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国際安全衛生センタートップ国別情報(目次) > EU 欧州安全衛生機構局長コンコルスキー氏講演

第57回全国産業安全衛生大会 (‘98 In KOBE )
日時:1998年10月8日
主催:中央労働災害防止協会(JISHA)

“EUにおける労働安全衛生改善のためのリンクを築く”

発表者:Hans-Horst KONKOLEWSKY 欧州安全衛生機構局長(Director of the European Agency for Safety and Health at Work)



欧州安全衛生機構は1996年9月にその活動を開始した。欧州安全衛生機構は、EU連合の各機関のいわゆるサテライトである。その意味は、当機構は、欧州委員会の一部でもなければ、法律を管理したり発布したりする政治的な機関でもないということである。独自の運営委員会を持って独立している安全衛生機関であって、運営委員会には、すべてのEUメンバー国が参加しており、各国とEUの労使及び、欧州委員会の代表から成っている。

欧州安全衛生機構の目的は、EUの機関、メンバー国、及び、労働安全衛生の関係者に安全衛生分野で役に立つ技術的、科学的・経済的な情報を提供することである。これは、職場環境の改善を奨励する為である。当機構は透明性を確保するため、また二重の努力を避けるために、そのすべてのパートナーと密接に協力をして活動している。

また当機構の狙いとするところは、国内及び国際的な機関、そして、直接に安全衛生の問題によって影響を受ける人々−労働者、事業者、安全責任者(safety representatives)、労働安全衛生担当者−への(からの)情報の流れを刺激することによって、職場での人々の生活を改善することである。

特に注目すべき主な3つの点は、第一に、職場での実用的で効果的な解決策の提供、第二に、中小企業に安全衛生のメッセージを伝える最良の方法の追求、そして最後に、就業形態の変化によって生ずる様々な雇用状況のもとで、これらのメッセージを確実に届ける方法である。

当機構の活動は、以下の3つのカテゴリーに分かれる:

  • 情報ネットワーク活動
  • 情報サービス
  • 情報プロジェクト


欧州安全衛生機構の情報ネットワーク−リンクを築く

安全衛生に関する情報は、各メンバー国と各機関の間に広く分散している。EU全域にこの情報を開放するには、既に持っている知識を互いに結びつけて、それを必要としているすべての人々が容易に入手できるようなネットワークが必要である。

欧州安全衛生機構の主な活動は、「Focal Point」システムを基にしたヨーロッパ全域にわたる情報ネットワークを発展させることである。「Focal Point」は、各メンバー国ごとに1機関が国によって指定されている。「Focal Point」は通常、安全衛生を担当する当局となっている。

当機構の情報ネットワークは、現在インターネット上に作られている。当機構のホームページ (http://osha.europa.eu/)を通じて、ヨーロッパや世界中のユーザーは、国内の「Focal Point」の情報源と、わかりやすくてフレンドリーなシステムを通じたネットワークにアクセスできる。

当機構とそのネットワークは、インターネットによって、安全衛生担当者や安全責任者 (safety representatives) は勿論、会社の労働者と事業者にも連絡をとることができる。それは、安全衛生に関する、かつて無い新しい情報源にアクセスすることが可能になることである。


情報サービスの提供 − 知識の伝達

入手可能な情報についての意識を高めるために、欧州安全衛生機構は、ニュースレター、安全衛生についての小冊子、ヨーロッパにおける労働安全衛生状況についての二年ごとのレポート、その他の具体的なテーマについての刊行物を含む多くの出版をおこなっている。また、会議、セミナー、展示会を組織したり、それらに参加したりし、EUの諸団体、メンバー国、労使からの、情報に関する特別な要求に答えている。


情報プロジェクト − 知識の展開

EUの諸団体、メンバー国、安全衛生の専門家が高度な安全衛生を促進するのを援助するために、欧州安全衛生機構は具体的な課題についての多くの情報プロジェクトを実行する予定である。重要なプロジェクトとしては、EUの労働安全衛生状況や、安全衛生に関する研究と実用的な解決策についての情報、例えば、職場でのストレス、筋骨格の問題、危険物質の代替に関すること、などがある。


現在の状況

欧州安全衛生機構は、その活動を始めてから1年半でかなりの実績をあげ、EU全域にわたるネットワークと、情報サービスや情報活動の展開の面で重要な進歩を遂げた。

現在までの当機構の発展と将来の計画は、安全衛生に対する将来的な取り組みに重要な変化をもたらすものである。情報とそれへのアクセスは、ヨーロッパ全域で安全衛生の高い標準を確保するための鍵である。例えば、労働安全衛生に関するEU指令を実際的に実施するための支援となる。

情報社会では、情報提供者はEUのすべての市民の家庭や職場へアクセスできる可能性がある。だから人々は、それまではほんの一部の“専門家”だけによって所有されていた情報を得ることが可能になるだろう。また、安全衛生団体や安全衛生担当者は、重要なグループをターゲットにするということも含めて、以前よりはるかに広い範囲で個人や組織に直接連絡を取ることができる。

当機構の活動で情報へのアクセスがより容易になり、事業者、労働者、安全責任者(safety representatives), 安全衛生担当者が、より開かれた方法で、安全衛生への責任を果たすのを助けるにちがいない。事業者に対しては、優れた安全管理方法を確立したり、安全を本流の管理システムに統合する時に助けになるだろう。さらに、リスクアセスメントを実施する時や、安全衛生上の危険に関する必要な情報を提供するという義務を果たす時にも助かるだろう。

労働者は、事業者との討議や相談のためのより良い基礎資料として、信頼できる情報へアクセスが可能となるだろう。安全衛生担当者は、これまで試みられた様々な活動を学んだり、ヨーロッパ全域の仲間と、当機構のインターネット・ネットワーク設備を使って経験を交換したりすることができるだろう。

欧州安全衛生機構のネットワークは誰でも利用が可能であり、すべての人に利用されるべきである。そうすることによって、安全衛生に関わるすべての人が、労働災害や疾病を防止するための知識と経験を共有し、それによって職場での安全衛生状況を改善することができる。当機構はそのために存在している。