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この職業:樹木治療士

資料出所:The Royal Society for The Prevention of Accidents(ROSPA)発行
「OS&H」|2001年10月号 p.18−24
(訳 国際安全衛生センター)



アラン・ホウソンさんがポプラの大枝にのって小枝を切り落としているときに運悪くその大枝が折れておちた。危険を察知したアランさんは、ご自慢の最高級Stihl-020T型14インチチェンソーにブレーキをかけると、回っていたのこぎりの歯が一瞬の内に止まった。ポプラの枝が彼の足元から落ちていき、60フィート下の地面に向かってぶら下がった状態になった。賢明にも彼は自分の体を落ちた枝とは別のところに縛りつけていたので、枝と共に落下したとき、彼が装着していた安全帯がそのあとをひきうけた。
本誌のニック・クック氏が、樹木の治療をしている人々の直面している危険を明らかにする。


アランさんは言う、"その木は数年前に刈り込まれていました。そして特にポプラの木での問題は、以前に刈り込まれたところから腐りやすいということです"。

まさに彼の身に起こったことが示すように、特に大枝が切り落とされたときには、アランさんが言ったことは本当だった。残りの切り株もすでに腐っていた。数年かけて、新しい枝がその切り株から成長していく。その腐った土台から新しい枝が成長していく一方、一部の枝が腐って落ちていくのは避けられない。その枝は地面に落下したのでなく、周りの枝のおかげであるところでぶら下がった状態になっていた。アランさんの仕事は、この枝を取り除くことであった。

"私達は、根元のところからその枝を切り落とすことはできませんでした。"とアランさんは説明する。"その木のある場所はある家の庭でした。そこには温室とすぐ傍には物置があり、よく手入れをしているとはいえない花壇と格子がありました"。

樹木の治療が本当にその名の通りに必要であることはよく見うけられる。樹木の大きな枝は、注意深く、コマギレにして切り落としていかねばならない。このことは、アランさんが、傷んだ枝に自分の身を置く、つまり、枝が樹木から落ちた時には、そこに彼は乗らざるを得なかったといえる。

アランさんは、現在使われている指導書のいう通り、彼の安全帯のロープで、丈夫な枝の方に自分の体を縛りつけていた。この事故はひとつの良い教訓になる。樹木の治療を行う仕事には危険が多い。実際に、危険度の面からいえば、この仕事は高い方に分類されている。樹木の治療に従事する人は、高所でかつ危険な環境での仕事を要求されるだけでなく、場合によっては彼らの命を奪うかも知れない道具つまりチェンソーを使いこなさなければならない。

英国安全衛生庁からの委託でまとめられた最近の報告書(追加情報1参照)は、樹木の治療をする仕事の危険性に光を当てている。1990/91年と1995/96年の間に、10万人当り315.92件の死亡もしくは重傷を負う事故が起きている。この事故率は、非常に高い事故率の建設業(248.27件)よりもさらに高い数字であった。

この報告書でまとめられた6年間では、実際に1800件の重傷事故(年間300件)が発生し、その内38件が死亡事故であった。平均すれば1年に6件となる。報告書から推定すれば、林業と樹木手入れの仕事に従事する人の重大災害発生率は、20人中1人以上の確率になる。

さらに、それ以降も改善の方向に向かっているとは思えない。最新の報告書(追加情報2参照)では、2000/2001年の1年間に林業とそれに関係する仕事で7件の死亡事故が起きている。

上記二つの報告書に書かれている事故は、誠に恐ろしいものである。1例をあげると、ある自営の植木職人が、彼が切り落としている枝に結びつけていた命綱を、地上で働いている作業者に引っ張るよう指示をだしたところ、彼はその枝とともに地上に落下、死亡したという。この落下事故の正確な原因ははっきりしていない。彼が切り落としていた枝から別のところに命綱を移すことを忘れたのか、それとも梯子をしっかりと留めていなかったのか。

