このページは国際安全衛生センターの2008/03/31以前のページです。

労働者負傷時の対応

「Safety+Health」2003年12月号p.48
(仮訳 国際安全衛生センター)



Q:救急車を呼ぶほど重大でない負傷の場合、この負傷者を救急室あるいは診療所に運ぶための企業の対策樹立についてのガイダンスがあるか。

今月の回答者:Tonya Casselman
(イリノイ州モリーン所在のVoltSource社プログラム・コーディネーター)

A:労働者が就業中に負傷した場合、事業者は以下の事項に対する義務を負っている。
  • 負傷者を近くの医療施設へ連れて行くこと。この際、事業者は負傷した場所から医療施設への移送費用を支払う義務がある。負傷した労働者を搬送するため、救急助力者を呼ぶかタクシーを呼ぶのが、責任の取り方として最も良い。もし、他の労働者が負傷者を病院まで移送する場合、その途中で事故に遭うと、運転している労働者の責任となる場合がある。
  • 傷害あるいは疾病に関係する情報及び事実関係についての情報を収集すること。負傷した労働者、スーパーバイザー、目撃者及び処置した医療関係者に尋ねること。一般的に、最も良い方法は、請求に先立って利用可能な一連の労働者の補償質問項目を作成しておくことである。
  • 企業内に設けられた労働者に対する補償対策連絡室に、災害あるいは傷害について3営業日以内に報告すること。一番良いのは労働者が負傷したその日のうちに報告することである。一般的に企業は、このような事案を取り扱うため労働者災害補償会社と契約し、あるいはリスク管理部門を有している。多くの企業はリスク管理部門あるいは法務部門を持っていて、契約している労働者災害補償会社と共同でこれらの事案に対応することになる。

 事業場の中には看護師というような、現場に常駐した医療体制を持つ所もある。労働者が救急処置を必要とする場合、看護師が救助し、更に、その傷害が医療施設で処置されなければならないかどうかを看護師は判断することができる。労働者の傷害、あるいは災害について、看護師がその報告書を作成し、その担当責任者に提出報告しなければならない。

 このような傷害が発生する以前に、事業場は、効果的な安全計画方針あるいは労働者傷害対策を樹立しておかなければならない。一般的には、この計画を作成、維持するためには、経営トップから始めることである。経営者側は、労働者の補償あるいは安全対策に誰が責任を持つかを判断し、決定しなければならない。このような計画の責任は、通常は人事部門あるいは法務部門/リスク管理部門にある。この計画がうまくいくためには、労働者参加と並んで、経営側の関与が重要となる。これらの方法としては、次のようなものがあげられる。
  • 責任体制を樹立した後、企業内の安全方針を作成、開発し、実施すること。
  • 労働災害緊急事態時及び緊急事態時ではない場合のプロトコル(手順)を討議し、樹立しておくこと。連絡者、医療施設及び緊急電話番号をリストアップしておくこと。連絡を受けた人は、911に電話し、傷害を報告し、傷害者の場所を連絡すること。
  • 第三者による労働者災害補償サービスの利用体制を打合せ、樹立すること。労働者災害補償会社との協力を決めた場合、請求報告プロトコルを修正すること。企業内関係者が第三者である労働者災害補償会社の必要性を認めない場合、この処理の責任者が誰であるかを打ち合わせしなければならないこと。現場責任者がまず初めに誰に連絡を取るかを決定し、更に情報の整理保管、請求、法的必要事項、保険及び労働者の災害補償支払を処理する人を決めなければならない。
 プロトコルを決めた後に次のことをしなければならない。
  • 全ての労働者に職場安全災害プロトコルをはっきりと伝えること。
  • 明確な目標及び目的を樹立し、かつ確認すること。
  • この計画を実施するため全ての役職員に参加を求めること。
  • この計画に関係する全ての人にやる気を出させ、この方針及びプロトコルの訓練/意識づけを行うこと。
  • 責任を持つ部門に適切な権限及び人材等を提供すること。
  • 全ての労働者に規定されたガイドラインに従う義務を課すこと。

Reprinted with permission from the National Safety Council.