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シンガポール共和国法令
労働者補償法
(第354章)

(仮訳 国際安全衛生センター)


第3部 雑則

  • 支払補償額のコミッショナーによる査定
    1. 第24節.
      1. コミッショナーは本法律の規定に基づいて、関係者または関係者のための申請に基づいて関係者に支払われる補償金額について、それを査定し、それに関する命令を発する権限を有するものとする。
      2. コミッショナーは直接あるいは書留郵便によって、上記第(1)項に基づいて査定された補償金額を記載した通告書を使用者および補償請求者に対して交付するものとする。
      3. 上記第2項に基づく通告から2週間以内にコミッショナーに対する異議が申し立てられなかった場合には、コミッショナーの査定額は、
        • 使用者と補償請求者によって了解されたものとみなされ、
        • 第25節2に基づく命令としての効力を持つことになるが、ただし、その命令に対する再審の申し立てが妨げられるものではない。
      4. 上記第3項におけるいずれの場合も、使用者は上記第(2)項に基づく通告書が発せられてから21日以内に、コミッショナーあるいはコミッショナーが指示する補償請求者に対して決定された補償金を支払うものとする。
      5. 上記第4項のとおりに支払が行われなかった場合には、使用者はコミッショナーに対して次のような利息を支払うものとする。すなわち、その利率は査定額に対して、上記2項に基づく通告書が発せられた日から6ヶ月については1ヶ月またはその端数当たり1.5%、この期日経過後は1ヶ月またはその端数当たり3%とし、その利息は次の条件に基づくものとする。
        1. 使用者が支払うべき利息は、査定額の50%を超えることはなく、また、
        2. コミッショナーは自己の判断に基づいて、その利息の全額あるいは一部を免除するか、あるいは送金することができるものとする。
        [34/80]
      6. 珪肺症または石綿症が関係している場合には、本節に基づいて行われるコミッショナーによる補償額の査定については、コミッショナーが査定後にその疾病がさらに悪化して元の査定額ではかなり不十分な状態であると判断した場合には、常に3年以内に再査定を行うこととする。
      7. 上記第6項に基づく再査定を行った後に、コミッショナーは使用者が支払うべき追加の補償査定額を使用者に対して通告するものとする。
      8. 本節および第25節は、補償額の通告への適用と同様に、第(7)項に基づく追加補償額の通告についても適用されるものとする。
      9. 本節の目的のために、コミッショナーは誰に対しても書面による通知をすることによって、その通知書に記載された時と場所に出頭させ、傷害を受けた労働者に関する書類を提出させ、その雇用及び事故についての質問に回答させることができるものとする。
        [34/80]
      10. 上記第9項の通知に基づく出頭あるいは書類の提出を行わなかった者、及びその内容が真実でないと知りながら何らかの回答をした者は、違法行為をした者であって有罪の場合には2千ドル以下の罰金、あるいは3年以下の禁固刑、またはその両方を科されるものとする。
  • 査定額の通告に対する異議の申し立て
    1. 第25節.
      1. 第24節に基づいてコミッショナーが通告した補償査定額に対して、使用者、あるいは補償請求者に異議がある場合には、その者は、補償額にかかわる通告が発せられた日から14日以内に、その異議の根拠を詳細に説明した異議申し立て書をもってコミッショナーにその旨通知するものとする。
        • (1A)コミッショナーは、上記第1項の期間経過後にも自らの判断に基づいて異議の申し立てを受け付けるものとする。
      2. 上記第1項の異議申し立てを受領したコミッショナーは、現実的な範囲で速やかに事情を聴取してそれに応じた決定を申し渡し、その決定に基づく正当な補償額の支払を命じるものとする。
      3. コミッショナーは本節に基づく聴取をする前に、そのために自らが書面によって指名した公務員による労働者の状況についての事前の調査を行わせるものとする。この公務員に関しては、第30節が適用される。
      4. 前記第4項に基づいて事前調査をする指名を受けた公務員は、調査が終了したらその調査資料をコミッショナーに提出するものとし、その記録はコミッショナーの記録の一部とされる。
  • 専門家によるコミッショナーへの支援
    1. 第26節.
      • コミッショナーは本法律に関連する事項を決定をするに際して、専門的な知識を有するコミッショナーを支援する者を1人またはそれ以上指名することができるものとする
  • 関係者の出頭
    1. 第27節.