その他の例をあげると、ある25歳の作業者が、彼の命綱を結びつけていた枝を切り落とした後、木の上から3メートル以上落下した。彼はその後意識を回復することはなく、1週間後病院で亡くなった。別の植木職人は、自宅の庭にある大きなもみの木の上で、ひとりで仕事をしていて木から落ちた。彼は安全帯を着けていなかったのである、この手抜かりが彼を死にいたらしめることになった。

植木手入れでの事故は、木からの落下に限られたわけではない。アランさんが思いだすのは、彼の仲間に降りかかった身の毛がよだつような事故である。"彼は、木の上でチェンソーを頭上の高さで動かしていました。みなさんはチェンソーをこんなやり方で使うように教えられていないでしょう。私には、正確には何が起こったのかわかりません。のこぎりが急にはね返ってきたのかもしれない。のこぎりは、彼の上唇を完全にそり落としていました。"

いろんな手術が行われたが、彼はまだ、もとの容貌を回復するに至っていない。

最高度の危険の中で、そして結果の厳しすぎるひどさ、どうして人は樹木の治療という仕事を選ぶのか? 多くの回答は、逆説的で、最高度の危険だからこそ選ぶという。アランさんは、これについて全く率直な意見を述べている。"この仕事は、たしかにアドレナリン中毒者を魅了するたぐいのものです"。さらに彼は認めている。"私があの木から落ちたとしても、怖くなかったなどとはとても言えません。心臓はどきどきしていました。そこには快感もあります。樹木治療の仕事は、例えばモータークロスやジェットスキーのような危険なスポーツと同じようにみられていることは貴方も理解できるでしょう"。

アドレナリン中毒と危険に立ち向かうということは全く別物です。そして、その快感を楽しむのと同じ位に、アランさんは決して不必要なリスクをとらないようにしている。

もし、木の枝が彼の足元を落ちていった時、アランさんにチェンソーにブレーキをかけさせたのは彼の本能だったとしても、それは、8年間にわたる徹底した訓練と無事故という経験で鍛えられたものだったのである。

彼の訓練には、チェンソーとその使い方について、英国実力認定テスト協議会(NPTC)の資格証明書をとることが含まれている。この資格証明書をとるために、アランさんはチェンソーの保守点検について必須単位をとる必要があり、さらに三つの単位、彼の場合、クロスカットとスタック造り、安全帯を着けたうえでのチェンソー操作と空中救助のための木登りの単位をとらねばならなかった。

私がアランさんとインタビューしたのは、ある別の仕事場でした。田舎であるハートフォードシャー郡の奥にある田舎で、彼は庭用ジープから柳の木を降ろしていました。彼は丁度木から下りてきたところで、所定の作業着を身に着けていた。

彼のヘルメットは、ヘルメットと顔面シールドと防音保護具の3点セットになっていた。この防音保護具は特に重要である。チェンソーの音で、作業者は105デシベルの騒音にさらされる。現在8時間作業での騒音許容限界値は90デシベルである。105デシベルの騒音下では、許されるのは15分間のみ。この騒音レベルを減少させるもっとも実践的な方法は、作業者個人が身に着ける防音保護具である。それは耳栓ではなくイヤーマフである。耳栓は樹木の手入れ作業をしているとすぐに汚れるし、ごみを耳の中に持ち込むことになるという。

ヘルメットのふちには、アランさんが2年後には新しいヘルメットに替えることを忘れないように、日付スタンプが付いていた。何故なら、太陽の光がヘルメットの強度を劣化させる。もちろん何か衝撃を受けた時には、当然すぐにヘルメットを新しいものに交換する。

