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ガーデニングと庭仕事

資料出所:The RoSPA Occupational Safety and Health Journal
2004年5月号 p.26
(仮訳 国際安全衛生センター)



 さまざまな職場のリスクアセスメントについてシリーズでお伝えしてきたピーター・エリスのコーナーは、ガーデニングと庭仕事---家庭と事業場の庭園管理の双方---をとりあげる。ピーター・エリスは、庭仕事に対して実施されるべき一般的なリスクアセスメントのプロセスについて解説する。庭仕事での主要なハザードを浮き彫りにし、庭仕事に携わる人々の安全衛生に対するリスクを管理するためどのような手段を取り得るかを説明する。なお、ここで紹介しなかったハザードが特定される場合は、本記事で概説したリスクアセスメントの手順と同様の手順を守る必要がある。

 家庭や自社内の庭仕事は、1974年労働安全衛生法(Health and Safety at Work Act 1974: HSW法)や、HSW法に基づき制定した後続の規則では、規制の対象に含まれていない。しかし、メーカーや販売会社に対しガーデニング時に使用する安全な機械器具の提供を義務づける法令により消費者は保護されている。しかし、多くの小規模事業場は常勤の庭管理者を雇用したり、請負で植木職人を雇うほどの経済的余裕がないにもかかわらず、事業場の庭はできるだけきれいに保ちたいと考えている。そして、従業員が正式に庭仕事の訓練を受けているかに否かにかかわらず、庭仕事はいずれかの従業員が本来の仕事以外に負担することが多い。

  特定されたハザード:日光のばく露

 英国の夏の太陽光線下に肌をさらすと、日焼け、皮膚の早発性老化、日射病、熱射病、皮膚がんなどになるおそれがある。

被災者は誰か?
 色白の肌、そばかすのある肌、金髪・赤髪、ブルー・緑色の眼の人々のリスクが最も高い。しかし、肌・髪・眼の色にかかわらず、一日の大半の時間、日光に肌をさらす人々にもリスクがある。

推奨する管理対策
可能であれば、夏の間は、日差しが最も強い午前11時から午後3時のあいだはガーデニング仕事を避けること。
ゆったりとした木綿の白い服を着用して身体中を覆い、日光から身体を保護すること。
つばのある帽子を着用して、日光から顔と首を保護すること。
日光にさらされる可能性のある身体の部位には、高品質で紫外線防止効果の高い日焼け止めローションやクリーム(最低でもSPF 15)を塗って保護すること。
身体でもっとも日焼けしやすい部位である鼻、耳、肩には常に日焼け止めローションやクリームを塗っておくこと。
衣類にこすられたり、発汗したりすることで落ちる可能性があるため、日焼け止めローションやクリームは頻繁に塗ること。
暑い日には発汗により身体の水分が失われるため、大量の水分を補給すること。ただし、アルコール、紅茶、コーヒーはすべて利尿作用があるため、避けること(身体の水分を奪うことになる)。

  特定されたハザード:植物

植物にはとげだらけのものがあったり、触れるととげが刺さったりするものがある。
触れたり、風に乗って飛散する繊維を吸入したりすると、アレルギー反応を引き起こす植物もある。

被災者は誰か?
 主に植木職人であるが、訪問者や家庭にいる子供など作業現場付近にいる人々を含む。

推奨する管理対策
 植木職人は、防じんマスク、オーバーオール、手袋、安全長靴などの適切な個人用保護具を着用すること。

  特定されたハザード:墜落・転落と落下物

 枝払い、垣根の刈り込み、棚(トレリス)での作業はすべて、植木職人の墜落・転落事故を引き起こすおそれがある。また、枝、植木道具などが付近にいる人々の上に落下するおそれがある。

被災者は誰か?
  主に植木職人であるが、訪問者や家庭にいる子供など作業現場付近にいる人々を含む。

推奨する管理対策
大きな木の枝払いや刈り込みなど、非常に高所での作業を要する仕事に従事できるのは、高度な技能を有する樹木治療者に限定すること。
上記以外のガーデニング作業の高所での仕事が必要な場合は、それらすべての作業で、梯子、足場及びハーネスなどの個人用保護具などの適切な装備を使用して、墜落・転落のリスクを低減すること。
災害発生時に備えて、高所作業は2人以上で行うこと
高所以外で作業している人々は、保護帽などの適切な個人用保護具を着用して、落下する枝や作業用器具から身を守ること。

