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出張作業者の安全管理
遠隔地で働く労働者に安全の手を差し伸べなければならない

OUT OF SIGHT not out of mind
Safety's long arm must touch remote workers wherever they are

(マービン・グリーン共同編集者)

資料出所:National Safety Council (NSC)発行
「Safety+Health」2004年11月号p.44
(仮訳 国際安全衛生センター)



  インターナショナル・ペーパー製紙会社(International Paper Co.)は、森林の経営を通じて、同社の中心的製品である紙及び木材製品を開発生産している。同社の本社は、コネチカット州スタンフォードにあるが、多くの労働者は通常は小グループ、ないし単独で、森林で作業している。ロジスティックス及び経営の刷新と共に、ここで働いている労働者達は、ユニークな安全衛生の取り組みを行っている。この会社での労働者の安全衛生のまさしく重要なことは、企業の建物外で業務が実施される時にある。
  従って、インターナショナル・ペーパー社は、特に遠隔地で働く森林労働者に対する安全管理対策に重点をおいて取り組んでいるとマイク・ジョンソン(テネシー州メンフィス支店安全衛生部長)は語る。
  さらに彼は、“皆さんは、従業員が外で働いている時に、必ず規則的にチェックし、コンタクトを取ることが重要で、このことにより、何かが発生した場合には、直ちに、彼らに手を差し伸べることが可能となるのである、”と語る。
  このような労働者に対しては、やりにくいように聞こえるかもしれない。労働者が森林で傷害を被った場合には、後方にある本社の管理担当部に情報が届くようになっていることが重要である。このようなコミュニケーション体制が、遠隔地で働く労働者に対する安全プログラムの重要な要素となる。“今や緊急事態が発生した場合、労働者を発見するのに、雪が溶けるまで待つ必要はない、”とジョンソンは述べる。
  携帯電話や双方向ラジオといった技術革新により、インターナショナル・ペーパー社では、コミュニケーションをとることが、ずっと簡単になった。会社では、緊急時に何をすべきかについて、労働者向けに単独作業時の方針を作成している。
  今迄、捜索隊を幾度と無く、送り込んできたが、今は、連絡を取りあうことが極めて簡単であるとジョンソンは言う。“現場に到着した時の連絡手段が決められていて、労働者が確実に注意を払い、連絡手段が正常に作動するように、十分な教育訓練を実施している”。

遠隔地で働く労働者は多種多様である

  インターナショナル・ペーパー社の森林労働者は、遠隔地での作業が増加しているので全国的に見ると、労働者の小分遣隊形式となっている。
  マイケル・トプフ(ペンシルベニア州キング・オブ・プルシア 安全衛生訓練コンサルタント会社創立者 社長)は、遠隔地で働く労働者とは、伝統的に、隣接する作業現場から離れて作業を行う労働者であると定義している。この労働者には、自宅をベースとした労働者、通信手段を利用して仕事をしている労働者、販売員、サービススタッフ、あるいは出張先のホテルや空港で仕事をする人々が含まれるとトプフは語る。メリーランド州シルバースプリングのインターナショナル・テレワーク協会の、最近の調査によると、4,440万人以上のアメリカ人が、少なくても何日間かは、家族と離れて働いているとのことである。}
  トプフによると、労働者が主たる事務所や工場から離れていると、安全担当部の直接的な指示が上手くいかないとのことである。これを防ぐために事業者は、労働者自身を含め、安全は全ての者の責任であることを遠隔地での労働者に対しても、そうでない人々に対しても伝えなければならない。
  安全は、そこにいる全ての人々の努力目標であるとトプフは語る。工場の従業員が50人、100人、500人あるいは1,000人いたとしても、全ての居場所をいつも監視しているというわけではない。労働者が、同僚と一緒にいようが、一人でいようが、本当に何を実施するかは、結局、個々人の問題にかかっている。
  情報とその伝達を共有することは、遠隔地で働く労働者への安全メッセージ強化につながる重要な第一歩である。アーサー・エドワード(フロリダ州ケネディ宇宙飛行センター、ユナイテッド・スペース・アライアンス(United Space Alliance)の環境安全衛生リーダー)によると、同社の最大の安全問題は、遠隔地労働者への情報提供である。
  この共同会社は、ヒューストンに本社があり、ボーイング社とロッキードマーチン社の共同出資によるNASAのスペース・シャトル計画の第一順位の契約会社である。この会社のフロリダにおける操業には、6,500人の従業員が携わっており、エドワードが安全責任者となっている。従業員達は、発射台、軌道ハンガー及びタイル、固体ロケットブースター部品、兵站、化学薬品に関する特別作業を実行する施設などスペース・センター周辺の各地に住んでいる。
  また、短期労働者のような人々もいる。これらの人々は、一つの建物の中で管理されているが、タイムレコーダーで出勤時刻を記録するために、この建物に行くだけである。その後、終日彼らは、おのおのの持ち場へと出掛けていくとエドワードは言う。

