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各国情報・国際関係

アメリカにおける10年間にわたる死亡災害による損失

2010年3月31日

NIOSH eNews 第7巻 第9号2010年1月 別ウィンドウが開きます

アメリカ国立労働安全衛生研究所(NIOSH)は、民間産業において、1992-2001年の10年間に発生した業務上死亡災害に関する状況を取りまとめ、生じた損失を計算した報告書を刊行したので、その要旨と主要な表を紹介する。

原資料の題名と所在

PDF The Cost of Fatal Injuries to Civilian Workers in the United States , 1992-2001 別ウィンドウが開きます
DHHS (NIOSH) Publication No. 2009-154 August 2009
(5.75MB; 131pgs)

アメリカにおける1992-2001年における民間産業労働者の死亡災害による損失

  • 要旨
  • 主要な表
    表 1 .
    1992-2001年の各年における業務上死亡災害件数と生涯損失金額
    表 5 .
    1992-2001年の各年における業務上死亡災害の性別、人種別、年齢区分別の件数と生涯損失金額
    表 11.
    1992-2001年の各年における業務上死亡災害の原因別、性別、人種別件数と生涯損失金額
    表 18.
    1992-2001年の各年における業務上死亡災害の産業部門別件数と生涯損失金額

要 旨

アメリカ国立労働安全衛生研究所(NIOSH)は、全国労働災害による死亡者数(National Traumatic Occupational Fatalities, NTOF)調査システムを通じて、人口動態統計部門(50州、ニューヨーク市、コロンビア特別区)から死亡診断書を収集した。情報は、1992年から2001年までの業務上の傷害により死亡した16歳以上の労働者についてである。このプログラムを通じて収集したデータは、アメリカの死傷労働災害の重大性と状況の大きさを示すものである。年齢階層別、雇用形態別、傷病別等によるデータから、高リスク労働者グループ及び潜在的傷害要因を確認することができる。このことにより、労働災害防止を目的とする各種資料等の有効活用を促進することができる。

労働災害件数と発生率、特に死亡者数は、労働災害防止努力の重要な指標である。一方、労働災害の経済的損失もまた、もう1つの視点(より完全で意味ある結果の評価を提供することができ、研究及び災害防止の資料の助けになる)となるものである。本資料では、労働災害による死亡者数とこれによる社会的損失の総額、平均値及び中央値を示している。

死亡災害の社会的損失の平均値、中央値及び総計の算定に当っては、間接費と直接費の合計からなる疾病費用(Cost-of illness)法によった。間接費の算定は、個々の災害の被災者の生存率、死亡時の年収の中央値、収入増加率及び実際の割引率から算出した。これらの損失に死亡災害の社会的損失に対応する医療費用の直接コストを加えた。家庭内生産損失を加えたのは、以前の、賃金からの損失のみを計上していた方法よりは進歩している。しかし、一般保険による補償額を含めていない等の欠陥がある。

本研究から分かる主なことは、

1992年から2001年まで米国人労働者51,684人が死亡し、これによる社会的損失は430億ドルであった(表1)。

年別の死亡労働災害は、5,396人(1994年)から4,888人(2001年)となっている。また、損失金額の年別の総合計では、最小値が40億ドルで、最大値が45億ドルであった(表1)。

また、死亡災害1件あたりでは、対象期間を通じた社会的損失の平均値及び中央値は、それぞれ834,000ドル及び841,000ドルであった。年別にみると、社会的損失の平均値は、810,000ドル(1996年)から863,000ドル(2001年)であり、中央値は817,000ドル(1996年)から869,000ドル(1993年)となっている(表1)。

死亡災害の大多数は男性(93%)で、社会的損失もほぼ同様である。社会的損失の平均値も男性が若干高くなっている(男性:835,000ドル、女性:815,000ドル、表5)。

年齢別には、35歳〜44歳のグループが、死亡者数、社会的損失ともに最も多くなっている(25%、32%)。次いで、25歳〜34歳、45歳〜54歳となっている(表5)。

1999 年〜2001年のWHOの国際疾病分類(第10次改定)によれば、自動車事故によるものが最も高く(38億ドル、全体の87%)、墜落転落(15億ドル)、殺人(14億ドル)、機械災害(10億ドル)となっている(表11)。

死亡者数が最も多く、社会的損失が高い業種は建設業、次いで運輸業・通信・公共事業となっている。金融・保険・不動産は最も低くなっている(表18)。

死亡災害による社会的損失は、次式により算定された。

ここで、
PVF=死亡労働災害による一人当たりの損失の割引現価
Pyqs(n) = 年齢y、人種q、性別sの人が年齢nまで生存する確率
Ysj(n) = 性別s、職業j、年齢nの労働者の年間の補償給付の中央値
Yhs (n) = 性別s、年齢の人の家庭内生産の帰属価値
r = 割引率(3%)
である。

主要な表

損失金額は、US1,000ドル(2001年ベース)