      1. コミッショナーへの出頭、あるいはコミッショナーに対する申請やその他の行為が要求された場合、要求された者に代わって次のいずれかの者が行うことが許されるものとする(但し証人としての審査のために求められる関係者の出頭を除く)。
        • 代弁者または弁護人、
        • 当該者が書面によって認め、コミッショナーが許可した者、
        • 当該者が使用者である場合には、その使用者によって常勤かつ専属に雇用されている者
        • 当該者が契約した保険会社。
      2. 政府が本法律に基づく手続の当事者である場合には、これらの出頭、申請、行為は、労働者が雇用され所属している部門の責任者、その責任者によって書面で指示された者、法務大臣、あるいは法務大臣によって指示された者がそれぞれに代わって行うものとする。
  • コミッショナーの命令
    1. 第28節.
      1. 本第25節のコミッショナーの命令は、法廷の判決と同様に地方裁判所によって執行されるものとし、必要な手続はすべてコミッショナーのために地方裁判所によって執行されるものとする。
      2. 固定資産の売却命令については、その執行命令は上級裁判所のみがこれを発することができるものとする。
  • コミッショナーの決定についての訴え
    1. 第29節.
      1. 本法律第24節第3項の規定に基づいて、本法律に基づくコミッショナーの決定によって権利を侵害された者は上級裁判所に訴えることができ、上級裁判所の決定は最終的なものとなる。
      2. 裁判所の規定に基づいて、上級裁判所への訴えは地方裁判所から行われる民事上の訴えに、事情に応じた必要な修正を加えた手続によって進められるものとする。
        • (2A)その訴えに法律上相当な根拠がない場合、あるいは問題とされる金額が1千ドルに満たない件については、上記の訴えは成立しないものとする。
      3. 本節に基づく訴えが行われる場合にも、使用者は第25節に基づいてコミッショナーが決定した金額を、その決定から21日以内にコミッショナーに預託するものとし、その預託金は訴えによる結果が判明するまではコミッショナーによって保管されるものとする。
      4. 使用者が上記第(3)項のとおりに預託をしなかった場合には、使用者はコミッショナーに対して次のような利息を支払うものとする。すなわち、その利率はコミッショナーの査定額に対して、コミッショナーが決定をした日から6ヶ月については1ヶ月またはその端数当たり1.5%、この期日経過後は1ヶ月またはその端数当たり3%とし、その利息は次の条件に基づくものとする。
        • 使用者が支払うべき利息は、査定額の50%を超えることはなく、また、
        • コミッショナーは自己の判断に基づいて、その利息の全額あるいは一部を免除するか、あるいは送金することができるものとする。
      5. 上記第(4)項および第24節第(5)項に基づいてコミッショナーに対して支払われた利息は、労働者に対してかまたはその利益のために支払われるか、あるいは、傷害の結果労働者が死亡した場合にはその被扶養者に対してかまたはその利益のために支払われるものとする。また、死亡した労働者に被扶養者が存在しない場合には、その利息は労働者基金に払い込まれるのとする。
  • コミッショナーの権限
    1. 第30節.
      1. 本法律の執行に関する証人の召喚および審査、宣誓上の陳述および確認、書類および重要な物品の提出の強制などについて、コミッショナーは地方裁判所の判事が持つすべての権限を有するものとする。
      2. コミッショナーは証人の審査が進行する過程において、各証人の証言に関して簡単な覚書を作成するものとし、コミッショナーが自ら署名をしたその覚書は記録の一部を構成するのとする。
      3. 医学上の証言者の証言は、できるかぎりその一語一語についてメモがとられるものとする。
      4. 召喚の送達、またはそれに従うことを意図的に妨害した者、召喚されて出席または要求された書類の提示を怠った者、及び、本法律の執行に関して刑法(第224章)の第十章に記載された違法行為を行った者は、有罪とされた場合には第十章に基づく罰則を受けるものとする。
      5. コミッショナーの前で証言する者は、コミッショナーの質問に対して真実の答えをするものとする。
      6. 意図的に虚偽の陳述をする者、真実でないことを知りながら本法律の手続において虚偽の証言を行う者、あるいは、裁判上で刑法(第224章)第十一章の罰に相当するその他の行為を行う者は、有罪とされた場合には刑法に基づいて罰せられるものとする。
  • 費用
    1. 第31節.
      • コミッショナーにかかわる費用のすべて、並びにそれに付帯する費用は、本法律の規定に従ってコミッショナーの判断によるものとする。
  • 保険会社に対する手続
    1. 第32節.