アランさんの首から下に目をやると、上半身は、Tシャツで保護されていた。"夏の日の作業には、チェンソー用ジャケットは暑すぎる。"と彼は説明した。

このことは、英国安全衛生庁が発行しているチェンソーに関する作業手引き書(追加情報3参照)の中で、実務的アドバイスとして認められている。手引き書の"チェンソー用ジャケットprEN381−10"項は、上半身の保護について詳細に述べているが、チェンソー用ジャケットはさらに別の保護にも有効であると書いている。しかし、このジャケット着用指導は、肉体労働によって上昇してきた体熱から生まれるストレスを考慮して再検討する必要がある(ロープと安全帯の関係と同様に)。

チェンソー用ジャケットを身に着けない場合、代用衣類としては、体にぴったりつくものでひっかかりにくいものと規定している。

足の保護についても、EN381−5項で推奨されているが、手引き書が推奨するのなら、樹木治療士にとって足の保護は、ただ足の前面だけでなく、全体的な保護を考えるべきである。

最近の事故例では、ある植木職人がチェンソー事故で足の裏側を切ったという。彼はズボンをはいていたが、それは足の前面を保護しただけだった。

ズボンの材質(この事故の場合は弾力性のあるナイロンであったが)は、チェンソーの歯がズボンを噛んだときには、さらに噛み込むことなく、外れていくように特別に考案されている。つまり、噛みこむ動きが邪魔され、それ以上には噛み込んでいかなくなる。

アランさんの足は、手引き書の"EN381−6"項の規定を満足する特別仕様のチェンソー用ブーツで保護されていた。

落下に対する保護装置は、安全帯とロープに示されていた。アランさんの指は、びっくりする程のスピードと元ボーイスカウトの自信ですばやく動き、彼が使っているロープ結びを見せてくれた。ロープはナイロン製で、万が一彼が木から落ちることがあっても、背中を傷つけるようなねじれを生じない弾力性があった。

アランさんのボス、シェーン・ラニガン氏は、"アーバンフォレストリー"という会社の経営者で、老齢だが昔のロープが現在ほど頼りにならなかった時代をよく記憶していた。

"私がこの樹木の手入れをする仕事を始めた当初は、天然繊維のロープを使っていた。このロープでは、木からの落下は防ぐことはできても、弾力性がないため、背中を傷めることがあった"。

アランさんとしては、どのロープがバンジージャンプに使えるかを試験するつもりなどありません。"私はいつも綱渡りの仕事場で働いています"という。彼が言いたいことは、林業植林安全訓練協議会(FASTco)の忠告(追加情報4参照)を守ることであり、身を託すロープはいつも出来るだけピンと張っておくということである。この忠告を守ることで、アランさんは、木の枝が彼の足元から落ちていった時、体が捻じ曲げられるのを防ぐことができたのである。

ロープと安全帯の使用方法については、荷の吊上げ作業・吊上げ装置に関する規則(1998)(追加情報5参照)で記載されている。さらに英国安全衛生庁では、これらの規則がどのように森業と樹木手入れ作業に適用されるのかを詳しく説明している小冊子を発行している(追加情報6参照)。

樹木の治療士にとって、リスクは事故だけとは限らない。健康面においてもリスクはある。その一例は"白ろう病(Vibration White Finger : VWF)"です。1970年代初期に導入された振動対策を施したチェンソーにより、確かにチェンソー作業者から"白ろう病"患者の数は減ったが、完全にゼロになったわけではない。この反振動台付きのチェンソーを常用していた人々の中にも、同じ症状を示す人がいると報告されている。英国安全衛生庁と各地方の執行連絡協議会で実施された最新の研究(追加情報7参照)によれば、専任のチェンソー作業者は、健康管理対策と健康調査について安全衛生庁によって設定された限界値を超えている模様である。

この問題に対応するための勧告には、定期的な保守・点検が含まれている(反振動台の定期的な取替え、保温ハンドル付きチェンソーの使用、危険作業時間の減少、雇用前の健康状態のチェックと定期的な健康調査も含まれる)。報告書はさらに、喫煙によって白ろう病の危険性が増えるので、事業者には作業者に禁煙を奨励するよう勧告している。


