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保全作業におけるリスクアセスメント
Maintenance operation

資料出所:The RoSPA Occupational Safety & Health Journal
September 2005
(仮訳:国際安全衛生センター)


ピーター・エリスが、保全作業のリスクアセスメントを行うときに採用するべき代表的なプロセスを述べる。保全作業者や他の人間に影響を与えそうな主要なハザードに焦点をあて、安全衛生に対するリスクの対策として、どんな手段をとることが出来るか説明する。

1974年労働安全衛生法(HSWA)は、合理的に実行可能である範囲において、作業者の安全衛生を確保するための業務を事業主に課している。1999年労働安全衛生マネジメント規則(MHSWR)はHSWAに規定されている義務を補足している。特に規則第3条は、全事業主に対し、すべての危険性のある業務についてリスクアセスメントを実施することを要求している。

安全衛生リスクに基づいて策定された現在の規則はすべて、仕事が安全に行われ、また外注業者や直接雇用の保全要員が行う保全作業についても、具体的な予防措置が等しく適用されることを事業主に要求している。

特定されたハザード:マネジメント側による対策の欠如

  • マネジメント側により安全な保全作業の計画が立てられていない場合は、傷害あるいは死亡災害さえ発生する恐れがある。

危害を受けそうな者は誰か?

  • 設備・機器の保全作業を行う作業者

推奨される対策

  • 事業主は、購入する設備・機器が、できる限り安全に保全作業が行われるよう設計されたものであることを確認すること。
  • ハイリスクの保全作業では、適切な経験・資格を持った者による監督が必要である。これは、保全作業を行う者の安全衛生を監督する役割を確実に果たせるためである。
  • 事業主は、監督者の責任として、保全作業の開始前に必要な防護策がとられ、個々の段階で安全をチェックし、作業中に対策が行われているようにさせなければならない。
  • 事業主はここの保全作業についてリスクアセスメントを実施しなければならない。例えば全てのハザードをリストアップし、リスクが何であるかを決定し、予知できる保全作業全てについて安全作業システムを作るなど。
  • 事業主は保全作業者が使うすべての安全機器(個人用保護具[PPE]を含む)について、検査結果が実施する作業に適合したものであり、使用可能な状態に整備されていて、必要なときは常に使用可能であるようにしておくこと。
  • 対象の設備・機器に対して作業が行われる前に、保全のための安全作業システムを確立しておくこと。
  • 作業環境が保全作業者の安全衛生について問題のない状態に保たれるためのモニター手段が導入されていること。例えば、閉塞空間の雰囲気を有資格者が検査するなど。
  • 安全作業システムがうまく機能せず、作業者をその環境から救出しなければならないような事態に備え、事業主はそれに対する備えを用意しておくこと。

特定されたハザード:情報、支持、訓練の欠如

  • 情報、支持、訓練の欠如は、保全作業者の傷害、疾病、さらには死亡につながるおそれがある。

危害を受けそうな者は誰か?

  • 保全作業に関する作業者

推奨される対策

  • 保全作業者が、わかりやすく書かれた安全衛生情報を入手できるようにしておくこと。
  • 安全衛生訓練においては、通常の生産の場における安全防護手段が、保全作業の時には機能しないかもしれないことを強調すること。
  • 訓練には、安全装置(PPE含む)の使用法、及びそれによるリスクを避ける方法も含めること。
  • メーカーの説明書、操作マニュアルは、効果的な訓練プログラムの一部となる。
  • 管理者も同じ情報、指示、訓練を受けるべきである。それにより自分の管理下の作業者を適正に監督することができる。
  • 新人の保全作業は、機械・機器に対して仕事を開始する前に、新人教育を受けること。
  • 経験のある保全作業者は、新しい機械が設置されるとき、又は作業手順が変わるとき、リフレッシュ訓練を受けること。
  • 事業主は、保全作業者に情報、指示、訓練を確実に理解させること。作業者が理解した旨をサインしてもらうとよい。
  • 事業主は、作業者が作業に正規に従事する前にその作業について十分な経験を持たせること。
  • 事業主は、契約保全業者が、機械・機器の保全を行うに足る能力があることを承知しているものであること。
  • 閉塞空間での作業に関係するものはすべて、事前に何をするべきで、どうしたら安全に作業できるか、適切な訓練・指示を受けていること。
  • 必要なときに冷静に行動させるためには、救助手順の訓練をしておくことが必須である。
  • 緊急事態では、救助用の機器、例えば呼吸器、救命索、消火設備などを使うことができるように適切に訓練することが必要である。

特定されたハザード:緊急事態

  • 保全作業を行うときは、重大な差し迫った危険に曝される危険性がある。

危害を受けそうな者は誰か?

