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労働安全衛生における身体リスクの増大に関する専門家の予測
Expert forecast on emerging physical risks related to occupational safety and health

資料出所:欧州安全衛生機構ファクトシート:FACTS 60
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(仮訳 国際安全衛生センター)

掲載日:2006.11.08
なぜリスク増大に注目するか?

技術の進歩ならびに経済、社会および人口構造の変化による影響を受けて、働く環境は継続して変化している。このような状況に対して、欧州委員会戦略2002--06(1)においては、安全衛生機構が「リスク監視体制の設置」および「新しい増大するリスクの予測」を行うことを求めている。リスク監視体制は、欧州における労働安全衛生(OSH)の傾向を把握し、リソースの配分と時宜を得た有効な対策の実施が一層効果的になされることを目的としている。

リスク増大とは何か?

「リスク増大」とは、「新しい」、かつ「増大する」あらゆるリスクと定義することができる。

「新しい」とは、以下のどちらかを意味する。

リスクが「増大するとは」以下のときをいう。

リスク増大をどのように特定したか?

3段階のデルファイ法を予測手法として用いた。デルファイ法とは、専門家に対するアンケートを繰り返し行い、ひとつ前の段階で得られた結果をフィードバックして、評価を繰り返す手順に基づいたものである。リスクのランク付けには、5点スケールを使用した。調査への参加を要請された137人の専門家のうち、14の欧州諸国と米国の66人がアンケートに対し回答した。

労働安全衛生における身体的リスクで何が重要か?

リスクの予測結果は、多数の要素を有する問題への関心の増大を示している。

調査で特定された労働安全衛生身体的リスクトップテン
■運動不足
 この原因は、VDUs使用の増加、システムの自動化によって長い時間座ること、出張で移動するための座る時間の増加によるものである。文献調査によると、身体の活動が極めて少ない職種と筋骨格系の異状(MSDs)が多い職種では、長時間座っていることが多いが、長時間の立った姿勢での作業にも問題があることを示している。発生する疾患としては、上肢と腰部の筋骨格系異状(MSDs)、血管の異常拡張、深部静脈血栓症、肥満およびある種のがんがある。
■MSDsと心理社会的リスク要素の複合したばく露
 心理社会的に好ましくない局面においては、身体的リスク要素の影響を強め、MSDs発生の増加があると見られる。文献においては、VDUs、コールセンター業務およびヘルスケア部門に関するものが多い。心理社会的な要素としては、仕事が多すぎるか、少なすぎること、作業が複雑、時間の期限による圧力、統制がない、決定の権限がない、同僚が非協力、仕事の不安定およびいじめが挙げられている。MSDsおよび心理社会的なリスク要素の複合したばく露は、作業者の健康に対し、単独のリスク要素よりも重大な影響を有する。
■新しい技術と人間−機械インタフェースの複雑さ
 人間−機械インタフェースに関する人間工学的設計の欠陥が、作業者の精神的、感情的な緊張を増大させ、それによってヒューマンエラーと事故のリスクを招く。「知的」であるが複雑な人間−機械インタフェースは、航空産業、ヘルスケア部門(コンピュータを用いた外科手術)、大型トラック、土木機械(例えば、運転室のジョイスティック)および複雑なロボットとの共同作業において存在する。
■多要素から成るリスク
 専門家は、多要素から成るリスクを特に重視した。コールセンターにおいては、長時間の座作業、バックグラウンド騒音、不適切なヘッドホン、人間工学的配慮の不足、時間の期限による圧力、統制がない、精神的、感情的要求など、複数の要素のばく露があり、複雑な新しいタイプの仕事であるので多くの報告が取り上げている。コールセンターにおいては、MSDs、静脈拡張、鼻とのどの疾患、声の異状、疲労、ストレスおよび燃え尽き症候群の発生が認められている。
■長時間の立ち作業による人間工学的リスクに対するハイリスクグループの保護が不十分
 この問題の予測結果は回帰的であった。対象のうち、低就業構造および労働条件の劣る労働者(逆説的に教育訓練と認識の程度が低い)においては、特にリスクがあるとされている。この例として、寒冷または高温環境における作業の温熱条件によるリスクに関する知識の足りない農業および建設の労働者が挙げられる。
■不快温度
 産業作業場所の熱ストレスについては、取り組みがされてきたが、不快な温度への対策にも注目する必要がある。適温であることの労働者のストレスと安らぎに対する影響が適切に評価されていない。したがって、温度の不適合は作業者のパフォーマンスと安全行動を妨げ、災害発生の可能性を高めることになる。
■紫外線照射へのばく露の一般的な増加(UVR)
 回答者たちは、紫外線照射がリスク増大の要素であることに賛同している。UVRばく露は累積性なので、屋外も含め、労働時間中に多くの労働者がばく露するほど、作業におけるUVRに対する感受性が増加する。したがって、作業場所での防止手段の必要性が高まっている。
■振動、不安定な姿勢および重筋作業の複合したばく露
 振動は、在来型のリスクであるとされるが、EU理事会指令2002/44/EC(2)により、注目を集めている。
詳細についての資料

専門家の人間、社会および組織的なリスク、化学および生物学的リスクにおける予測によって、身体的リスクに関する予測を補完することにより、働く環境において増大するリスクの包括的な全体像を描くことができる。

・「リスク監視」についての詳細な資料
新しいウィンドウに表示しますhttp://riskobservatory.osha.europa.eu
・本機構レポート[労働安全衛生における身体リスクの増大に関する専門家の予測」
新しいウィンドウに表示しますhttp://osha.europa.eu/publications/reports/6805478
 
・本機構のウェブサイトにおいては、労働の世界の変化に関連する研究へのリンクを提供している。
新しいウィンドウに表示しますhttp://osha.europa.eu/research/rtopics/change/

(1)「労働と社会の変化への適合」労働安全衛生に関する欧州委員会新戦略2002-2006COM(2002)118最終版

(2)欧州議会および理事会指令2002/44/EC(2002年6月25日)物理的要因(振動)から生じるリスクへの労働者のばく露に関する最小安全衛生要件(OJ L177、6.7.2002)


欧州安全衛生機構
版権:欧州安全衛生機構 出所を示すならコピーを許可する。

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