挑戦すること

  トプフによると、安全管理者が行う対策とは、遠隔地での労働者を初め、すべての労働者に安全対策部の手を長く伸ばし届けることであるとしている。
  通常の作業環境下では、監督者は労働者が安全衛生手順通りに作業をしているかについて監視し、労働者側もお互いに優れた安全衛生実施方法について意識を高めている。安全衛生計画は、チーム単位で行われるものであり、その特定の作業場で出る意見は計画を成功に導くために、しばしば重要なものであるとトプフは語る。
  遠隔地での労働者の場合は、眼に見える関係が存在しない。サービススタッフや販売員は、車を運転して外出する場合は単独なので、彼らを監視する人は誰もいないことになる。企業の挑戦は、いかにして人々が安全のしきたりの必要性を徐々に身につけるかであると彼は言う。
  労働者が別の場所、つまり顧客の事業場とか、安全でない場所に行く場合にも問題が発生する。
  労働者が別の場所にいる場合には、その場所を十分管理できないと、フィル・ウォルシュ(ミシシッピー州ツペロ、ハンター・ダグラス社(Hunter Douglas Inc.)(窓装飾メーカー)金属流通課環境安全衛生管理者)は言う。基本的には、労働者自身にかかっている。我々の教育方針としては、安全は、労働者自身の責任にかかっていることを肝に銘じて欲しいということである。
  トプフは続けて、遠隔地で働く労働者は自分自身の安全を守るために一生懸命努めなければならない。というのは、不慣れな作業環境で機材の修理を行う時に、保護眼鏡や、保護手袋を着用するか否かは、我々ではなく労働者自身にかかっているからである、という。
  この安全に対する個人責任の感性は、企業の安全文化から始まるものである。Safety Health誌がインタビューした安全専門家諸氏は、理想を言うと、企業が安全文化に強く固執することが、遠隔地の労働者に良い影響を及ぼすと発言している。例えばインターナショナル・ペーパー社では、“従業員Info-Link”と呼ばれる準公的インターネットサイトを同社のウェブサイト上に持っており、緊急時連絡を初めとする企業からの特別連絡方法及び連絡事項を労働者が常時受け取ることができるようになっている。このInfo-Linkは、世界中のどこに居てもパスワード無しで、どのコンピューターからも、ウェブにアクセスできる機械ならどこからでも、アクセス可能である。
  さらに多くの企業では、主な作業場所以外で働く労働者に対し、コンピューターによる安全訓練を特に遠隔地で働く労働者用として用意している。 ハンター・ダグラス社(Hunter Douglas)における遠隔地で働く労働者は、“一般の労働者が受けているのと同じ安全訓練を体験している。これは、遠隔地の労働者にとって少し辛い点もあるが、彼らの作業場所あるいはコンピューターによるコミュニケーション手段を通じて実施するように求められている”とウォルシュは語る。
  エドワード(彼は又、フロリダで提携先のOSHAのVPP(Voluntary Protection Proguram)計画を指導推進している)は、労働者の作業場所が固定していても、いなくても、絶えまざる安全文化が、全ての労働者を勇気づけると話している。又、企業の広範囲にわたる安全文化は、各工場と各作業場所全体にゆるぎなく広がっていくとも話している。 “この提携先での安全文化を伝える一つの方法としては、製品、生産プロセス、手順に固有の危険があることを発見した場合には、労働者に警告を出すということによって行われている。”と彼は言う。

リスクを理解すること

  事業者は又、遠隔地での労働者が直面する可能性のあるハザードについて、労働者に教育しなければならない。多くの労働者が主たる作業場所から離れたところで働かなければならないような場合には、事業者はこのような労働者を雇用することから派生する問題点をより良く理解するように努めなければならないとトプフは言う。
  1999年11月OSHAは、遠隔地で働く労働者に関する政策に関し、大激論を交わした。審議会でOSHAは、遠隔地で働く労働者の安全確保に事業者は責任があると言った。しかし経営者側及びテレコミューター(在宅勤務者)の側から猛烈な抗議があり、この決定をすぐさまに取り消した。
  このことにも拘らず、裁判では常に離れた所で作業している労働者が傷害を被った場合、事業者責任を問う事例が見られるとトプフは話している。トプフの忠告によると事業者は、自社の安全衛生方針を樹立することが重要であるとのことであり、既に多くの企業がそうしていると語る。
  “皆さんがコーヒーをこぼした人を訴え、それがとても熱いコーヒーだということでコーヒー店を責めることができるのであれば、どんなことでも訴えることができる”と彼は言う。
  トプフはさらに、従業員が特に本社から離れた場所など、遠い場所で働くような場合、その離れた場所における安全に対する危険有害要因について、事業者は、認識を持っていなければならないとトプフは語る。
  “安全専門家にとって、この遠隔地で働く労働者のための新しい技法としては、離れた所で働く個々の労働者向けの多種多様なリスク・マネージメント手法がある。”“監督者と派遣担当者が離れた場所で働く労働者を管理するために必要な一連の方法技術があり、これは全般的な生産性にも役立つものである。安全は、この技法のほんの一部を構成しているのである。”とトプフは語っている。