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EU域内における労働災害:死傷災害ともに減少

資料出所: EC:欧州統計報道局ホームページ
EUROPA Press Releases Rapid, STAT/04/55, 28 April 2004
原文はこちら

(仮訳 国際安全衛生センター)



EU域内における労働災害:死傷災害ともに減少


 EU域内での労働災害のうち、4日以上の休業災害及び死亡災害は着実に減少している。1994年から2001年の間、EU域内での4日以上の休業災害は15%、死亡災害は31%、それぞれ減少した。2001年EU域内での4日以上の休業災害件数は、約470万件であった。休業のなかった災害、あるいは休業3日以内の災害を入れると、全労働災害は、760万件と見積もられ、5秒間に1件の労働災害が発生していることになる。

 男性の労働災害が女性のそれよりも多く、4日以上の休業災害で3倍、死亡災害では11倍となっている。この差は、男性が災害リスクのより高い部門で働き、かつ、フルタイム労働に従事しているためである。いいかえると、男性は毎日、より長い時間、災害リスクに暴露されており、同じ経済活動分野においてさえも、例えば建設産業では、男性は建設現場で働き、女性は事務所で働くといったように、男女の行う仕事の違いによるものである。

 初めて、EU統計局(Eurostat: the Statistical Office of the European Communities)は今日、世界労働安全衛生の日(World Day for Safety and Health at Work)に、1994〜2004年の間におけるこの分野で利用可能な全統計データを使ってEU域内の"労働と健康のレポート"を発表した。Eurostatのデータは、欧州生活労働条件改善財団(ESWC: European Foundation for the Improvement of Living and Working Conditions)等のデータを利用したものである。今回の発表では、労働生活の一般的な状況が示され、職場の暴力、脅し、差別に加えて、労働安全の問題、職業性疾病及び作業関連疾患が含まれている。更に、政策及び方策についての情報もある。

労働災害は全般的には減少しているが、全ての加盟国でそうなっているわけではない。

 1998年から2001年までの間、EU域内の4日以上の休業災害は6%、死亡災害は21%、それぞれ減少した。労働災害で、4日以上の休業災害に於て最も減少した国は、デンマーク(−18%)、ベルギーオーストリア(各々−17%)で、死亡災害では、デンマーク(−45%)、イタリア(−38%)、ドイツ(−35%)で大きく減少した。このことは、死亡災害の絶対数は、多くの国でもともとかなり少ないため、絶対数での小さな減少により、百分率の変化という点でみると、相対的に大きな年変化になるものと思われる。

 多くの加盟国での全般的な下降傾向にもかかわらず、4日以上の休業災害の発生率は、スウェーデン(+13% 1998〜2001)、英国(+10%)、スペイン(+6%)、アイルランド(+5%)で上昇した。死亡災害の発生率は、ベルギー(+24%)、スウェーデン(+5%)、ポルトガル(+4% 1998〜2000)で上昇した。
 
 新加盟国の中では、4日以上の休業災害の発生率の最も大きな減少は、ポーランド(−22% 1998〜2001)で、続いてスロバキア(−16%)、リトアニア(−15%)だった。増加した国は、エストニア(+32%)、ラトビア(+16%)、キプロス(+12%)だった。死亡災害の減少国は、ハンガリースロバキア(各々−29%)、エストニア(−22%)で、増加国はラトビア(+40%)、リトアニア、スロベニア(各々+5%)であった。

1998年を100とした、2001年の労働者1,000人当たりの労働災害数

'

4日以上の
休業災害
死亡災害 ' 4日以上の
休業災害
死亡災害
EU15か国 94p 79p チェコ共和国 91 96
ベルギー 83 124 エストニア 132 78
デンマーク 82 55 キプロス 112 62i
ドイツ 88 65 ラトビア 116 140
ギリシア 86 78 リトアニア 85 105
スペイン 106 81 ハンガリー 86 71
フランス 98 79 マルタ 99 48i
アイルランド 105 43b ポーランド 78 92
イタリア 92 62 スロベニア 94 105
ルクセンブルグ 97 37i スロバキア 84 71
オランダ 92 79 EU15か国+新加盟10か国 94p 80p
オーストリア 83 94 ノルウェー 82 74
ポルトガル 88 104 ブルガリア 87 100
フィンランド 87b 98b ルーマニア 113 97
スウェーデン 113 105 トルコ 90 92
英国 110 92 米国 90 93w
' ' ' 日本 91 98
資料出所:Eurostat
*2000年
(注) p: 暫定
b: 連続データーが無いのでその点要注意
i: 死亡災害が少ないので、低い重要性
w: 9月11日のテロ関係犠牲者は除く

2000年にEU域内で身体的暴力を受けた労働者は、女性で6.4%、男性で4.7%である旨、報告されている。

 EU域内では、女性労働者の6.4%、男性労働者の4.7%が、2000年に職場において身体的暴力を受けたと報告している。こうした暴力は、同僚(女性・男性各々1.9%、1.2%)というよりは、他人、つまり顧客、生徒等(女性・男性各々4.5%、3.5%)によるものが一般的となっている。保健及び社会福祉関係の労働者が最も影響を受けていて、2000年には、13%が暴力を受けた旨報告されている。保健及び社会福祉分野は又、脅迫でも最も高い率15.7%を示していた。 2000年EU域内全体で女性労働者の10.2%、男性労働者の7.3%が、職場での脅迫を経験していた。加えて女性労働者の3.5%は、性的嫌がらせを経験したと述べていた。

 2000年、性的差別を受けた女性労働者は、男性の0.8%に比べ、3.1%であった旨、報告されている。職場の年齢による差別に関しては、男性(2.8%)、女性(3.0%)とほぼ同一であった。

2000年、EU15か国内の職場での暴力、脅迫、差別

労働者の% 女性 男性
職場の人々から身体的暴力を受けた 1.9 1.2
他人から身体的暴力を受けた 4.5 3.5
脅迫にあった 10.2 7.3
性的差別を受けた 3.1 0.8
性的嫌がらせを受けた 3.5 0.9
年齢差別を受けた 3.0 2.8
資料出所:ESWC, European Foundation for the Improvement of Living and Working Conditions

 労働災害は、標準化された災害発生率で計算され、加盟国の異なる経済構造状況を補正した被雇用者10万人当たりのその年の労働災害発生件数を表している。各国の労働災害データー集積システムでカバーされている経済活動、あるいは職業別ステータスのグループのみが分母に含まれている。即ち、農業・狩猟林業、製造業、電気・ガス・水道業、建設業、卸・小売・修理業、ホテル・レストラン業、運輸・通信業、金融仲介業、不動産貸借業、その他の商業である。勤務中の交通災害は、死亡災害の標準化発生率から除外されている。しかし死亡災害以外の率には、勤務中の交通災害が含まれている。死亡災害及び死亡災害でない災害両方共に通勤災害(自宅から会社又は逆の場合)は、含まれていない。

 追加情報はILOのhttp://www.ilo.org/public/english/protection/safework/worldday/index.htm 参照。

 「Work and health in the EU - A statistical portrait」(129 pp. ISBN 92-894-7006-2)のPDFファイルは、Eurostatのウェブサイトから無料でダウンロードできる。
http://epp.eurostat.cec.eu.int/cache/ITY_OFFPUB/KS-57-04-807/EN/KS-57-04-807-EN.PDF