  • 保全作業者及び救助に関係する者。

推奨される対策

  • 緊急事態において、警報を発し救助活動を行えるよう効果的な仕組みを作っておくこと。
  • 関係者間で意思疎通を行えるよう、適切なコミュニケーション手順が不可欠である。
  • 地域の救急サービスは、どのような場合においても利用を想定しておくこと。また彼らが支援のために到着したときは、関係する危険性についての情報を提供すること。
  • 閉塞空間の出入り口は、作業者が入るときに、緊急時に脱出できる大きさがあるかチェックすること。出入り口は作業者や救助者が、必要な装備を着用していても安易に通ることができる大きさであること。
  • 緊急事態下で救助活動が行われている間、隣接して行われている作業を停止することが要求されることがある。

特定されたハザード;作業認可システムの欠如

  • 作業許可システムがない場合、傷害や場合によっては死亡につながることがある。

危害を受けそうな者は誰か?

  • リスクの高い環境下で作業を行う保全作業者

推奨される対策

  • 効果的な作業許可システムを用いることは、保全作業を安全に行うための計画的アプローチの重要な部分である。これにより、安全な作業手順に関する基本的な情報が保全作業者に提供されることになる。
  • ハイリスクの作業環境に立ち入ること、又は作業を開始することを許可する前に、安全作業システムの全ての要素が有効になるような作業許可システムが存在すること。
  • 作業許可に当たっては、設備・機器及び関連するリスクと特定すること。また実施すべき作業の性質と範囲も特定すること。
  • 「許可」は、その職場で保全作業を担当するものが、作業許可文書に記入して初めて許可されることが多い。
  • 作業許可に基本的に必要な事項は次のとおりである:
    ◆ 特定の仕事について、誰がオーソライズできるか(及びその権限の限界)、必要な対策を指定するのは誰の責任かが明確になっていること。
    ◆ 作業を実施する外注業者も含まれることを示す規定。
    ◆ 許可の発行のために必要な訓練と指示。
    ◆ システムが意図したとおりに機能することを担保にするためのモニタリングと監査。
  • 作業許可には、すべての保全作業の開始前に、一般的な防護対策がとられるべきであることを規定してもよい。例えば分離バルブの施錠、作業場所に安全に出入りできる組み立て足場の設置、機械部分の切り離しなど。
  • 作業許可には作業が安全に行われるよう、有効期限及び機械の切り離しの詳細などを記載してあること、責任者である設備技術者が記入しサインすること。また、生産再開のために設備の引渡しを受ける権限のある者のサインもなされていること。
  • 個々の作業許可の内容は、それを受け取るものが何をしなければならないか、何をしてはならないかを理解するよう十分説明していること。

特定されたハザード:閉塞空間

  • 閉塞空間に入ることは非常に危険な場合がある。例えば有害なヒュームが存在するかもしれないし、酸素濃度が低いかもしれない。

危害を受けそうな者は誰か?

  • 保全作業を行うため閉塞空間に入る必要性がある作業者。

推奨される対策

  • 先任者から承認を得た者だけが閉塞空間に入ることができる作業許可システムが機能していること。
  • 有害物がなく、十分な酸素濃度があることを確認するために、作業者が閉塞空間に入る前に雰囲気の検査を行うこと。
  • 雰囲気の検査は、正しく較正されている適切なガス検知器を使って有資格者が行うこと。
  • 安全に呼吸ができることを確実にするため、閉塞空間での作業中、継続的に雰囲気の監視を行うことが必要な場合もある。
  • 閉塞空間の開口部を多くすることによって、換気は改善できる。
  • 閉塞空間内の作業者に新鮮な空気を十分供給するために、機械換気が必要な場合もある。
  • 酸素が不十分なとき、或いは有害物質が空気中に存在する場合のために、呼吸用保護具(RPE)の使用が可能になっていること。
  • タンク又は同様な容器に入るものは、上記とともに安全ハーネス、救命索を使用すること。
  • 保全記録は保管し、安全衛生点検又は監査のときに閲覧できるようにしておくこと。

特定されたハザード:機械及び作業機器の危険部分

  • 機械の巻き込み部分や動いているブレードは保全作業者を負傷させる場合がある。

危害を受けそうな者は誰か?