表 1. 1992-2001年の各年における業務上死亡災害件数と生涯損失金額

表 1. 1992-2001年の各年における業務上死亡災害件数と生涯損失金額
死亡災害件数生涯損失金額
総額平均値中央値
1992 5,028 4,215,204 838 838
1993 5,281 4,510,441 854 869
1994 5,396 4,516,551 837 842
1995 5,307 4,476,975 844 853
1996 5,320 4,310,991 810 818
1997 5,282 4,320,215 818 825
1998 5,021 4,055,880 808 817
1999 5,095 4,127,732 810 832
2000 5,066 4,344,746 858 863
2001 4,888 4,219,665 863 856
Total 51,684 43,098,400 834 841

 

表 5. 1992-2001年の各年における業務上死亡災害の性別、人種別、年齢区分別の件数と生涯損失金額

表 5. 1992-2001年の各年における業務上死亡災害の性別、人種別、年齢区分別の件数と生涯損失金額
区分死亡災害件数生涯損失金額
合計平均値中央値
男性 47,841 39,968,216 835 843
女性 3,843 3,130,184 815 822
人種
白人 42,929 35,969,324 838 851
黒人 5,703 4,528,577 794 802
その他 3,052 2,600,499 852 852
年齢区分
16-19 1,307 936,214 716 686
20-24 3,857 3,384,154 877 836
25-34 11,254 11,827,350 1,051 1,009
35-44 13,081 13,947,567 1,066 1,018
45-54 10,791 9,416,370 873 833
55-64 6,959 3,254,808 468 444
65+ 4,435 331,937 75 61

人種のその他には、区分不明を含む。

表 11. 1992-2001年の各年における業務上死亡災害の原因別、性別、人種別件数と生涯損失金額

表 11. 1992-2001年の各年における業務上死亡災害の原因別、性別、人種別件数と生涯損失金額
災害原因合計男性女性
件数 損失金額 平均値 中央値 件数 損失金額 平均値 中央値 件数 損失金額 平均値 中央値
自動車(道路交通) 3,852 3,288,840 854 901 3,495 2,993,384 856 912 357 295,456 828 815
自動車(道路交通以外) 593 365,764 617 671 568 349,589 615 668 25 16,174 647 698
自動車(その他) 144 108,055 750 844 129 96,270 746 843 15 11,785 786 845
殺人 1,664 1,447,605 870 855 1,357 1,184,178 873 863 307 263,427 858 838
墜落転落 1,923 1,500,496 780 819 1,842 1,457,692 791 823 81 42,803 528 603
機械 1,227 954,540 778 816 1,200 936,176 780 819 27 18,363 680 806
激突され(落下物) 903 700,236 775 777 890 693,478 779 777 13 6,758 520 560
感電 707 680,318 962 970
自殺 575 546,457 950 941 532 505,036 949 953 43 41,421 963 868
航空運輸 460 618,794 1,345 1,354 432 585,276 1,355 1,354 28 33,518 1,197 1,343
自然/環境 204 135,657 665 724 198 133,312 673 725 6 2,345 391 386
飛来物/はさまれ・巻き込まれ 345 305,170 885 881 331 294,938 891 884 14 10,232 731 784
爆発 241 220,112 913 950 227 208,638 919 962 14 11,475 820 883
足場 263 218,568 831 847 255 212,332 833 846 8 6,236 779 863
中毒 247 235,738 954 959 221 212,626 962 971 26 23,111 889 876
溺れ 226 189,425 838 784 219 184,093 841 781 7 5,332 762 810
水上運輸 165 144,354 875 765 160 139,611 873 761 5 4,743 949 821
火災 186 154,144 829 868 169 143,387 848 893 17 10,757 633 768
鉄道輸送 80 85,303 1,066 1,055 77 82,590 1,073 1,085 3 2,713 904 953
その他 890 661,015 743 766 823 609,443 741 756 67 51,572 770 835
原因不明 154 131,554 854 829

災害原因の分類は、WHOの ICD-10 による。
−は、資料作成の基準に適合しないもの

表 18. 1992-2001年の各年における業務上死亡災害の産業部門別件数と生涯損失金額

表 18. 1992-2001年の各年における業務上死亡災害の産業部門別件数と生涯損失金額
産業部門死亡災害件数損失金額平均値中央値
農林漁業 5,561 3,139,968 565 640
鉱業 1,537 1,577,251 1,026 1,072
建設業 9,969 8,492,981 852 857
製造業 6,881 5,464,448 794 811
運輸/通信/公共事業 9,259 8,596,440 928 949
卸売り業 1,547 1,294,223 837 900
小売業 5,267 4,017,851 763 779
金融/保険/不動産 751 653,188 870 889
サービス業 6,298 5,558,373 883 863
公務 2,639 2,789,468 1,057 1,148
分類不能Not 1,975 1,514,208 767 751

関連情報

労働災害による損失金額を推算する試みは、数多くの機関で行われており、下記のウェブサイトなどで内容を見ることができる。

全ての働く人々に安全・健康を 〜Safe Work , Safe Life〜

中央労働災害防止協会
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  • 厚生労働省
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