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応急措置のための自動体外式除細動器(AEDs)の設置
Safety professional /cardiac arrest survivor says: ‘Make AEDs a part of your emergency plan’

資料出所:Safety+Health
March 2006

(仮訳 国際安全衛生センター)

掲載日:2006.09.22

編注
自動体外式除細動器(AEDs)のおかげで命拾いをした安全専門家の体験談とこの装置を設置することの重要性について述べたものである。AEDsの設置による効果は、海外、わが国とも広く認識されつつあり、2006年に刊行されたOSHAの「職場における応急措置体制に関する手引き」http://www.osha.gov/Publications/OSHA3317first-aid.pdf)においても設置の検討が勧奨されている。

 安全専門家は、重要な仕事の要素として、応急措置への対応を認識するようになっている。このことは、特に9月11日のテロ攻撃以来ずっと真実となっている。全ての緊急事態が大規模な事件であるという訳ではない。殆どは少数の人々だけとか、たった1人だけが対象で、応急措置を必要とする場合が多い。

このようなことが職場で発生した場合、安全専門家はその対応をしばしばどうにかこうにかこなしている。準備対応を行っているというためには、リスクを予期していて、死亡災害や重大傷害を防止するために必要な機器及びノウハウを確実に有していることが必要である。

安全専門家ジム・ウィック(インテル社米国環境健康安全マネージャー)は、この両面からものを見ている。ウィック(NSC理事会のメンバーで、ベテラン・ボランティア消防士)は、生涯、人命救助のために働いてきた。

しかし、2005年9月23日、ウィックは応急措置を必要とする状態に陥った。その日、フロリダ州オーランド市で行われたNSCの第93回全国大会及び展示会からの帰路のアメリカ・ウェスト(現在のUSエアウェイ)航空機内で何の前触れもなく突然、心拍停止になったのである。

乗務員と居合わせた2人の乗客−デブ・ゴロンベイ及びロリー・プレート−の素早い行動のおかげで、ウィックの命が心肺蘇生法(CPR)及び自動体外式除細動器(AEDs)により救われた。ゴロンベイ及びプレートは、現在アリゾナ州ペオリア市のR&G医療コンサルタントとして働いている看護師である。ウィック(59歳)によると、“2人の看護師は躊躇なく、直ちに対応した。”幸いにも好意的な措置者に加え、必要な機器が飛行機に積まれていた。全ての航空会社は、2000年に施行された連邦心肺停止回復法に従って、AEDsを積載することになっている。

ウィックの語るところによると、航空機のクルーは十分に訓練されており、すばらしいパフォーマンスだったとのことである。飛行機はルイジアナ州モンロー市へとルートを変更し、ウィックは近くの病院へ移送されたのであった。ウィックは外科手術により、胸に埋め込まれた除細動器により、十分回復して仕事に復帰している。

“私は今や体内に除細動器を有しており、それがいつも動いている。”とウィックはいう。ウィックの救助者の1人であるデブ・ゴロンベイは、AEDが無かったならば、ウィックの命を救うことはできなかっただろうと語った。全国心肺血管研究所によると、米国では毎年約70万人が最初の心臓発作を経験し、その結果、約45万人が死に至っている。突然の心肺停止による犠牲者は、虚脱後、3〜5分以内にCPRと除細動器で手当てすると、49%であったものが、75%という高い率で助かる。CPRだけを手当てされた犠牲者は、回復のチャンスが約6%であると、バーバラ・カラッチ(NSC緊急ケアプログラム訓練部長)は語る。これらの統計の示すところによると、突然の心肺停止による死亡を防ぐためには、AEDsが備えてあるということが重要である。

カラッチ及びウィックの二人は、事業者はAEDsを備え付けることを検討し、それを使用する中心人物を訓練することを勧めている。

“我々は、NSC及びNSCの地方事務所全てにAEDプログラムを有している。我々の医療対応チームは訓練、再訓練、そして定期的な実習をしている。”とカラッチは語る。ゴロンベイ(R&G医療コンサルタント会社主任担当者)も又、職場でのAEDsの効用について語った。“会社にとっては、財政的投資であることは明白なので、CEOsあるいはCOOsは、AEDを購入したり、訓練を実施したりすることをためらう。しかし、緊急事態が発生したときには、救助可能な唯一の方法は、AED及び十分な訓練を受け、AEDのセットの使用に十分な自信があり、正しく取り扱える人なのである。”と彼女は語った。

ウィック本人は、数年前、インテル社全社のAEDプログラム設立に関与させられた。そのイニシアチブには、米国内の、主なインテル工場間の従業員輸送用シャトル航空機全機にAEDsを装備することが含まれていたと彼は語った。

“AEDsは全体のリスクマネジメントの一部である。”とウィックは話す。“AEDsは皆さんの事業所で従業員及び訪問者を保護するために取り得る賢明な対策である。企業の価値が正しいこと、つまり全ての傷害を防止するということを実践しようとする場合こそ、このことが実際にその方向に一歩歩み出すのである。”

ウィックは、企業が一旦AEDsを備え付けることを決めたならば、地区の消防署、あるいは緊急医療サービス提供機関に相談することを勧めている。“これがたずねるべき最初の場所である。”とウィックはいう。“これらの機関は、皆さんに大きな協力をしてくれることでしょう。又皆さんは他の企業とネットワークを構築でき、あるいはNSC又はNSC地区事務所と相談できるようになる。”

一旦AEDsが備え付けられ、適切な人材訓練が成されたならば、プログラム管理の重要となる部分は、いつでも施設内の全ての場所がカバーされているのを確認することである。休暇中であるとか、病欠中であるといったことでカバーに、漏れが発生しないようにする。

“医療対応チームが素早く対処できる場所にAEDを配置することを確認すること。”とカラッチは語る。“勤務時間中に訓練及び再訓練を実施すること。そして結局は、実習!実習!実習!である。皆さんのチームが模擬実習をすればする程、実際の緊急時に優れた対応ができるのである。”全ての環境健康安全専門家、労働衛生専門家及び緊急対応チームメンバーは、CPR及びAEDの訓練を受講すべきであるとウィックは語った。しかし、緊急準備はAEDsが最初で最後ではないと彼は強調する。“AEDsは、全体的な緊急時への準備パッケージの一部である。”とウィックは述べる。“このパッケージには、応急手当、AEDs,CPR、火災時の避難計画、火災防止が入っていなければならない。もし皆さんがメキシコ湾岸にいる場合は、ハリケーンに備えていなければならない。もし皆さんが竜巻の通り道にいる場合、それに対して警戒しなければならない。自分の周辺にどんなリスクがあるのか理解していなければならない。”準備に対する企業の実施取組公約に加え、1人1人が、自分自身、家族、同僚、そして地域社会に対して正しいことをするための用意ができているという体制に、個人的にも責任を果たさなければならない。ウィックは、この約束事を、人々に対する純な心配りに基づいた行動のための意図であると呼ぶ。彼は、自分の経験を語ることが、企業及び個々人を正しい方向に導くことに役立つことを希望していると語った。又“この記事の読者が、自分自身、家族、あるいは各々の会社のために何か積極的なことをしたとしたら、私は大変うれしい。”と語った。