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シンガポール共和国法令
労働者補償法
(第354章)

(仮訳 国際安全衛生センター)


第1部  序

  • 法律名
    1. 第1節. 本法律を「労働者補償法」という。
  • 用語の意味
    1. 第2節.
      1. この法律においては、文脈上他の意味に解される場合を除いて、引用カッコ内の用語は次のような意味を持つものとする。
        • 「認定病院」とは、第14節1に従って認定された病院をいう。
        • 「コミッショナー」とは、雇用法(第91章)第3節に基づいて任命された労働関係顧問(Commissioner for Labour)、及び、本法律によってコミッショナーに付与された権限、あるいは与えられた責任のすべてまたは一部を、コミッショナーが委任した公務員をいう。
        • 「被扶養者(dependant)」とは、死亡した労働者に関する用語であって、その者が事実上その労働者の所得に依存していたかどうかにかかわりなく、その妻、夫、親、祖父、祖母、義父、義母、子供、孫、継子、兄弟、姉妹、異父母兄弟、異父母姉妹、義兄弟、義姉妹をいい、また、ここにおける定義に関しては、
          1. 死亡した労働者の子供には、その労働者の非嫡出子、並びに養子縁組法(Adoption of Children Act)(第4章)に基づく登録のある子供を含むものとし、
          2. 死亡した労働者の親には、非嫡出子および養子縁組法に基づく登録のある者の、父親および母親を含むものとする。
        • 「家事使用人(domestic servant)」とは、私的な住居における、あるいはそれに関して専属に雇用された者をいい、使用者がその住居において行う取引、事業あるいは職業のために雇用された者を除き、庭師、および私的な使用目的の車両の運転手、清掃者などを含めるものとする。
        • 「所得」とは、使用者が労働者に現金で支払っていた給与、及び、現金に換算できるすべての特典および便益、並びに、労働者が事故のために従来支給されていた食料及び住居を失った場合には、使用者が支給していた食料及び住居の対価を含めるものとし、また、恒常的な性格のもので、平生の労働に対して支払われていたものであれば、その支払方法が賞与であったか手当てその他の方式であったかにかかわらず、時間外賃金、あるいはその他労働に対する一切の支払を含めるものとする。ただし、次のものは除外する。
          1. 旅費
          2. 報酬旅行の対価
          3. 年金基金あるいは退職金積立基金に対する使用者負担分の支払額
          4. その労働者の雇用の性格上から発生した特別な費用に対して、その労働者に支払われた金額。
        • 「使用者」には次のものが含まれる、すなわち、
          1. 政府
          2. 法定の団体、あるいは公的機関
          3. 死亡した使用者の法的代理人
          4. ゲームあるいは娯楽施設に関連して雇用され、そのクラブから所得を得る労働者については、クラブの支配人あるいは運営委員会のメンバー。
        • なお、雇用契約ないしは実習契約を結んでいる使用者によって、その労働者のサービスが他の者に貸与され、あるいは賃貸形態となっている場合には、本法律における扱いとしては、その労働者が他の者のために働いているにもかかわらず、前者(労働者が雇用契約を結んでいる使用者)を引続きその労働者の使用者とみなすものとする。
        • 「傷害」とは、別表第2に特定されている状態のいずれかを含む。
        • 「医師」とは、医療登録法(第174章)に基づく登録があるか、あるいは登録を免除された医師をいう。
        • 「社外作業者」とは、製作、洗濯、洗浄、変更、装飾、仕上げ、修理、改造、または販売のための調整といった目的で、自宅など所有者の管理下にない場所で作業が行われることを前提に、物品や資材をその所有者より提供される者をいう。
        • 「労働能力の一部喪失」とは、労働能力の喪失が一時的な性質のものである場合には、労働能力の喪失をもたらした事故が発生した時点でその労働者が携わっていた仕事に関連した所得減の原因となった労働能力の喪失をいい、労働能力の喪失が恒久的な性質のものである場合には、事故が発生した時点でその労働者が携わることができたすべての仕事に関連した所得減の原因となった労働能力の喪失をいう。
        • ただし、別表第1に記載された傷害はすべて「恒久的な労働能力の一部喪失」であるが、そこに例示された傷害に対比する所得の喪失比率、あるいはその合計が100%となるかそれを超える場合は、これには該当しないものとする。
        • 「船員」とは、商船法(第179章)に基づくシンガポール船籍の乗組員として雇用された者をいい、これらの船舶の船長を含むものとする。
        • 「労働能力の全喪失」とは、その労働者が、労働能力の喪失をもたらした事故が発生した時点で可能であった全ての仕事を、一時的であるか恒久的であるかを問わず実行不可能に至らしめる労働能力の喪失をいう。
          ただし、その原因が別表第1に特定された傷害あるいはその組み合わせによるものであって、別表第1に例示された傷害に対比する所得の喪失比率あるいはその合計が100%となるか、それを超える場合をいう。
        • 「労働者」とは、使用者との雇用契約または実習契約を結んでいるか、それに基づいて働く者であって、肉体労働であるかどうか、契約が明示されたものか暗黙のものか、口頭によるか書面によるか、さらには報酬が時間給であるか出来高払いであるかにはかかわりないものとする。ただし、次の者は労働者とはみなさない。
          1. 肉体労働以外の目的で雇用された者であって、第8節の計算方法による報酬が次に示す金額を超える者。
            1. 月あたり1.250ドル(ただし、他に所得額上限が次の第(A)項で指定されていない場合)。
            2. 本項に基づいて労働大臣が指定する所得額上限が官報(脚注)で示されている場合には、その金額以上の者。
          2. 臨時雇いで使用者の取引あるいは事業以外のために雇用され、ゲームまたは娯楽施設でクラブの仕事に従事してその報酬をクラブから受けるのではない者。
          3. 家事使用人
          4. 警察官、および制定法の規定に基づいて警察活動の任務に従事する者
          5. 社外作業者
          6. 使用者と同じ家に住む使用者の家族
          7. 労働大臣が命令によって、本法律の目的に関しては「労働者」ではないと宣言する者。
          [34/80]
        (脚注)
        「労働者」とみなされる所得額の上限は1,600ドルである。(官報N5、1996年版)
      2. 本法律に基づく補償請求の手続の過程において、傷害を生じる原因となった事故が発生した時点で労働者がかかわっていた労働契約、あるいは実習契約が、コミッショナーあるいは法廷の観点から違法であったと思われた時にも、コミッショナーあるいは法廷は、諸般の事情を考慮してそれが適切であると考えられる場合には、その時点では傷害を受けた労働者が有効な雇用契約、あるいは実習契約のもとにあったものとして取扱うものとする。
      3. 傷害を受けた労働者が死亡している場合には、それに反する事情が特にない限りは、その労働者とは彼個人の法的代理人、被扶養者、あるいはそのいずれをも含めたものを意味するものとする。
      4. この法律は、労働者が通常はシンガポールに居住しシンガポールの使用者によって雇用されており、事故の際に雇用上の事情でシンガポール国外で仕事をしていた場合には、シンガポール国外で発生した事故についても適用されるものとする。
      5. 本法律の目的においては、政府、法定の団体あるいは公的機関の各部署の権限及び責務の執行および実行は、それぞれの事情に応じて、政府、法定の団体あるいは公的機関の業務、あるいは職務とみなすこととする。