このページは国際安全衛生センターの2008/03/31以前のページです。

労働者のためにMSDSを活用しよう

資料出所:National Safety Council発行「Today's Supervisor」2001年2月号 p.10〜11
(訳 国際安全衛生センター)

アン・フリーストーン(Ann Freestone)


「君たちは元気に会社へ出てきたのだから、同じように元気で帰宅したいと思うだろう」。こう問い掛けるのは、ノースカントンにある「Safety Resources Company of Ohio(オハイオ安全資源社)」のキャメロン・スペック社長である。

ほとんどの労働者がそう思っている。監督者としてのあなたにとって、この考え方が労働者を守ることに役立つだろう。化学物質等安全データシート(MSDS)は、有害化学物質について労働者が必要とする情報を提供する。

ケンタッキー州レキシントンに本社のある、教育・コンサルタント業に携わるインタラクティブ・ラーニング・パラダイム社(ILPI)のロブ・トレキ社長によると、おおよそ150万枚のMSDSが存在するという。1種類の化学物質について、2000枚のMSDSが存在するということに留意すべきである。「化学物質を相手に仕事をする場合は、病院関係者が血液サンプルをどのように取り扱っているか、考えるべきだ。血液サンプルは、全員が注意して扱っているが、化学物質もこのように扱うのが正しい」と、トレキ社長は言う。

その理由は? ある化学物質が今日は無害と考えられているかも知れないが、これに長期間暴露した場合、健康上の問題を起こす可能性だってあるのだ。こうしたMSDSは、労働者の助けになる。「労働者は安全情報を利用できることを知っている。事業者が危険を隠すことはできない、と労働者は思っている」と、トレキは説明する。

カリフォルニア州サクラメントのGal/OSHAコンサルテーション・サービス社の地域マネージャー、ハーマン・ジェットによると、1枚のMSDSで労働者は次の情報を知ることができる。

  • 事業者から危険物質に暴露するような業務を要求されている場合の危険の内容
  • もしあれば身に付けるべき個人用保護具
  • 当該物質に暴露した場合の救急処置法
  • 当該物質を安全に扱う方法
  • 有害物質の輸送と貯蔵の方法

「MSDSは、一般的な家庭用クレンザーなどのように、危険などとは思われないものから、大変危険な腐食剤から酸類まで、あらゆる範囲を網羅する」と、ジェットは言う。

OSHA規則(基準-29 CFR)の危険性伝達1910.1200は、有害化学物質にはメーカーがMSDSを添付することを義務付けているが、販売業者もこれを提供する。OSHAの基準に準拠して、メーカーはMSDSにどんな危険を一覧表記するかを決定する。

MSDS上に記載される危険の内容は種類が多い。OSHAによると、有害化学物質は、物理的な危険または身体的な危険をもたらすものとされている。たとえば、可燃性または爆発性の化学物質は、物理的な危険を伴うものとされている。身体的な危険をもたらす物質は、ガンの原因となったり、臓器、皮膚、目、粘膜に損傷を与えたり、肌や目に炎症を起こす。この他にも多くの項目が列挙されている。


利用の容易さがカギ

OSHAはまた、MSDSを労働者が利用できるようにすることを事業者に義務づけている。「MSDSを監督者の事務所の引出しにしまっておいても意味がない」。カンザスシティのカンザス大学メディカルセンターで安全担当のディレクター(safety director)を務める、ルース・ダコタスは言う。「しまい込んでおくのは基準違反だ。常に閲覧可能にしておかねばならない。」

彼女の所属する部が、いろいろな工夫のひとつとして、看護師室のためにMSDSのノートブックを一ヵ所に集めているのはこのためである。年に2回とは言わずとも1回は、ダコタスと彼女のスタッフは「安全巡視を実施し、適切で最新のデータシートがそのノートに綴られていることを確認する。同病院のホームページには、近々データシートが掲載されることになっているが、MSDSを掲載して外部にリンクしているホームページはすでに19ヵ所あり、今回のはそれに追加されるものだ。

「MSDSを見たいとき、監督者の許可を得なければならないとしたら、これは面倒だ。労働者は疎外されていると思うかも知れないのだから、これではいつでも閲覧という訳にはいかない」と、トレキは言う。

労働者のために重要な安全情報をもっと利用しやすくする必要がある、とトレキは確信している。こうした理由からトレキは自分のホームページを開設した。他のオンライン企業も、このニーズを満たすために立ち上がった。トレキは次のように言う。「インターネットでアクセスできるようになって、状況は一変した。アクセスは飛躍的にオープンになった。」

インターネットの最前線では、企業がオンライン購読サービスを使って、MSDSを自分たちのサイトに掲載し、CD-ROMにも投資している。


研修とモニター

OSHAの基準では、MSDSについての研修を義務づけている。ダコタスによれば、これはOSHAが要求しているからだけでなく、特に英語が母国語でない労働者や義務教育しか受けていない労働者にとって、MSDSは理解しにくいことからも重要である。「労働者が化学物質を安全に扱えるよう、情報を吸収してもらいたい。」

「労働者には教育が必要だ。我々にはその責任がある」と、スペックは言う。

彼のアドバイスは次の通りである。すぐれた研修を徹底することと、「現場での対話」、つまり小規模グループの労働者を積極的に強化するための、継続的で活発な話し合いを持つことだ。「研修が終わった後は、労働者が教えられた通りに行動するかどうかモニターする必要がある。モニタリングは大事だ。」

また、思い込みはいけない。「労働者が理解したと思い込むと、あなた自身と、労働者の安全衛生を損なうことになる」。またスペックは、自社の労働者があなたのところへ来れば答を得られると納得するように、意思疎通をはかるべきだと言う。なぜなら、それによって一挙両得となるからだ。

「あなたの利益にもなり、わたしの利益にもなるというわけだ」と、スペックは語った。