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NSC発行「Safety + Health」2002年2月号

ニュース

世界貿易センター跡地の労働者、肺の不調を訴える

 ニューヨーク − 月日がたつにつれ、世界貿易センター跡地で働く救助隊員、復旧作業者の間で、呼吸器関連の不調をみせる者がますます増えてきた。労働者は、喘息の初期徴候を示しているか、または「世界貿易センター咳」として知られる過剰な咳に悩まされる。
 ニューヨーク市消防局のデイビッド・プレザント次席医務官は、救急隊員の個人用保護具に関するNIOSH(国立労働安全衛生研究所)の会議で、世界貿易センター咳は、単なる咳ではないと報告した。予備的な肺疾患テストによると、世界貿易センターで作業している消防隊員の少なくとも25%は、喘息の初期症状を示している。
 問題の一部として、最初の数週間、一般に使用された防塵マスクは、消防隊員が作業していた過酷な環境にとうてい対応できるものではなかったということが挙げられる。さらに、プレザント氏は、現場で配布された安全めがねの大半は、両脇に通気孔があって、効果のほどは疑わしいと語った。
 病気の労働者の大半は、消防隊員である。対米テロ後の第1週目には、呼吸用保護具を使用していた、または自給式呼吸器もしくは半面形マスクを着用していた消防隊員は、10%にも満たなかった。第2週目には、より多くの救助隊員が適切な保護具を着用し、現場では、より良い保護具が用意された。
 さらに、世界貿易センター周辺の事業所では、安全点検項目から環境危害に及ぶ諸問題について、従業員に説明している。例えば、メリル・リンチ社のドナルド・ジェムソン医師は、アスベストその他の浮遊有害物質の危険に関する最新の科学的所見について、従業員に説明している。ジェムソン医師は、従業員に対し、当該地域での労働に長期的な健康リスクはないが、涙目や咽喉の痛みを患うかもしれないと説明している。「パーフェクトになるとは説明しない」と同氏。
 EPA(環境保護局)も、試験を継続する。当局は、残骸からアスベスト、ベンゼン、ダイオキシンやPCB(ポリ塩化ビフェニル)を検出すると語っているが、これらの汚染物質は、長期的な健康リスクを引き起こさないと認めている。労働者のなかには、ファイルを回収するため、世界貿易センター2棟の倒壊で損壊した近隣建物に戻ることを許可された者もいる。罹災地域に戻る前には、労働者は、健康診断を受け、アスベストの取り扱いや呼吸用保護具の正しい使い方について訓練を受け、建物に立ち入ることを何人にも強制されているのではないとした権利放棄証書に署名しなければならない。
 同地域に戻る労働者は、グラウンド・ゼロ(ゼロ地点)に接近し、いわば共同墓所となっているそばで働いているとの認識で、不快感を持っている。多くの企業は、こうした従業員に対し、カウンセリングを提供している。