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NSC 将来的な展望
Future Vision

資料出所:「Safety+Health」2000年10月号p.58-59
(仮訳 国際安全衛生センター)


「SAFETY+HEALTH」は、全米安全評議会(NSC)のジェリー・スキャンネル会長に、将来に対する評議会の見通しを聞いた。

問: 今後5年から10年の、安全領域における中心的課題は何でしょう?
答: 安全衛生問題の工学的解決を促進するうえで、エルゴノミクスがいっそう中心的な課題になるでしょう。危険物質への暴露についての資料作成を強化する必要もあります。また社会に広がっている暴力について、これをとりまく諸問題を深く検討する必要があります。
問: 職場の安全は、今後どのように改善されると予測しますか? 具体的には、次の点についての見通しを聞かせてください。
エルゴノミクスについて
答: 就業中の労働者の保護はかなり進んでいます。工学的解決策により、職場の多くの安全問題が改善されるでしょう。ただ労働者の保護を強化するためには、これらの工学的解決策と、正しい機器使用法についての研修を組み合わせなければなりません。このように組み合わせたエルゴノミクス的解決策、一定の規制活動、労働者の参加、企業内部での強固な安全理念の確立によって、職場の安全実績は全国的に向上するでしょう。
「労働者の安全行動に基づく安全」(Behavior Based Safety:BBS)について
答: 職場での安全教育は拡大するでしょう。BBSは数あるツールのひとつです。うまく活用すれば、企業の安全プログラムの有効な要素になりますが、万能というわけではありません。BBSを全体的な安全対策のなかに位置づけるべきです。評議会の「企業安全衛生倫理規範」は、安全をアメリカの職場の中心的価値として位置づけることを誓っています。
問: 新しい安全へのニーズに対応して、評議会の役割はどのように変化するでしょうか?
答: 評議会が設立された1913年当時に、その後に発生した安全問題を予測できた人がいるでしょうか。今後もわれわれの使命は、『Safety Agenda for the Nation(国民のための安全覚書)』に示されている戦略的提携の構築にあり、家庭やコミュニティ、職場や道路上や自然環境など、発生する場所を問わず、安全衛生の問題を解決することにあります。
問: 労働安全衛生庁(OSHA)や環境保護庁(EPA)などの規制機関から、業種ごとに膨大な量の規則や規制が発せられています。この状況は継続すべきでしょうか、あるいは労働者の安全を守るためにほかに方法はないのでしょうか?
答: 「企業安全衛生倫理規範」により、時間はかかりますが安全がわが国産業界の中核的価値に位置づけられていくでしょう。業界の自主的規制が進むにつれて、最良の実践を把握、適用することで規制の必要性は低下するでしょう。企業は、規制の順守というより、長期的障害に対する補償責任と経済的影響への懸念からも、安全衛生対策を強化するようになっています。ロバート・ウッド・ジョンソン財団などの団体が、市場化が強まる医療業界での適切な規制の役割と内容について、対話を呼びかけています。わたしは教育、工学、必要な法令の徹底(つまり規制)の3点は、今後も労働者の安全を守り、安全規則を順守させる中心的方法であり続けると確信しています。
問: 米国は、急速に製造業の基盤からサービス産業へと転換しつつあります。評議会としては、サービス産業の問題についてはどんな対策をとれるでしょう? サービス業が直面する主たる安全上の問題は何でしょう。
答: 評議会としても重視すべき検討分野です。われわれは変化する経済に立ち遅れてはなりません。犯罪防止はわれわれの権限外ですが、サービス業の職場、とくに小売りでの暴力が表面化しています。今年の総会とExpoでは、いくつかの分野別会議と専門開発セミナーで職場の暴力を取り上げました。就労中の若年労働者の保護も議題になりました。エルゴノミクスの分野では、電子商取引の進展に伴ない、ますます複雑な問題が発生するでしょう。
問: この10年間、好況を謳歌した建設業の労働者は、他の業種にはない解決困難な危険性に直面しています。建設職場での安全促進のために、どんな対策があるでしょうか?
答: ここでもカギになるのは教育です。事故防止の最良の方法は、あらゆる建設作業の現場で、保護、教育、研修、監視することです。業種別の安全認証が普及するのに時間はかからないでしょう。事業者や労働者など、すべての当事者に、安全な建設現場慣行についての適切な研修を実施し、予期せぬ負傷事故の発生を防止すべきです。
問: 2100年頃には職場の安全はどうなっていると予想されますか?
答: 職場の変化は急激すぎて、今後数年先を予測することさえ不可能です。インターネットが、10年前には予想もしなかった状況を作り出したことを考えてみてください。ただし、ある程度の一般的予測はできるかもしれません。地球規模の大惨事がなければ、2100年には太陽系のはるかかなたまで探査が進み、となりの恒星系にまで足を伸ばしているかもしれません。こんなわくわくするような時代になれば、安全工学も安全専門家の訓練もまったく新しい内容が必要になるでしょう。地球からの支援を受けて宇宙空間で働くのですからね。こんな時代をわたしも見てみたいものです。