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腰部傷害を防ぐには

スーザン・マイヤース

(資料出所:National Safety Council発行「Today's Supervisor」 2001年5月号 p.10〜11)
(訳 国際安全衛生センター)


ああ背中が痛い。自分自身で言ったことはないとしても、人がこう呟くのをおそらく何度も聞いたことがあるだろう。アメリカ人のおよそ80%から90%が生涯で何度か腰部の問題を経験しているからである。実際腰痛は、頭痛に次いで2番目に頻繁に起こる痛みの原因だ、と、理学療法士でありOn With Life(アイオワ州グレンウッド)の取締役であるジェームズ・アンダーセンは言う。そして今後とも腰痛は他のどんな職場の傷害よりも多くの時間の損失をもたらし、身体障害、費用の損失の原因でありつづける。

一般に信じられているのとは反対に、ほとんどの腰部傷害は単一の緊張を強いる出来事が原因ではなく、様々な要因が時間の経過と共に累積し、腰部の支持構造を徐々に衰えさせる結果起こるのだ、とアンダーセンは言う。人が腰部を傷める時、通例それは何百回も行ってきた事が原因なのだ、とアンダーセンは言う。「一度腰部を傷めたことがあると、更に5回以上また傷める可能性がある。」

腰部にとって最大のストレス要因

腰部傷害にかかりやすくする最大のストレス要因としてアンダーセンは下記を挙げる。姿勢が悪い、長時間同じ姿勢で仕事をする、繰り返し持ち上げる、屈む、手を伸ばす、体をねじる動作をする、身体のしくみについて知識が乏しい、柔軟性が無くなっている、体調が悪い。

事業者はこれらの要因を伴う作業を無くすために作業場を改修したり設計しなおしたりすることで腰部傷害の減少に寄与することができる、とアンダーセンは言う。例えば、過度に手を伸ばす、体をねじる、屈む動作を防ぐために机や作業スペースの高さや作業員からの距離を調整する。やりにくい、狭い場所での作業は無くすべきである。背もたれのある調節可能な椅子を支給し、長時間立っていなければならない従業員にはフロア・パッドを用意する。作業員が頻繁に姿勢を変えることを可能にする。緊張の多い仕事は一日の間に一定の間隔をあける。そして、機械を導入したり、特別の手伝いを付けたり、または大きな荷物は小さく分けたりする。

ハースト社の1ユニットであるコミュニケーションズ・データ・サービス社では、業務部門の作業員は1日2回作業を中断する。音楽がかかり、彼らは5分から10分間のグループ・ストレッチング・強化プログラムに参加する。作業員はまた、少なくとも1時間毎に休憩を取ることが義務づけられている。

「職場の傷害を無くすことは当社のコミットメントの一部であり、効果を上げている。」と、CDS(アイオワ州デモイン)の労働衛生マネージャーのバーブ・カピターニ正看護師は言う。

1993年に職場のエルゴノミクス・プログラムが導入されて以来、傷害の頻度は70%低下し、就労日数の損失は93%低下した、とカピターニは言う。従業員ごとの作業スペースは各人のニーズにあわせて作られる、とカピターニは言っている。従業員も、作業中正しく身体機能を使うために職場のエルゴノミクスについての訓練を受ける。

持ち上げる前に考えよう

腰部傷害の最も一般的な原因の一つは、持ち上げる時に屈んだり体をねじったりすることである。持ち上げによる傷害を減らすために、アンダーセンは次のように助言している。

  • 持ち上げる時に、無理に屈んだり、手を伸ばしたり、体をねじったり、回したりする動作をしない。
  • 物を頭上に持ち上げない。
  • 腕が物体と水平になるように、膝をかがめて脚に体重をかけて持ち上げる。目的物を体に密着させる。
  • 引くよりも押す。
  • 急にぐいと動かす動作をしない。
  • 滑りやすいところで持ち上げない。周囲が片付いていることを確認する。

高度な肉体労働を要する仕事については、企業は雇用前体力評価を実施して、作業員が仕事に要する体力があるかどうか確認すべきだとアンダーセンは言う。

海軍公共事業センター(カリフォルニア州サンディエゴ)では、従業員がオーナーシップを持つ従業員主導の啓発的安全プログラムが、プログラム成功のカギであることを発見した。「われわれはどんな種類の変更が仕事を快適に、生産的に、そして安全にするかについて従業員調査を行った。」と、啓発的安全コーディネーターのゴーグは言う。「それからわれわれはそれらの提案の多くを実行に移した。新入の従業員は自分が尊重されていると感じ、提案をすれば聞いてもらえることを知っている。」

座り方

勤務時間のほとんどを座って過ごす従業員も腰部傷害を免れるわけではない。長時間ほとんど動かないでいるのも腰部に大きなストレスを与える。

脊柱を専門とする医学博士カート・ゴールド(ネブラスカ州オマハ)は、長時間座っていることは腰部疾患の原因となると言う。「多くのアメリカ人は座る生活をしている。その結果、腰を支え正しい配列を維持する脚と胴体の筋肉が弱くなってしまった。これが腰部を弱くし、傷害を起こしやすくしている。」

「皆が立ち上がって10分か15分歩き回れば、腰痛や腰部傷害を30%ほど減らすことができるだろう。」とゴールドは言う。彼は規則正しいストレッチング・強化プログラムを推奨する。特に有益な運動としては、腹部収縮、パーシャル・スクワット、骨盤傾斜がある。

正しく座るために

座っている時の腰痛と凝りを減らすために、以下の安全な座り方を試してみることをお勧めする。

  • 腰部を背もたれで支える。
  • 両足を床にぴったりつけて深く腰掛ける。
  • 作業スペースの高さは、腕を脇に垂らした時の肘と水平であること。
  • ディスプレイのトップは目の高さと同じか少し低くする。
  • 電話を頻繁に使用するのであれば、ヘッド・セットを使用することを考えてみる。
  • 腰痛は人生に不可避なものと考える必要はない。自分の体に対してほんの少し余分に気を配りそして予防措置を講じれば、腰を強く健康に保つことができる。