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ブラジルの労働安全衛生事情について
(資料出所:国際安全衛生センター海外調査)
1. 統一労働法( http://www.mtb.gov.br/Menu/Legislacao/CLT/Default.asp)
- 統一労働法(CLT :Consolidation of the Laws of the work)は1943年に制定された。労働者保護の色彩が非常に強く、例えば事業者は労働者に年に1度連続30日の休暇を取得させなくてはならない、一度決定した賃金は下げられない等の規制がある。また、引き下げる方向の改訂はないが権利の追加の改訂はしばしば行われている。
- 労働安全衛生規則(NR)は1978年に制定された。労働安全衛生分野の大半をカバーしており、制定時期が早いにもかかわらす、エルゴノミクス等についても細かく定められている。
2.労働手帳
- 全労働者は「労働手帳」を所持し、雇用は所持者を対象に行うことになっているが、保険料等の費用負担を軽減するために、労働手帳所持者以外の労働者、あるいは所持していても手帳に基づかない契約を行うことが一般的に行われている。このインフォーマル労働者の比率が5,6割に及んでいる。
- 労働手帳には、職種や給料、休暇等を記し、雇い主がサインをする。転職先でも同じ手帳を所有し、将来年金を受領するときの証拠となる。労働手帳は労働省の出先機関で無料配布している。
3.安全衛生管理体制
(1) 労災防止委員会
- 労災防止委員会(CIPA:シッパ)の設置が法律で定められている。
- 従業員数とリスクグレードによって、委員会メンバーの数が定められている。メンバーは従業員側と企業側が同数を選挙で選出し、補欠もそれぞれ1名づつ決めておく。
- メンバーは労働省主催の特別研修(20時間コース)を受講しなくてはならないが、社内に法定の労働安全衛生教育インストラクターがいる場合には(大学の特定の専攻課程修了者等)社内研修で代替することができる。労働省のコースに参加する場合の費用は企業が負担する。
- 委員会の議長は企業側から選出する。
- 任期は1年で、メンバーを労働省に報告しなくてはならない。
- CIPAの役割次の通りである。なお、議事録の記録と保管が義務付けられている。
- 少なくとも一月に1回は会議を開催し、労働安全衛生についての現状や問題点を報告する。議長が選んだ特定のテーマについて話し合うこともある。CIPAで出された意見を企業側に提示し、改善を促すこともある。
- 労災防止週間での講義、キャンペーン活動、危険予知、家庭でのリスク発見等を行う。
- 労災統計の収集と原因の究明。
(2)労働安全衛生スタッフ
- 労働者を100人以上雇用する場合には、安全管理者を選任しなくてはならない。資格制度はなく、エンジニアあるいはテクニシャンであればよい。
(3)産業医
- 産業医は500人を超える労働者を雇用する事業場に選任義務がある。
4.資格制度
- クレーン、ボイラー、大型機械の運転等に免許制度はない。実際には経験が重視されている。資格を要するものには自動車運転免許、医師免許、弁護士免許、船の操縦免許等がある。
5.労災保険制度
- 労災保険制度は存在しないが、業務外・業務上を問わず公的病院での治療は無料で行われ、その費用はINSS(社会福祉院)が負担する(税金)。
- 労災で負傷した時には、最初の1ヶ月は会社が給料全額を、2ヶ月目からはINSSが給料の何割かを負担する(負担率は業種によって異なるが、造船業の場合では60%程度)。
- 負傷労働者は法律により1年間解雇できない。
6.労働災害統計と事故の届出
- 統計上は、このところ労働災害は減少しているように見えるが、実際には統計に含まれていない労働災害が倍近くあるとのことである。インフォーマルな労働者(労働手帳に基づく契約をしていない労働者)は組合に加入しておらず、雇い主との正規の雇用契約もないため、報告対象とされずに漏れてしまっている。
- 職業性疾病についての統計はなく、現在統計の取り方を詰めている段階である。
- 労働災害の届け出は、労働者が業務に起因して死亡した場合でも届出義務はない。
7. 労働基準監督署・労働基準監督官(フィスカール)
- 労働基準監督署は連邦政府に属している。
- フィスカールは、労働安全衛生、環境について監督し、違反している場合には罰金を科す。
- 作業環境監督担当のフィスカールが約800人。労働手帳や労働時間等の確認担当のフィスカールが約2000人で、いずれも国家試験に合格しなくてはならない。なお、労働人口は約6000万人である。(総人口:約1億5,700万人)
8.国際規格
- OSHMSについてはFUNDACENTROにおいて、幾つかの産業についてモデルを検討中である。
- ISO9000、14000については、一流企業においては、DNV等認証機関によって認証の取得を行っているが、全体としては低調である。
- ISO18000については、現時点では取得企業はわずかである。
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