このページは国際安全衛生センターの2008/03/31以前のページです。
NSC発行「Safety + Health」2000年11月号, Vol.162 No. 5


時の人


議会、核兵器工場労働者補償計画を承認

何週間もの交渉の結果、下院、上院は、冷戦時代に放射線や他の危険物質に曝されてきた核兵器工場労働者に対し、補償パッケージを設けることに合意した。
今年の防衛予算法案の一環として、次期大統領は、補償給付水準を詳述した具体案を2001年3月15日までに送付するよう求められている。議会は、2001年7月31日までに補償水準を制定しなければならない。もし議会が期日までに制定できなれば、15万ドルの不履行金および療養給付が発効する。
危険性に対する無知や、旧ソ連との核競争による緊急性が重なり、ケンタッキ−州パドゥカ、オハイオ州ポーツマス,テネシー州オークリッジのエネルギー省(DOE)所管工場や同省委託による私営兵器工場では、労働者は、危険なレベルの放射線に曝されてきた。
議会やエネルギー省が開催した一連の公聴会では、何百人の元労働者---末期ガン患者も含め---が、危険な被曝、不十分な保護具や検出器の紛失について証言した。エネルギー環境研究所の調査では、もっとも多く被曝した労働者は、ガン死亡率40%となっており、被曝していない労働者のガン死亡率の200%増であることがわかった。
 この妥協案の複雑さは、この問題が、議会の会期末を迎えて、いかに紛糾したかを示している。一時点では、下院で法案は廃案となったかに見えたが、復活した。
 フレッド・トンプソン上院議員(共和党、テネシー州)は、6月に上院を通過した防衛予算法案の補則としての立法化を発起したが、下院共和党指導部では、当初、費用がかかり過ぎるとして不評であった。
 「これは、冷戦での母国の勝利に尽力した男女のための勝利である」と、トンプソン上院議員は述べた。「長く厳しい戦いであったが、今、議会は、母国に奉仕したあげく苦しんでいる人々に対し、債務を履行する」。
 当初の法案では、ベリリウム関連の疾病、放射線関連のガン、その他の職業病を患っている3千人余の労働者に対し、損失賃金と医療給付、もしくは、計20万ドルと医療費のどちらかの組み合わせを給付するというものであった。議会予算局は、このパッケージの費用は、10年間で15億ドルと見積もった。
補償のためロビー活動をしてきたエネルギー省のビル・リチャードソン長官は、この計画は、「歴史上の大きな転換期」を画くすと語った。
 「防衛予算法案中の提案により、放射線関連ガンや肺病を患っている核兵器工場労働者は、医療費の支払いの一助として、補償を得られる」と、リチャードソン長官は述べた。「これは、国家のために尽くし最大の犠牲を払った冷戦退役者に対する、国家の積年の負債である」。