筋骨格系障害

しかし、"白ろう病"だけが、チェンソー作業者が直面するリスクではありません。樹木治療で働くチェンソー作業者の最新の実例研究(追加情報8参照)で、筋骨格系障害が拡がっていることが判明した。この障害の殆どは、木に登ったり降りたりすることに起因している。腰に起きる障害が一番多い。この実例研究でわかったことは、訓練所で学んだ作業要領に基づき作業をしていた人は、たった51%しかいなかったことである。もっとやっかいなことに、この障害を蒙っている比率は、その作業要領に基づき作業していた人と、していなかった人との間で、ほとんど変わらなかったことである。

勧告には、作業者が作業要領に基づき作業しなかった原因を明確にすることと、その作業要領の効果をモニタリングすることが含まれている。背中の障害を避けるための助言は、安全衛生庁から発刊されている"背中に気をつけろ"(追加情報9参照)に記載されている。

さらに、自然や生物から生じるリスクがあります。発ガン性のある古い機械油(古い油は当然処理され、潤滑油として再利用すべきでない)から、茶色のしっぽをもった蛾のとげのついた毛が作業者の呼吸に与える影響などがある。

樹木の切りくず、特にそれがとねりこ(モクセイ科)、かば、かし、にれ、栗といった堅木の樹木のものは、皮膚のアレルギー、皮膚炎やガンをおこす可能性がある。アランさんは、"プラタナスの木の作業をしている際、ある特定の時期にはマスクを着ける必要があるのを体で感じます。もし体が感じなくても、木から出る花粉でわかります"とコメントしている。

"アーバンフォレストリー"社で働いている限り、これは問題とならない。プラタナスの作業をするのは、冬の数ヶ月だけと決まっているからだ。

アランさんがゆっくりとしか流れていない水辺や流れのないところで作業する際には、いつもレプトスピラ症の危険がある。野ねずみがした小便が原因の熱や頭痛の症状が起こり、この病気は悪くなると脳膜炎をひき起こす可能性がある。感染ルートとしては、人の皮膚のきり傷やすり傷から入ってくる。さらに動物から受けた噛み傷が破傷風を起こす可能性がある。

"私がこの仕事をやり始めたとき、"とアランさんは言う、"ある樹木の治療士から、破傷風にかからない対策を怠らないよう助言を受けた。いまでもこれを守っています"。

アランさんは健康と安全について大変真剣に取り組んでいる。この健康と安全については、シェーン・ラニガン氏から十分過ぎる程のサポートを受けており、ラニガン氏にとっても、安全は重要なのです。この安全問題は、ラニガン氏が樹木の治療のための各種作業におけるリスクアセスメントについて、注意深く作成した文書ではっきり読み取れるだけでなく、彼の事業経営の基本理念でもある。

ラニガン氏は説明する、"私は、私の従業員に固定賃金を払っています。生産高によるボーナスや出来高によって払うやり方は、お金の節約にはなるが、過失をひき起こす原因となる。疲労もまた事故を起こす原因となる。私はいつもひとつの仕事に最低3人の作業者を配置させます。私達は決して残業はしません。木に登ることは大変疲れる仕事です。ある作業者が午前に木に登ったときには、午後には別の作業者が登ります。大変疲れているときに仕事をするのは、自ら事故を招いているのですよ"。

ラニガン氏の会社の安全基準は、彼が樹木治療協会の登録メンバーであることからも根拠があるものです。この登録証明書は、実際の作業中の厳重な実地審査をパスしないと授与されない。仕事の遂行能力と安全が厳しく審査される。もしその登録メンバーに対する顧客の苦情が根拠のあるものと判定されたときには、この登録は取り消される。また3年毎に樹木治療協会による再審査を受けなければならない。

この登録証明書が彼にとってまだ不足だったのか、ラニガン氏は最近国際樹木治療協会に認証された樹木治療士になった。この証明書を取得するには、試験をパスする必要があった。彼は日常の樹木治療の仕事を向上させることを怠りなく続けることで、その資格を保持している。