  • 機械や作業機器を保全する作業者。

推奨される対策

  • 機械の保護カバーは、該当の機械を、安全な方法で十分に清掃・保全できるようなものであること。
  • 単一の電動機により動かされている機械に対しては、複数鍵による施錠を考えるべきである。このシステムによれば、何人かの作業者が一つの機械の保全作業を行う場合、作業終了後に作業者が持っているsべての鍵が揃って始めて機械を再起動できるので、安全に作業を行うことができる。
  • 複数鍵による施錠システムが安全であるためには、しかるべき安全ルールを守らなければならない。例えば機械と隔離ボックスには番号をつけるべきである。専用の錠と鍵は責任者が保管すること。一つの錠に対する鍵は一個とし、その鍵は該当機械で作業するものが保持して作業終了時に責任者へ返還する。
  • 機械の危険部分から保全業者の手を保護するために、手袋などの個人用保護具(PPE)が必要になる場合もあるであろう。PPEは常に最後の手段として使うこと。

特定されたハザード:身体の障害

  • 保全作業者はさまざまな傷害を受けるおそれがある。

危害を受けそうな者は誰か?

  • 保全作業者

推奨される対策

  • 救急要員は、HSEが承認した訓練コースで発行された証明書を持っていなければならない。
  • 救急要員が現場から離れた場所にいる場合、事業主は、被災・負傷した作業者が医師又は看護士の処置を必要とするようなときは、その場で指揮を取るものを指名することができる。「指名された者」は、救急救護、それも実際に訓練を受けた内容以外の救急処置をしてはならない。「指名された者」は基礎的な救急処置の訓練を受けておくべきである。
  • 「指名された者」は、有資格の救急救護者に代わるものではなく、不在時等をカバーするに過ぎない。
  • 通常の救急箱に加え、特別なハザードのために必要な物品・機器を救急箱の付近に保管しておくとよい。但し、救急救護者がその使用について訓練を受けていること。
  • 補足的に備えておくものとして、被災者を運搬するための器具、毛布、前掛け、その他適当な保護具、はさみなどがある。それらが必要と考えられる場合、救急箱の近くに保管すること。
  • どのような救急用器具を用意するのが適切かは、どのような緊急事態が起こりそうだと特定されたかによる。そのための器具が用意された場合は、正しい操作法を訓練することが不可欠である。
  • 全ての傷害は「新形式」の事故記録簿に記録し、本部に保管すること。救急箱の近くに置いておくのも良い。新しい型式の記録簿はHSE booksから入手可能である;ISBN 0 7176 2603 2 で価格は5.58ポンド(税込み)である。25パックまとめたISBN 0 7176 2178 2 は5%割引となっている。
  • 事業主は作業者に対して、災害にあったときは事故記録簿に記載すること1979年社会保障(請求及び支払い)規則の要件であることを周知させなければならない。
  • 職場における災害を報告し、記録し、また災害調査を行うことに対しては、具体的な法的要求事項がある。以下に概略を説明する。
  • 責任者は、災害、疾病及び危険事象報告規則1995(Reporting of Injuries , Diseases and Dangerous Occurrences Regulations RIDDOR) に基づき、業務上発生した特定の災害・事故について報告することが要求されている。
  • 一般的に、この規則に拠れば、報告対象の事象は一番はやい方法、通常は電話で監督当局に連絡しなければならない。引き続いて10日以内に書式 F2508又 は F2508A によって書面で報告しなければならない。報告対象事象は 新しいウィンドウに表示しますwww.riddor.gov.uk によりオンラインで報告することもできる。
  • 上記についての情報は地域の安全衛生監督当局に請求すれば入手可能である。
  • 保全作業に関係する全てのものは、何をしなければならないか、どうすればそれを安全にできるかがわかるように適切に訓練され、適切な指示を受けなければならない。

その他の情報

  • 法令集は政府刊行物発行所(TSO、tel 0870 600 5522)から入手可能である。
  • 公認実施準則(ACOPs , Approved Codes of Practice)及び関係ガイダンスは、HSE books(tel 01787 881165)から入手できる。他に 新しいウィンドウに表示しますwww.hse.gov.uk によりオンラインで入手可能な情報もある。
  • 閉塞空間での作業に関する具体的な情報は、HSEのウェブサイトから入手できる(新しいウィンドウに表示しますwww.hse.gov.uk/confinedspace/index.htm)