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墜落・転落
建設業の死亡災害原因の第1位

資料出所:カナダオンタリオ州建設業安全協会
(Construction Safety Association of Ontario : CSAO)ホームページ
http://www.csao.org/uploadfiles/magazine/vol10no3/falls.htm

(仮訳:国際安全衛生センター)



墜落・転落は端部から発生

 死亡原因及び頻度で違いはあるが、オンタリオ州の建設業では依然として墜落・転落は死亡災害では第1位となっている。

  • 建設労働者は、作業床の端などの様々な種類の端から墜落・転落している。最もよく見受けられるのは、床、屋根及び床と屋根の開口部からである。墜落・転落の恐れがある防護されていない端部には、手すりを設置したり、開口部にカバーをしたり、安全に取り付けることができる落下阻止システムを利用したりしなければならない。
  • 多くの墜落・転落死亡災害は、少ない人数で、ローコスト及び短い工期で作業をする場合に発生している。今回の場合も工事請負人は、十分な墜落・転落防止対策を取らなくても、作業が少人数でかつ、早く行うことができると考えていた。このことが彼らの決定的な誤りであった。
  • ある建設労働者は、床、屋根の開口部を覆っている合板を他の所で使うために移動して、不注意にも開口部から墜落・転落して死亡した。その覆いには、はっきりと次のように記しておくべきであった。「開口部カバーを取り除くな!」
  • はしごからの墜落・転落は、はしごに昇ったり降りたりする時、また、はしご上で作業する時、多く発生している。しかし、この種の災害は常に身体を3点支持することによって大幅に減少することができる。3点支持とは、片手及び両足、又は両手及び片足が常にはしごに接していることをいう。
  • ある建設労働者は、はしごの上部、下部がしっかりと止められていなかったため、はしごが滑動して転落し、死亡した。更にはしごの足を支える土台が、柔らかく、締まっていないでこぼこの土の上に置いて使用していたことも原因となった。
  • 2.4m(8フィート)以上の墜落の恐れのある足場及び作業床の上で作業する時は、手すりを設けるか、落下阻止システムを利用しなければならない。
  • ある建設労働者は、2フィート程の高さから転落して死亡した。低い作業床であっても手すりを設置することが大切である。高い所の作業面で作業する時は、高い所にいるということを忘れてはならない。後ろへさがってはいけない。最初に下を見ないで足を動かしてはいけない。

オンタリオ州の建設業では、1995年以来、少なくとも30人が墜落・転落で死亡している。

  1995年 1996年 1997年 1998年
墜落・転落死亡災害 6 8 8 4
全死亡災害 13 23 15 24

 1999年は、建設業の死亡災害12人中、7人が墜落・転落災害であった。

 労働省監督官は、墜落・転落防止対策の監督を重点的に推進している。特に力を入れている点は、(オンタリオ)州全体で墜落・転落防止訓練を義務化しようという動きであり、これは法令の改正に組みこまれる見込みである。



墜落・転落防止はまず手すりから

 手すりは、墜落・転落防止の第一の防護設備である。労働者が2.4m(8フィート)以上の高さから落ちる恐れがある次のような所、又は水中、運転中の機械の上若しくは危険物質の中へ落ちる恐れがある所の開口側に手すりを設けなければならない。
  • 床及び開口部のある床
  • バルコニー
  • 床型枠
  • 通路用階段・踊り場
  • 屋上
  • 足場及びその他の作業床
  • 機械用の通路及び傾斜路
  • 橋の表面
 手すり、中さん及びそのつま先板(幅木)は、支柱にしっかりと固定しておかなければならない。

 木材、木製の板、ワイヤロープ、ワイヤメッシュ板を使用する手すりは、次の寸法のものでなければならない。

  • 手すりの高さは91cm(3フィート)〜1.07m(3フィート6インチ)の間とすること
  • つま先板(幅木)は、少なくても10.2cm(4インチ)の高さでその表面は平らであること
  • 支柱は、2.4m(8フィート)以上離さないこと

 これらの部材は、支柱の内側に固定しなければならない。つま先板(幅木)は、足場又は作業床の全ての開口部に設けなければならない。

 手すりは、できる限り端部近くに設置しなければならない。そして手すりに作用する荷重に耐えられるものでなければならない。このことは、フォークリフトや手押し車が使用されるような特別な状況下では、更に補強される必要がある。

