関連する危険から労働者を保護
(2)するための規則は、この分野におけるヨーロッパの法の最も重要な部分である。しかし、分類とラベリングに関する規則
(6)は、同様にとても重要である。というのは、それらがユーザーに公開されている重大な情報(安全ラベル・シンボル・安全データシート)を決定するからである。
これらの規則は、国の法に移行される必要がある。指令は最低限の要求のみを定めているため、ある種の作業工程を規制する、あるいは限界を低くするなど、労働者を保護するための条項を補足したりさらに厳しいものにする権限が、加盟国には与えられている。
従って、職場における危険有害物質の使用に関して適用される国の法の明確化を求めることが、強く勧められている。リスクアセスメント、技術的対策、暴露限界のような問題に関するこれらの規則は、木材粉じんや溶接時のヒュームのような、作業工程で発生する危険有害物質にも適用されることを認識していることは、重要である。
危険有害物質暴露の防止と管理
危険有害物質から労働者の健康を保護するために、以下のことが事業主に要求される。
- 危険性を評価する。
- 危険を除去または削減するための対策を取る。
- 防止策の有効性を監視し、評価の見直しをする。
リスクアセスメント
リスクアセスメントは、全てのEU加盟国において制定されたヨーロッパの法の下、要求されるものである。リスクアセスメントの意味は、防止対策をとることができるように、何が害を引き起こすかを明らかにすることであり、適切なリスクアセスメントはリスクマネジメントの成功の基礎である。安全な作業を実践するため、リスクアセスメントに基づいて労働者をトレーニングすることは、リスクマネジメントの重要な一部である。トレーニングを受けた労働者は基準を守るだけでなく、より効率的に仕事をこなし、安全で衛生的な作業環境を作ることができる。物質によって引き起こされる危険は、その物質の特性と暴露の度合いの2つの要素によって決定される。
リスクアセスメントのための4ステップのアプローチ
- 作業場で作業工程において使用される物質と、溶接ヒュームや木材粉じんのような、作業工程で生じる物質のリストを作成する。
- 物質が及ぼす害や、それはどのように起きるかといった、これらの物質についての情報を集める。物質の供給者が用意すべき安全データシート(Safety data sheet : SDS)は、貴重な情報源である。
- 暴露の種類・強さ・長さ・頻度・発生状況を観察しながら、特定された危険有害物質の暴露を評価する。複数の危険有害物質を一緒に使用した場合の併用効果の評価と、それに関連するリスクを含む。
- 決定した危険度により分類を行う。このリストは、労働者を保護するための実行計画を作成する際、使用される。
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予測できる事故、保全作業、そしてこのような状況下でとられる応急処置を含む対策計画を、評価の中に盛り込むことは重要である。
危険の防止・管理
リスクアセスメントにより危険が明らかになった場合、EUの法は適用される暴露管理対策のランクを設定している。
- 工程や製品の変更による危険の除去を管理対策の一番上に設定する。
- もし除去が不可能ならば、危険な物質や工程は他の無害あるいはより危険性の低いもので代用する。
- 労働者への危険が防止できない場合、管理対策により労働者の健康への危険を除去あるいは削減しなければならない。以下は分類順の管理対策である。
- (1) 仕事の工程と管理を計画し、危険有害物質の放出を減らすために適切な機器や材料を使用する。
(2) 換気や適切な組織的対策のような全体的な防止対策を、危険の発生源でとる。
(3) 暴露が防止できない場合、個人用保護具の使用など、一人一人が防止対策をとる。
(参照)
- Third European survey on working conditions 2000, Foundation for the Improvement of Living and Working Conditions.
- Control Directive 89/391/EEC contains the basic provisions for health and safety at work where not covered by more specific legislation.
- Council Directive 98/24/EC of 7 April 1998 on the protection of the health and safety of workers from the risks related to chemical agents at work.
- Council Directive 90/394/EEC of 28 June 1990 on the protection of workers from the risks related to exposure to carcinogens at work and its amendments.
- Directive 2000/54/EC of the European Parliament and of the Council of 18 September 2000 on the protection of workers from risks related to exposure to biological agents at work.
- e.g. Council Directive 67/548/EEC of 27 June 1967 and its subsequent amendments presenting requirements for testing, classification, packaging and labelling of dangerous substances, Directive 1999/45/EC of the European Parliament and of the Council relating to the classification, packaging and labelling of dangerous preparations and their adaptations to technical progress.