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繊維筋痛症 − 心の問題だけではない

資料出所:National Safety Council発行
「Today's Supervisor」 2000年6月号
(訳 国際安全衛生センター)

繊維筋痛症患者に最も一貫して見られる症状は、身体全体に広がる痛みである。

「痛みがいつ来るのか、それが何日、何週間、何カ月続くのかは、まったくわかりません」と語るのはイリノイ州アーリントンハイツのメアリー・バー氏だ。「先週は左手の痛みでタイプがまったく打てなくなりました。でも数日で痛みはなくなったんです。前には両足の裏の痛みが2年間続きました。立つのも歩くのもつらかったのですが、いまはなんともありません」

バー氏にとって、「フィブロ・フォッグ(fibro fog)」と呼ばれるこうした断続的な痛みこそ、最悪の副作用である。シカゴのローズベルト大学英語科の客員教授であるバー氏は「ときには、となりの同僚や生徒たちにさえ、落ち着いて話せなくなります」という。12年前に繊維筋痛症候群(fibromyalgia syndrome, FMS)と診断された。

同氏は「落ち着きがなくなり、めまいがして集中できない。綿に包まれているようです」と語る。「仕事をしなければと思うのですが、集中できません」

「それに絶えず疲労感があります。なかなか寝つけなかったり、熟睡時間が短いのが一因だと思います」

アメリカ繊維筋症連合(Fibromyalgia Alliance of America)のメアリー・アン・サートフ会長によると、これは共通の症状である。彼女自身がFMSなのでよくわかる。

どんな人が繊維筋痛にかかるか

オレゴン衛生科学大学のリューマチ学主任、ロバート・ベネット医師によると、700万人から31,000万人のアメリカ人がFMSにかかっている。大半は女性で、男性の20倍である。1995年に『Arthritis and Rheumatism』(関節炎とリューマチ)に発表された調査によると、FMSの発症率は加齢に伴なって増加し、60歳から79歳までのグループでもっとも高くなる。

『Journal of Musculoskeletal Pain』(筋骨格痛関連誌)の編集者で、テキサス大学衛生科学センターの臨床試験センターを監督するジョン・ラッセル医師によると、FMSはアメリカ経済に、医療関連費用として年間150億ドルのコストを強いていると推計される。しかもそれには損失労働時間も、生産性の低下も算入されていない。

症状は肉体面と精神面に現れる

繊維筋痛症の共通の症状は、頭痛、疲労、気分の変動、不眠などである。FMS患者は寝つけないことが多いため、翌朝は一層気分が悪くなる。

ラッセル医師は「FMS患者のほとんどが、広範囲な身体の痛み、朝の筋肉の硬直を経験する」という。「身体に痛みがある状態で1日を過ごすのが、どんなにエネルギーの要ることかは簡単に想像できる。労働には一定の制約を受けざるをえない」

ベネット医師によると、反復動作をしたり、キーボードに向かうなど、ひとつの姿勢を長時間続けたときに痛みが増幅するFMS患者が多い。ストレスも症状を悪化させる。FMSを発症する以前に比べて、感覚が鈍ったり効率が落ちるため、自尊心が低下することもよくみられる。同僚(怠けているとみなしがちである)や、作業効率と業績低下の原因を理解できない上司との関係が悪くなる場合もある。

しかしFMSの主因は精神的なものではない。実際、ラッセル医師によると、FMSは痛みの信号を送る化学物質が異常な水準にあることに関係していることが、4つの研究で明らかになっている。

研究室での試験やX線ではFMSは確認できないが、脊髄液に異常がでるのがわかる。医師は、身体の18箇所の柔らかい組織部位(敏感部)を調べて、FMSの診断に利用する。FMS患者の場合、これらの部分は圧力に異常に敏感で、痛みを感じる限界点が通常人より低い。

FMSの原因は不明だが、1997年に発表されたイスラエルの研究によると、自動車の衝突でむち打ち症になった人の相当数が、18カ月以内にFMSを発症している。

痛みを管理する

FMSの治癒は難しいが、上司に理解があれば効果的に管理することは可能だとベネット医師はいう。FMS患者の多くはフルタイムで働くことができず、症状の重い人の場合は週20時間労働(5時間労働を週4日)にする必要がある。アメリカ障害者法による規制で、労働の緩和が義務づけられている。

ベネット医師は、FMS患者の労働者に次のことをすすめている。

  • 20分おきに2分の休憩をとる。動き回ったりストレッチをする。
  • 電話機を使う場合はイヤー・セットを付ける。
  • 作業場所と椅子が人間工学的にかなった設計になっているか確認する。
  • キーボードとモニター画面を、見やすくて手の届きやすい場所に置く。
  • コンベヤー型の組み立てラインで作業をする場合、20分おきに休憩をとる。作業を変更して、同じ筋肉群を使い続けないようにする。

この記事の出典[英語]は国際安全衛生センターの図書室でご覧いただけます。