これらの樹木治療の優秀性に対する熱意の高さは、彼の事業のあらゆるところに及んでおり、"アーバンフォレストリー"社がISO-9000に認証された事実にも反映されている。

誰でもが自分自身を樹木治療士と名乗り、イエローページにそのように宣伝することができるということほど、ラニガン氏をいらだたせることはない。ある連中は、自分が樹木治療協会の登録証明書を持っているかのようにみせかけようとしている。彼らは、そうする資格はなくても、樹木治療協会のロゴを見せることで持っているようにみせかけている。

樹木治療を必要としている人たちに対するラニガン氏のアドバイスは、まず樹木治療協会(追加情報10参照)にコンタクトすることです。協会は無料で、登録済、認証済の樹木治療士の名前をすべて教えている。

樹木の治療士の中には、安い魅力的な値段を出すところがある。しかし、シェーン・ラニガン氏の説明では、もしその人たちがきちんと登録された治療士でないなら、結局うわべの倹約だけで、本当の節約ということにならないという。"彼らは保険に入っているかもしれないし、全く入っていないかもしれない。時には、住所を明らかにしないで、携帯電話番号のみを教える。万が一損害を受けたときには、彼らを探し出すことは全く不可能でしょう。彼らは安全の面でも仕事の面でもきちんとやれる筈がない。また樹木の処分もきちんとできる筈がない。地方では、登録されていない樹木治療士によって、刈り取られた枝が田舎の細道にどさっと棄てられていたという事件がよくありました。私達は、刈った木はすべてチップにしてリサイクルしています"という。

ラニガン氏と一緒に働いている人達は、彼の健康と安全に対する考えを身に着けていた。そのことは、彼らが切り倒した柳の木を処理していたのを見ていたときにすぐわかりました。ラニガン氏が柳の切り株をチッピング機械で加工するため、私に離れているように丁重に言ったときにもはっきりわかった。

"チッピング機械が切り株を地面まで切り裂いているときは非常に危険です。その際、地面から石が飛んでくることがよくあります"。

従業員の健康と安全を維持することは事業経営者の責任であることが、現在ますます認知されてきてい。RoSPAがだした安全と健康に対する組織役員行動基準"Director Action for Safety and Health (DASH) "などの試案には、それが実施に移されるとき、事業のトップにいる人の重要性を強調している。ラニガン氏はその理念を体現することでしょう。それを助けるのは、彼の従業員達がはっきりと彼を尊敬していることである。

"ラニガン氏は私達と同じようによく働く"と彼の従業員の一人は言う。"彼はどんな仕事でもきちんとやってしまう。そしてそれはずっと変わりません"。

はっきりわかったことは、ラニガン氏と彼の従業員達の健康と安全に対する熱意が"アーバンフォレストリー"社の中で最も重要な管理のポイントであることである。


英国安全衛生庁よりカラビナに関する警告と情報提供のお願い

英国安全衛生庁は、空中救助訓練授業中に木に登っていた人に起こった重大な災害発生後、全国の樹木の治療士に対して警告を出しました。このことは、3方向旋錠スリーブ付きのカラビナを木に登る時の落下から身を守るための主たる止め具として使用していても、木に登る人が安全帯からもずり落ちるという危険性があることを示しています。

安全衛生庁の農業林業部門のアドリアン・ホドキンソン氏は発表している。"この事故で、一人の樹木治療士が、教官の厳重な監督のもとでの空中救助訓練中に落下した。彼を親綱に結びつけていたカラビナは、最初の救助登りの時にすでに開いていたと報告されている。彼が重傷を負わなかったのは幸運でした"。

