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皮膚炎の患者は意外に多い
刺激性とアレルギー性の2種類がある

資料出所:National Safety Council発行
「Today's Supervisor」 2000年11月号
(訳 国際安全衛生センター )

爪の甘皮が逆むけになったり、切り傷をした時に、治るまでそうした状態で仕事をしなければならない不快さは、誰でも経験している。しかし接触性皮膚炎を患った労働者の苦痛はそれとは比べものにならない。

接触性皮膚炎とは、化学品やその他の刺激物と接触したために起きる皮膚の疾患である。体のどの部分にでも起きるが、主に手や指が冒される。痛みや炎症、腫れ、かゆみ、ひび割れ、皮むけなどが主な症状である。

接触性皮膚炎は刺激性とアレルギー性の2種類に分けられる。刺激性皮膚炎は長期の低レベル暴露、または短期の高レベル暴露によって、皮膚を刺激する物質との接触で起きる。アレルギー性皮膚炎は化学品その他の、各人がアレルギー性物質との接触で起きる。アレルギー性皮膚炎は、労働者が化学品に初めて触れた時に発生する場合もあれば、長期に接触したために皮膚が過敏になって起きる場合もある。すべての職業性接触性皮膚炎の80%が刺激性で、残りの20%はアレルギー性である。

皮膚炎は想像以上に多い

職業性皮膚疾患を持つ人々の数は驚くほど多い。労働統計局のデータによると、職業性疾病の10ないし15%が職業性皮膚疾患だ、とシンシナチの国立労働安全衛生研究所(NIOSH)の皮膚科医師ボリス・ラシュニアクは言う。同氏によると、すべての職業性皮膚疾患の90-95%は接触性皮膚炎の範疇に入るもので、これは非外傷性職業病の中で、最も多い病気だという。

この種の病気の患者が経験する不快さは、治療を求める人々の数に反映されている。「われわれの推定では、100人のうちの1人がこの症状で皮膚科を訪れている」と、プトテク・インターナショナル(ノースカロライナ州ラレイ)のフレッド・L・ブラックマン社長は言う。同社は接触性皮膚炎治療のためのローションを販売している。同社が行った調査では、皮膚科患者の35%は接触性皮膚炎の患者だという。

この病気を起こしやすい条件としては、皮膚を刺激する、またはアレルギー反応を起こすような物質との接触がまず挙げられる。石鹸や洗剤、ニッケル、そして切削液、酸、ホルムアルデヒド、漂白剤などの工業化学品である。

水に頻繁に触れていると、皮膚の保護機能が弱くなる。頻繁に手を洗う必要がある仕事(看護師など)、労働者の手が濡れる仕事(美容師など)は接触性皮膚炎を起こしやすい仕事である。

手袋でかえって症状が悪化する危険も

ゴム手袋を頻繁に使っていると、皮膚炎を起こすことがある。ゴムにアレルギーを持つ人もいれば、手袋を長い間使っているうちに、ゴムに過敏になる人もいる。長期にゴム手袋を使用する歯科医の5%以上が、ゴムにアレルギーを持つようになるとブラックマンは言う。

さらに手袋の使い方が悪いと接触性皮膚炎を悪化させることもある。労働者の手が濡れている時には、手袋の中で細菌が繁殖しやすい。接触性皮膚炎を患っている労働者は濡れた手袋をしていると治療が困難になり、細菌の多い環境は交叉感染の危険もある。

接触性皮膚炎にかかりやすいのは労働者、食品サービス従業員、機械オペレータ、農業・林業労働者、漁師、医療関係者、用務員、メイド、細工師、機械技師、建設労働者、美容師などである。

皮膚炎の発生前に抑える

接触性皮膚炎の治療にはクリーム、湿布、軟膏、皮膚清浄剤などが使われ、治癒段階で皮膚を刺激から守ることが主眼になる。場合によっては、症状が重いため、労働者が働けなくなることもある。

接触性皮膚炎を解消するには、経営者が病気の発生を未然に防ぐため、労働者と協力して対策を講じる必要がある。職場にあるすべての刺激物、アレルギーをおこす物質(allergen)を特定し、刺激性やアレルギー性の低い物質を代わりに使用し、暴露をさけるために換気をよくし、衛生設備を整え、保護用の器具を準備し、物質との接触をできるだけ少なくするなどの方法を取ることが、職場での接触性皮膚炎対策として有効である。

経営者は病気の発生前にそれを防止することによって、労働者の補償費を低減し、労働者は文字通り自分の皮膚を守ることができる。

(ケート・ベルトランド)

この記事の出典[英語]は国際安全衛生センターの図書室でご覧いただけます。