 横方向の力に最大限耐えるため、ツーバイフォー(2×4)仕様の部材を上部手すりとする場合は、幅広い面が水平になるように設置しなければならない。手すりを更に強くするため、手すりは2本重ねにし、支柱間を1〜2m(3フィート4インチ〜6フィート8インチ)間隔と狭くする。


 木製手すりは、上部手すりに届く支柱で支持され、斜材を用いて床にしっかりと固定されなければならない。使用される支柱の上面や下部には、柔らかいベニヤ板をきちんと合わせなければならない。定期的に固定状況について整備、点検することが必要である。

 既製の支柱は、クランプ又はアンカーボルトでスラブ及びスラブ端部にしっかりと固定しなければならない。

 手すりが取り除かれなければならない場合は、その開口端はロープを張り、かつ警告表示でマークしなければならない。この場合でも労働者は、落下阻止システムを用い、それを適切にとりつけて結さくしなければならない。


墜落・転落防止:2つの基本的タイプ

 建設業では、墜落・転落のリスクを削減することは容易なことではない。従って、適切な墜落・転落防止方法を選ぶことが重要となる。

 墜落・転落防止の2つの基本的タイプは次のものである。
  • 落下阻止(fall arrest:フォールアレスト)
  • 移動制限(travel restraint)
 手すり又はその他の墜落・転落防止対策が行えないような場所で、以下のような墜落・転落の危険がある所では落下阻止又は移動制限のシステムを使用しなければならない。
  • 3m以上の墜落
  • 運転中の機械の中への墜落・転落
  • 水中又は他の液体の中への墜落・転落
  • 危険物質、又は危険物の中又は上への墜落・転落

落下阻止

 落下阻止は最も一般的なシステムである。労働者のいる場所から数フィート以内で墜落・転落をくい止めることができる。落下阻止では、フルハーネスが必要である。代表的なシステムは次の部品から成る。
  • フルハーネス(CSA規格)
  • ランヤード(ロック・スナップフック機構又はD環付)
  • グリップ
  • 親綱
  • 親綱固定金具(アンカー)

 落下阻止システムは、移動式足場上で作業する時、又は吊り足場又は椅子式のような吊り下げられた装置に昇ったり、降りたり、そこで作業したりするような場合に装着しなければならない。

移動制限(TR)

 移動制限システムは、労働者が防護されていない作業場所の端部へ近づかないようにさせ、墜落・転落を防ぐものである。

 このシステムは、墜落・転落危険区域から、労働者を離れさせるために、設置されなければならない。これは、次の部品から成っている。
  • フルハーネス安全帯(CSA規格)
  • ランヤード
  • グリップ
  • 親綱
  • 親綱固定金具(アンカー)
 このシステムの根本的問題は、グリップを労働者の移動毎に調整しながら、しかも、労働者を端部に近づかせないようにしなければならない点にある。1つの方法として、自動巻き取り式の綱を使うという手もある。(後述の項を参照)

 実際には移動制限システムは、綱の長さがいつも適切に調整されるわけではないので、フールプルーフではない。例えば、この自動巻き取り式の綱が、最も近い端部への距離よりも長い場合、その方向へ移動する労働者は、墜落・転落する以前に防護されないことになる。

 しかし、このシステムにより、墜落・転落を防止できない場合でも、墜落・転落を抑えることにはなる。


自動巻き取り式の綱(Self-retracting lifelines : SRLs)

 SRLsは建設現場で、墜落・転落防止のために広く用いられている。特に労働者が物を取り扱ったり、設置する際に、移動しなければならないようなところで用いられている。SRLsは、労働者が綱の長さの範囲内で移動できるが、急激な引っ張りに対して、停止、ロックがすぐ作動するようになっている。この作動は移動を制限する目的ではなく、墜落・転落阻止を目的としてデザインされている。

 SRLsのユーザーは、安全防護対策と同様に、メーカーが推奨する適切な使用方法を良く知っていなければならない。

 SRLsは、従来、労働者の胴ベルト又はハーネスに親綱からほぼ垂直に引き下ろされた綱で、労働者の頭上に固定されている。それがSRLsの最良の使用法という認識が一般化している。

 しかし、建設現場では、違うやり方が現れてきた。従来の位置に加えて、次の2つの基本的なオプションがある。
  • 労働者のいる場所の上方の傾斜屋根の棟に固定するアンカーユニット
  • 労働者が綱を水平方向に引き出せるよう、平らな作業面上に固定するアンカーユニット
 どのメーカーのマニュアルにも、労働者の頭上に固定したSRLsの使用上の資料とガイドラインが記載されている。