      1. 認定された有効な保険が付保されている事故に関連して使用者の本法律に基づく補償義務が発生した場合には、その補償義務に関する第24節、第25節、並びに第29節に関する求償は、保険会社があたかも使用者であるかのように、保険会社に対して行われるものとする。
      2. 上記第1項に基づいて保険会社に対する請求手続が提起された場合は、使用者は、保険会社が手続を進めてその請求に対する抗弁が行えるよう合理的なあらゆる協力をするものとする。使用者がそのような協力をしなかった場合には、使用者は保険会社に対して、その手続において保険会社が支払ったか、または支払わなければならなくなった金額を支払うものとする。
  • 労働者の訴える権利に対する制約
    1. 第33節.
      1. 本法律は、次の場合には傷害に関する補償を受ける権利を労働者に与えるものではない。すなわち、労働者が使用者に対してその傷害に関する損害賠償請求の訴訟を裁判所に提起したか、あるいは、裁判所によって使用者からその傷害についての損害賠償金を回収した場合。
      2. その傷害に関する労働者の使用者に対する損害賠償請求訴訟は、次の場合には裁判所において継続できないものとする。
        • 労働者が本法律に基づく補償をコミッショナーに対して請求した場合、または、
        • 労働者が裁判によって、その傷害についての損害賠償金を他の者から回収した場合。
      3. 本法律とは関係なく事故による傷害についての損害賠償を求める訴訟が裁判所に提起され、その訴訟または訴えにおいて、その傷害は使用者の責任によるものではないが、本法律の規定に基づく使用者による補償の対象になりうると決せられた場合には、その訴訟は却下されるものとする。ただし、労働者が希望する場合には裁判所は補償額を裁定した上で、その際に、裁判所の判断に基づいて、その裁定額から労働者が本法律によらずに訴訟を提起したために発生した費用のすべて、またはその一部を差引くことがある。
      4. 第3項に基づいて裁判所が補償額を裁定した手続においては、裁判所は裁判所の裁定金額の証明書を発行するとともに、そこには差引いた費用についの指針を記載する。この証明書は裁判所の判決と同等の効力を持つものとする。
  • 労働者に対する補償金支払に関する相互協定
    1. 第34節.
      • シンガポール政府と他国の政府との間に協定が存在し、その国の居住者または居住者になる労働者に対して支払われる補償額がシンガポールの法律で裁定され、シンガポールの居住者または居住者になる労働者に対して支払われる補償額がその国の法律で裁定された場合に、そうした国またはシンガポールの要求に応じてその金額がいずれかの関係当局に送金され、それを受けた当局が管理をすることが協定により定められている場合には、その定めに従って、コミッショナーが資金は送金したり、資金を受領し管理したりすることが認められるものとする。
  • 別表第2を改訂する権限
    1. 第35節.
      • 労働大臣は官報に掲載する命令をもって別表第2を改訂することができる。
  • 規則
    1. 第36節.
      1. 労働大臣は、本法律の目的、並びに規定を執行するための規則を策定するものとする。
      2. それらの規則は前記第1項の一般論を損なうことなく、特に次の事項を定めることとする。
        • コミッショナーの権限及び責任を執行するために指名された公務員が、行使し執行しうる権限と義務にかかわる制限の詳細規定。
        • 労働者が本法律に基づいて医師の診断を受けなければならない頻度と、従わなければならない条件の詳細規定。
        • 死亡した労働者の被扶養者のために保管される資金の運用方法の詳細規定。
        • 本法律に基づく手続または事項に関する詳細規定。
        • 様式、並びに手数料に関する詳細規定。
        • 関係者の利益のためにコミッショナーが保有する資金のシンガポール外への送金する資金、あるいは、シンガポール外から送金される資金の受領、及び保管についての規定。
        • 労働者基金の創設、維持、及び運営に関する規定。
        • コミッショナーが行う手続において、法的無能力者、あるいは他の理由で自ら出頭できない関係者の代理者に関する規定。
        • 第14節に基づいて医師が労働者を診察して指定病院における治療が必要だと証明した場合の手続、及び、病院費用並びに人工義肢(手、足))及び外科器具の費用支払手続に関する規定。
        • 医療上の証拠に関する問題を決定する医療委員会、及び医師団の組成に関する規定。
        • 第23節に基づく目的で契約され、または更新される保険約款、及び、発行され掲載される保険証書上の禁止条項、及び例外条項に関する規定。