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NSC発行「Safety + Health」2001年11月号

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安全は、企業の収益にプラス − 経営陣の認識

 ボストン − リバティ・ミューチュアルの調査によると、会社役員の95%は、労働安全は、企業の財務成績にプラスの効果があると報告した。このうち61%は、労働安全の改善に投じた1ドルにつき、3ドル以上もの収益を享受すると確信している。
 「労働安全に関する役員の認識調査」によると、役員は、労働安全のメリットは、企業収益の改善にとどまらないと実感しており、その70%は、労働者の保護こそ一番の利益であると報告している。
 本調査は、労働災害関連の2種類の費用が、米国企業にどう影響を及ぼすかという点も浮き彫りにした。負傷労働者と医療機関への支払い費用のような直接費用と、生産性の損失や超勤費用といった、いわゆる間接費用である。調査対象の役員93%は、この2つに関連性を認めており、うち40%は、1ドルの直接費用が、3〜5ドルの間接費用を生むと報告している。
 労働災害・業務上疾病の直接費用に関する独自の調査結果と間接費用の調査結果を比較して、リバティ・ミューチュアルは、米国企業は、労働者災害補償に年間1,550億〜2,320億ドルという驚異的な金額を負担していると試算する。調査結果はまた、役員は、労働災害の特定の原因に着目して他の原因を排しているが、労働安全の優先順位を洗いなおす必要があると示唆している。
 例えば、役員は、労働災害の原因でもっとも重要性の高いのは反復動作であり、これに安全対策の資源を集中させると答えている。しかし、「リバティ・ミューチュアル労働安全指数」によると、1998年には、反復動作以外の五原因が、それぞれより多くの直接費用をもたらしている。指数によると、1998年の反復動作による傷害は、23億ドルの直接費用をもたらしたが、災害原因第1位は過労で、この直接費用98億ドルの約 1/4にすぎない。
 「労働安全は、今日の米国の事業運営の多方面で、プラスまたはマイナスの波及効果がある」と、商業保険リバティ・ミューチュアルのジョゼフ・ギルズは語った。「役員はまず、労働災害による労働者の苦痛を予防するための先制的対策をたてること。自社に最大のインパクトをもたらす事故原因を特定し、これに職場の資源を集中させれば、費用も削減でき、労働者の達成感や健康の保持、原価の抑制、生産・納期の短縮、品質改善といった戦略的な目標を達成することができる」。
 調査結果は、中規模企業(100〜999人)125社、大規模企業(1,000人以上)75社の労働災害補償その他商業保険担当役員200名へのインタビューに基づいたものである。

出 所:リバティ・ミューチュアル


現  実
認  識
順位 直接費用に基づく労働災害の10大原因 全米労働災害補償直接費用(推計) 「労働安全に関する役員の認識調査」(役員のランキングによる事故原因)
1 過労 − 持ち上げる、下げる、押す、引くによる負傷 98億ドル 反復動作
2 転倒(同一平面) 44億ドル 過労 − 持ち上げる、下げる、押す、引くによる負傷
3 身体の反動 − かがむ、立つ、手を伸ばすことによる負傷。ただし、すべり、つまずきは含まない。 36億ドル 幹線自動車道路事故
4 墜落・転落 36億ドル 身体の反動 − かがむ、立つ、手を伸ばすによる負傷。ただし、すべり、つまずきは含まない。
5 激突され 34億ドル 墜落・転落
6 反復動作 23億ドル 機器にはさまれ、まきこまれ
7 幹線自動車道路事故 21億ドル 転倒 (同一平面)
8 激突 19億ドル 激突され
9 機器にはさまれ、まきこまれ 16億ドル 高温のものとの接触
10 高温のものとの接触 3億ドル 激突