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NSC発行「Safety + Health」2003年6月号

産業特集

運輸
労働時間規則(Hours-of Service Rules)、トラック運転手の疲労に対処
 連邦自動車運輸安全局(Federal Motor Carrier Safety Administration : FMCSA)は、幹線道路の安全性の改善と、トラック運転手の疲労に起因するトラック衝突事故や死傷災害の減少をめざして、労働時間規則の1939年以来初の実質的な改正を発表した。
 新規則の主要項目には、以下が含まれる。
  • 運転時間を10時間から11時間に延長する。
  • 当番時間を15時間から14時間に短縮する。
  • 非番時間を8時間から10時間に延長する。
  • 34時間再開条項を除き、現行の週7日60時間、週8日70時間規則は変更しない
 新しい労働時間規則は、「科学的根拠に基づくのみならず、人命救済や操業面でも実際的な道理にかない、今以上に施行が複雑になることもなく、よりよく安全性を保証する」と、自動車運輸安全局のアネット・M・サンドバーグ長官代行は述べた。
数年間、当局は、この規則改正を検討してきたが、最終規則はどうあるべきかをめぐる利害関係者間の対立が、進捗を遅らせた。例えば当局は、規則作成案を通知してから、5万3千件以上もの書面で寄せられたコメントを検討した。この多数の反応で、最終規則の発表は遅れた。(「自動車輸送をめぐる目下の関心事」35ページ参照。)
だから、最終規則に喜ぶものがいれば、怒るものもいるのは、特段驚くことではない。

産業界は、なんとか耐えられる
 米国トラック協会(American Trucking Association)および商業用乗物安全同盟(Commercial Vehicle Safety Alliance)によると、新規則は、理解しやすく、遵守しやすく、実施しやすいものにすべき、という主とした両団体のコメントや見解が織り込まれている。
 その結果、バージニア州アレキサンドリア市の米国トラック協会は、新しい労働時間規則は常識と確かな科学との賢明な組み合わせであるとして、これを支持すると述べた。
 「この規則だと、協会の会員は対処できる」と米国トラック協会のビル・グレーブズ会長は言う。
 ワシントン市の商業用乗物安全同盟も、新規則の施行は、政府当局やトラック運送業者への大きな負担にはならないと、同規則に満足している。

批判、噴出
 しかし、ここ数ヶ月間、規則改正を運輸省に迫ってきた安全団体は、今回の改正は、運転手の疲労問題に十分取り組むものではないと言う。運転時間を規制する今回の規則改正では、運転手の疲労問題を取り扱うには不充分であると、ワシントン市の幹線道路・自動車安全擁護団体(Highway and Auto Safety)のジュディ・ストーン会長は述べた。「運輸産業を除いて、今回の改正に満足している人など知らない」とストーン会長。
 米国最大のトラック運転手組合であるワシントン市のチームスターズ(Teamsters : 全米トラック運転手組合)は、新規則は、運転手の疲労を和らげるところか、増大させると主張し、憤りを隠さない。「新規則は、組合員に害だ。助けにはならない」と、同組合。組合は、運輸省に反対すると概略したコメントを提出した。
 ミズーリ州グレインバリー市にある個人営業運転手協会(Owner-Operator Independent Drivers Association)は、新規則は、運転手の疲労には「極小の影響しか及ぼさない」と主張する。「トラック運転手が、非現実的な配達期日に会わせるよう、常にせかされることがなくなるまで、また週33 〜44時間も補償なしの労働を強いられなくなるまで、疲労問題が著しく軽減されることはない」と同協会。
 連邦当局は、2004年1月4日に発効する新規則で、年間75名の人命が救われ、疲労に起因する衝突事故1、326件を防止すると見積もる。2002年には、推定4,902件のトラック関連の衝突死亡事故が発生した。
 自動運搬車安全庁は、労働時間の記録保持や法の遵守を徹底するための車内搭載型電子記録装置その他の技術に関する研究を拡大するとも述べた。このような記録装置の義務付け(異論の多い話題である)については、今回の規則作成の過程で検討されたが、結局、当局は反対の立場をとることにした。安全擁護団体は、記録装置は即刻実施できると確信している。
 規則全文を閲覧するには、www.dms.dot.govを開き、書類番号FMCSA-97-2350を検索するとよい。