このページは国際安全衛生センターの2008/03/31以前のページです。
国際安全衛生センタートップ国別情報(目次) > デンマーク 水や石鹸を使う仕事には皮膚炎の危険がある
水や石鹸を使う仕事には皮膚炎の危険がある
ゴムと木綿の二重の手袋が予防に効果的

資料出所:European Commission発行「JANUS」第27号 p.22
(訳 国際安全衛生センター)



 水と石鹸を使う仕事に従事する労働者は、皮膚の保護層が破壊されるため、接触皮膚炎にかかる危険性がある。しかし最近の調査によって、この非常に重要な問題には容易な解決策があることが分かった。

 清掃労働者の5人のうち4人までが、「その労働時間の少なくとも4分の1は、水仕事に従事している」と言う。またレストランなどのキッチンで働く人々も、毎日少なくとも3時間は水と石鹸に触れている。美容師も水、石鹸、そして化学物質の含まれるヘアカラー剤、パーマ液を何度も使って仕事をする。

 看護師や介護労働者も毎日、何回もゴム手袋をつけるし、微生物の伝播、その感染から身を守るため、頻繁に手を洗う必要がある。こうした人々は「水に濡れる仕事」のごく一部にすぎない。

 こうした仕事は清潔さという面で問題があるのと同時に、健康にも危険が及ぶおそれがある。そうしたことから病気にかかった場合、当人にとって大きな問題であるだけでなく、社会全体としても労働日数の損失、医療費、職業性疾病に対する補償、リハビリと年金など、多くの財政的負担が生じる。ダルテ・W・ラムシング博士がこれらの仕事の実態を調べ、損害を防ぐ方法を検討すべきだと考えたのも、こうした事情があるからである。


水でも皮膚炎を起こすことがある

 接触性皮膚炎は職業性疾病の中でもごく一般的な疾病である。それはアレルギー反応、または刺激の結果として生じる慢性的な疾患である。接触性皮膚炎は皮膚が常に刺激要因と接触する場合に生じる。

 皮膚炎を起こすのは必ずしも刺激性や腐食性の物質に限らない。たとえば、石鹸水やシャンプーでも起こり得る。ラムシング博士の研究では、純粋な水のような無害なものでも、非常に弱くはあっても、刺激物になることがある。

 「刺激物接触による皮膚炎」は非常に多い病気である。それには強い刺激物と短期間の接触で起きる急性皮膚炎と、弱い刺激物と頻繁に接触したために起きる慢性皮膚炎とがある。後者の場合、刺激物が環境要素から身を守る皮膚の能力を次第に弱体化させるために起きる。ラムシング博士が博士号を得たゲントフテ郡病院で主に調査したのも、この慢性タイプの皮膚炎である。

 ラムシング博士によると、健康への危害は非常に大きいため、労働日数の損失、医療給付金などによる高いコストに加えて、頻繁に皮膚炎にかかる人々は仕事を変える必要に迫られ、場合によっては身体障害の年金を申請しなければならない場合さえある。

 博士は「手をぬらす」職種の人々の状態をさらに詳しく調べるため、研究室でテストを行った。その結果によると、純水のような無害な物質でも、接触が続けば皮膚を冒す危険がある。


予防方法はやさしい

 またテストによると、簡単な注意を守りさえすれば、有害な影響を予防することができる。皮膚がすでに影響を受けている場合でも、手を守る適切な方法によって、接触性皮膚炎を避けることができる。

 皮膚炎の原因になる洗浄剤は浴室、台所、工場など、どこにでもある。ラムシング博士によると、家事に従事している人々のほとんどは(毎日の洗浄のために)、手の皮膚の乾燥、炎症を経験しているはずで、もし皮膚が「休養する」余裕を与えられなければ、皮膚炎を起こす危険があるという。

 手が同じ物質に繰り返し接触した場合には、慢性皮膚炎になる危険性がある。


手袋の使い方も慎重に


 ゴム手袋を使えば、皮膚が洗剤と接触するのを防ぐことができる、と考えられる。だがゴムは使い方が適切でないと、それ自体が皮膚を刺激する。

 手袋をつける前に手に洗剤や水がついたままの場合は、さらに悪い結果が生じる。手袋をつける前には洗剤に触れてはならない。またゴム手袋の下に木綿の手袋をつけるのがよい方法だとラムシング博士は言う。

 ラムシング博士の外にも、多くの人が接触性皮膚炎を研究ている。だが普通の水道水でも皮膚に影響があることを実証したのは、博士が初めてである。博士は研究の一部として、数人の協力者とともに1日に15分間ずつ2回、手を水につけ、それを10日間繰り返した。労働時間の4分の1を水を使って仕事をする清掃労働者とは比べものにならないほど、軽い接触である。

 しかし、この低レベルの接触でも、血流の増加という形で小規模な反応を引き起こした。これは皮膚内部になにかが起きている証拠であり、「われわれにとっても驚きだった」とラムシング博士は言う。

 博士は、今回のテストが健康な人々について行われた実験的な研究であることを強調している。ゲントフテ郡病院皮膚科では、「手をぬらす」仕事の人々を含めて、もっと広範囲な調査を行う計画を立てている。しかし、博士は今の段階でも有益な助言を提供することができる、と考えている。

 まずゴム手袋をつける際には、手をぬらしていたり、洗剤が付着していないことを確認する。ゴム手袋の下には木綿の手袋をつける。香料の入っていない、油脂性の加湿クリームを炎症の予防にも、すでに接触性皮膚炎にかかっている場合にも、使うこと等である。



訳注)
接触性皮膚炎とは−−−contact dermatitis 《医》 直接皮膚に接触するある物質の刺激または感作の結果起こる皮膚の急性または慢性の炎症