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優れた労働環境が、優れた経営を生む

資料出所:欧州安全衛生機構ホームページ
「安全衛生ビジネスアスペクト」より

http://osha.europa.eu/priority_groups/business/good_we_html

(仮訳 国際安全衛生センター)


なぜ優れた労働環境が経営のためによいのですか?

 仕事中の事故や傷害は、個人にも、事業者にも、ひいては社会全体にとっても大きな経済的負担を与えます。特に小さな会社の場合、事故の経済的影響は絶大です。事故によって生じるコストのなかには、損失労働日数や損失利益などはっきりと目に見え、金額で簡単に表せるものもあります。しかし、事故がもたらす経済的影響のなかには、その全体像が把握しきれないもの、あるいは簡単に数値化できないものも数多くあります。

 企業はもちろん、このようなコストを認識していなければなりませんが、それだけでなく、安全衛生の適切な管理がどのような利益をもたらすかも知っておく必要があります。労働安全衛生の効率的かつ総合的なマネジメントが、経営や生産性の優れていることを直接に示しているのは、研究でもはっきりと証明されています。

安全衛生をきちんと保つことによって、どのようなメリットが生まれますか?

  • 労働者が健康であれば、生産性が高く、質も良くなります。
  • 労働災害や疾病が減れば欠勤が少なくなり、コストは下がり、生産工程の中断を減らすことができます。
  • 設備や作業環境を作業工程のニーズに合わせて最適化し、きちんと管理すれば、生産性と品質は向上し、健康や安全へのリスクが低下します。
  • 傷害や疾病が減れば、損失が小さくなり、法的責任を負うリスクも低くなる。

優れた労働環境が、優れた経営を生む

 傷害や疾病が減れば、損失が小さくなり、法的責任を負うリスクも低くなる。
(下の図を参照)

図:企業レベルで見た安全衛生の経済的効果
(詳しくは、http://osha.europa.eu/publications/reports/207/inventory_en.pdf を参照)

 しかしながら、労働環境の改善がもたらす利益を、雇用者や意志決定者に理解させるのは容易ではありません。このとき有効なのが、財政的あるいは経済的な試算です。コストや将来の利益を計算、分析することは必ずしも複雑なわけではありませんが、多くの安全衛生の専門家たちは、難しそうだからと敬遠しがちです。たしかに、経済的評価のなかには、健康や人間の命の価値など、評価が複雑なものもあります。しかし、基本原則は極めて単純ですから、安全衛生の専門家や管理者たちも簡単に行うことができます。
 以下を可能とするためには、安全衛生方針による経済的効果を企業レベルで検討することが必要です。

  • 社の経営資源のバランスのとれた配分。
  • 安全衛生の観点からのニーズと、管理者側が必要と考え、求めるものとのギャップの調整。
  • 法的必要条件の考慮。

 重要なのは、衛生や安全に関する企業の経済的取り組みを、人間としての必要条件や社会的義務の重要性より優先することはできない、ということです。衛生も安全も、企業が果たす社会的、倫理的役割の一端ですから、経済的要因だけを基準に方針を決定することはできません。また、苦痛や生活水準の低下、家族問題、寿命年齢の低下といった質的なコストを金額的に数値化するのは困難ですし、不可能でもあります。

EUの戦略

 欧州委員会は、EUの戦略についての声明書『仕事および社会の変化への適応:職場での衛生と安全に関する新たなコミュニティー戦略2002−2006』を発表しました。この文書の中では、労働災害や職業性疾病で生じた経済的、社会的コストといった「“ノン・クオリティ・コスト”について知り、検証する」取り組みの必要性が述べられています。委員会は、これについての知識を深めるために、ビルバオの安全衛生機構と連携して、データやそのほかの情報の収集を進めていきます。さらに、委員会は「安全で健全な労働環境と組織は、経済にとっても、企業にとってもプラスとなる」とも述べています。(詳しくは、http://osha.europa.eu/systems/strategies/future/を参照)