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化学火災を防ぐのはあなた
Only YOU can prevent chemical fires

(資料出所:National Safety Council発行「Today's Supervisor」 2005年10月号 p.1)
(仮訳 国際安全衛生センター)


オフィスから工場まで、どんな企業も何らかの化学物質を使っている。万一こうした化学物質が発火すれば、従業員や出動した消防士は、炎だけでなく、化学物質がもたらすハザードとも闘わなければならない。
  マサチューセッツ州クインシーにある全国防火協会(the National Fire Protection Association: NFPA)の2003年の報告書によると、産業施設や製造施設において毎年約17,000件の火災が発生しているという。これらの火災によって毎年平均18人が死亡、約550人が負傷し、物的損害は7億8,900万ドルにのぼっている。
  消防設備を準備万端整えておくことは防火のかなめであるが、実際には防火対策は施設の基礎を作る時点から始まっている。
  テキサス州フリーポートのダウケミカル(Dow Chemical)社で救急サービス・保安担当総部長(global director of emergency services and security)を務めるティム・スコット(Tim Scott)氏はいう。「防火の全体プロセスは、工場の設計時に始まっています。設計時には、漏出を食い止める手段について考慮しますが、実際に火災が発生すれば、消火の第一の手段はスプリンクラーや放水システムです。これらのシステムは、利用するものが泡消火か水消火かによって、自動的に作動する場合と手動で操作する場合がありますが、いずれにしても初期対応と災害軽減を担うのはこれらのシステムです。つまり工場自体が、しかるべき事態に対応できるよう設計されています」
  次に重要なのは、化学物質を適切な容器に保管し、容器に適切な表示をしておくことである。全国防火協会のガイ・コロンナ(Guy Colonna)副会長補佐は、「こうすることで混ざると危険な物質の混合を防止できます」という。「化学物質Aを化学物質Bのそばに保管すべきでない場合、表示を適切にしておかないと、そのことに気が付きません。したがって、まず適切な容器を用意し、これに適切な表示をすることが出発点になります。ついで保管に関する要件を適切に検討し、必要に応じて個別保管方式や独立保管方式を使用します」
  独立保管方式とは、酸化剤などのきわめて危険性の高い物質を他から隔離し独立した保管施設に収め、この建物には当該物質以外のものを一切置かないようにすることである。コロンナ氏によれば、当該物質を収めた建物で火災が起きた場合でも、失うものはその物質と建物だけであり、ほかに害が及ぶことはないというのが、独立保管方式の考え方だという。さらにこの方式では、出動した消防士の安全強化も可能であり、燃えている建物の内部に誰もいなければ、消防士は自分の命を危険にさらすことなく火災の拡大を防ぐことができるし、たとえ建物が焼失しても問題はない。
  化学物質をどこに保管するかを問わず、整理整頓を心がけることは非常に大切である。可燃性のきわめて高い炭化水素やその他の引火性物質は、時としてぼろ切れや積み重ねた紙など、何でもないものによって発火することがある、とコロンナ氏はいう。コンベアのベルトのごく近くにぼろ切れを置いていると、熱くなったベアリングにぼろ切れが触れて発火する可能性がある。こうして発生した火災が化学物質の保管場所にまで広がると、壊滅的な結果をもたらすことがある。