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EU安全衛生機構


欧州建設業の労働災害防止


資料出所:EU Agency ホームページ:
http://osha.europa.eu/press_room/041027_Construction_report

(仮訳 国際安全衛生センター)


 優れた安全衛生計画の作成により、欧州の建設業において、毎年、300人の生命を守り、50万件の労働災害を防止できる。

 欧州安全衛生機構の最新の報告書によると、欧州の建設現場での労働災害の60%及び死亡災害の25%以上は、建設開始前の周到な設計、計画及び調達により、防止できるとのことである。

 毎年、EU域内の建設業では、労働災害により82万件の負傷災害と1,200人の死亡災害が発生しているが、このうち50万件の負傷災害と、300件以上の死亡災害は、撲滅可能な数字である。

 14カ国のEU加盟国…この中には最近加盟したポーランド、ラトビアの2カ国が含まれているが…その16事例からなる126ページの報告書が発表された。この報告書では、建設業における設計者、建築技術者及び建設業に携わるこの他の人々が、建築施工業者及びメンテナンス業者が直面するリスクを削減するための優れた安全衛生対策を紹介している。 現在、建設業は、欧州での最も高い労働災害発生率の業種で、EUの全業種平均と比べると約2倍となっており、医療費、労働損失時間、その他の経費が750億ユーロとなっている。

 20の言語からなる要約されたfact sheetで補完されているこの報告書は、建設工事の次の3段階での優良事例(グッド・プラクティス)を分析掲載している。:建設工事準備(設計、調達を含む)、施工、メンテナンスである。その例として、高所で鋼製ガーダーを組立てる際に滑り、転落、墜落などのリスク削減のために地上で前もってドリルで穴を開けておくこと、各建設段階での定期的な現場リスクアセスメント、墜落、転落リスク及びその他の傷害をなくするため、交換やメンテナンスが容易となるような照明を設計すること等が記述されている。

 報告書の著者達は、建設業のような多種多様な業種には普遍的な万能薬を特定することは、困難であるということを認識しつつも、成功する安全衛生計画のための3つの鍵となる要因を指摘している。

  • 建設工事の準備:優れた安全衛生基準は、建設工事の発注者によって行われた決定に始まる。工事段階で十分な時間が与えられ、設計の中で安全衛生に配慮がなされていなければならない。
  • 施工管理:自分が責任を有するのだという意識を醸成するためには、事業者、請負会社の労働者、労働者代表機関を初めとする各工事段階に関係する全ての人々が、安全衛生計画について相談を受け、この計画の情報について知らされなければならない。このやり方は、フランスの新しい国家スポーツスタジアム建設時に導入され、成功している。
  • 教育訓練とモニタリング:全ての関係者が、適切で費用効果のある教育訓練に裏付けされたリスクの特定とその解決方法に自信を持っていなければならない。リスクアセスメントとモニタリングは、簡単且つ、学び易いシステムの活用により、実施されなければな らない。フィンランドで使用された教育方法は、優れた例として紹介されている。

 “欧州の建設業界での高い死傷災害率は、建現場、特に中小企業での安全衛生基準の不備によるということは、よく知られている。”とコンコルスキー氏(欧州安全衛生機構局長)は語る。しかし、これだけが唯一の理由ではない。お粗末な工事計画及び設計にも等しく、その責任がある。建築設計者、工事施工計画者を初めとする建設工事関係者全員が、この高くつく問題の解決に果たすべき重要な役割を持っている。今回の報告書は、この問題に焦点を与えただけでなく、それよりずっと重要なことは、EU全体の優良事例を参考とした状況改善のための枠組みを作り出したことにある。

 この報告書の補完となる、その他の優良事例、関係情報の関連サイトへのリンクは、次のURLから利用できる。

http://osha.europa.eu/good_practice/sector/construction/