ストレスが急速に勤労者の健康を損ねている。ニューヨーク州ヨンカーズ所在の米国ストレス研究所によれば、ストレスは、作業関連災害の60パーセントから80パーセントの原因になっているという。加えて、初期診断医を訪れる人々の内、その75パーセントから90パーセントは、ストレスが主な原因となっており、そうしたストレスが離職の40パーセントの主たる要因となっている。

ストレスへの対処―監督者の役割

ストレスの主たる原因は、抑えきれないとの感情である。そして、或る人にとっては、或る状況に対して何もすることが出来ないということが怒りにつながるストレスを生み出すのである。

カナダ・トロントの怒り抑制相談所（the　Anger　Management　Counseling　Practice）のカウンセラー、キャスリン・ジェニングス博士は、監督者は、従業員が欲求不満を建設的な方法で晴らすようにさせねばならない、と力説している。同女史は、「私達の所へ相談に来る人の中には、凄いストレスからくる怒りで、携帯電話や電算機のモニターを窓から投げ捨ててしまったという人がいる。」というのである。「より適当な一つの代案は、管理者が、定期的に従業員の心配事を口頭で解き放ってやることである。グループ・ミーティングを行えば、“門戸開放”策に繋がるであろう。」

マサチューセッツ州リンカーンのストレス指導研究所（Stress　Directions）の会長で主席科学者であるライル・H・ミラー博士によれば、監督者が行い得る最も重要なことは、人と人との結びつきと帰属意識を促し、従業員が相互に支持を得られるよう手助けすることであるという。
同氏は、管理者は、真の指導者にならなければならない、と信じている。

同氏は、「管理者は、確固たるものを持ち、腹が据わり、信念を持つようにならねばならない。」と力説している。「管理者が、もしも、会社は、生存のためもがいているとか、深刻な困難に直面しているといったならば、これが士気に及ぼす影響がどれほどのものか想像出来るであろうか？貴方は、正直でなければならないが、指導性を発揮することで従業員と意思疎通をすることが出来るのである。」


企業縮小が問題に加わる

メイン州バーミルズ所在の「作業に見る人間の本質」（Human　Nature　at　Work）社社長、ディビッド・リー氏によれば、職場ストレスに関連する最も意味ある問題は、状況に関し従業員がもっている制御水準であるという。リー氏は、「従業員が孤立無援と感じているとき、慢性ストレスの条件が整うのである。」と警告している。

同氏は、監督者は、従業員がその仕事の管理をし、その仕事の意義と目的を鮮明にするとの観点から、従業員に可能な限りの自由裁量を与えるよう促している。同氏は、「また、従業員のいうことに耳を傾けよ。」と助言している。「多くの組織内で、もしも、従業員が、自分自身についての心配事をてんで勝手に言い出したとしたら、“チーム・プレイヤー”じゃないではないかといわれるであろう。従業員にこの経験を理解してもらうには、開けっぴろげの意思疎通環境が極めて重要なのである。」

こうした戦略が企業縮小下において特に重要である。リー氏は、「企業縮小後、巧く行く会社というのは、何が行われているのかを常に語りかけ、人々との意思疎通を継続して行う会社なのである。」と強く主張している。意思疎通が明確で見通しがハッキりしていれば、それだけ人々のストレスの度合いも少なくなるということである。


ストレス防止―従業員の役割

チコ（Chico）にあるカリフォルニア州立大学社会学教授で「心身健康のためのストレス管理」の著者でもあるウオルト・シェーファー博士は、「ストレス水準を決定付けるストレッサー、単なる状況、出来事あるいは活動といったようなものは存在しない。与えられた状況で人が如何にストレスを経験するかは、その人がその状況をどう受け取るかにかかっているのである。」という。

幾つかの手法の助けを借りて、従業員は、ストレスを受けた経験を再現することが出来る。

• 小休止と問いかけ。 シェーファー氏は、「貴方が或る状況に対してストレスに満ちた反応を取ろうとした時には、直ちに反応をしないことである。」と提案している。
  代わりに、同氏は、次のような問いかけをするよう勧めている。
  今、私は、何を考えているのだろう？
  私は、これをどのように解釈しているのだろうか？
  私は、過剰反応していないだろうか？
  これは私が怒るだけの価値があるものなのだろうか？
  これを前向きに取扱えるように、私は、どのように解釈し直せばよいか？

• すぐに見通しを立てる。 リー氏は、「貴方は、起こった瞬間には、ストレスを感じる物事も後には笑い飛ばすであろう。」といっている。
  「だから、もしも、今、ストレスを感じたら、時の過ぎるのを待つというのではなく、違った見通しを立てるべきである。」
  同氏は、その特定の状況が一週間、一ヶ月、あるいは一年間を通じての大きな出来事であるのかどうかを尋ねることを提案している。
  同氏は、「貴方の答えが“ノー”となるまで続けなさい。」といっている。
  「その後で、“今、ストレスで興奮するとは自分の時間を無駄にしていないか”と尋ねてみることである。」
  

• 貴方の顔は、貴方の気分を映し出し、気分に影響する。 リー氏は、もしも、貴方が動揺しているなら、和らぐように気分を切り替え、笑顔を作り、それを暫く続けるよう勧めている。同氏は、「こうしたやり方を取ることで実際に貴方の気分をもっと前向きなものに切り替えることになる。」のだといっている。
  
  
• もしも、変えられないないなら、それもよし、そのままで行きなさい。シカゴのRHRインターナショナルの経営心理学者、ジーン・モリッシー博士は、「あなたが変えられることに焦点をあてなさい。」と提案している。

ストレスの軽減

もしも、最善を尽くしたにも拘らず、ストレスが依然として生じるのなら、そうした圧力を減らす為に従業員が取り得る幾つかの対策がある。最も肝心なことは、健康を維持すべきことである。ミラー氏は、「健康であることがストレスの影響を少なくするのであるが、問題なのは、人々は、ストレスの下では、往々にして、自分のことを忘れてしまうことである。」といっている。

リー氏は、自然の中で時を過ごすことを勧め、「研究によれば、そうすることで精神の大きな沈静効果が得られることが明らかになった。」という。リー氏は、仕事が多くの知的作業を伴う場合には、終業後や週末に、物に触れたり、手を使う趣味や他の活動を始めるよう提案しており、「こうしたことには、庭いじりや建物作りも含まれる。」といっている。

最終的には、「単一任務」を身に付けねばならない。多くの人は、食事をし、新聞を読み、家族に話し掛け、テレビを見るといったことの全てを同時に行っている。リー氏は、「貴方は、一度に一つのことだけに集中することにより、普通の時間を掛け、そうした時間で自身の気を落ち着かせ、瞑想の世界に入ることが出来る。」と結論付けている。