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ワインセラーに潜む危険
Gefahren im Weinkeller

(資料出所:AUVA発行「SICHERHEITS MAGAZIN」 2003年10月号
(仮訳 国際安全衛生センター)
原文はこちら



毎年、依然として2〜3人が発酵ガスで死んでいる。今なおポピュラーなロウソクテストは、残念ながら、濃度を確かめる安全な手段ではない。

 この記事を読んでいる間にもワインセラーで死亡事故が起こっているかもしれない。それが当てはまるのは、特に、「これまで何も起こらなかった」のだからと、燃えているロウソクを信頼しているブドウ栽培農家である。いくら信頼していても、ロウソクの火が消える前に意識を失ってしまった家族は少なくないのである。実際、少しでも早く自分の目で見て確かめたいために空気を止めることがあるが、これも違法行為のひとつとみなすべきである。そこまでしても、使える時間がごく僅かでしかないことを考えたら、まったく、つまずく暇さえなさそうである。

 ちょっと想い起こしていたただきたい。発酵の際、1リットルのブドウ液から約50リットルの二酸化炭素(CO)が発生する。樽でも他の容器でも、最初からいっぱいに満たされるのではなく、徐々に満たされていくことはよくあるので、CO濃度がそれほど高くなっていないはずと考える者は多い。しかし、これは致命的な考え違えであると言える。予防策としては、セラー内に入る前の、適当な頃合いに必ず掃気ファンのスイッチを入れておくことである。たとえ、セラー内に留まる時間が短いとしてもだ。また、発酵ガス排出パイプを容器の栓から直接屋外まで通しておくのも効果的とされている。もちろん、このようなパイプは、漏れがないかどうか定期的にチェックしなければならない。万一、発酵ガスの事故が発生したときは、中毒を起こした人間を救出する者が必ずそれ相当の防護策を講じなければならない。先ず、酸素または少なくとも新鮮な空気の吸入器具が不可欠であるが、もう一方で、ロープ類の安全具も準備する必要がある。そうすれば、危急の場合に救助者をセラーから引っ張り出すことができる。無事救出した後は、医師が到着するまで、事故被害者に人工呼吸を施すことが肝心である。心停止の場合は、加えて心臓マッサージが不可欠であるが、あるいは、除細動器を使って電気ショックを与えることも必要である。

 最近のワインセラーは、COをパイプで屋外に吐き出す一方、ファンによって屋外に排出できるように建てられている。また、もはや地下でなく、少なくとも天井が道路と同じ高さに造られたワインセラーも多い。ワインセラーで働く職人が職場を変えるときは、いずれにせよ、新しい職場の特有の環境や条件について詳しい指示を受ける必要がある。

 仕事上の事故が一向に無くならないが、それは、いわゆる"燻硫(硫黄燻蒸)"の仕事場においても同様である。二酸化硫黄(SO2)を使ってワインの褐変を防止し、望ましくない混和物を除去する方法は、中世以来よく知られている。そこで興味深いのは、基準値もその時代からほとんど変化していないことである。反対に、変化したのはSO2の取扱いで、これは現在、毒物購入許可がない限り入手できず、加えて、専門コースの試験に合格しないと取扱いできない。

 硫黄は普通、液化二酸化硫黄として圧力ボンベの中に入っている。ボンベ内のSO2の量は、必要に応じて傾けることによって覗き窓で確認することができる。この覗き窓とバルブを定期的にチェックしなければならない。粉末硫黄が使用されることもあるが、火傷の危険性がかなり高いので、ごく稀である。2003年産は、大方の見るところ、優良から優秀までのランクになりそうである。これを味見もしないというのは、何とももったいない話だ。



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