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OSHAの違反項目上位10項目(トップテン)の内情

資料出所:Safety+Health
December 2005

(仮訳 国際安全衛生センター)

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OSHA監督局長(director of OSHA's Directorate of Enforcement Programs)リチャード・フェアファックスは、規則違反数の増加は、監督官が適切な場所に派遣されていることを示しているとしている。

 S+H誌:梯子の違反がトップテン・リストにランキングされたのは今年がはじめてだ。これは、OSHAが重点を置く対象を変えた結果か、あるいは、規則違反について見直したからか?

 フェアファックス:これは、死亡災害の型別原因の墜落・転落の増加として、労働省労働統計局(BLS)の調査データから明らかになっている。このことは、週一回私に報告される、同局からの死亡災害報告書のデータの中で明らかとなった。私が調べたところ、梯子の違反は、ここ数年はトップテンには入っていなかったが、トップ20までには確実にランキングされていた。ここ2、3年は、梯子からの墜落・転落による違反数が増加しているように思われる。梯子からの墜落・転落違反数は、感電と高所からの墜落・転落との間にランキングされていると思う。感電、そして、高所からの墜落・転落規則は、足場からであれ、梯子からであれ、死亡災害の主原因である。梯子からの墜落・転落は高所からの墜落・転落の一部に含まれている。当然のことながら、労働統計局(BLS)のデータは、疾病・傷害であれ、死亡災害であれ、われわれは産業別に調査する。つまり、われわれが建設現場を監督する際には、梯子であれ、足場であれ、適切な保護措置を取らない高所作業であれ、われわれは墜落・転落による死亡災害の原因となりうるあらゆる分野に重点を置く。梯子もそのように注目した事項のひとつにすぎない。

 S+H誌:足場からの墜落・転落規則の違反は過去4年連続でリストの第1位となっている。足場からの墜落・転落規則の違反がこのように1位となり続ける理由は何か。

 フェアファックス:米国では、多くの建設工事が継続的に行われていることは明らかである。人々は早めに仕事を終わらせようとしている。仕事を終わらせるのが早ければ早いほど次の現場に早く移ることができるからだ。高所からだけではなく、梯子や足場からの墜落・転落などの規則違反を見ると、その原因は手っ取り早く簡単に終わらせようとすることにあるようだ。防護柵を取り付けなかったり、付けても1本だけで済ませて中間手すりを付けなかったりする。また足場の床に適切な足場板を取り付けていないこともある。このような場合、足場材を適切に固定しないで、足場材の落下しないように適切な処置がされていない。さまざまな原因があるだろうが、あえて私の推測を述べれば、その原因の大半は簡単に作業を終わらせようとすることにあると思われる。

 S+H誌:規則違反数は昨年とほぼ同様である。その理由は何だと思われるか。

 フェアファックス:2005年の9月30日までの規則違反総数は85,383件にのぼっている。2004年会計年度全体では、規則違反総数は85,765件であったので、今年は昨年より400件ほど少ないだけである。しかし、今年は昨年より少ない監督実施件数で算出している。1回の監督当たりの違反率で見ればおそらく昨年より多いのであろう。あえて私の推測を述べれば、今年の違反告知件数(number of violations issued)は昨年の違反告知総数を超えるであろう。今年の違反告知件数について興味深いことは、「故意の」「繰り返し」「重大な」違反がどれも昨年を上回るということである。これは、われわれが適所に赴いているという兆候だと感じている。不要な場所にOSHAの順法監督官を派遣したくはない。疾病、傷害、死亡それぞれの災害数に応じて必要な場所に順法監督官を派遣しようとわれわれは真剣に尽力している。

 S+H誌:OSHAは規則違反の摘発方法や是正勧告方法になんらかの変更を加えたのか。監督官はある任意の規則違反を他の違反以上に厳しく追及するよう要請されているのか。

 フェアファックス:規則違反の文書化や記述については、一切変更を加えていない。私は講演時や、人々と対話する際に、このようなことは多く聞いている。特定の労働安全衛生規則の特定の違反を探し出すために監督官を教育訓練しているのではない。監督官にはあらゆる規則違反を追及し、それがどのような違反であるか、という文書を残すようにと教育している。監督官には危険を観察するよう確実に教育している。特定の産業の監督に出向く際には、監督官は労働省統計局(BLS)のデータを見て、その産業に一番多く見られる傷害・疾病災害が何であるかを見極める。次に、OSHAのデータを見て、どのような危険や違反が告知されたかを確認する。そして、その産業の監督時には、その産業の中で潜在的な危険としてすでに識別されている危険を探し出す。OSHAが実施する監督(案件)の中には、手足切断の国家重点プログラム(Amputations National Emphasis Program)のように重点が置かれているものもある。たとえばそのような手足切断の国家重点プログラムの監督に赴く場合は、監督官の重点は特定の手足切断のハザード、すなわち、機械防護、ロックアウト/タグアウト(これはトップテン・リストの中に入っている)、あるいは手足切断という結果を招くことになった操作やその他の操作に伴うハザードに置かれることになる。もちろん、監督の際には監督官はその他に目にしたことはなんでも記録として文書に残す。監督官は、事前にできるだけ多くの調査を試みてから監督に出向く。監督官は自分たちの時間も、対象企業の時間も浪費するつもりはない。重点プログラムを理解し、見直そうとしている。問題がある分野を見極め、自分たちが勧告できることや、文書として残すべきハザードがないかを見極める。それから次に進むのである。

 S+H誌:電気配線や機械防護の違反は、今年はともに順位を下げた。この理由は、事業者が注意を払うようになったからか、あるいはOSHAがこの分野に重点を置いたからか。

 フェアファックス:両方であると言うべきであろう。毎年このトップテン・リストを掲載してくれることに感謝している。多くの企業がこのトップテン・リストに注目している。このリストのおかげで事業者はどのような違反が告知されているか知ることができ、安全衛生担当者に確認させ規則遵守を徹底させることができる。OSHAが出向き、危険に焦点を当てると、事業者は危険に注目するようになる。ある企業に出向き電気配線や機械防護などの規則違反が告知されると、告知されたという情報がその業界内で同様の事業を営む企業にたちまち広まり、企業は同様の危険が社内に存在しないか確認を促される。すべては組み合わせの問題だと思う。情報が少なければ、賢明な事業者は現場に出向き、本来するべきことをしているかを確認することになる。

 S+H誌:「産業用車両系運搬車」の是正勧告数が増加したことについて説明できるか。ここでの変化はどのようなことであるか。

 フェアファックス:「産業用車両系運搬車」の違反はつねに違反上位10項目ないし15項目の中に位置している。多くの傷害や死亡災害の原因が産業用車両系運搬車となっている。われわれは4、5年前にある労働安全衛生規則(スタンダード)を改正した。産業用車両系搬車は、重大災害が起きている分野である。重傷者や死亡者が出る。産業用車両系運搬車の運転者について監督官が監督に出向く場合、その運転者が訓練を受けているかどうかという点に注目する。また、同運搬車が適切に保守されているか、確認する。災害の大半は、運転者があまりにもせっかちに運転していることが原因で生じている。企業内には監督プログラムが存在するのかも確認する。するべきことに従業員が従っているかを事業者は徹底周知しているのであろうか。さもなければ、従業員の再教育は行っているのであろうか。産業用車両系運搬車を使用する事業所に監督官が出向く際には、このようなことを重視するのである。