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強く求められていた改善点ケルブス氏の説明によると、従来の文書は30年近く前に制定されて以来、多くの事項が付け加えられたために混乱が生じ、使いにくくなった。新基準では、旧文書に追加された指針をすべて適切な項目に移動し、整理した。また「Q&A」の項目を新設し、新基準をより明瞭で、わかりやすいものにした。「以前のような画一的な文書ではなくなった」と、ケルブス氏はいう。 ケルブス氏が指摘する主な変更点は以下のとおりである。
就業日ではなく暦日を使用することで、損失日数の計算がもっと妥当なものになるとケルブス氏はいう。新基準では、たとえば週末の休日、祝日、休暇の日数も含められる。事業者は、労働者が欠勤した就業日の日数だけを記録すればいいというわけにはいかなくなる。新しい記録保管方式になると、労働損失日数だけに基づいて安全プログラムを制定する企業は評判を落とすだろうとケルブス氏はいう。 また「暦日計算になると労働損失日数が増加する場合があるため、業界は乗り気ではないかもしれません」ともいう。「必要なのは総合的な測定体制なのです。災害予防の過程では、事業者は労働損失日とは別の測定基準を理解する必要があります。労働損失日だけが測定されるようになってきましたが、安全な事業場を提供するという場合には不適当だし、そうあってはなりません」 OSHAの統計学者、ジェームズ・マダックス氏は、新しい届出様式で手続きがより体系的になるという。また記録保管規則が明確になるだけでなく、新基準は負傷と疾病を301様式に統合したため、利用者が使いやすくなっているともいう。 これ以外にもケルブス氏は新基準の改善点をいくつか指摘する。
変更点の理解以上のような改善点にもかかわらず、全米製造業者協会(ワシントン)などの業界団体は実施の1年延期を求めている。新基準に習熟するにはそれくらいの時間がかかるとの理由からだ。全米製造業者協会は、新基準の発効差し止めを求めて訴訟を起こし、いまも係争中である。 ケルブス氏はこれに反論する。新基準への転換はむずかしくなく、企業は2002年までに順応できるという。事業者が新基準を懸念するのは、負傷に対する請求や負傷の論争点が増える可能性があると考えるからではないかという。 ケルブス氏によると、新基準に欠陥があるとすれば、そのほとんどは、新しい規則であるために事業者が順応する時間が必要になることに起因するが、全米製造業者協会が要求するように1年というわけではない。ケルブス氏は、どんな基準も万能の治療薬ではないと指摘する。習熟期間中であればこそ事業者はミスを犯すし、その結果、罰金や罰則が科される場合もあるという。 だがブッシュ政権とOSHAのジョン・ヘンショー担当次官補は、順守面での支援とパートナーシップを確信しており、OSHAは新しい届出様式の記入でミスがあっても事業者に寛大な態度でのぞむかもしれない。 全米安全評議会の第89回年次総会およびエクスポ(アトランタ)で、ヘンショー次官補は、事業者には同庁として可能な支援を与えると述べた。そして「資料を配布し、衛星中継によるセミナーや会議も開催して新基準を説明する予定だ。OSHAのウェブサイトにも有益な情報を数多く掲載している」「各種の業界団体の協力を得て資料作成に取り組み、また中小企業にも普及するよう最大限の努力をする」と述べた。 OSHAの取り組みだけでなく、全米安全評議会も新基準についての講座を開設する。 多数の分野での変更記録保管の新しい基準では、多くの変更や改善がなされている。以下は主な内容である。 OSHAのマダックス氏によると、1904.4, Subpart Cは新基準の中心をなしており、記録の規準を示している。基本的要件は、各事業者が死亡、負傷、疾病の記録を保管し、また以下に該当する個々の死亡、負傷、疾病を記録することである。
1904.7条は、一般的な記録規準を示している。1904.8条から1904.12条までは、注射針および鋭利な物体による負傷、OSHA基準に基づく医学的切除を伴なう事象、職業性聴力損失を伴なう事象(現在は検討中)、業務関連性結核の事象、業務関連性筋骨格系障害の事象(これも検討中)に対する記録規準を列挙している。ただし事業者は、他の業務関連の負傷の場合と同様、あらゆる筋骨格系障害についても記録すべきだとマダックス氏は指摘する。 またさらに「新基準は事業者の責任を明確にする一方で、一定の猶予を与えている」とも述べている。たとえば負傷または疾病が発生した日付まで記録する義務はない。 免許をもつ保健医療専門職が労働者に欠勤を勧告した場合、事業者はそれに従うよう労働者に促すべきである。ただし、労働者が勧告にしたがったか否かにかかわらず、欠勤日数は記録しなければならない。複数の医師または保健医療専門職による勧告に相違があった場合、事業者はどの勧告がもっとも妥当かを決定でき、その勧告に基づいて事象を記録する。医師または保健医療専門職が労働者に復職を勧告したが、労働者が復職しない場合、新基準は、医師または保健医療専門職の勧告日をもって欠勤日数の計算を中止しなければならないと定めている。 また欠勤日数には暦日180日の上限が定められている。事業者は、暦日180日を超えて労働者が欠勤した日数は計算しなくてもよい。負傷によって死亡し、または病状が深刻化した場合、事業者は記録簿の内容を更新し、もっとも深刻な状態を記録しなければならない、とマダックス氏はいう。 上記以外の変更点として、すべての災害は旧基準の6就業日以内ではなく、暦日の7日以内に報告しなければならない。 新基準は出張および在宅勤務に関連した問題も示している。マダックス氏によると、たとえば出張中の労働者がホテルでシャワーを浴びているときに負傷した場合、または労働者が個人的な訪問中に負傷した場合、これらの災害は業務関連の範疇に入らない。ただし、労働者が業務関連の任務を行っている時に、負傷や、それ以上の深刻な事態が発生した場合は報告しなければならない。 プライバシー問題プライバシー保護が確立されたことは、新基準でおそらくもっとも重要な変更だろう。プライバシーにかかわる問題がある場合、労働者の要求があれば、300様式の記録簿に労働者の氏名を記載する必要はない。ただし、ほとんどの事業者は別個に、事象数と労働者名を記載した部外秘の一覧表を保管しておかなければならない。これらの事象の内容を更新し、政府から求められた場合に情報を提供するためである。 マダックス氏によると、プライバシー条項が適用される可能性があるのは、以下にかかわる事象である。
これ以外の事象はプライバシー条項に該当しない。またマダックス氏は、労働者には301様式を閲覧する権利があることを繰り返し述べる。同時に新基準は、労働者、元労働者、およびその個人または当局代理人による負傷/疾病記録の閲覧に制限を加えていることも指摘する。さらに、すべての事業者は、雇用する労働者に対し、負傷および疾病の届出状況を報告しなければならない。 「また従来の規則には誤解もあったが、新基準では明確になった」とマダックス氏はいう。「労働者が301様式の閲覧を要求する前に、氏名を削除するという規定はない。多くの事業者はそれができると考えていたが、それはできない」 マダックス氏によると、移行期間中、事業者は200様式および101様式のコピーを5年間、保存する義務がある。ただし、両様式を更新する必要はない。 記録保管義務に関する注: 9月11日の同時多発テロの被害にあった事業者は、テロで死亡し、またはテロによる負傷で死亡した労働者の記録義務は免除される。
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