このページは国際安全衛生センターの2008/03/31以前のページです。
国際安全衛生センタートップ国別情報(目次) > EU 欧州安全衛生機構ニュースレター

研究とテクノロジー

■単純反復作業(MRW)についてのデンマークの調査プログラム


デンマークのソーシャルパートナーは、2000年までに単純反復作業によって引き起こされる労働災害数を半減するという目標を 設定した。 デンマーク労働者の労働環境に関する1997年の研究では、約10%の労働者が単純反復作業に従事していることが明らかになった。 デンマークにある多くの新しい職場では、日常コンピューターを使って仕事を行っているが、それでもこれまであった職場と同じに 厳しい身体的・精神的な負荷がかかっている。従ってこの負荷についての研究を行い、解決策を提案するためにいくつかの調査 プログラムが始められた。

デンマーク労働省は、VDT作業から引き起こされる危険を減少させるため220,000 DKKの予算を確保した。 「デンマーク国立労働衛生研究所」(The National Institute of Occupational Health of Denmark)は、マウス使用や他のVDT作業 から起こる災害、危険の研究を行うために労働省から110,000 DKKの補助を受けた。 この情報ツール関連研究は1998年7月から2001年7月までの3年プログラムである。

予算のいくらかは、オフィス、会社、店での毎日のPC作業の研究に割り当てられた。 さらに、デンマーク国立労働衛生研究所は特別な実験室を建設する予定であり、この実験室では研究者は電磁波や室内気候などの PC作業に関連した危険を測定することができる。プ ログラムの最終目標は、様々な産業部門に無作為に聞き取り調査をおこなって、 何人のデンマーク労働者が情報ツールを使って仕事をし、それが彼らの健康にどのように影響したかを明らかにすることである。

デンマーク国立労働衛生機関はすでにコンピューター支援設計 (CAD) 作業に関する3つの大がかりな研究をRamecll社 (エンジニア向けのコンサルティング会社)で行い、それによってマウスを使って集中的に仕事をすることで労働者の健康に どのような影響を及ぼすかについて非常に詳しく捕らえることができた。

研究から導かれた結論はつぎのようなことである。 つまり、基本的な改善のためにはコンピューターを用いての製図作業及びコンピューター支援設計 (CAD) 作業はコンピューターや マウスを使わない作業と組み合わされなければならず、また労働者自身もいつどのように仕事をおこなうかについてもっと管理 しなければならない。

デンマーク国立労働衛生研究所の情報ツール調査に関連して、デンマークの研究者をスウェーデン、イタリア、スイスの研究機関と 結ぶEUネットワークが設立された。 さらに、新たに創立されたマウスによる災害についての研究を行う国際研究グループのためにホームページも開設された。 (http://www.ami.dk/mousegroup)

政府助補助のもう半分は「デンマーク労働環境事業」(Danish Working Environment Service) によって運営される。 補助金は主に職場での広範囲に及ぶintervention 研究のために使われる。 こうした研究は作業組織や職場の設計を変え、VDT>を使用しないでできる仕事の導入を奨励する。

また研究はVDT作業の有害な影響を減らすことのできるトレーニングに焦点にしている。 つまり、マウスを使う代わりにキーボードを使用したり、ソフトウェア(マクロ) を自動化することなどである。 研究は、最終的にはソフトウェアやハードウェアの技術的な開発といった副次的要素も含む。

詳しくは:
Hanne Christensen
The National Institute of Occupational Health of Denmark
105 Lersc Parkalle, DK-2100 Copenhagen c, Denmark
Tel: +45 39 16 53 64
E-mail: hc@ami.dk
Helene Ostri, Working Environment Sercice,
Landskronagade 33, DK 2100 Copenhagen c.
Tel: +45 39 15 20 00
Fax: +45 31 18 12 41


■2000年問題

2000年問題と、それが安全なコンピューター管理システムに与えるであろう影響を考慮し、HSEは昨年、そうした問題の本質と その問題に取り組む方法の調査を委託した。調査結果は現在公刊されている。それによれば、2000年問題はコンピューター本体からマイクロプロセッサーや内蔵チップにいたるすべてのタイプのプログラム 可能な電子システム(PES) に潜在的に存在することがわかった。 そのようなシステムは、製造業、運送業、公共事業でのすべての産業活動において様々な目的で使われる。 そのようなシステムが日付に依存しかつ安全のために重要である場合は、2000年の日付変更時にどういう挙動をするかということは 致命的な問題となってくる。

調査報告書ではまず最初に、おこりうるすべての問題と日付依存であるシステムが正常に働かなかったり破壊したりする恐れのある 場合についての大要を説明し、続いて安全評価システムがどれほど日付不連続問題に弱いかを評価するための実践的なガイダンスと 方法論について述べている。 一旦問題が特定されると、それは、危険を前提にしたアプローチを用いて優先事項を決定するアドバイスと及び解決策をどのように 計画し実行するのかについての指針を与える。

詳しくは:
“Safety and the Year 2000” (£15.00) はHSE Booksで入手可能。
連絡先:
P.O.Box 1999, Sudbury, Suffolk CO 10 6FS, United Kingdom
Tel: +44 1787 881165
Fax: +44 1787 313995
HSE Books Website:http://www.hsebooks.co.uk