  特定されたハザード:マニュアル・ハンドリング

 ガーデニングでは、培養土の袋、大型樹木、庭園の装飾品、造園機器などの重く扱いにくい物を持ち上げたり、運んだりする作業が必要になる。これ以外にも、土の掘削やホバー式芝刈り機を左右に操作することで、筋骨格系傷害が発生するおそれがある。主なハザードは、次のようなものである。

重く、かさばった、つかみにくい、不安定な物を取り扱うこと
無理な姿勢で物を持ち上げたり、取ろうとしたり、取り扱ったりすること
押したり、引いたりすること
作業と次の作業の間に十分な休息時間をとらないまま、繰り返し作業をすること
身体をひねったり、前かがみになったりすること

被災者は誰か?
 主に植木職人であるが、植木職人を補助しなければならない可能性のある者も含める。

推奨する管理対策
 物を持ち上げる必要があるときは、次のような方法でリスクを低減できる。
物を持ち上げる時にはできるだけ身体から離さず、抱きかかえるようにして持ち上げるようにすること。
物を運ぶ時には身体をひねらずに、足を動かすようにすること。
腰の高さで物を持ち、前かがみにならないようにすること。
高所に背伸びして物をとろうとしないで、適切な脚立を使用すること。
長い距離では物を持って運ばず、手押し車を使用すること。
不安定な物はそのまま運ばず、きっちりと箱につめること。
反復して作業しないこと。定期的に休息をとり、可能であれば日常作業の手順を変更して、反復運動過多による傷害を予防すること。
扱いにくい箱類はそのままで取り扱わず、取っ手を付けること
個人の能力以上に重い物を持ち上げないこと。個人間、特に男女の体力の差を考慮すること。
庭でマニュアル・ハンドリングを行う作業者は、庭仕事をする前に必ず、安全にマニュアル・ハンドリングを実施する方法にかかわる情報を読んでおくこと。

  特定されたハザード:火災・爆発

庭仕事で出るごみの焼却に焚き火を使うことが多いが、炎を制しきれなくなり、火傷、死亡、物損を起こすおそれがある。
焚き火の煙の吸引は健康に有害となる。
ガソリンなどの不適切な燃料に点火したり、エアゾールボンベや爆発性物質などの不適切な容器類を焼却したりすることが原因で爆発が起きるおそれがある。

被災者は誰か?
 主に植木職人であるが、庭仕事の作業現場付近にいる人々を含む。

推奨する管理対策
可能な限り焚き火を避ける。庭仕事のごみは堆肥化や破砕するなど、焚き火以外の方法で処理すること。
焚き火をする場合は、引火するおそれのある建物や構造物から十分離れた場所で行うこと。
焚き火に点火する場合は、紙と乾燥した焚付け用木材と適切な焚付けのみを使うこと。ガソリンなどの爆発性物質は決して使用しないこと。
水道にホースを取り付けておいたり、シャベルを用意するなど、焚き火に点火する前に消火手段を手元に用意しておくこと。
植木職人は焚き火の煙を吸入しないようにすること。煙の粒子の大半を濾過し取り除く、適切な防塵マスクの着用を考慮すること。
エアゾールボンベ、ペンキ缶など、潜在的に爆発する可能性のある物質は焼却してはならない。
プラスチックやゴムの製品は有毒な黒煙を発生するため、焚き火に入れてはならない。

  特定されたハザード:庭仕事用器工具

 芝刈り機、草刈り機(ストリマー)、園芸用破砕機、チェーンソー、垣根の刈り込み機、のこぎり、植木ばさみ、剪定ばさみ、熊手、シャベル、レーキなどの庭仕事用器工具はすべて、さまざまな傷害の原因となりうる。

被災者は誰か?
 主に植木職人であるが、庭仕事の作業現場付近にいる人々を含む。

推奨する管理対策
庭仕事用器工具は、使用目的のみに使うこと。
庭仕事用器工具は、器工具メーカーや販売会社の安全取扱説明書を熟読した専任の成人のみが使用すること。
庭仕事用器工具は、定期的に点検し、適切に保管することで、その使用者に危害を及ぼす原因とならないようにすること。
芝刈り機、園芸用破砕機、垣根の刈り込み機など機器の刃に挟まった枝などを取り除く作業は、必ず器工具の主電源のスイッチをオフにした後で行うこと。
チェーンソー、垣根の刈り込み機、芝刈り機などの庭仕事用の電動機器の誤操作を予防するために、植木職人はこれらの電動機器に対して安全な位置にいることを作業する前に必ず確認すること。
庭仕事用器工具を使用する際には、適切な個人用保護具を着用して、切り傷、眼の損傷、打撲傷、刺し傷などのリスクを予防すること。適切な個人用保護具とは、たとえば、手袋、オーバーオール、適切な眼の保護具(飛来物からの眼の保護)、防塵マスク、保護帽、安全長靴などである。

