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記事少ない労力で資材を取扱う工夫
More power, less effort

出典:オーストラリア安全評議会 National Safety Council og Australia(NSCA)発行
「National Safety」 2006年6月号
(仮訳 国際安全衛生センター)

掲載日:2007.06.05

マテリアルハンドリング(Material Handling)は、生産拠点や物流拠点内の原材料、仕掛品、完成品の全ての移動にかかわる取り扱いをさす。モノの取り扱いを増やせば価値を生みだすことなくコストを増すことになるため、マテリアルハンドリングの主要な目的はその取り扱いを極力へらすことである。そのためには、モノの移動距離の最小化、ボトルネックの改善、在庫レベルの最適化、ムダによる損失の減少、まちがいの最小化、セキュリティ強化、破損の最小化が考えられる。よいマテリアルハンドリングは大きくコスト削減に貢献する。

自動化、小型化、法律改正の相互作用が、近年のマテリアル・ハンドリング事情に大きな効果をもたらしている。

西オーストラリア労働安全局(WorkSafe)や同様の機関による安全に関わる法的要件が増したことで、産業界での資材の安全な取り扱いと吊り上げに関わる教育水準が向上したのみではなく、より厳しい法の施行が、資材の取り扱い事情に大幅に影響を与えた。

自動工程、より高性能な機械、機械の防護にかかわる規定の増加という傾向の中で、従来の手作業による機能の多くが、頭上方向吊り上げ装置、真空式吊り上げ装置、遠隔制御運搬装置に移行した。

セイステック(Sasetech)社のリンゼイ・ウェイクフィールド(Lindsay Wakefield)氏は、この傾向を次のように説明している。「多くの職場では、身体の大きさに関わりなく誰もが安全かつ容易に重量物を持ち上げ、大きくかさばる物を移動させることのできる機器が人間の手作業に代わる傾向が見られる」

前屈と持ち上げ行為を低減する傾向

もっとも効率が高く、「ユーザーフレンドリー」な設備が検討されることが時折あるが、たいていはそのようなものは不可能であると結論される。また、理想的な「スカイフック」が継続して求められている。現在進行中の開発主要目的は、重量物の持ち上げや、移動という作業に必要となる労力の低減である。

ミルサム・ホイスト(Millsom Hoists)社のバリー・ミルサム(Barry Millsom)氏は、「隣人を呼んできて」重いものを運んでもらう時代は終わったと語っている。現在、労働局(WorkCover)や同様の機関が許容可能な産業慣例を提案したことや、労働局が事業所に保険料支払いを要請した影響から、事業者の資材の取り扱いのに対するベストプラクティスを検討する必要性の認識が高まった。

「現在一般的に見られる傾向は、背中を曲げて持ち上げる作業をなくし、把持装置やその他の機械式補助装置の利用に変えることです。小さな物に対しても、新しい装置が開発されています。多くの労使双方が人の手による‘手動の’重量物の取り扱い(ハンドリング)を低減することを広く認識し、率先して低減に努めています」とミルサム氏。

ミルサム氏は、新たに設計された、ある持ち上げ装置の例を引き合いに出し説明している。「薄鋼板には、マグネットリフターを長年利用していましたが、ステンレス鋼板には使用できなかったため、ステンレス鋼板は手作業で吊り上げていました。現在は、特殊な把持装置や吊り上げ装置が設計され、広く利用されています」

小さいほうが効率的

災難が生み出した発明がきっかけとなり、新しい装置が開発されることがある。オーストラリア、アデレードを拠点とするミニパレット(Mini Pallets)社のピーター・カールマン(Peter Kuhlmann)氏によるミニパレット(荷台)がその好例である。この装置はユニークなデザインで、世界特許を取得している。

あるディナーパーティーで、カールマン氏は、追加のワインを自社のワインセラーから取ってこようとした。ワインボトルを入れた段ボール箱の下が湿っていたため、箱が壊れ、ビンテージもののワインボトルが何本も割れてしまったとき、カールマン氏はもっとよいワイン保管方法がきっとあるはずだ、と考えた。

その結果開発されたミニパレットは、丈夫なポリプロピレン製で台車と合わせて使用することを意図している。物品の取り扱いと保管のために幅広い用途があり、台車に載せるために積み重ねた箱を前に傾けるという危険な習慣をなくすことで腰痛のリスクを低減できる。

カールマン氏は、ミニパレットを使用すれば、重量物の取り扱いによる傷害を50%低減することができると主張している。無理な仕事による筋肉への傷害や捻挫が原因となる災害補償請求額やリハビリテーション費用は、非常に高額になっている。カールマン氏が、ミニパレットが今後長期にわたり収益をもたらすことになると見込んでいるのも当然であろう。