■現場監督者のストレス軽減

職場での精神的なストレスは建設業においても増加している。 過度の(または過小の)緊張は事故を引き起こす原因になり、その状態が続くと健康を損なうことにもなる。 だから、ストレスは労働安全衛生に直接関係がある。「連邦労働安全衛生研究所」(Federal Institute for Occipational Safety and Health) が行った調査プロジェクトでは、 現場監督者グループを例として研究を行った。現場監督者は、その仕事の内容と構成のために幾つかの精神的な緊張に対処 しなければならない。 彼らはまた労働条件、工事現場の安全、会社の経営業績に重要な影響を与える。 よって、現場監督者のストレスを軽減対策は有効で広範囲なインパクトがある。

仕事の内容の分析と被験者のこれまでの経験から、仕事での具体的なストレス要因及び、そうしたストレスに対処する方法が 特定された。 これらの知見は具体的でかつ職種別、作業別の、ストレス軽減対策、健康増進対策の提案を作るために利用された。 つまり、ストレスの予防と対処のためにより働きやすくするように作業状況を改善したり、ストレス防止のために個人的な機会を 利用したりという両面の提案である。 現場監督者向けのガイドラインはこのような提案を使用者にわかりやすく書いている。

(参照:Strobel, G.; von Krause, J,; Psychische Belastung von Bauletern, Fb 778, 1997, ISBN 3-89701-040-2)

詳しくは:
Barbara Weibgerber
Federal Institute for Occupational Safety and Health Dresden
Tel: +49 351/47 33 740


■IT(情報テクノロジー)は心理的職場環境を改善できる

情報社会はデンマーク労働市場を色々な面で変化させている。 新しい技術の利用が増えたことで固定的な形態での雇用が減少し、労働者には新しい技能とより多くの要求がなされている一方で、 専門的で個人能力発揮のためのより良い機会をもたらしている。1996年にデンマーク政府は、情報がどのように仕事の内容及び作業組織と関係しているかを判断するために委員会を設立した。 既に進んだ情報ツールをもつ幾つかの会社でアンケート調査が行われた。

こうした先進的企業では、ITの使用によって明らかに、否定的な結果よりもより多くの肯定的結果が得られている。 肯定的な結果としては、仕事をよく概観できる、適当な情報をより簡単に得られる、事例、プロジェクト、あるいは仕事をより 簡単に管理できる、取引先や顧客とよりよい連絡が取れるなどである。反面、否定的な結果は、VDT作業、職場の設計と配置、 及び室内気候問題の面で人間工学的観点が欠如していることである。

すべての先進的企業ではITの使用は従業員の能力を向上させ、かつ守備範囲が広がって、業務も多様化している。従ってIT技術を 訓練するための生涯教育計画の確立が必要となろう。

情報社会においては、会社は常に組織改革を行っているが、ITの導入と組織形態の関係を理解していなければこうした展開は遅れる だろう。 従って、委員会は、労使がIT及びそれが経営、作業組織、労働者、能力に与える意味についての情報キャンペーンを始めるように 提案している。 委員会はまた、ITと労働環境との関係について更に研究するようにも薦めている。 IT作業の肯定面と否定面の両方は注意深く監視されなければならない。
(参照:The inplications of the information society for job content and work organisation. January 1998. The Danish Ministy of Labour, Holments Kanal 20,DK 1060 Copenhagen K, Denmark)

詳しくは:
Kaj Olesen, DTI Industrial and Business Developemtn, Danish Technological Institute,
Gregersensvej 41, DK-2630 Taastrup, Denmark
Tel: +45 43 50 43 50
Fax: +45 43 50 48 33
E-mail: Kaj Olesen@dti.dk


■環境サイクルが取り入れられた時、作業環境は無視される

環境サイクルが取り入れられる過程では作業環境は見落とされてきた、というのがスウェーデンの 「労働安全衛生と労働監督委員会」(National Board of Occupational Safety and Health and Labour Inspectorate) が おこなった廃棄物取り扱いの作業環境についての研究における結論である。この研究の中では、環境サイクルを実践している会社で働く人々の作業環境が調査された。環境サイクル社会となりつつある現在、 再利用や廃棄物取り扱い(例えば廃棄物分離)における新しい仕事が見られるようになったが、こうした仕事は今後2-3年間で 重大な作業環境問題を引き起こす恐れがある。

廃棄物取り扱い作業の構造は、仕事の内容を改善して筋骨格系災害を防ぐように修正されなければならないだろう。 そして、廃棄物取り扱い施設における身体的な環境も改善されなければならないだろう。

「労働安全衛生と労働監督委員会」は、環境サイクルの問題は外的環境だけの範囲に限られるべきではないということを認めている。 つまり、そうした問題は、一番難しいとこで人々の作業環境をも含まなければならないのである。 環境サイクルの仕事がまだ計画段階であるうちに作業環境のファクターを検討することによって労働災害は防止されうる。 対処が後になればなるほど労働災害は増える。

(参照:Rapport 1998:2 Arbetsmijo vid kresloppsanpassad hantering av restprodukteroch avfall (スウェーデン語) は労働安全衛生と労働監査局国内委員会の出版局で入手できる:1300, S-171 25 SOLNA)

ルクセンブルクMondorf-les-Bainsで11月12-13日に開かれた第33回上級労働監督官委員会会議において英語でおこなわれた “The Ecocycle and the Working Environment in Sweden” (スウェーデンにおける環境サイクルと作業環境) と題された発表論文は、Thematic Dayの会報「廃棄物取り扱い分野における 安全衛生」 (Safety and Health in the Waste Management Field) のなかに収められている。

詳しくは:
Jan Olof Noren
Tel: +46 730 92 71
E-mail: jan.olof.noren@arbsky.se