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お知らせ

国からの委託事業であった 「国際安全衛生センター(JICOSH)」 別ウィンドウが開きます が2008年3月末をもって廃止されました。 永らくのご利用ありがとうございました。 同センターのサイトに掲載されていた個別の情報については、中災防WEBサイトの国別分野別情報にリンクして取り込んでおります。

 

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各国情報・国際関係

EUの2007−2012における労働安全衛生戦略の概要

2008年9月25日

EU OSHA News from Board 2008年5月19日

欧州安全衛生機構(EU-OSHA)は、国際間の諸機関および各国政府が策定している中長期の戦略(strategy)を集めた サイト 別ウィンドウが開きます を設置した。

原資料がドイツ語、フランス語のものについても、英文の概要が掲載され、EUを含む世界の全般にわたる状況を知ることができる。

ここでは、下記2件の資料の抜粋を紹介し、ドイツおよびフランスの戦略については、今後の海外トピックススに掲載予定である。

  • 労働のクオリテイと生産性の向上−EUの2007-2012における労働安全衛生戦略
  • 欧州議会の「EUの2007-2012における労働安全衛生戦略」に関する議決

なお、上記のサイト 別ウィンドウが開きます には、欧州連合において労働安全衛生に関係する諸団体、機関とそのURLのリストも併せて掲載されている。

労働のクオリテイと生産性の向上−EUの2007-2012における労働安全衛生戦略(抜粋)

この戦略の目的

この期間内にEU27ヶ国における災害の発生を、10万人率において25%減少させる。

  − EU域内における規制の適切な履行を実現する。
  − 中小企業における規制の履行を支援する。
  − 法の枠組みを作業場所の変化に適合させるとともに、特に中小企業の視点から簡素化する。
  − 各国別の国家戦略(strategy)の発展と実現を促進する。(内容は下記*を参照)
  − 教育訓練により、作業者の行動における変化を働きかける。 また、雇用者に対して、健康を重視した取り組みの導入を働きかける。
  − 新しい潜在的リスクを特定して、評価する方法を確立する。
  − 進捗状況の把握方法を改善する。
  − 国際的なレベルにおいて安全衛生を促進する。
※各国別国家戦略の発展と実現における重点事項
規制の履行を強化するための国家戦略においては、 特に中小企業と高リスク部門に重点を置いた高いレベルの規制履行を実現するためには、 次のような手段のパッケージの実行を優先するべきである。
  − 地域レベルにおけるグッドプラクティス(good practice)の普及
  − ホワイトカラーおよびブルーカラー労働者の教育訓練
  − リスクアセスメントを促進する簡易な手法の開発
  − 理解しやすく、実行しやすい、わかりやすい言葉で書かれた情報とガイドラインの流通
  − 情報のより良い普及とより利用しやすい相談窓口の設置
  − 質が高く、利用することの容易な防止手段に関する外部相談窓口の設置
  − 零細企業と中小企業に対するEUレベルおよび国家レベルにおける経済的インセンティブ

欧州議会の「EUの2007-2012における労働安全衛生戦略」に関する議決(抜粋)

上記の戦略が決定されたのは、2007年2月だが、2008年1月に至って、欧州議会において、戦略の内容に関する下記の議決が行われた。

この議決は、下記の3項目から構成されている。

  1. 関連する17件の文書の一覧
    ILOの諸条約、EU各条約の関連条項、安全衛生枠組み指令他の諸指令、関連する決議・報告書など
  2. AからQまで17項目の安全衛生に関する現状の認識
    A : 職場の安全衛生の質が高ければ、企業の経営成績はよくなる。
    B : 経済面の競争力が優れているとき、安全衛生の成績はよくなる。 安全衛生のレベルが高いとき、社会保障費用の節減と高い生産性によって、公共の経済に明らかなよい影響があり、 作業者の生産性、パフォーマンスおよび福祉に貢献するだけでなく、社会全体の経済のためにも貢献する。
    C : 長期間経過したのちに影響が出現することがある疾病が存在するので、 健康への長期影響に対する作業者の防護についての研究をさらにすすめることが必要である。
    D : 職業性傷害と疾病件数の低減は、部門間で大きな差異があり、 特定の作業者(例えば、海外労働者、不定期就労者、女性、若年、高齢作業者)、特定の企業(中小企業と零細企業)、 特定の産業部門(特に建設、水産、農業、および輸送)および特定の加盟国においては、 職業性傷害と疾病の発生率がEU平均よりはるかに高い。
    E : 安全衛生方策は、企業カルチャーの一部を形成するものであり、そのカルチャーは、 作業者と経営層が協力した生涯を通じての教育訓練により形成されるべきである。
    F : 事業場における安全衛生活動実行のカルチャーは、形式だけの実施に陥ることを避けて、 実効の得られる内容とする必要がある。
    G : 労働者の安全衛生の確保のために、休息の確保が極めて重要である。
    H : ILOの推計では、2006年においてEUでは、およそ167, 000人が職業上の傷害か疾病により死亡した。 EU委員会の推計では、毎年300, 000人において、程度の異なる永久的な障害が生じている。
    I : 職場安全衛生戦略は、本来的に以下の事項の適切な組み合わせによるべきである。 十分な全員の認識、目的に合致した教育訓練、適切な防止サービスとキャンペーン、社会的対話、作業者の参加、 適切な規制と履行、特定のグループ、産業部門および職種に対する重点、効率的な監督、 釣り合いが取れた制止効果のある処罰。
    J : 高齢作業者については、可能な限り長い期間において、健康、作業能力および雇用が継続されるべきであり、 これに必要な対策が取り入れられなければならない。
    K : 現行の規制の実施において、監督が重要な役割を果たすが、それと同時に、作業場所における搾取を防止し、 ディーセントワークの概念の普及を援助しなければならない。 加盟国の監督官の間における、一層緊密な協力と情報交換による支援が検討される必要がある。
    L : 事業場レベルにおけるリスクアセスメントは、一回限り行うのではなく、定期的に行って、 最新の状況に適合させなければならない。 リスクアセスメントを実施しないか、実施しても内容が適切でないことは、 法規制に反し、職務上の災害と疾病が発生する主な原因の1つとなる。
    M : 火災による安全衛生へのマイナスの影響に関する統計が存在していない。
    N : 医療従事労働者は、B型肝炎、 C型肝炎およびHIV/エイズを含む20以上の生命に危険を及ぼすウイルスによるリスクにばく露している。
    O : リスボン戦略の目標においては、2010年における雇用率が全体で70%、女性で60%、高齢労働者で50%とされているが、 慢性病または長期疾病の労働者は、働ける能力を有しながら、働いていないことが多い。 就職していても収入が少ないなどの多くの差別を受けている。 これは、がん患者においてよく見られるところで、最近の調査報告では、 元乳がん患者の1/5が働くことができても、職場に戻っていない。
    P : 保険が適用されない、必然的に安全衛生に関する条件が劣る労働闇市場においては、 男性より多くの女性が雇用されている。
    Q : 女性と男性とを同一に扱うことのできない職場においては、 これに対処したOHS(労働安全衛生)を適合させる戦略および手段を適用することが必要である。
  3. 欧州議会による65項目の議決事項
    上記の安全衛生に関する現状認識に基づいて、対処が必要とされる事項65項目が挙げられている。(内容は省略)

全ての働く人々に安全・健康を 〜Safe Work , Safe Life〜

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