  特定されたハザード:電気

芝刈り機、垣根の刈り込み機、チェーンソーなどの電動機器の電源コードを誤って切断する。
雨模様の天候時に、電動の庭仕事器工具を使用する。
電動機器のプラグの配線やヒューズの取り付けを誤る。

被災者は誰か?
 主に植木職人であるが、上記のハザードに遭遇するすべての人々を含む。

推奨する管理対策
庭仕事で使用する可搬型電動機器のすべてを定期的に目視点検して、電源コードの摩滅、プラグの損傷などに留意すること。
点検前に、電動機器の電源がオフになっていることを必ず確認すること。
プラグ類は適正に配線され、保持されていることを点検すること。
ケーブルや電線がプラグや機器に差し込まれる部位のシールドが確実に固定されていることを点検すること。
パーツやねじの緩みなど、電動機器の外装に異常がないか、点検すること。
過熱を示唆する焦げ跡や変形がないか点検すること。
危害や傷害を引き起こすおそれのある電動機器は修理すること。
ケーブル類は庭仕事用電動機器のカッター類から十分離して引き回し、感電を防ぐこと。
家庭の電気系統は、庭仕事用電動機器の電源として適切であるか、点検すること。
機器に問題が発生したら、有資格の電気技術者に速やかに修理を依頼すること。電気技術者以外は電気修理を行ってはならない。
可搬型電動機器の電源コードが万が一切断した場合、ブレーカーを使用して電源を遮断すること。
雨模様の天候時には、庭では電動器工具を決して使用しないこと。
庭仕事用電動器工具を初めて使用する際は、使用前に添付の安全取扱説明書を読むこと。安全取扱説明書は家庭内または事務所に保管すること。

  特定されたハザード:有害物質

庭仕事では殺虫剤、除草剤などの有害物質を使用する可能性がある。
庭の土壌や水には、破傷風菌、レプトスピラ菌など有害な微生物が含まれている可能性がある。

被災者は誰か?
 主に植木職人であるが、庭仕事の作業現場付近にいる人々を含む。

推奨する管理対策
殺虫剤、除草剤、その他の化学物質を使用する際には次のことを遵守すること。
庭仕事で化学物質を使用する際は、必ず使用前に取扱説明書を読むこと。
化学物質を摂取しないこと。化学物質が保管、使用されている場所では飲食や飲食物の保管、調理をしないこと。
化学物質の噴霧を吸入しないこと。広範囲に噴霧する際は呼吸用保護具の使用を考慮すること。
化学物質を皮膚につけないこと。有害物質を塗布したり、混合したりする際は、適切な個人用防護服と手袋を必ず着用すること。
有害物質にばく露した手や肌を洗浄した後は、認可されたスキンクレンザーやスキンコンディショナーを使用すること。
殺虫剤、除草剤その他の化学物質は、子供の手が届かず、またペット、ハチ、魚その他の水生生物から十分に離れた場所に保管すること。
庭仕事用の化学物質は専用の容器で保管すること。
化学物質の専用容器が用済みとなったら、完全に洗浄し、安全に廃棄すること。
破傷風やレプトスピラ症の予防のために、次の措置を講じることを推奨する。
レプトスピラ症(ワイル病)を媒介することがあるねずみが発生するおそれがあるため、庭にごみを堆積したり、残飯を放置したりしないこと。
ねずみが発生したら、最寄りの病害虫防除局に連絡し、駆除してもらうこと。
庭仕事では必ず適切な個人用保護具を着用すること。特に切り傷や引っかき傷の予防のために、手袋、ゴム長靴その他の保護衣を着けること。
切り傷や引っかき傷がすでにある場合は、必ず庭仕事をする前に防水効果のある包帯や絆創膏をして傷を保護すること。
切り傷や擦過傷を負ったらただちに洗浄すること。
英国ではヒトのレプトスピラ症に対するワクチンがないため、ねずみが発生する可能性のある庭で切り傷を負った場合は、ただちに医療施設で受診することを考慮すること。
破傷風のワクチンは常に新しいものを保管しておくこと。