 しかしながら、一部のマニュアルには、SRLsの水平方向の使用に関する事項は記載されていないものもある。この場合ユーザーは、水平使用が認められているかどうかということを確認しなければならない。メーカーは、適切な水平使用の条件を教えてくれるだろう。

 SRLsは、移動を制限するものではないことを忘れてはならない。移動制限は、開口端近くの労働者の動きを制限し、かつ墜落・転落を防止するようにデザインされているものである。

 唯一SRLsが移動制限用として働くのは、綱が完全に引き出された状態で、それでも長さが足りないために、危険場所にユーザーが、入れない時である。


重要な点検

 落下阻止システムは、適切に使用されてこそ、墜落・転落死亡を防止できるものである。正しい使用には点検も含まれる。皆さんの生命は、点検次第である。

ハーネス

  • 常に、タグで製造日を確認すること。大部分のハーネス繊維本体の保証寿命は5年である。もしハーネスにタグがついていない場合は、使用してはならない。
  • 繊維の切断、擦り切れ、縫い目のほころび及びその他の損傷を探し出すこと。化学物質又は熱による損傷をチェックすること。
  • 金属性バックルの歪み、ひび割れがないか、角が尖っていたり、ザラザラしていないか等を点検すること。バックルは調節時にスムーズに動かなければならない。
  • バックルがハーネスに取り付けられている部分の繊維が、擦り切れたり、切断されていたり、摩耗していないか等をチェックすること。
  • D環の歪み、ひび割れ、その角が尖っていたり、ザラザラしていないか等を点検すること。更に化学物質又は熱による損傷を点検すること。
  • D環を止めているプレートが、ひび割れ、熱損傷などの欠陥が無いかを確かめること。プレートはD環の位置がずれないように固定できるものでなければならない。
ランヤード

 大部分のランヤードは、保証寿命は5年である。タグで製造日をチェックすること。ランヤードの擦り切れ、破れ、切断;伸び;化学物質、熱損傷の有無;接続金具等の割れ、ひずみがないかどうか点検すること。

ショックアブソーバー

 ショックアブソーバーは、直近の点検日を記したタグが備え付けられていなければならない。もしタグが見当たらない場合は、この装置が適切かどうかを管理者に尋ねるために返さなければならない。もし装置が墜落荷重を吸収するためにデザインされた、剥ぎ取り式の縫い目で作られている場合は、縫い目が無傷であるかどうかを確認すること。

フック

  • 表面のひび割れ、腐食又はくぼみをチェックすること
  • ビル(Bill:フックの先端)及びアイ(Eye)の部分がねじれたり、曲がったりしていないかを確認すること
  • ロックが適切に機能しているかどうかをチェックすること。ロックされた状態で外れ止め(Keeper:キーパー)を開けてみる。もし外れ止めが開くような場合は、このフックは直ちに破棄すること。
  • バネは、外れ止めをしっかりと閉じるのに十分な張力があるかどうかを確認すること。
  • 外れ止めを開いて手を離してみること。外れ止めはそのままにならないで、ビルの中に収まること。


グリップ

  • グリップは、正しい方向で設置されているかを確かめること。多くのグリップは、適切に使用できるように方向を示す矢印がついている。
  • 適切な太さの親綱が使われていることを確かめること。使用できる太さはグリップに記されている。
  • 親綱上にグリップを取り付ける。グリップを強く下方に引く。グリップは30cm(12インチ)以内でロックされなければならない。


親綱

 親綱は、少なくとも直径16mmのポリプロピレン綱又はそれと同等の強度を持っていなければならない。綱は、取り付ける前に、端から端まで点検すること。切断、焦げ跡、そして化学物質、熱の損傷を探し出すこと。直径の減少は、綱がすでに落下阻止に使われていたことを示すものなので、破棄しなければならない。

親綱のアンカー

  • 親綱は、堅固なアンカーにしっかりと据え付けられていることを確かめること。
  • 出来る限り、一つのアンカーには、1本の親綱とすること。
  • 使用中に動かされたり、使うことで量が減るような物をアンカーとして使用しないこと。
  • 埋め込む長さが不十分な露出した鉄筋はアンカーとして使用しないこと。