"安全衛生庁は、さらに、カラビナの扉旋錠スリーブが、磨耗かスリーブの中に入り込んだ木の一部(例えば、樹皮、針葉や樹脂)によって動かなくなり、それがカラビナの扉がきちんと閉まらなかった原因となったとの報告も受けている。さらに、ある樹木治療士が木の葉っぱが密集した樹木の中で作業していた時に、同じタイプのカラビナに起こった逸話めいた報告もある。彼の安全帯がカラビナの扉と擦れ合って、扉を開いていくように作用した可能性がある。"

"安全衛生庁は、現在、樹木治療産業の専門家と一緒にこれらの問題を詳しく調査しているところです。我々は出来るだけ早く調査の結果を報告します。一方、すべての樹木管理会社に対して、夫々が雇用している樹木治療士に上記の危険性について警告を与えるとともに、下記の行動をとるよう要請しているところです。
  • 同じタイプのカラビナの旋錠機能が正常に働くかを、必ず木に登る前に確認すること。
  • 樹木治療士は、必ず旋錠扉を動かす度毎に完全に閉まったかどうかをチェックすること。
  • 樹木治療士は、カラビナを使用する際には、必ず製造者が作った使用要領書に従うこと。
  • 木に登る際には、ロープ、帯ロープや他の木登り装具がカラビナの旋錠扉機能を失わせるところは避けるよう注意を払うこと。
  • 同じタイプのカラビナで正常に動かないものは、すぐさま今後一切使わせないようにすること。
  • LOLERの要求する試験をすべてパスした有資格の樹木治療士に、必ずこの事故の全容を通知すること。
安全衛生庁は、同じタイプのカラビナでトラブルを経験した人からの情報を募集しています。その際、下記情報を加えた詳しい状況をお書きください。カラビナのメーカー名とタイプ、そのカラビナ付きの装具名、樹木の種類と治療していた作業内容。スケッチや写真も手助けになります。詳細の送り先は、Adrian Hodkinson, HSE, National Agricultural Centre, Stoneleigh,Warks CV8 2LZ (Tel: 024 7669 6518)


追加情報
  1. 樹木手入れ作業中の事故(Tree Work Accidents)、1998年安全衛生庁発行、この本は、樹木手入れ作業と森林管理中に起こった重大事故に光を当てている。
  2. 2000−2001年に植林と園芸作業中に起こった死亡事故(Fatal injuries in farming forestry and horticulture 2000-2001)、安全衛生実施運用理事会で作成され、安全衛生庁から2001年7月発行。
  3. 作業場でのチェンソー(Chainsaw at work)、INDG317、安全衛生庁から2001年3月発行。
  4. 木登り作業(Tree climing operations)、1996年発行したのは、林業植林安全訓練協議会(Forestry and Arboriculture Safety & Training Council,231 Corstorphine Road,Edinburgh,EH1 2 7AT, Tel: 0131 314 6193,www.treecare.co.uk)
  5. 吊上げ装置の安全な使用法(Safe use of lifting equipment)、吊上げ作業と吊上げ装置に関する法律(Lifting operation and lifting equipment regulations,1998)実践と手引きに関する承認規約、安全衛生庁から1998年発行、ISBN 07176 1628.
  6. LOLER:樹木治療に適用される法令、農業情報(Agriculture Information No.30)安全衛生庁から1998年11月発行。
  7. チェンソー振動、LAC No.36/1、安全衛生委員会により2001年改正。
  8. 樹木治療でのチェンソー作業者に生じた筋骨格系障害の拡がりについての研究、契約研究報告(Contract Research Report187/1998)、安全衛生庁から1998年発行、ISBN 07176 16010
  9. 背中に気をつけろ、木材取扱い作業とチェンソー作業で生じる背中の痛みを避ける、INDG 145、安全衛生庁から2001年10月発行。
  10. 樹木治療協会(Arboricultural Association), Ampfield House,Ampfied, Nr Romsey,Hampshire SO51 9PA,Tel: 01794 368 717



この記事の原文(英語)は国際安全衛生センターの図書館が閉鎖となりましたのでご覧いただけません。